(35号)住宅用地の適用が見落とされた「過払税額」は何年分返還されるか

(投稿・平成27年)

 先日、ブログを読まれた方から、次のような相談をいただきました。

「事業を廃止し、住まいの土地が小規模住宅用地になったにもかかわらず、減額特例が適用されなかったので、市役所と交渉し固定資産税を返還してもらった。しかし、返還されたのは5年間分だけで、申告しなかったので3割相殺はやむを得ないとしても、5年を越えて返してもらえるのではないか。」

 そこで今回は、住宅用地の減額特例の要件に該当するにもかかわらず、減額が見落とされ納税した「過払税額」は何年間遡って返還されるか(されるべきか)について、改めて考えてみたいと思います。

 (「住宅用地の減額特例」の解説については、過去のブログ(5号等)をご覧ください。)

 

住宅用地は申告が義務づけられている

 住宅用地については、地方税法により、市町村の条例により申告を義務づけることが認められています。

※地方税法384条(固定資産の申告)
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、その申告すべき事項に異動がない場合は、この限りでない。」

 そこで、参考までに東京都の税条例を紹介します。(全国の他の市町村の条例も、東京都のものとほぼ同様です。)

※東京都税条例136条の2(住宅用地の申告義務)
「法第349条の3の2第1項に規定する住宅用地(以下「住宅用地」という。)の所有者は、当該年度の賦課期日現在における当該住宅用地について、当該年度の初日の属する年の1月31日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を知事に提出しなければならない。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、既に申告した事項に異動がない場合は、この限りでない。
1.住宅用地の所有者の住所及び氏名又は名称
2.住宅用地の所在及び地積
3.住宅用地の上に存する家屋の所有者、所在、家屋番号、種類、構造、床面積、居住部分の床面積及び居住の用に供した年月日、住宅用地の上に存する住居の数(法第349条の3の2第2項に規定する住居の数をいう。)
4.前各号に掲げるもののほか、知事において必要があると認める事項」

 しかも、条例には、申告が無い場合は罰則(過料)が科される規定まであります。

※東京都税条例138条(固定資産に係る不申告に関する過料)
「固定資産の所有者(法第343条第8項及び第118条第5項の場合にあつては、これらの規定によつて所有者とみなされる者とする。)が法第383条又は第136条の2の規定によつて申告すべき事項について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、10万円以下の過料を科する。」

固定資産税は申告に基づかない賦課課税

 ところで、固定資産税は申告に基づく申告課税方式ではなく、行政自らが調査し課税する賦課課税方式であることから、この申告義務との関係はどうなのかとの疑問が残ります。

 この件について、浦和地裁判決では、固定資産税の条例による申告義務と賦課課税方式について、次のように判断されています。

 浦和(現さいたま)地裁判決(平成4年)
 「固定資産税の賦課に関し必要な事項を申告させることができるとしたのは、納税義務者に対して右申告義務を課することにより課税当局において減税特例の要件に該当する事実の把握を容易にしようとしただけのものであって、右申告がないからといって、減税特例を適用しないとすることが許されるものではないことは課税の当局者にとっては見易い道理である。」

 つまり、固定資産税は賦課課税であるため、仮に法律(条例)で申告が義務づけられているものの、申告が無くても住宅用地の減額特例は適用されるべきである、ということです(この件については、別途改めて解説します)。
 

 

「過払税額」は何年間返還されるか

 まず、地方税法では、「還付金の消滅時効は5年」と定められています。

※地方税法18条の3(還付金の消滅時効)
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権(以下第20条の9において「還付金に係る債権」という。)は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 しかし、上記の浦和地裁判決及び神戸地裁・大阪高裁判決はいずれも「市職員に過失があったとして、国家賠償法を適用して5年分を超える返還」を認めています。

大阪高裁判決(平成18年)
「住宅用地の特例の適用の有無に関する事項は、固定資産課税台帳の登録事項であること、同登録事項に関する争訟方法は、地方税法上、固定資産評価審査委員会に対する審査の申し出及び同委員会の審査決定の取消しの訴えに限定されていること、被控訴人が本件課税処分につき、これらの手続をしていないこと……これらはあくまで税法上の手続であって、法令上、これらの手続を経ない限り、国家賠償訴訟を提起できないという根拠は見出し難いものというべきである。」

※国家賠償法1条1項
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 また、国家賠償法4条では民法の規定を準用していることから、不法行為の時効期間は最高20年となります。

※民法724条 (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二 不法行為の時から20年間行使しないとき。」

 つまり、課税当局の職員に過失があった場合は、「過払税額」は最高20年間遡って返還されることになります。
 20年間の場合では、地方税法上の還付金が5年分、残りの15年間は「還付不能金=補填金」となります。

2022/5/27