(第135号)土地の地目と面積及び宅地の評価方式について(更新版)

(更新版・令和7年7月)
 今回は「土地の地目と面積及び宅地の評価方式について」です。

土地の地目認定は「現況主義」

固定資産評価基準による土地の地目

 地方税法(341条1項2号)には「田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。」と10種類の地目が規定されていますが、固定資産評価基準には9種類が定められています。

<固定資産評価基準の地目>-固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
①田、②畑、③宅地、④鉱泉地、⑤池沼、⑥山林、⑦牧場、⑧原野、⑨雑種地」

 地方税法も固定資産評価基準もほぼ同様な地目ですが、地方税法の「塩田」は固定資産評価基準には有りませんが、「⑨雑種地」が①から⑧以外の全てを網羅する幅広い地目になります。

土地の地目は現況主義

 固定資産税の土地評価上の地目の認定は、当該年度の初日の属する年の1月1日現在の地目(「現況主義」)によります。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には家屋が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

 地目認定の単位は、原則として1筆ごとに行います。

 ただし、地目は土地の現況や利用目的に重点を置いて認定しなければならないものであり、部分的に僅少の差異があるときでも土地全体としての状況を観察て行います。

 また、1筆の土地が相当の規模で、2以上の全く別の用途に利用されている場合(例えば、1,000㎡の土地の700㎡が畑、300㎡が宅地として利用)には、これらの利用状況に応じて区分して、それぞれの地目を定めることになります。

地目認定の実地調査

 土地の地目の「現況主義」は、現地調査で認定することが比較的容易であるからですが、この現地調査については、地方税法で規定されています。

<固定資産税の実地調査>-地方税法408条
「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地にさせなければならない。」

土地の面積は原則「登記簿主義」

「登記簿主義」の理由

 土地の面積は見ただけでは分からないことから、実測しなければ判断できません。しかし、全国の土地すべてを市町村で実測することは、時間的にも技術的にも難しいと言わざるをえません。また、一部のみを測量することは不公平にもなりかねません。

 そのようなことから、固定資産税の土地の地積認定においては、原則として、「登記簿主義」を採用しています。

「登記簿主義」の例外

 土地面積の認定は「登記簿主義」が原則ですが、例外として現況地積を認めています。

<地積の認定>-固定資産定資産評価基準第1章第1節二
「 各筆の土地の評価額を求める場合に用いる地積は、次に掲げる場合を除き、原則として登記簿に登記されている土地については登記簿に登記されている地積によるものとし、登記簿に登記されていない土地については現況の地積によるものとする。
1. 登記簿に登記されている土地の登記簿に登記されている地積が現況の地積よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は、現況の地積によるものとする。
2. 登記簿に登記されている土地の現況の地積が登記簿に登記されている地積よりも大きいと認められ、かつ、登記簿に登記されている地積によることが著しく不適当であると認められる場合においては、当該土地の地積は、現況の地積によることができるものとする。」

 この固定資産評価基準にあるとおり、土地の面積を例外的に認める場合、2つの例外があります。

<登記簿主義の原則と例外>

 
① 登記簿地積>現況地積の場合(いわゆる「縄縮み」)
 この場合は「登記簿主義」の例外で、「現況の地積による」ことなります。ただし、申告が必要です。

② 登記簿地積<現況地積の場合(いわゆる「縄延び」)
 この場合は「地積差が著しい場合」で登記地積によることが著しく不適当な場合には例外で「現況地積によることができる」ことなります。

※「縄縮み」とは…中世から近世にかけて行われた検地の際に、年貢の負担を軽くするため、実際よりも長めに目盛りを記した縄を使って、地積を小さめに測量したことに由来しています。
※ 「縄伸び」とは…地主が小作人に小作料を多く納めさせるため、あるいは市街地で売買代金を高くすは「るために故意に公簿面積を大きくしたようです。

宅地の評価は「路線価方式」と「標準宅地比準方式」

 宅地の評価は、各筆の宅地を評価して評点数を求め、その評点数に評点1点当りの価額を乗じて求める方法です。

 その場合の宅地の評価方法としては、「市街地宅地評価法(路線価方式)」及び「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)」の2通りあります。

<宅地の評価方法>

<評点数の付設>-固定資産評価基準第3節宅地二
「各筆の宅地の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によつて、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によつて付設するものとする。ただし、市町村の宅地の状況に応じ必要があるときは、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地についても、「市街地宅地評価法」によつて各筆の宅地の評点数を付設することができるものとする。」

市街地宅地評価法(「路線価方式」)

 「市街地宅地評価法」は、主に都市部の住宅が密集した地域における、土地の固定資産評価に用いられるもので、「路線価方式」とも呼ばれています(以下「路線価方式」)。

 「路線価方式」は、道路1本ごとに価格(路線価)をつけ、1つの同じ道路に接する土地について、すべて同一路線価から計算する方法です。

 この「路線価方式」は、短時間に大量の土地評価ができること、評価後の価格に大きなばらつきが出ずに公平な課税が可能であること、地域ごとの評価バランスがとりやすいことなどの利点があります。

その他の宅地評価法(「標準宅地比準方式」)

 「その他の宅地評価法」は、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地の評価に適用されます(以下「標準宅地比準方式」)。

 具体的には、家屋の連たん度が低く「路線価方式」を適用する必要が認められない地域について適用される評価方法です。
 
2025/07/17/15:00
 

 

(第134号)「特定空家」指定による住宅用地の解除について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

「空家法」による「特定空家」

 平成27年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(「空家法)により「特定空家」として勧告を受けると住宅用地の減額特例の適用除外となりました。

<「特定空家」の定義>-「空家法」第2条2項
「2. この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

 ここで「特定空家」とは、次のように周辺への影響が大きい状態にある空家を指します。

① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

「管理不全空き家」としての指導・勧告

 また「空家法」では、「空き家」を放置すれば「特定空家」になる可能性がある物件を新たに『管理不全空き家』に指定され、管理指針に則した措置が「指導」されます。
 そして、この「指導」をしてもなお状態が改善しない場合には「勧告」が可能となります。

<「管理不全空家」の定義>「空家法」第13条
「1. 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2. 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。」

 ここまでくると「特定空家」の指定同様、固定資産税の住宅用地の減額特例が解除されることになります。

「特定空家」指定で住宅用地除外

 これに併せて、地方税法349条の3の2が改正され、固定資産税の住宅用地の特例から除外することとされました

<「住宅用地の課税標準特例」から除外>-地方税法第349条の3の2
「1. (中楽)空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第13条第1項に規定する管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。(中略)」

「空家」を取り壊すと土地は3~4倍となる

 「空家法」により「特定空家」に指定されるか、「管理不全空き家」として指導・勧告されると住宅用地の減額特例1/6が解除されます。

 ところで、一時マスコミ等で「『空家』が取り壊されると、1/6の減額特例が無くなるため土地の固定資産税は6倍となる」との報道がされていましたが、6倍にはなりません。

 それは、住宅用地から更地(非住宅用地)になった場合、非住宅用地の負担調整措置が適用されるからで、「空家」を取り壊すと土地の価格は3~4倍になるというのが正解なのです。

<住宅用地から非住宅用地へ>

 この図にあるとおり、住宅用地での固定資産税評価額は次のとおりです。

   固定資産税   都市計画税
  200,000円×1.4%+400,000円×0.3%=4,000円

 これに対して住宅を取り壊した場合には更地(非住宅用地)になりますので、固定資産税評価額は次のとおりになります。

 非住宅用地の据置ゾーンの下限(60%)を採用します。

 (固定資産税+都市計画税)
    720,000円     × 1.7% = 12,200円
   更地    宅地
  12,200円  ÷  4,000円  =  3.05倍
 この例では3.05倍で6倍であはありません。
 
2025/07/16/17:00
 

 

(第133号)土地の負担調整措置と住宅用地について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

負担調整措置で土地評価が複雑

土地の負担調整措置とは

 土地の時価(実勢価格)と固定資産税評価額は時代の経済変化によって、大きく変わってきました。

 昭和の初期頃には、固定資産評価額は時価の7割程度でしたが、昭和末期のバブル最盛期には10~20%程度へと低下していました。

 そこで、上記のとおり、平成元年に土地基本法が制定され、「公的土地評価の適正化」が図られ、固定資産税路線価を地価公示価格の7割とされました。

 しかし、一挙に10~20%程度から7割に引き上げる訳にはいかないため、徐々に引き上げる方法としました。

 土地の固定資産税・都市計画税(以下「固定資産税」)は、本来は価格に税率(一般的には固定資産税1.4%、都市計画税0.3%)を乗じて求めるのですが、現状はそのようにはなってはいません。

 土地(宅地)の固定資産税は、価格(本則課税標準額)に対する前年度課税標準額の割合(負担水準)に応じて、その年度の税額が決まる仕組み(負担調整措置)になっています。

 この負担調整措置の仕組みにより、土地の評価が分かりづらくなっているのです。

土地の負担調整措置の仕組み(非住宅用地の場合)

 非住宅用地(商業地等)の例としては、業務用家屋(店舗、事務所、工場、倉庫、旅館等)の敷地、外部貸駐車場(月極駐車場、コインパーキング、カーシェアリングやシェアサイクルの用地など)、資材置場、空地(=更地)、住宅建築中の土地等があげられます。

<商業地等とは>-地方税法附則第17条4項
「商業地等 宅地等のうち住宅用地以外の宅地及び宅地比準土地(宅地以外の土地で当該土地に対して課する当該年度分の固定資産税の課税標準となるべき価格が、当該土地とその状況が類似する宅地の固定資産税の課税標準とされる価格に比準する価格により決定されたもの)を言う。」

 平成6年度に地価公示価格の7割を固定資産税の価格とすることにしたものの、それまでは実質的に10%〜20%程度であったものを一気に上げることが出来ないことから、少しずつ上げていくという経過的措置(負担調整措置)が採用されました。

<負担調整措置の仕組み(非住宅用地)>

 
① 本則課税標準額=地価公示価格の70%
 まず、平成6年度から、固定資産税の価格は地価公示価格の70%とされましたので、この70%レベルを固定資産税の本則課税標準額100%=価格となります。

② 「引き下げゾーン」=本則課税標準額70%まで引き下げ
 しかし、これでは以前との乖離が大きいため、平成9年度から、更にその固定資産税価格の70%まで「引き下げゾーン」とされました。

 つまり、非住宅用途の固定資産税評価額価格の上限は、地価公示価格レベルからすると70%×70%=49%となります。

③ 「据置きゾーン」=60%~70%
 実は、バブルの時代は商業地の地価がかなり上がっていたことから、「据置きゾーン(60%~70%」が設定されています。つまり、前課税年度にこのレベルにあった非住宅用地は据え置かれることになっているのです。

 この「据置きゾーン」は、現在まで継続されています。

非住宅用地の負担調整措置の計算方法

 負担調整措置により、その年の課税標準額(今年度課税標準額)を求めるには、前年度の課税標準額(B)が本則課税標準額(A)のどこまで達しているかの負担水準(B/A)を求め、この負担水準によって調整します。

<非住宅用地の負担調整措置>

 
① 負担水準が20%未満の場合
 この場合は、価格(A)の20%となります。

② 負担水準が60%未満の場合
 この場合の今年度の課税標準額を求めるには、前年度課税標準額(B)にAの5%を加算します。

③ 負担水準が60%を超える場合
 負担水準が60%~70%の場合は前年度課税標準額(B)のままとし、70%を超える場合は70%まで引下げます。

住宅用地の負担調整措置と減額特例

住宅用地とはどのようなものか

 住宅用地とは、居住のための建物が存在し、居住の目的を果たすために使用されている一画地の土地を言います。

① 住宅用地の減額特例
 住宅用地のうち200㎡以下は「小規模住宅用地」と言い、固定資産税の本則課税標準額が1/6になります。

 また、面積が200㎡を超える部分は一般住宅用地と言い、本則課税標準額は1/3になります。

 例えば、300㎡の土地に居住用の家屋(戸建住宅)が建っている場合は、200㎡までが小規模住宅用地の1/6、残りの100㎡が一般住宅用地の1/3となります。
 なお、一般住宅用地1/3の上限は家屋床面積の10倍までとされており、この図の例では上限が1500㎡となります。

<戸建住宅の住宅用地>

 
② アパートは部屋ごとに適用
 住宅用地の特例は、アパートの場合は部屋ごとに特例率が適用されます。
 それは、1棟の家屋内に世帯が独立して生活を営む部分が2以上の場合は、区画された部分がそれぞれ住居となるからです。

 例えば、500㎡の土地に8戸(60㎡/戸)の2階建てアパートがあるとします。この場合は、1戸ごとに200㎡相当が1/6になりますので、8戸×200㎡=1,600㎡までが1/6になり、土地500㎡すべてが1/6になります。

<アパートの住宅用地>

 
 この仕組みによれば、仮に自宅以外の土地を所有している場合、そこをアパート敷地にすることにより、土地の固定資産税の減価額が大きくなります。

③ 住宅・非住宅混合の併用住宅の特例
 併用住宅とは、居住用部分と居住用でない部分が併用されている家屋ですが、居住用部分以外については、店舗、事務所、工場等その種類は問題とはなりません。ただし、併用住宅の場合は、居住部分の面積が一定の割合以上なければ特例は認められません。
 また、その家屋が「5階以上の耐火建築物」であるか「それ以外の併用住宅」かによって異なります。

<併用住宅の住宅用地>

 

小規模住宅用地の負担調整措置の仕組み

<小規模住宅用地の負担調整措置>

 
 小規模住宅用地の場合は、本則課税標準額(固定資産税の価格)が地価公示価格の70%からさらに1/6とされています.
 この1/6にされた価格が負担調整措置の本則課税標準額(A)となります。

① 負担水準(B/A)が20%未満の場合
 今年度課税標準額 = 本則課税標準額(A)×20%

② 負担水準(B/A)が100%未満の場合
 今年度課税標準額 = 前年度課税標準額(B)+(本則課税標準額(A)×5%)

③ 負担水準(B/A)が100%を越える場合
 本則課税標準額(A)に引き下げ

住宅用地は申告が無くても適用される

① 市町村毎の条例で申告が義務化
 ところで、住宅用地は、役所が把握しきれないことから、土地所有者に住宅用地かどうかを申告させることができるとされています。

<住宅用地の申告>-地方税法384条1項
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。」

 この地方税法の規定を受けて、ほとんどの市町村では条例により申告を義務づけています。

② 申告が無くても適用される(浦和地裁判決)
 ところが、住宅用地については、全国の市長村条例で申告が義務づけられていますが、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁により、「申告が無くても適用すべき」との判決が示されました。

<浦和地裁の判決(一部)>-平成4年2月24日
「固定資産税の賦課決定は、市町村長の納税義務者に対する納税通知書の交付によってされるのであって(地方税法第364条)、納税義務者からの申告によるものではないのであり、同法第384条第1項本文が、市町村長は、住宅用地の所有者に対して、当該市長村の条例の定めるところに従い、土地の所在及び面積等、固定資産税の賦課に関し必要な事項を申告させることができるとしたのは、納税義務者に対して右申告義務を課することにより課税当局において減税特例の要件に該当する事実の把握を容易にしようとしただけのものであって、右申告がないからといって、減税特例を適用しないとすることが許されるものではないことは課税の当局者にとっては見易い道理である。」
 
2025/07/16/09:00
 

 

(第132号)公的土地評価(一物四価)の均衡化について(更新版)

(更新版・令和7年7月)
 今回は「公的土地評価(一物四価)の均衡化について」です。

「一物四価」とは何か

 「一物四価」とは、土地を評価又は価値を指標化する際の4つの価格(評価価値)のことで、①時価(実勢価格)、②地価公示価格、③相続税評価額(路線価)、④固定資産税評価額(路線価)を指します。

(1)時価(実勢価格)

 時価(実勢価格)は、実際に売買する場合の土地の価格です。
 過去に売買が成立した際の価格や、近隣の土地の取引価格を参考にして決められてくるのが一般的です。

(2)地価公示価格

 地価公示価格は、毎年1月1日の価格を3月下旬頃に国土交通省により公表される土地の価格で、一般の土地取引価格の指標ともなっています。
 この価格は、地域における標準地の更地1㎡当りの正常な価格を不動産鑑定士による鑑定評価で評価されます。

(3)相続税評価額(路線価)

 相続税評価額は、土地の相続税や贈与税を計算する際の基準となる価格で、その年の1月1日時点での価格が毎年7月中旬頃に国税庁により公表されています。
相続税の路線価は、道路に面する宅地1㎡あたりの価格を基準に算出され、地価公示価格の80%の割合を目安に設定されています。
 なお、相続税路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に、国税庁が公表している倍率表に基づいた倍率を掛けて評価額を計算することになります。

(4)固定資産税評価額(路線価)

 固定資産税評価額は、固定資産税のみならず都市計画税、不動産取得税、登録免許税などを計算する際に基準となっています。

 固定資産税路線価は、各市町村が3年に一度、3月末までに前年の1月1日を基準にした価格の見直しの結果公表されています。

「一物四価」の均衡化

 この「一物四価」の価格はそれぞれ異なるのですが、一定のバランスが必要であることから、平成元年に土地基本法が制定され、第17条に「公的土地評価の適正化」規定があります。

<公的土地評価の適正化等>-地基本法第17条
「国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」

固定資産税価格は地価公示価格の7割

 この「公的土地評価について相互の均衡と適正化」を図るため、次の内容が定められました。
(1)地価公示価格(含む地価調査価格)を実勢価格を表示するように努めること。

(2)相続税路線価を地価公示価格の8割とすること。(平成4年度から実施)

(3)固定資産税路線価を地価公示価格の7割とすること。(平成6年度から実施)

<一物四価の均衡化・適正化>

 
2025/07/15/17:00
 

 

(第131号)固定資産税の「減免」・「課税免除及び不均一課税」・「免税点」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

固定資産税の「減免」とは

 「非課税」は市町村がそもそも「課税することが法律で禁止されている」制度でしたが、では、「減免」はどのような制度なのでしょうか。

 「減免」は、市町村で課税権が行使された後に、納税者の申請に基づき、担税力が薄弱なこと(納税資力が充分でない)等の理由により、税額の全部又は一部が免除される制度です。

 この減免規定の趣旨は、徴収猶予や納期限の延長等によっても納税が困難であると認められるような担税力が薄弱な者等に対する救済措置として設けられています。

<固定資産税の減免>-地方税法第367条
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 固定資産税の「減免」は、各市町村の条例により定められていますが、概ね次の3つの形態に基づき定められているのが一般的です。

①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
 震災、風水害、火災その他これらの災害があり、納税義務者がその財産について甚大な被害を被った場合など。

②貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
 生活保護の規定による保護等の公的扶助を受けている者、又は公的扶助に準じて考えられるような扶助を受けている者など。

③その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)
 ①②の事由以外の事由で、客観的にみて担税力を喪失した者、公益上の必要があると認められる者など。

 「減免」内容は各市町村の条例で規定されていますので、若干条例内容が異なりますが、上記①~③の基本的事項は適用されています。

固定資産税の「課税免除及び不均一課税」

「課税免除及び不均一課税」とは

 地方税法には、「非課税」「減免」のほかに「課税免除及び不均一課税」という制度があります。

 「課税免除及び不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目した上で、「課税免除」は市町村(条例)による非課税とも言うべきもので、「不均一課税」は一般の税率と異なる適用をすることです。

<公益等に因る課税免除及び不均一課税>-地方税法第6条
「1 地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。
2 地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」

 この第1項の「課税免除」は「減免」と似ていますが、「減免」は一旦賦課決定されたものに対してですが、「課税免除」は市町村の条例・議会の議決により単独で判断・決定されます。また、第2項の「不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目したものです。

「課税免除及び不均一課税」の適用例

 では「課税免除」が適用されている例ですが、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」や「地域未来投資促進法」に基づき適用している市町村があります。

 また「不均一課税」では、「国際観光ホテル整備法」や(県税による)「半島振興法における固定資産税の不均一課税」などがあります。

固定資産税の免税点

 同一の人が所有するすべての土地の課税標準額、家屋の課税標準額、償却資産の標準額の合計額がそれぞれ次の値に満たない場合は、固定資産税は課税されません。

<固定資産税の免税点>-地方税法第351条
「市町村は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る土地、家屋又は償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が土地にあつては30万円、家屋にあつては20万円、償却資産にあつては150万円に満たない場合においては、固定資産税を課することができない。ただし、財政上その他特別の必要がある場合においては、当該市町村の条例の定めるところによつて、その額がそれぞれ30万円、20万円又は150万円に満たないときであつても、固定資産税を課することができる。」

<固定資産税の免税点>

 
2025/07/15/09:00