(第109号)「空き家法」の改正により『管理不全空き家』が指導、勧告される

 
(投稿・令和5年12月-見直し・令和6年8月)

 この度、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家法」)が改正されました。

 総務省が5年毎に実施している「住宅・土地統計調査」の平成30年調査では、総住宅数6240万7千戸に対して「空き家」は約849万戸となっており、空き家率は13.6%となっています。また、長期にわたって不在の住宅などの「居住目的のない空き家」は349万戸で、この20年で約1.9倍に増加しています。

 このように「空き家」の増加が見込まれる中、周囲に著しい影響を及ぼす『特定空家』になることを待つことなく、事前に管理の確保を図ることが必要とされ「空き家法」が改正されました。 

「空き家法」の『特定空家』とは

『特定空家』とは何か

 空き家対策をめぐっては、平成26年に成立した「空き家法」で、「空き家」を放置して倒壊の恐れがあるなど特に危険性が高い物件を『特定空家』に指定し、「空き家」を撤去できるようにしました。

 この「空き家法」については、第91号で紹介しています。

 
 まず、「空き家」と『特定空家』とはどういうものかです。

<「空き家」及び『特定空家』の定義>
※「空き家法」第2条
「1. この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
2. この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

 つまり、『特定空家』とは「空き家」のうち次のいずれかに該当するものをいいます。
そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

住宅用地の減額特例が解除

 そして、『特定空家』に指定されると、固定資産税の住宅用地の減額特例が解除されることになります。

 この住宅用地の減額特例が解除されると、小規模住宅用地(200㎡以下)の特例(6分の1)及び一般住宅用地(200㎡を越える部分)の特例(3分の1)が適用されないこととなります。

 ところで、令和3年度までに「空き家法」により『特定空家』として措置(助言・指導、勧告、命令、代執行)された件数は約3万4千戸となります。

 <『特定空家』の措置状況>

「空き家法」の改正(概要) 

『管理不全空き家』が新設

 しかし、これまでの「空き家法」による『特定空家』の指定によっても、「空き家」が増え続けていることから、今回、対策強化を盛り込んだ「空き家法」の改正が行なわれた訳です。

 今回の「空き家法」の改正では、改正前が第16条までであったものが、改正後は第30条までと大幅な改正が行われました。

 この改正法では、「空き家」を放置すれば『特定空家』になる可能性がある物件を新たに『管理不全空き家』に指定され、管理指針に則した措置が「指導」されます。

 そして、「指導」してもなお状態が改善しない場合には「勧告」が可能となります。

<適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置>
※改正「空き家法」第13条
「1. 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2. 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。」

 また、この「勧告」を受けたときは、『特定空家』の指定と同様に、当該敷地の固定資産税の住宅用地の減額特例を解除できるとされています。

<『特定空家』を未然に防止>)

 
 なお、この『管理不全空き家』等の設置に伴い、地方税法の「住宅用地の減額特例の解除」に関する条項も一部改正されました(下線部分)。

<住宅用地の減額特例の解除>
※地方税法349条の3の2
「1 (前略)空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第13条第1項に規定する管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。(後略)」

財産管理人による空家の管理・処分

 民法(第25条~第29条)では、土地・建物等の所有者が不在・不明である場合等には、利害関係人又は検察官の請求により裁判所が選任した財産管理人が管理や処分を行うことができる、とされています。

<不在者の財産の管理>
※民法第25条
「1. 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。」

 今回の「空き家法」改正では、財産管理人の選任請求権を、空家等の適切な管理のために特に必要があると認めるときには、市区町村長も選任請求可能になりました。

<空家等の管理に関する民法の特例>/span>
改正「空き家法」第14条
「1. 市町村長は、空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法第25条第1項の規定による命令又は同法第952条第1項の規定による相続財産の清算人の選任の請求をすることができる。」

 
2024/02/28/08:00
 

 

(第108号)雑種地の固定資産税評価について(「狭小な雑種地」)

 
(投稿・令和5年12月-見直し・令和6年8月) <閲覧上位5位(第16号)の関連版>

※第16号は過去の閲覧記録で第5位です。

 
 また、雑種地の固定資産税評価については、第68号及び第69号で解説しています。

 
 そこで今回は、「地目認定は現況主義」のみでは簡単過ぎますので、地目のうち分かりづらい雑種地について、とくに「その他の雑種地」の中で「狭小な雑種地」の評価について解説します。

雑種地の基本

 その前に、雑種地の基本について簡単にまとめていきます。

地目の認定は現況主義

 まず、地目認定の時期ですが、固定資産税の賦課期日が1月1日とされており、地目の認定も1月1日現在の土地の現況や利用目的を重視することから1月1日現在の認定となります。

<固定資産税の賦課期日>
※地方税法第359条
「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。」

 次に認定の取扱いですが、固定資産税の土地評価上の地目の認定は現況の地目(「現況主義」)によります。

 では、土地の地目が登記簿と現況が異なる場合は、どうなるのでしょうか。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には建物が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

地目の種類は9種類

 それでは、固定資産税評価における土地の地目は何かですが、固定資産評価基準では次のとおり9種類とされています。

<固定資産評価基準の地目>
※固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
①)田、②畑、③宅地、④鉱泉地、⑤沼、⑥山林、⑦牧場、⑧原野、⑨雑種地」

 以上の9種類ですが、⑨雑種地は他の8種類以外の全てを含むことになります。

雑種地の固定資産税評価

 雑種地の評価については、固定資産評価基準において(ア)「ゴルフ場等用地の評価」、(イ)「鉄軌道用地の評価」及び(ウ)「その他の雑種地」の3種類とされています。

「雑種地の固定資産税評価」
 雑種地の評価方法は、(ア)と(イ)の評価方法は固定資産評価基準で定められていますが、(ウ)「その他の雑種地」の評価は。売買実例価額から評価額を求める方法と、売買実例価額が無い場合は付近の土地に比準して評価額を求める方法(近傍地比準方式)とされています。

 この(ウ)「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 (ウ)「その他の雑種地」の評価方法は、売買実例地比準方式が原則ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では近傍地比準方式により評価されているのが実際です。

「狭小な雑種地」の評価

「狭小な雑種地」とは

 「狭小な雑種地」とは、ゴミ置き場、防火水槽、残地・潰れ地等の雑種地です。

 一般的に、狭小な土地は画地規模が小さくなるにつれて利用可能な用途が限定され、用途の多様性が損なわれることから利用価値が減少します。

 「狭小な雑種地」は、主に次の区分がされています。

建物の敷地として利用が困難な狭小な雑種地(通常の狭小地)
 建物の敷地としては利用困難であるものの、駐車場等として利用が可能な程度の画地規模が小さい(概ね15㎡から30㎡程度)土地です。

単独では利用が困難な程度に狭小な雑種地(極狭小地)
 駐車場としての利用も困難な、画地規模が極めて小さな(概ね20㎡未満)土地です。

「狭小な雑種地」の評価方法

 「その他の雑種地」としては、売買実例地比準方式が原則ですが、「狭小な雑種地」の売買実例を収集することが困難なため、近傍地比準方式により評価される場合が多いと考えられます。

 「狭小な雑種地」の評価では、実務上、次の方法が考えられます。

  付近の土地の価額に、狭小地減価を含む比準割合を乗じる方法
 付近の標準的な規模の土地の価格(路線価等)に、狭小地であることの減価を含んだ比準割合を直接乗じる評価方法です。

画地計算法等の適用により考慮する方法
 規模が狭小なことによる減価を、所要な補正を含めた画地計算法(奥行価格補正、間口狭小補正)を補正した上で適用することと市町村長が設定した狭小地補正を適用する方法等です。

 なお、「狭小な雑種地」については固定資産評価基準には規定が無いため、市町村の「所要の補正」(『固定資産評価事務取扱要領』)により行われています。
 
2023/12/08/16:00
 

 

(第107号)固定資産税の「非課税」「減免」「課税免除及び不均一課税」について

 
(投稿・令和5年11月-見直し・令和6年8月)
※今回は過去閲覧歴10位までの第3位(22号)、第9位(13号)の「非課税」と第4位(15号)の「減免」をまとめ「非課税、減免、課税免除及び不均一課税」を一覧表にしました。

 なお、それぞれの詳細については、次の各号をご覧ください。

 
<「非課税、減免、課税特例及び不均一課税」一覧表>

 
2023/12/07/14:00
 

 

(第100号)震災、風水害等により被災した「住宅用地のみなし特例」について

 
(投稿・令和5年9月-見直し・令和7年4月)

 最近の夏は、「地球温暖化」を超えて「地球沸騰化」の時代とも言われ(国連グテーレス事務総長の発言)、異常気象による世界的な大災害が発生しています。

 そして、日本でも異常降雨、崖崩れ等の災害が続発し、住宅が滅失、倒壊する等の被害も発生しました。

 ところで、震災、風水害等の災害により住宅が滅失、損壊すると、その住宅の敷地となっていた土地が住宅用地として使用することができなくなってしまいます。

 そこで今回は、被災して住宅用地ではなくなった場合、固定資産税評価はどうなるかの解説です。

住宅用地とは何か(復習)

 まず、住宅用地とは何かの一部を復習します。

 住宅用地とは「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地」(地方税法第349条の3の2)です。

 住宅用地のうち戸建住宅の場合の固定資産税は、200㎡までが1/6(小規模住宅用地)に、それを超える面積分は1/3(一般住宅用地)に減額されることとなります。
 また、都市計画税の小規模住宅用地は1/3、一般住宅用地は2/3となります。

 なお、一般住宅用地の固定資産税1/3・都市計画税2/3は住宅の床面積の10倍までが限度となります。

<住宅用地の仕組み(戸建住宅の場合)>

 

「住宅用地のみなし特例」とは

「住宅用地のみなし特例」制度の趣旨

 この住宅用地は、原則として賦課期日(1月1日)の現況において現に住宅の存する土地であるものの、震災、風水害、火災等の災害により住宅が滅失し又は損壊のため取り壊された場合(以下「被災住宅用地」)には、住宅用地として認定できなくなってしまいます。

 そこで、被災住宅用地について所有者の税負担が急増することを回避し、住宅の再建を側面から支援する観点から、市町村長が「止むを得ない事由」と認定した場合には、次の「住宅用地のみなし特例」が適用されます。

 根拠法は地方税法第349条の3の3「被災住宅用地等に対する固定資産税の課税標準の特例」ですが、平成13年度、17年度、29年度に亘って改正されています。

① 平成13年度の改正

 震災、風水害等の発生後2年度分の固定資産税(以下「都市計画税も含む」)を住宅用地とみなします。

② 平成17年度の改正

 災害対策基本法に基づく避難指示等(避難勧告及び警戒区域の設定を含む)の期間が災害発生年の翌年以後に及んだ場合、住宅再建に着手し得る状況が整った後に賦課期日が到来する3年度分の固定資産税を住宅用地とみなします。

③ 平成29年度の改正

 被災市街地復興特別措置法に基づく被災市街地復興推進地域に定められた場合には、震災発生後4年度分の固定資産税を住宅用地とみなします。

震災、風水害等とは

 震災、風水害等とは、震災、風水害、雪害、落雷、噴火等の自然的災害、及び火災、爆発、事故等の人為的災害に起因して、住宅が滅失し、又は損壊した場合を指します。
 ただし、自己の放火や自己都合による建物取壊しの場合は、これに含まれません。

「止むを得ない事由」とは

 市町村長が被災住宅用地を住宅用地として使用することができない「止むを得ない事由」と認定し、「住宅用地のみなし特例」が適用される事例は、次の場合等です。

  がれき等の処理で物理的に使用できない
  権利関係の調整に時間がかる
  復旧工事用の資材置場として用地を提供したため使用できない
  経済的事情により、住宅再建まで時間が必要である

特例適用可能な所有者の範囲

 本特例措置の適用を受けることができる所有者等の範囲は、次のとおりです。

被災年度に係る賦課期日(1月1日)における所有者
  震災等の発生した日の属する年の1月2日から当該震災等の発生した日までの間に土地の全部又は一部を取得した者
③  ①又は②に該当する者から相続により、土地の全部又は一部を取得した者
  ①又は②に該当する者から土地の全部又は一部を取得した三親等内の親族
  ①又は②に該当する法人についての合併又は分割により、土地の全部又は一部を取得した法人

特例対象地積の範囲

 被災住宅用地について、一部が分割譲渡された場合、又は共有関係の変更があった場合等について、特例を受ける対象地積の範囲は、次のとおりです。

一部が分割譲渡された場合

 被災住宅用地の一部について、震災等の発生した日の翌日以後に、第三者に分割譲渡された場合は、当該譲渡された部分の地積が譲渡する前の全体の地積に占める割合により、その部分を「みなし住宅用地の特例」の適用から除外します。

共有関係の変更があった場合

① 被災共用土地の場合

 被災共用土地については、建物が滅失した後についても従前と同様に、連帯納税義務の解除及び共用土地に係る税額の按分を行いますが、住宅用地とみなされる地積の算定については、通常の区分所有家屋の敷地の場合に準じます。

 すなわち、被災前の居住用部分に相当する部分の被災区分所有家屋の床面積に対する割合を元に、住宅用地とみなす部分を算定します。
 ただし、被災前に居住用であった部分の持分に対応する持分が第三者に譲渡された場合には、その持分に対応していた部分は居住部分ではなかったものとみなします。

② 被災共用土地以外の土地の場合

 新たな第三者が取得した共用持分や本来の対象者であっても被災後新たに取得した共有持分は対象としません。

「被災住宅用地」適用には申告が必要

 震災、風水害等により被災した「住宅用地のみなし特例」の適用にあたっては、所有者から市町村長への申告が必要とされています。
 
2023/09/20/08:00
 

 

(第99号)固定資産税の納税義務者ー所有者課税の例外(みなす所有者=使用者課税)

 
(投稿・令和6年5月-見直し・令和7年4月)

 固定資産税の「所有者課税の原則」については、第9号「固定資産税の納税義務者ー所有者課税の原則(登記・登録されている者)」で説明していますが、今回は「所有者課税の例外(みなす所有者=使用者課税)」についてです。

 地方税法第343条(固定資産税の納税義務者等)では、1項~3項が「所有者課税の原則」が規定され、4項~10項では「所有者課税の例外」が規定されています。

 まず、「所有者課税の原則(登記・登録されている者)」の主な点を再掲しますが、詳細につきましては、第9号をご覧ください。

 

所有者課税の原則

所有者課税の原則と台帳課税主義

 固定資産税の納税義務者は、原則として毎年1月1日(賦課期日)の固定資産の所有者です。

<固定資産税の所有者>
「地方税法第343条1項」
「1 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。」

 つまり、固定資産税には、所有者課税主義がとられています。

土地及び家屋の台帳上の所有者

 土地又は家屋についての所有者とは、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者になります(台帳課税主義)。

<台帳課税主義>
「地方税法第343条1項」
「2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」

 仮に売買等によって賦課期日現在すでに所有権が移転している場合においても、登記簿上所有権の移転登記がなされていない限り、固定資産税は登記簿上所有者として登記されている旧所有者に課税されることになります。

償却資産の台帳上の所有者

 償却資産については、土地や家屋の場合における登記簿はなく、申告により償却資産課税台帳に登録されますので、その登録された者が所有者とされます。

<償却資産の所有者>
「地方税法第343条3項」
「3 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

所有者課税の例外(使用者課税)

 地方税法343条には、みなす所有者(使用者)課税の規定が7項目ありますが、ここでは、そのうち「災害等によって所有者の所在が不明の場合」「調査を尽くしても所有者の所在が不明の場合」「テナントが取り付けた家屋の附帯設備」について紹介します。

災害等によって所有者の所在が不明の場合-使用者に課税

<使用者課税とは①>
「地方税法第343条4項」
「 市町村は、固定資産の所有者の所在が震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

 所有者の所在が不明である場合とは、所有者が誰であるか分からない場合、生死が分からない場合、住所ないし居所がわからない場合等です。

 また、その不明である原因は、震災、風水害、火災、戦災、海難等であることを要し、引っ越しによって転出先の住所が不明でるというような日常の一般的な事由により不明である場合は含まれません。

 この場合、使用者を所有者とみなして、固定資産税(土地及び家屋)が課税されます。

調査を尽くしても所有者の所在が不明の場合-使用者に課税

<使用者課税とは②>
「地方税法第343条5項」
「 市町村は、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお固定資産の所有者の存在が不明である場合(前項に規定する場合を除く。)には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

 固定資産の所有者が不明で、市町村が探索をしても明らかにならない場合は、その使用者を所有者とみなして固定資産税を課税することができます。この制度は、令和2年度の地方税法改正により、令和3年度から適用になりました。

 この5項には「市町村は、相当な努力…」とありますが、市町村の探索例としては、住民基本台帳及び戸籍簿等の調査並びに使用者と思われる者その他の関係者への質問その他必要な調査です。

 ここで調査を尽くしても所有者を検索できない場合は、使用者を所有者とみなして固定資産税(土地及び家屋)が課税されます。

テナントが取り付けた家屋の附帯設備-テナントの償却資産

<テナントの償却資産>
「地方税法第343条10項」
「 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

 テナントが、建築設備、間仕切等の附帯設備を家屋に取り付けて、これらの附帯設備が家屋に付合する場合は、当該附帯設備は家屋の所有者が所有するものとされます(民法242条)。

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

上記以外の「みなす課税」

 なお、地方税法第343条における「みなす課税」としては、「国が買収・収納した農地等(6項)」、「土地区画整理事業又は土地改良事業に係る土地(7項)」、「公有水面埋立地等(8項)」、「信託に係る償却資産(9項)」があります。

(※この6項~9項の条文は、引用規定が多く複雑となっていますので、条文の掲載は割愛します。)
 
2023/09/04/11:00