(投稿・令和4年9月-見直し・令和5年6月)
償却資産については、第31号「固定資産税の償却資産とは(基本編)」と第66号「家屋と償却資産の二重課税(課税誤り)に注意(「建築設備」の場合)」で、お知らせしてきました。
今回は、「建築設備」以外の家屋と償却資産との区分について解説します。
ページコンテンツ
家屋と償却資産の区別
まず「建築設備以外の家屋と償却資産の区別」表を掲げます。
「建築設備以外の家屋と償却資産の区別」
「建築設備」以外の家屋については、「建築設備」と償却資産の二重課税と比較すると課税誤りは少ないと思われますが、むしろ逆に、その部分が固定資産税の償却資産に該当することに気がついていない=「無申告」の場合が多いのではないかと推測されます。
償却資産の定義と範囲
固定資産税の償却資産とは何かについては、第50号で説明していますが、改めて確認しておきます。
<固定資産税の償却資産とは>
「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額(又は減価償却費)が法人税法(又は所得税法)の規定による所得の計算上損金(又は必要な経費)に算入されるもののうち、その取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものをいう(中略)」
(1)「事業の用に供する」とは
①「事業」とは
一定の目的のために一定の行為を継続、反復して行うことをいうものであって、必ずしも営利又は収益そのものを得ることを直接の目的とするものである必要はありません。
②「事業の用に供する」とは
その本来業務に直接使用するもののみならず、その事業について直接であると間接であるとを問わず使用される資産で税務会計上減価償却できるものであれば、償却資産として課税客体となります。
※(例)企業の福利厚生施設(医療施設、食堂施設、寄宿舎、娯楽施設等)等
(2)「事業の用に供することができる」とは
「事業の用に供することができる」とは、現に事業の用に供している資産が含まれることはもちろん、事業の用に供する目的をもって所有され、かつ、それが事業の用に供することができると認められる状態にあれば足ります。
※「遊休・未稼働資産」…いつでも稼働し得る状態にあるものは課税客体となる。
※「用途廃止資産」…解体等されていないだけで、今後も使用されないものは課税客体とはならない。
(3)「損金(又は必要な経費)に算入されるもの」とは
その減価償却費が現に損金(又は必要な経費)に算入されない資産であっても、本来損金(又は必要な経費)に算入されるべき性格のものであれば課税客体となります。
※(例)簿外資産、償却済資産、建設仮勘定中の資産で事業の用に供している資産等
家屋の詳細定義と償却資産
一般的には、償却資産は家屋に該当するか否かについて判断しますが、固定資産税の家屋の詳細定義は地方税法には無く、不動産登記事務取扱手続準則に準じて判断するものとされています。
そこで、不動産登記事務取扱手続準則第77条(建物認定の基準)を掲げます。
<建物認定の基準>
「建物の認定に当たっては、次の例示から類推し、その利用状況等を勘案して判定するものとする。
一 建物として取り扱うもの
ア.停車場の乗降場及び荷物積卸場。ただし、上屋を有する部分に限る。
イ.野球場又は競馬場の観覧席。ただし、屋根を有する部分に限る。
ウ.ガード下を利用して築造した店舗、倉庫等の建造物
エ.地下停車場、地下駐車場又は地下街の建造物
オ.園芸又は農耕用の温床施設。ただし、半永久的な建造物と認められるものに限る。
二建物として取り扱わないもの
ア.ガスタンク、石油タンク又は給水タンク
イ.機械上に建設した建造物。ただし、地上に基脚を有し、又は支柱を施したものを除く。
ウ.浮船を利用したもの。ただし、固定しているものを除く。
エ.アーケード付街路(公衆用道路上に屋根覆いを施した部分)
オ.容易に運搬することができる切符売場又は入場券売場等
なお、地方税法取扱通知第3章(固定資産税)第1節(通則)第1(課税客体)3には、次のようにあります。
「事業用家屋であってその家屋の全部又は一部がそれに附接する構築物とその区分が明瞭でなく、その所有者の資産区分においても構築物として経理されているものについては、その区分の不明確な部分を償却資産として取り扱うことが適当である。」
2022/09/09/13:00