(72号)「固定資産税が高い」「間違っている」と思ったときの対応方法は

 今号は「固定資産税の価格が高い」あるいは「評価が間違っている」と思ったときは、どのような対応をしたら良いのかについて解説します。

 同様なタイトルは第36号「固定資産税の価格(評価額)に不服(評価誤り)がある場合の手続き」でも記載しましたが、今回は、筆者が民間コンサルタントとして、納税者の皆様からのご相談や各市町村と交渉してきた経験等から、気づいた点や「提言」をさせていただきます。

 

市町村から「審査の申出」が勧められる

 地方税法では、「固定資産税の価格に不服がある場合は、審査の申出ができる(「できる」です!)」とあり、これが地方税法上の原則ではあります。

 市町村の窓口に行くと、「価格に不服があるならば、納税通知書が送られてくるので、3ヶ月以内に「審査の申出」ができるのでそちらでお願いします」などと“門前払い”をされる場合があります。
※納税通知書は毎年送られてきますが、「審査の申出」ができるのは、通常3年毎の基準年度に限られます。

 それではと「審査の申出」を行った場合どうなるでしょうか。

 「審査の申出」は第三者機関である固定資産評価審査委員会に対して行い、そこで審査・決定がされますが、実質的には課税当局の弁明(言いなり)どおりの決定(棄却される)がほとんどというのが実態です。
 この「審査の申出」の棄却決定に「あとはどうすれば良いのでしょうか」と課税当局に聞くと「決定に不服があるならば6ヵ月以内に訴訟を提起できますので、そちらでお願いします」と”そっけない返事”がほとんどです。

 訴訟ともなると、弁護士を探しそれなりの費用がかかることになりますが、納税者としては事実上”打つ手無し”という状態にもなってしまいます。

 民間コンサルタントとして、既に「審査の申出」を行って「棄却」決定された納税者の方々からのご相談によりますと、「こちらの要求した内容にほとんど答えてもらえていない」との「苦情」がかなりあります。実際に申出書、弁明書、決定書等を見せていただくと、確かに「審査の申出」の決定が納税者の要望に答えていないものが、それなりにあります。

 例えば、所有しているビルの評価額が自己所有の他のビルより相当高い理由は何か、新築当初の評価内容から説明して欲しいと求めたものの、審査では「在来(中古)家屋の評価」(前年度の評価が正しいとの前提で評価される)により棄却決定された等、いくつか筆者に相談が寄せられています。

 
 従って課税当局の「審査申出でお願いします」との言葉に安易に従ってはいけません。
 「固定資産税の価格が高い」あるいは「評価が間違っている」と思ったときは、まず市町村の課税当局に確認し、交渉することをお勧めします。
 なぜなら、課税当局が気がついていない「課税誤り」があるかも分からないですし、実際にこれまでもそのような事例が存在しています。

 ただし、「審査の申出」の結果のすべてが「棄却」となる訳ではなく「容認」もありますが、筆者の実感としては「棄却」の可能性の率が高いと思います。

まず課税当局に確認し交渉する

 市町村の課税当局には、いま課税している固定資産税の評価内容に間違いがないかを確認し、所有者に説明する義務と責任があります。

 そもそも固定資産税は所有者の申告に基づかず、行政が一方的に評価・課税する“賦課課税方式”なのです。所有者は評価の具体的内容まで分かってはいないのです。

地方税法第417条の「重大な錯誤」

 地方税法第417条1項では、仮に決定された価格に「重大な錯誤」があった場合には直ちにこれを修正しなければならないとされています。この「重大な錯誤」の例としては、「課税台帳に登録の際の誤記」「計算単位のとり違い」「課税客体の明瞭な誤り」「価格の決定に重要な誤り」等とされています。

※地方税法第417条(固定資産の価格等の全てを登録した旨の公示の日以後における価格等の決定又は修正等)
「市町村長は、登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。(一部略)」

 そうなると、課税当局は「正しく評価・課税している」と考えていても、納税者から申し出があった場合には確認してみることが必要ですし、納税者に対しては、資料(「評価計算書」等)により丁寧に説明する義務があります。

 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」であったと判明したというケースも実際にあります。

 所有者の方から「固定資産税の評価内容を細かく説明されても良く分からない」とのご相談がありますが、この場合には、固定資産税評価に詳しいコンサルタントなどに相談し委任することをお薦めしています。

※ただし「委任は弁護士と税理士以外は認めない」という市町村もありますので注意が必要です。東京23区がそうですが、その理由は「弁護士法・税理士法の趣旨に反するから」とのことです。しかし、他の多くの市町村では弁護士、税理士以外の代理を認めています。(「審査の申出」では、弁護士、税理士以外の代理も認められています。)

「重大な錯誤」であれば10年から20年間の還付

 そして、仮に「重大な錯誤」があり価格等が修正されるとなると、過徴収金の還付ということになりますが、地方税法での還付金の消滅時効は5年ですが(地方税法第18条の3)、「重大な錯誤」による課税誤りがあった場合には、市町村の「過徴収金返還要綱」(市町村により名称が異なる)により、10年間あるいは20年間遡って返還されるということになります。

 この「過徴収金返還要綱」によると、「重大な錯誤」による誤りがあった場合、固定資産税の課税台帳の保存期間である10年間を原則として、領収書等により確認できる場合は20年間返還することができるとされています。

 「過徴収金返還要綱」は、市町村が独自に定めているもので、全国でも約7割程度の市町村で実施されていると言われていましたが、最近では廃止している市町村もあるようです。

 

地方税法上の「審査の申出」

 課税当局と直接話し合っても”埒があかない”という段階になった場合は、(必要に応じて)法的な手続きを採用することになります。
 固定資産税の価格に不服があり訴訟まで行う場合には、地方税法上の手続きとしては、まず「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合に限って訴訟が出来ることになります。逆に言いますと、当初から「この件は訴訟で争う」とお考えの場合には、「審査の申出」を経るのも宜しいと思います。

 そこで、ここからは法的の手続きの説明となりますが、まず市町村の固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行うことになります。

※地方税法第432条(固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出)
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合においては、第411条第2項の規定による公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3月を経過する日までの間において、文書をもつて、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。(一部略)」

 この「審査の申出」には、次の点に留意する必要があります。
①「審査の申出」をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。
 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。
②「審査の申出」をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られるとともに、あくまでも3年サイクルで行われる評価替年度(基準年度)の価格に限られます。
 ただし第2年度、3年度の据置年度でも、(ア)家屋の新築や土地の分筆等(イ)家屋の増改築や土地の地目変換(ウ)地価の下落により修正された土地の価格については「審査の申出」を行うことができます。
③「審査の申出」期間は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内です。仮に、審査申出書を郵便で提出する場合は、発信主義(消印日有効)とされています。
④「審査の申出」先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。
 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な(第三者)機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。

審査決定に不服な場合の訴訟提起

 固定資産税の価格の不服については、地方税法上は直接裁判所に訴えることはできないこととされており、訴訟をするのであれば、まず「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会の決定の採決があったことを知った日から6ヶ月以内に、その取消しの訴えを提起することができます。つまり、最初から訴訟で争うことを決めている場合は、まず地方税法上の「審査の申出」を行う必要があります。

※地方税法第434条(争訟の方式)
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。
2 第432条第1項の規定により固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税の納税者は、同項及び前項の規定によることによつてのみ争うことができる。」

※行政事件訴訟法第14条(出訴期間)
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
2 取消訴訟は、処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」

 ところが、平成22年の最高裁判決以来、この地方税法上の手続きを経ないで、直接裁判所に提訴できることになりました。

最高裁判決による国家賠償法による対応

 この訴訟は、名古屋市が冷凍倉庫を一般用倉庫と誤って課税したことに対して冷凍倉庫会社が訴えた件ですが、冷凍倉庫の耐用年数(経年減価)は、一般用倉庫(鉄骨)で35年、冷凍用倉庫(鉄骨)で22年と大幅な違いがあります。
 つまり、冷凍倉庫会社は冷凍倉庫であるにもかかわらず何年も固定資産税を支払ってきていたのでした。

 これに対して、平成22年6月3日の最高裁判決において「固定資産税の評価・課税誤りによる税額について国家賠償の請求を認める」との判断がなされました。この判決は名古屋高裁への差戻し判決でありましたが、名古屋高裁への差戻し後、最高裁判決どおりの裁判上の和解が成立しています(最高裁の判断が確定しています)。

※平成22年6月3日最高裁判決
 「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」
 「記録によれば、本件倉庫の設計図に『冷蔵室(-30℃)』との記載があることや本件倉庫の外観からもクーリングタワー等の特徴的な設備の存在が容易に確認し得ることがうかがわれ、これらの事情に照らすと、原判決が説示するような理由だけでは、本件倉庫を一般用の倉庫等として評価してその価格を決定したことについて名古屋市長に過失が認められないということもできない。」

※国家賠償法第1条
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 この最高裁判決によると、一定の要件の下では、地方税法上の審査請求や取消訴訟を経ることなく、直接、国家賠償請求の訴訟を提訴することができます。
 そして国家賠償法の「過失」(「故意」はあり得ないでしょう)とは下級審の判決で「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない場合」と解釈されていますが、この「過失」は「手抜きがあった場合」と言われています。

 仮に、この訴訟で勝訴した場合は、固定資産税の過徴収金の返還期間は最高20年間の還付となります。

 この訴訟は民法に準じたものになりますので、現在では、地方税法の「審査申出」等の手続きは必要なく直接提訴できるようになっています。