(第145号)固定資産税の償却資産は「申告課税方式」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 これまで、市町村が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」としての土地及び家屋を解説していますが、固定資産税には、もうひとつ「申告課税方式」の償却資産があります。

 ところで、償却資産と言いますと、よく国税(法人税等)の「減価償却」と間違われる場合がありますが、固定資産税の償却資産は、「地方税の固定資産税の一種(償却資産)」であります。

 固定資産税の償却資産は、固定資産税全体(土地・家屋・償却資産)の税収の中でどの程度の割合を占めているかについてですが、令和5年度決算ベースで、償却資産は19.3%となっています。

地方税法上の償却資産とは

(1)償却資産とは

 地方税法において、償却資産は次のとおり定義されています。

<償却資産とは>-地方税法第341条第4項
「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものをいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

(2)償却資産の課税客体

 固定資産税の課税客体である償却資産とは、次の要件を備えるものとされています。

土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(事業用資産)であること。

その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるものであること。

鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産でないこと。

取得金額が少額である資産その他の政令で定める資産(少額償却資産※)でないこと。
 ※「少額償却資産」とは…耐用年数1年未満又は取得額が10万円未満のもので一時に損金又は必要な経費に算入されるもの、及び取得額が20万円未満のもので3年間で一括して損金又は必要な経費に算入されるもの。

自動車税の課税客体である自動車及び軽自動車税の課税客体である軽自動車等でないこと。

償却資産の申告制度

(1)償却資産の納税義務者

 固定資産税は、原則としてその年の1月1日(賦課期日)現在における固定資産の所有者に課税されます。

(2)償却資産の申告

 償却資産を所有する者は、毎年1月1日(賦課期日)現在の内容について、1月31日までに資産の所在する市町村に申告をする必要があります。

(3)償却資産の免税点

 同一の市町村に所在する償却資産の課税標準の合計額が150万円(免税点)を下回る場合は課税されません。

(4)課税客体から除かれる資産

 次の資産は償却資産の課税客体から除かれます。
自動車税、軽自動車税の課税対象となる資産
無形固定資産(ソフトウェア、特許権、電話加入権、営業権など)
繰延資産(創立費、開業費、開発費など)
商品・貯蔵品(販売目的として保有されている棚卸資産)

償却資産の種類

 業種別の主な償却資産は、次のとおりです。

<業種別の主な償却資産>

家屋と償却資産の課税区別

 家屋の建築設備の中にも、家屋に含めず、償却資産として取り扱うものがあり、判定の困難な場合も多く、中には家屋と償却資産が二重に課税されている課税誤りもあります。

 家屋は所有者の申告によらず役所が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」ですが、償却資産は申告により課税される「申告課税方式」であることも課税誤りの原因の一つと思われます。

(1)家屋の所有者が所有するもの

 「家屋の所有者が所有する」とは、家屋の所有者がその建築設備の所有権を有するものであることとなります。

 なお、家屋の所有者以外の者によってその家屋に取り付けられたものであっても、民法第242条の「不動産の付合」により、家屋の所有者がその取り付けられたものの所有権を取得した場合も該当します。

<不動産の付合>-民法第242条
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその附属させた他人の権利を妨げない。」

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

<みなし償却資産課税制度>-地方税法第343条10項
「 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

(2)家屋の建築設備と償却資産

 次に、建築設備で「家屋に含めるもの」と「償却資産とするもの」の例を掲げます。
 「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。

 よく見られる家屋と償却資産の二重課税のケースは、賦課課税である家屋として評価計算されているにも拘わらず償却資産として申告されている場合です。この場合、家屋を評価する担当者と償却資産を担当する担当者が異なる場合があることから、二重評価に気づかず課税され続けている、ことが考えられます。

<家屋の建築設備と償却資産>

 
2025/07/30/16:00
 

 

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