(67号)「相続登記の義務化」で所有者不明土地と固定資産税はどうなるか

(第1回目投稿:令和3年、第2回目見直し:令和4年6月)

 所有者不明土地・家屋については、第47号「所有者が不明の土地・家屋の固定資産税」及び第64号「所有者不明土地・家屋の関連法の改正」で解説してきました。

 固定資産税の納税義務者は、原則として登記記録上の所有者ですが、当該所有者が死亡している場合には「現に所有している者」(通常は相続人)となります。納税義務者が死亡し、相続登記がなされない場合、新たな納税義務者となる「現に所有している者」を市町村が自ら調査し、特定する必要があり、当該調査に多大な時間と労力を要し、迅速・適正な課税に支障が生じています。

 これまで、地方税法の改正により、所有者不明の固定資産税(土地・家屋)については、①現に所有している者(相続人等)の申告の制度化(地方税法第384条の3)②使用者を所有者とみなす制度の拡大(同法第343条5項)が創設されました。(第64号で条文とともに説明してあります。)

 残る課題は所有者不明土地の一番の要因となっている「相続登記が義務化されていない」ことですが、令和3年4月28日に「民法等の一部を改正する法律(民法等一部改正法)」の中で不動産登記法改正が公布されたことにより、相続登記の義務化等が具体化してきました。この公布後3年以内に関係法が施行されますので、これまで固定資産税の課税にとってマイナス要因となっている所有者不明の土地・家屋問題が解消されていくことが期待されます。

 なお今回の不動産登記法の改正では、「相続登記申請の義務化」とともに、「住所変更登記等の義務化」も制度化されています。また、所有者不明土地の発生を抑制するため、相続又は遺贈により土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させる制度(「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」)も創設されましたので説明いたします。

所有者不明土地の問題

 これまでの繰り返しになりますが、所有者不明土地とは、国土交通省によると「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」とされています。
 また、相続が発生しても、それに伴って相続登記がされない原因としては、①相続登記の申請が義務とされておらず、かつ、その申請をしなくても相続人が不利益を被ることがない②相続をした土地の価値が乏しく、売却が困難である場合には、費用や手間を掛けてまで登記の申請をするインセンティブが働きにくい等があげられます。
 平成29年国土交通省の調査によると、所有者不明土地の割合は22%あり、その原因として「相続登記の未了」が66%で「住所変更登記の未了」が34%となっています。

不動産登記法の改正-所有者不明土地

相続登記申請の義務化(3年以内に施行)

 相続登記申請の義務化に関する不動産登記法の改正は、次の2点になります。なお、この相続登記申請の義務化は、不動産登記法改正の公布後3年以内に施行されることになります。
 (1) 不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける。(不動産登記法第76条の2)
 (2) 正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処することとする。(同法第164条第1項)

※「不動産登記法」(新)第76条の2及び第164条第1項
(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第76条の2 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
(過料)
第164条1項 (中略)第76条の2第1項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処する。

住所変更登記等の申請の義務化(5年以内に施行)

 所有権の登記名義人が住所等を変更してもその登記がされない原因としては、①住所変更登記等の申請は任意とされており、かつ、変更しなくても大きな不利益がない②転居等の度にその所有する不動産についてそれぞれ変更登記をするのは負担であること等があります。
 住所変更登記等の申請の義務化は、次の2点になります。なお、この制度の施行は公布後5年以内とされています。
 (1) 所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付ける。(同法76条の5)
 (2) 正当な理由がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処することとする。(同法第164条第2項)

※「不動産登記法」(新)第76条の5及び第164条第2項
(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記の申請)
第76条の5 所有権の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所について変更があったときは、当該所有権の登記名義人は、その変更があった日から2年以内に、氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記を申請しなければならない。
(過料)
第164条2項 第76条の5の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、5万円以下の過料に処する。

相続人申告登記の創設

 相続が発生した場合、遺産分割の協議や書類の収集等、登記申請に当たっての手続きの負担が大きいことから、相続人の申請義務を簡易に履行することができるようにする、新たな相続人申告登記が設けられました。
 その内容は、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなされます。

※「不動産登記法」(新)第76条の3
(相続人である旨の申出等)
第76条の3 前条第1項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第1項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第1項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第1項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第1項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第1項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

土地所有権を国庫に帰属させる制度

 「不動産登記法」とは別に、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(「相続土地国庫帰属法」)が創設されました。
 相続した土地を、法務大臣に申請し承認を得た上で国庫に帰属させることができるようになります。土地を所有し続ける負担が大きく、手放したいと思ったときに国有地にしてもらう制度です。
 但し、承認申請する土地が①更地であること②担保権の設定が無いこと③境界に争いが無いこと等が必要です。(相続土地国庫帰属法第2条)
 なお、要件審査を受けて法務大臣の承認を受けた者は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金(詳細は政令で規定)を納付する必要があります。(同法第10条)

※「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(新)第2条
(承認申請)
第2条 土地の所有者( 相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る 。)は 、法務大臣に対し 、そ の土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる 。
2 士地が数人の共有に属する場合には 、前項の規定による承認の申請(以下「 承認申請」という 。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り 、することができる 。この場合においては 、同項の規定にかかわらず 、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても 、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して 、承認申請をすることができる 。
3 承認申請は 、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない 。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている士地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法第11条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるも のに限る 。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない士地その他の所有権の存否 、帰属又は範囲について争いがある土地
(負担金の納付)
第10条承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

 国有地になるとしても、国が買い取るのではなく、逆に手数料を支払う制度ですので、ご注意ください。