(第142号)固定資産税の家屋の定義と要件について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、 固定資産税の家屋の定義と要件についてです。

固定資産税の家屋とは

家屋の歴史

 固定資産税としての家屋は、昭和24年にシャウプ勧告が出されて、昭和25年に地方税法が制定され、そこで市町村税として土地、償却資産とともにスタートしました。

 それ以前は、明治15年に家屋税が大府県(東京、大阪、京都、神奈川)に対して創設され、明治21年にこれらの府県の市町村に家屋税付加税が、その後明治23年に全国で課税されるに至っています。

家屋の定義

 固定資産税の家屋は、不動産登記法における建物と意義を同じくする、とされています。

<地方税法の施行に関する取扱について>-総務省通知(市町村税関係)
「 家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること。」

 そこで、「不動産登記法上の建物」についてみていきます。

<建物の種類(12種類)>-不動産登記規則113条1項
「 建物の種類は、建物の主な用途により、居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所に区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。」

<建物の種類の定め方(25種類)>-不動産登記事務取扱手続準則第80条1項
「 規則第113条第1項に規定する建物の種類の区分に該当しない建物の種類は、その用途により、次のように区分して定めるものとし、なお、これにより難い場合には、建物の用途により適当に定めるものとする。
校舎、講堂、研究所、病院、診療所、集会所、公会堂、停車場、劇場、映画館、遊技場、競技場、野球場、競馬場、公衆浴場、火葬場、守衛所、茶室、温室、蚕室、物置、便所、鶏舎、酪農舎、給油所」

固定資産税家屋としての要件

 固定資産税の課税客体となる家屋の認定に当たっては、次の(1)から(6)の要件が必要とされています。

(1)屋根を有すること(外気分断性)

 屋根は、雨露をしのぐために必要不可欠です。不動産登記規則111条では「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること(外気分断性)」とあります。

 ただし、高架下の建造物については、家屋として評価すべき屋根はないものの、屋根に相当する構築物があるため家屋として取り扱われます。

(2)周壁を有すること

 家屋は、周壁により内側に一定の利用空間が発生し、外気分断性が有るものと判断されます。

 ここで周壁を有するとは、概ね3面以上に周壁がある(その面の3分の2程度以上の部分に壁があることをもってその面は周壁を有する)ことをいいます。

(3)土地に定着した建造物であること(土地への定着性)

 土地に定着した建造物であるということは、建造物が建造されている土地から容易に移動できないことをいいます。

 土地に定着している建造物は、次の2つの要件を充足していることが必要です。
① 建物の大きさ、重さ、構造、基礎の施工の程度、 建築設備の状況により物理的または経済的に他の場所に移動させて利用することが容易でないこと。
② 建物の用途、目的からしてある程度の期間(通常賦課期日をはさんで1 年以上)継続し利用することが予定されていること。

(4)家屋本来の用途に供しうること(用途性)

 家屋本来の目的は、その空間を居住、作業、貯蔵、営業、保管等の用途に供しうるものでなくてはなりません。

 例えば、アーケードは、道路の用途を高めるものであって家屋本来の目的とは異なるので家屋とは認定できません。

(5)恒久性を有すること

 不動産登記法準則第77条に「半永久的な建造物と認められるものに限る」とあるように、家屋は、恒久性を有することが必要です。

 なお、家屋として認定しないものを例示すると次のものがあります。
① 園芸用ハウス(温室)で屋根、周壁がビニール・シートのもの
② ビニール・シート等で葺き上げた車庫
③ 簡易な鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等

(6)賦課期日に完成していること

 なお、家屋の要件とは異なりますが、建築中の建物がどの程度まで完成していれば家屋の課税対象となるかについては、昭和59年の最高裁判決により「固定資産税の性質目的及び地方税法の規定の仕方からすれば、新築の家屋は、一連の新築家屋が完了したときに、固定資産税の課税客体となる」とされ、1月1日現在で完成していることが必要となります。
 
2025/07/27/14:00
 

 

(第141号)固定資産税の雑種地の評価について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税での雑種地の評価についてです。

固定資産評価基準の雑種地

 雑種地は、(1)「ゴルフ場等用地の評価」、(2)「鉄軌道用地の評価」及び(3)「その他の雑種地」とされています。

<雑種地の評価>-固定資産評価基準・第10節一
「 雑種地の評価は、二(ゴルフ場等用地の評価)及び三(鉄軌道用地の評価)に掲げる土地を除き、雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものとする。ただし、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

<雑種地評価の一覧>

(1)「ゴルフ場等用地」の評価について

 「ゴルフ場等用地」の評価は、ゴルフ場を開設するに当たり要した土地の取得価額に、ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準として、ゴルフ場の位置、利用状況等を考慮して求めます。

 なお、クラブハウスの敷地は宅地と認定されます。

 ゴルフ場用地の評価額 = (ゴルフ場用地の取得価額 + ゴルフ場の造成費)×位置・利用状況による補正

(2)「鉄軌道用地」の評価について

 「鉄軌道用地」の評価は、沿接する土地の価額」の3分の1で評価します。

 鉄軌道用地の評価額=沿接する土地の価額×1/3

 ここで「沿接する」との意味は、「近接する」や「附近の」とは異なります。「沿接する」とは、まさに直接接していることで、線路敷地に直接接している状態にあることになります。

 なお、鉄軌道用地が「運送の用に供する部分」と「運送以外の用に供する部分」と複合的に利用されている土地の評価については、複合利用鉄軌道用地として評価します。

<複合利用鉄軌道用地の評価>

(3)「その他の雑種地」の評価

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、①雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法及び②市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法、の2通りとなっています。

① 売買実例地比準方式

 市町村内に雑種地の売買実例価額がある場合は、その売買実例価額から評定する適正な時価によってその評価額を求めます。

<売買実例地比準方式>

② 近傍地比準方式

 市町村内に雑種地の売買実例価額がない場合は、当該雑種地の位置、利用状況等を考慮し、付近の土地の価額に比準してその評価額を求めます。

<近傍地比準方式>

③ 「その他の雑種地」は近傍地比準方式が多い

 「その他の雑種地」の評価方法として、多くの市町村では②の近傍地比準方式により評価されているのが実際のところです。

 ところで、「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 つまり、「その他の雑種地」は雑種地の評価の中心です。

「太陽光パネル設置用地」の評価

 「太陽光パネル設置用地」は雑種地のうちの「その他の雑種地」に当たります。

 また、その評価方法は、ほとんどの市町村で「近傍地比準方式」が採用されています。

(1)「その他雑種地」の「近傍地比準方式」

 「近傍地比準方式」は、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法です。

① 比準元の選定
 「太陽光パネル設置用地」の比準元の選定においては、「土地の位置、利用状況等」を考慮する必要があります。

 土地の位置については、「附近の土地」ですが、必ずしも接続する路線価でなくても良く、社会通念として「近い」と解される範囲内であれば良い訳です。

 利用状況については、附近に類似の雑種地があれば、その雑種地の選定で良いのですが、全国の「太陽光パネル設置用地」のうち9割弱の土地の評価において、比準元となる「附近の土地」が宅地とされています。

② 宅地間比準(比準の第一段階)
 この方法は、比準元を宅地とした場合、「太陽光パネル設置用地」は本来は雑種地です、一旦そこを宅地と想定し、宅地同士の比準を行います。

 その比準は、通常の宅地評価で考慮される要素である地域的格差及び個別的格差を比準することになります。

③ 地目間比準(比準の第二段階)
 次に、宅地と「その他の雑種地」の間における格差、すなわち、同位置・同形状の土地に係る地目間の格差を反映するための比準となります。

 この場合、評価対象地である「その他の雑種地」が宅地となるべき要素として、造成費相当額が主なものとなります。つまり、想定された宅地としての価格から造成費相当額を控除して求めることになります。
(※ 市町村によっては、造成費相当額ではなく、一定の比準割合を設定して適用する方法も多く行われています。)

(2)「太陽光パネル」には償却資産が課税

 以上のとおり、「太陽光パネル設置用地」は土地で地目は雑種地のなかの「その他の雑種地」となりますが、「太陽光パネル」自体には償却資産が課税されています。

 なお、この「太陽光パネル」の償却資産の評価・課税については、市町村単位で「わが町特例」による減額特例が適用されています。

(3)「わが町特例」とは

 「わがまち特例」は、地方税法の定める範囲内で市長村が特例率を条例で定めることができる仕組みとして、平成24年度の税制改正により導入されています。

 「わがまち特例」は、法律に基づき、国が市長村に対して特例措置の実施を求める場合であっても、市長村の裁量を認めた方が効果的な特例措置については、全国一律の特例措置ではなく、法律の定める範囲で、市長村が特例措置の内容を条例で定めることができる仕組みです。

 太陽光発電施設は土地だけでなく、土地上に設置されている太陽光パネル等が償却資産として課税されていて、償却資産の特例措置として「わがまち特例」が導入されています。
 
2025/07/25/16:00
 

 

(第140号)固定資産税の山林(一般山林、介在山林)評価について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税の山林評価についてです。

固定資産評価基準における山林

 山林の評価については、固定資産評価基準の第1章第7節により次のように定めらており、一般山林と介在山林の2種類からなります。

<山林の評価>-固定資産評価基準第1章第7節
「 山林の評価は、各筆の山林について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の山林の価額を求める方法によるものとする。
ただし、宅地、農地等のうちに介在する山林及び市街地近郊の山林で、当該山林の近傍の宅地、農地等との評価の均衡上、上記の方法によって評価することが適当でないと認められるものについては、当該山林の均衡の宅地、農地等の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

※ この基準で、前半の部分が一般山林で、後半の但し書き部分が介在山林です。

一般山林の評価

 一般山林とは、介在山林以外の山林で、林業経営が継続されることを前提に山林としての生産力に着目して評価します。

 一般山林の評価は、おおまか次の流れにより行います。

状況類似地区の区分

 状況類似地区の区分にあたっては、地勢、土層、林産物の搬出の便等を基準として、概ねその状況が類似する地区ごとに区分します。

標準山林の算定

 標準山林は各状況類似地区ごとに、位置、地形、土層、林産物の搬出の便等の状況からみて比較的多数所在する山林のうちから、一つの山林を選定します。
 一般的には、状況類似地区の中央部に位置し、最も多い林相を示す山林が選定されます。

標準山林の評点の付設

 標準山林の評点数は、その標準山林が所在する状況類似地区内における売買実例価額から評定する適正な時価に基づいて付設します。

山林の比準表の適用

 各筆の山林の評点数を付設する際に、標準山林との状況の差を比較考慮し固定資産評価基準に定められている「山林の比準表」を適用して評点数を補正します。

各筆の山林の評点数の付設

 各筆の山林の評点数は、まず、標準山林の単位地積当たりの評点数に、「山林の比準表」(別表第7の1)によって求めた各筆ごとの比準割合を乗じて、各筆の単位地積当たりの評点数をもとめ、これに当該筆の地積を乗じて、各筆の山林の評点数を求めます。

介在山林の評価

 介在山林とは、宅地・農地等のうちに介在する山林や市街地近郊の山林で、一般山林の評価方法によって評価することが適当でない山林をいいます。

「路線価方式」に所在する山林評価

 「路線価方式」が適用されている地域に所在する介在山林の場合は、路線価を基に画地計算を行い、介在山林が宅地であったとした場合の価額を求め、この価額から宅地転用にあたって通常必要と認められる造成費相当額を控除して評価額を算定します。

「標準宅地比準方式」に所在する山林評価

 「標準宅地比準方式」が適用されている地域に所在する介在山林の場合は、当該介在山林の付近の宅地から、立地条件や画地の状況が類似している宅地を選び、介在山林が宅地であったとした場合の価額を求め、この価額から宅地転用にあたって通常必要と認められる造成費相当額を控除して評価額を算定します。

介在山林の傾斜角度等の比準割合から求める方法

 市町村によっては、上記の造成費相当を控除する方法ではなく、介在山林の傾斜角度等から比準割合を定めている場合もあります。

 その場合の具体的評価方法は、当該市町村の「固定資産評価事務取扱要領」により定められています。

 ここにY市の介在山林の比準割合を紹介します。

<介在山林の比準割合(例)>

緑地保全による固定資産税の減免

「都市緑地法」による特別緑地保全地区

 特別緑地保全地区は、都市緑地法第12条に規定されており、都市計画区域内において、樹林地、草地、水沼地などの地区が単独もしくは周囲と一体になって、良好な自然環境を形成しているもので、無秩序な市街化の防止や、公害又は災害の防止となるもの、伝統的・文化的意義を有するもの、風致景観が優れているもの、動植物の生育地等となるもののいずれかに該当する緑地が、指定の対象となります。

 この地区に指定されると、固定資産税評価額が最大2分の1まで減額される優遇措置があります。

市町村による緑地保全制度と山林の買取り

 自治体によっては、緑地を保全するための条例が制定され、市街化区域、市街化調整区域の一定以上の樹林地を保存する施策が展開されています。この制度の優遇措置の一つとして、固定資産税(都市計画税)の減免があります。

 また自治体によっては、一定の要件に合う山林を買い取る制度もあります。例えば、横浜市では「横浜緑アップ計画」による買取制度があります。

 これは、あくまでも自治体の条例による制度ですので、当該の自治体にご相談ください。
 
2025/07/23/16:00
 

 

(第139号)農地(田及び畑)は主に「一般農地」と「市街化区域農地」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、農地(田及び畑)は主に「一般農地」と「市街化区域農地」についてです。

田及び畑の評価上の分類

 田及び畑の評価方法については、評価基準では「一般農地」「市街化区域農地」「宅地等介在農地」「勧告遊休農地」の4つに分類し、それぞれの評価方法を示しています。

<農地(田・畑)の種類>

(1)一般農地

 一般農地とは、農地のうち宅地等介在農地、市街化区域農地及び勧告遊休農地を除いた農地をいいます。

(2)宅地等介在農地

 宅地等介在農地とは、次に掲げる農地をいいます。

① 農地法第4条第1項及び第5条第1項の規定により、宅地等への転用許可を受けた田及び畑。
② 農地法第4条第1項及び第5条第1項による届出のみを行い許可を受けることを必要としない田及び畑で宅地等への転用が確実と認められる田及び畑。
③ その他の田及び畑で宅地等への転用が確実と認められる田及び畑。

(3)市街化区域農地

 市街化区域農地とは、都市計画法第7 条第1項に規定する市街化区域内にある農地をで、おおむね10年以内に宅地化する農地をいいます(評価基準第1章第2 節の2 )。

(4)勧告遊休農地

 勧告遊休農地とは、農地のうち農地法第36条第1項の規定により、農業委員会から農地中間管理機構による農地中間管理権の取得に関し当該農地中間管理機構と協議すべき旨の勧告があった農地をいいます。

一般農地(田・畑)の評価及び課税

一般農地の評価

 一般農地の評価の流れは、次のとおりとなります。

<一般農地の評価の流れ>

1)状況類似地区の区分

 状況類似地区の区分に当たって、「地勢、土性、水利等の状況を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる田又は畑の所在する地区ごとに区分するものとする。この場合において、状況類似地区は、小字の区域ごとに認定するものとし、相互に当該状況が類似していると認められる小字の区域は、これらを合わせ、小字の区域内において当該状況が著しく異なると認められるときは、当該状況が異なる地域ごとに区分するもの」(評価基準第1章第2 節二2 )とされています。

(2)標準田・畑の選定

 「標準田又は標準畑は、状況類似地区ごとに、日照、かんがい、排水、面積、形状等の状況からみて比較的多数所在する田又は畑のうちから、一の田又は畑を選定するもの」(評価基準第1章第2 節二3 )とされています。
 この場合、自然条件、立地条件、耕作上の条件、災害等の状況からみて、その地区における標準的な田又は畑を選定することになります。

(3)標準田・畑の評点数の付設

 標準田畑の評点数は、売買田畑の売買実例価額から適正な時価に基づいて、①~③により付設します。

① 売買田畑の正常売買価額の算定
 売買田畑の正常売買価額 = 売買田畑の売買実例価額 − 不正常要素に基づく価額

② 標準田畑の正常売買価額の算定
 標準田畑の正常売買価額 = 売買田畑の正常売買価額 × 売買田畑と標準田畑との地形等の相違による修正

③ 標準田畑の評点数の付設
 標準田畑の評点数(標準田畑の適正な時価) = 標準田畑の正常売買価額 × 0.55(※農地の限界収益修正率)

※「農地の限界収益修正率」とは…農地の売買は、一般的に小規模な面積を単位として行われます。この場合、買受側は、買足しに伴う耕作面積の拡大により農業経営の効率が増進されます。このため、農地の売買実例価額は農地の平均収益額を超える限界収益額を前提として成立していると考えられていることから、その割高分を修正する必要があるためです。

(4)各筆田畑の比準表の適用

 各筆田畑の評点数を付設する際には、標準田畑との状況の差を比較考慮し、評価基準に定められている固定資産評価基準の「田の比準表」又は「畑の比準表」を適用して評点数を補正します。

(5)各筆田畑の評点数の付設

 各筆田畑の評点数は、まず、標準田畑の単位地積当りの評点数に、「田の比準表」又は「畑の比準表」によって求めた各筆の比準割合を乗じて、各筆の単位地積当りの評点数を求め、この評点数に地積を乗じて求めます。

・ 各筆の田畑の単位地積当りの評点数 = 標準田畑の単位地積当りの評点数 × 各筆の比準割合
・ 各筆の田畑の評点数 = 各筆の田畑の単位地積当りの評点数 − 当該筆の地積

一般農地の課税

 一般農地及び生産緑地地区内農地には、農地の負担調整措置が適用されます。

 負担調整措置は、土地の評価額の急激な上昇に伴う税負担を軽減するための措置で、①か②のいずれか少ない額です。

①(本則税額) : 評価額 × 税率
②(調整税額) : 前年度の課税標準額 × 負担調整率×税率

・負担水準(一般農地)= 前年度の課税標準額/当該年度の評価額
・負担水準(市街化区域農地)=前年度の課税標準額/当該年度の評価額
×1/3
<農地の負担調整措置>

市街化区域農地の評価及び課税

 市街化区域農地とは、都市計画法7条1項に規定する市街化区域内の農地をいいます。市街化区域農地は、宅地としての潜在的価値を有し、売買価値も宅地と同水準にあると認められています。

 市街化区域は、都市計画法7条2項の規定により「すでに市街地を形成している地域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域」です。また農地として利用されていても、農地法4条1項7号及び5条1項6号の規定により届出をするだけで宅地に転用することができる農地となります。

市街化区域農地の評価

 市街化区域農地は、宅地としての潜在的な価値を有しており、売買価額も宅地の価値に準じた水準にあると考えられますので、これらの農地を評価するに当たっては、付近の宅地との均衡を図る必要があります。

 しかし、市街化区域農地はあくまでも田・畑であり、宅地とするには、土盛り整地をしなければならないため、評価する場合には、宅地としての価額から土盛り整地等の造成費相当分を控除する方法により行います。

 市街化区域農地の評価 = ①基本価額 — ②造成費相当額

(1)基本価額

 基本価額は、類似宅地の価額を基準として求めますが、宅地の評価方法(市街地宅地評価法)とはやや異なり、直接類似宅地の価額を基準にして価額を求めます(市街地宅地評価法に準じて求めます)。

(2)造成費相当額

 市街化区域農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額ですが、その範囲は、一般的には土砂購入費、土盛整地費、擁壁費及び法止・土止費をいいます。

市街化区域農地の課税

 市街化区域農地には、一般市街化区域農地と三大都市圏の特定市に適用される特定市街化区域農地の2種類があり、それぞれ負担調整措置が適用されます。

① 一般市街化区域農地の負担調整措置
 一般市街化区域農地は、「一般農地の負担調整措置」が適用されます。
 A(本則税額) : 評価額×1/3×税率
 B(調整税額) : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率

② 特定市街化区域農地の負担調整措置
 三大都市圏の特定市の市街化区域農地は、「宅地の負担調整措置」が適用されます。

 なお、農地の詳細な基準は、各市町村による「固定資産評価事務取扱要領」(自治体により名称が異なります)を確認してください。
 
2025/07/21/19:00
 

 

(第138号)「標準宅地比準方式」の評価方法について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、「標準宅地比準方式」の評価方法についてです。

「標準宅地比準方式」とは

 「標準宅地比準方式」とは、宅地評価の2つの方法(「市街地宅地評価法」と「その他の宅地評価法」)のうちの「その他の宅地評価法」(以下「標準宅地比準方式」)です。

<宅地の評価方法>

 この「標準宅地比準方式」は、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地の評価に適用されるものです。

 具体的には、家屋の連たん度が低く「市街地宅地評価法(路線価方式)」を適用する必要が認められない地域について適用する評価方法です。
(評価基準第1章第3節二(二))

「標準宅地比準方式」の流れ

状況類似地区の区分

 「路線価方式」では「用途地区の区分」を経て「状況類似地域の区分」と進みますが、「標準宅地比準方式」では「状況類似地区の区分」から始まります。

<状況類似地区の区分>-評価基準第1章第3節二(二)2
「 状況類似地区の区分状況類似地区は、宅地の沿接する道路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他宅地の利用上の便等を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる宅地の所在する地区ごとに区分するものとする。」

① 利用状況による地区区分
 利用状況によって、ア.商店が相当連たんしている地域、イ.専用住宅が相当連たんしている地域、ウ.家屋の連たん度が低い地域に区分します。

② 利用上の便等による地区区分
 利用状況による地区区分が行われた宅地は、さらにア.道路条件、イ.接近条件、ウ.宅地条件により区分されます。

「標準宅地」の設置

 次に、「状況類似地区」を基本的な地域区分として、その中で1カ所「標準宅地」を選定します。地価公示、地価調査がある場合はその地点を選択し、無い場合は不動産鑑定評価により設定します。

<標準宅地の選定基準>-評価基準第1章第3節二(二)3
「標準宅地の選定標準宅地は、状況類似地区ごとに、道路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等からみて、標準的なものと認められるものを選定するものとする。」
<基準宅地の選定>-評価基準第1章第3節三2(1)
「指定市の長は、(中略)「その他の宅地評価法」のみを適用して各筆の宅地の評点数を付設している場合にあつては単位地積当たりの適正な時価が最高である標準宅地を、基準宅地として選定するものとする。」

標準宅地の適正な時価の評定

 平成6年度の評価替えから宅地の評価に当たって、公的土地評価の均衡化・適正化を推進するため、「標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の7割を目途として評定するものとする。」(評価基準第1章第12節一)とされています。

「各筆の評点数」の付設

 各筆の評点数は、標準宅地の1㎡当り評点数に比準宅地の比準割合を乗じ、これに当該宅地の地積を乗じて付設します。

 この比準宅地の比準割合は、一画地ごとに「宅地の比準表」を適用して求めます。

① 画地の認定
 まず画地を認定する必要があります。

② 宅地の比準表
 各画地の比準割合は、ア.奥行による比準割合、イ.形状等による比準割合、ウ.その他の比準割合(画地と道路との関係、沿接する道路の状況)です。

③ 各筆の評点数の付設
 評点数 = 比準宅地の1㎡当り評点数 × 地積


2025/07/20/17:00