(86号)「物的(用途)非課税」の例(3)-「宗教法人の境内建物と境内地」「墓地」(「納骨堂」は不可)

(投稿・令和4年10月)

 固定資産税の非課税については、第13号「固定資産税が課税されない非課税制度とは」で紹介しています。

 「物的(用途)非課税)」については、地方税法で69項目が列挙されています(「物的(用途)非課税一覧表」(PDF)参照)が、今号では、そのうちの「宗教法人の境内建物及び境内地」及び「墓地」について紹介します。

 また、「納骨堂」は「宗教法人の境内建物及び境内地」に該当するのかについてもみていきます。

 

「宗教法人」「墓地」に関する関係法令

「宗教法人」の非課税の範囲

 「宗教法人」及び「墓地」の固定資産税の非課税の範囲は、地方税法348条2項三、四に規定されています。

<「宗教法人の境内建物及び境内地」「墓地」の非課税>
※地方税法348条2項三及び四
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
……………
三.宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む。)
四.墓地 」

 また都市計画税についても、同法702条の2第2項「市長村は法348条2項の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することができない」旨の規定があります。

宗教法人法の規定

 では、宗教法人法による(1)宗教団体の定義、(2)境内地建物及び境内地の定義、(3)公益事業その他の事業、に関する規定はどうなっているかです。

(1)宗教団体の定義
 宗教団体の定義は、宗教法人法2条に規定があります。

<宗教団体の定義-宗教法人法2条>
「この法律において「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。
一 礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体
二 前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体」

 また、同法4条には法人格の定義があります。
「1. 宗教団体は、この法律により、法人となることができる。
2.この法律において「宗教法人」とは、この法律により法人となつた宗教団体をいう。」

(2)境内地建物及び境内地の定義
 境内地建物及び境内地の定義は、宗教法人法3条に規定があります。

<境内建物及び境内地の定義-宗教法人法3条>
「この法律において「境内建物」とは、第一号に掲げるような宗教法人の前条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の建物及び工作物をいい、「境内地」とは、第二号から第七号までに掲げるような宗教法人の同条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいう。
一.本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)
二.前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地(立木竹その他建物及び工作物以外の定着物を含む。以下この条において同じ。)
三.参道として用いられる土地
四.宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地(神せん田、仏供田、修道耕牧地等を含む。)
五.庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
六.歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
七.前各号に掲げる建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地」

(3)公益事業その他の事業
 宗教法人法6条には、宗教法人は公益事業を行うことができる旨の規定があります。

<公益事業その他の事業-宗教法人法6条>
「1.宗教法人は、公益事業を行うことができる。
2.宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。」

 以上、宗教法人法の規定を紹介してきましたが、では、次の図のようなお寺の駐車場はどうでしょうか。
 この駐車場は参詣者用ですので、お寺の宗教法人が「もっぱらその本来の用に供する土地」として非課税となります(但し、有料ではないことが必要です)。

 

「墓地」の非課税の範囲

 上記のとおり、地方税法348条2項四には、固定資産税の非課税として「墓地」が規定されていますが、この348条2項四では運営主体や条件の規定はなく単に「墓地」とだけ規定されているのみです。

 固定資産税の物的(用途)非課税は、これらの固定資産が供されている用途の特質にかんがみ非課税とされているもので、原則としては(規定で所有者及び固定資産が特定されていない場合は)、所有者が誰であろうと非課税とされます。

納骨堂に関する非課税の適否

 納骨堂とは、「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事を受けた施設」をいいます(墓地、埋葬等に関する法律2条6号)

平成28年5月24日東京地裁判決

 近年では、お墓に埋葬するのではなく、納骨堂を利用する傾向が多く見られますが、平成28年5月24日の東京地裁判決において、この納骨堂に関係する判決が出されています。

 この訴訟は、宗教法人が納骨堂として使用している土地及び建物が、固定資産税が非課税となる「境内建物及び境内地」に当たるかどうかが争われたものですが、原告の宗教法人が被告・課税庁(東京都)に敗訴したという内容です。

 東京都は、寺務所、本堂、庫裏等は非課税としましたが、参拝堂、納骨堂、客殿等の建物部分及びこれに対応する土地面積相当分については固定資産税を課税する賦課決定処分をしました。

 そして、東京地裁は、この東京都の賦課決定処分を認めました。
 つまり、納骨堂は「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地には該当しない」と判断された訳です。

<平成28年5月24日東京地裁判決(一部)>
「(本件非課税対象外部分)の使用状況を,一般の社会通念に基づいて外形的,客観的にみると,原告は,本件非課税対象外部分につき,A宗の教義をひろめ,儀式行事を行い,信者を教化育成するという主たる目的のために使用していないとはいえないが,当該目的のために必要な,本来的に欠くことのできない建物の一部であると評価することにはやや困難がある。また,仮にそのような評価が可能であるとしても,本件納骨堂の使用者については宗旨宗派を問わないとされているのみならず,本件建物においては,原告以外の宗旨宗派の僧侶等が主宰する法要などの儀式行事が行われることが許容され,その場合,使用者は原告に対して施設使用料を支払うこととされ,実際にも,それが例外的とはいえない割合で行われており,原告は,上記のような使用者を訴外会社を通じて広く募集していることに照らすと,原告が,上記の各部分(本件非課税対象外部分)を,専ら,宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるとは認められないといわざるを得ない。」

 

納骨堂に関する若干の検討

 正直なところ、宗教法人法で公益事業を認めているにも拘わらず、ここまで厳しく判断されるのか、と驚きました。

 本件の対象となっている納骨堂及びその利用は今後も増加することが予想されますが、348条2項四「墓地」と比較すると、348条2項三の「宗教法人の境内建物及び境内地」の規定は、たしかに議論を呼びやすい内容ではあります。

 このような事態を明確にするためにも、「墓地」のみではなく、「納骨堂」をいかに位置づけるか等、固定資産税の物的(用途)非課税の規定を見直す時期にあるのではないでしょうか。
 
2022/10/30/19/12