(59)課税誤りの還付金は何年分返還されるか(「過徴収金返還要綱」の在り方)

 先日、Aさんから次のようなご質問をいただきました。
 「X市の固定資産税(以下「都市計画税」も含む)の課税誤りがあったので、問合せ・交渉したところ、X市では課税誤りを認め、10年間の還付がされました。その際に『納税通知書、納付領収書があれば20年まで還付します』と言われましたが、そんな過去の納税した領収書など保存している筈がありません。これはどうしたら良いのでしょうか。」

 これまで過徴収金の返還年数は、第31号「固定資産税の課税誤り(過徴収金)の返還期間―原則的手続き」及び第32号「固定資産税の課税誤り(過徴収金)の返還期間―最高裁判決(20年間)」で紹介してきました。

 第31号では、次のとおりまとめた部分があります。
 『大まかに言いますと、①地方税法の規定による原則的手続による期間(5年)②地方税法417条と「過徴収金返還要綱」による期間(5年又は10年(20年))③最高裁判決による国家賠償による期間(20年)」です。』

 

 今回のAさんのX市の対応は、上記②の「過徴収金返還要綱」によるものとなります。

 しかし、この②の「過徴収金返還要綱」は、今や古い時代遅れの規定となっています。
 これまでは、全国の7割程度の市町村で定められていると言われていましたが、最近では”廃止をした市町村”若しくは”廃止を検討している市町村”がいくつかあるようです。

「過徴収金返還要綱」とは

 Googleで検索すると、「過徴収金返還要綱」を持っている市町村が多数あることが分かります。名称は、「固定資産税過誤納金補填金支払要綱」や「固定資産税過誤納金返還事務取扱要綱」など市町村により様々です。
 これらを見ると、多くの市町村の「過徴収金返還要綱」では、「還付不能額」となった額を返還する期間を最高20年まで(20年を限度として)とだけ定められていますが、この内容であれば問題はありません。

領収書等が必要な「過徴収金返還要綱」の例

 しかし、いくつかの市町村の「過徴収金返還要綱」には、返還の原則を10年としつつ、例外的に納税した領収書がある場合に限って10年~20年までの還付も可能とする、となっています。

 ここに、「領収書がある場合には対応可能」の「過徴収金返還要綱」例を紹介します。

(Y市の「固定資産税過誤納補填金支払要綱」より)
「還付不能額は、固定資産税台帳等によって算定するものとする。この場合において、還付不能額の算定は、原則として固定資産税課税台帳等の保存年限(10年)の範囲内となるが、納税者が所持する領収書等によって、還付不能額が確認できるものについても、算定の対象とする。」

(Z市の「固定資産税等過誤納返還金支払要綱」より)
「返還金の対象となる年度は、支払を決定する日の属する年度に保存されている固定資産税・都市計画税課税台帳及び国民健康保険税課税台帳(以下「課税台帳」という。)のうち最も古い年度分までを限度とする。ただし、納税者又はその相続人が所有する納税通知書、課税明細書、領収書、その他の課税及び納税に関する資料(以下「資料等」という。)により、当該物件に係る納付の事実が確認でき、かつ、還付不能金が算定できる場合は、課税台帳が保存されていない年度においても返還金支払の対象とすることができる。」

「還付不能額」とは何か

 ところで、「還付不能額」とは何か、某市の「過誤納金返還事務取扱要綱」では、「還付不能額」の用語が次のように定義されています。

 「還付不能額とは、固定資産税及び都市計画税に係る納付金で本来ならば過誤納金として返還を受けられるもののうち、法第17条の5第5項の規定に基づき減額若しくは取消しの賦課決定ができないこと又は法第18条の3第1項の規定に基づき還付請求権が時効により消滅したことにより還付できなくなった過誤納金に相当する額をいう。」

 つまり、地方税法では、固定資産税の請求権は5年で時効により消滅するとなっていますが、「過徴収金返還要綱」では、一定の場合には5年を超えて返還することも認めるとの規定になっている訳です。

「過徴収金返還要綱」の問題について

 要綱は、条例、規則のような議会の手続きを経ない市民への「拘束力」が伴わない市町村内部の取り決めという位置づけです。行政内部のルールとして定められているもので、古くから「要綱行政」などと揶揄されてきました。

 そもそも、この「過徴収金返還要綱」は何故存在するのでしょうか。
 第31号、32号でも記載したとおり、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁の判決により、国家賠償法による賠償が認められたことから、全国の(全てではないですが)市町村で「過徴収金返還要綱」が定められました。
 そして、平成22年6月3日の最高裁判決により「固定資産税の評価・課税誤りによる税額について国家賠償の請求を認める」との判断がなされ、決定的となりました。

 この最高裁判決によると、一定の要件の下では、地方税法上の審査請求や取消訴訟を経ることなく、国家賠償請求を行うことができ、固定資産税の過徴収金の返還期間は最高20年となります。

 この一定の要件とは、他の下級審判決等によると「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことの無いような場合には、国家賠償が認められるような違法になる」と判断されています。この「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことの無いような場合」とは「手抜きがあった場合」と解されています。

10年以上の還付に領収書等は必要無い

 そもそも固定資産税は、所有者の申告を必要とせず(償却資産は申告が必要)、行政が一方的に評価・課税をする「賦課課税」となっています。

 この賦課課税の考え方からすると、X市やいくつかの市町村の時代遅れとも言うべき「過徴収金返還要綱」で規程している「領収書等がある場合には10年以上の返還が可能」の論理は誤りであると言わざるを得ません。

 平成4年2月24日の浦和地裁判決では、住宅用地の届出を条例で義務づけている場合、住宅用地の届出が無い場合であっても、賦課課税であるため、現況が住宅用地であればそれを優先するとされました。

 この論理でいくと、賦課課税である以上、仮に市町村で「手抜き」同様の誤りがあった場合には、過去の領収書等の所持に関係なく、10年以上遡って還付することを検討すべきです。賦課課税として一方的に評価・課税した以上、誤りを認めるのであれば、その責任を納税者に押しつけるのはおかしいでしょう。

 いわゆる「手抜き」があったような固定資産税の評価・課税は、地方税法ではなく、ましてや市町村の「過徴収金返還要綱」によるのではなく、国家賠償法による20年間の時効が争われるべきである訳です。

(58)宅地の税負担の調整措置(負担調整措置)-令和3年度は据置き

 負担調整措置については、第4号「固定資産税の仕組みは複雑で分かりにくい」で商業地(非住宅用地)を解説しました。

 また、第9号「固定資産税の小規模住宅用地の仕組み(負担調整措置)」で住宅用地の負担調整の仕組みを解説してきました。

 今号では、新型コロナウイルス感染症により、令和3年度については前年度の課税標準額に据置くこととされることを踏まえて、宅地の負担調整措置について再度説明します。

宅地の負担調整措置の仕組み

平成9年度以降の仕組み

 平成9年度の評価替え以降、課税の公平の観点から、地域や土地によりばらつきのある負担水準(今年度の評価額に対する前年度課税標準額の割合)を均衡化させるため、税負担の調整措置が講じられています。
 負担水準とは、個々の土地の前年度課税標準額」が今年度の評価額に対してどの程度まで達しているかを示すものです。
「計算式」
 負担水準=前年度課税標準額/今年度の評価額(×住宅用地特例率(1/6又は1/3))
 これまで負担水準の均衡化は、相当程度進展してきている状況にありますが、この仕組みは引き続き継続されることとされています。

負担調整措置の仕組み-平成26年度~令和2年度及び4年度・5年度

令和3年度は負担調整措置を据置

新型コロナウイルス感染の影響

 現在(令和3年4月18日)、新型コロナウイルス感染症が拡大していますが、これにより社会経済活動や国民生活を取り巻く状況が大きく変化しています。
 そこで、納税者の負担に配慮する観点から、令和3年度に限り、負担調整措置等により税額が増加する土地について、令和2年度の課税標準額に据え置くこととされます。

負担調整措置の仕組み-令和3年度

宅地の税額の求め方

商業地等の宅地の場合

 商業地等の宅地とは、住宅用地以外の宅地のことをいいます。
 商業地等の価格の固定資産税は、次のとおり求められます。
 課税標準額(価格×70%)×税率=税額
(1)令和3年度
 令和3年度の課税標準額が、令和2年度の課税標準額を超える場合は、令和3年度の課税標準額を令和2年度の課税標準額と同額に据え置かれます。
(2)令和4年度
 令和4年度の価格(A)の70%と比べて令和3年度の課税標準額が以下の場合については、令和4年度の課税標準額は次のとおりとなります。
①令和3年度課税標準額がAの60%以上70%以下の場合
 →令和3年度課税標準額と同額に据置
②令和3年度課税標準額がAの60%未満の場合
 →令和3年度課税標準額+A×5%が令和4年度の課税標準額
 ただし、上記②により計算した額が、Aの60%を上回る場合はAの60%、Aの20%を下回る場合はAの20%
③令和3年課税標準額がAの70%を超える場合
 →Aの70%が令和4年度の課税標準額

住宅用地の場合

 住宅用地の固定資産税は、次のとおり求められます。
 課税標準額(令和3年度の価格に1/6又は1/3を乗じた額=B)×税率=税額
 ※200㎡以下の小規模住宅用地は1/6、200㎡を超える一般住宅用地は1/3
(1)令和3年度
 本来の課税標準額(B)が令和2年度の課税標準額を超える場合は、令和3年度の課税標準額を令和2年度の課税標準額と同額に据え置かれます。
(2)令和4年度
 本来の課税標準額(C)が、以下の額を超える場合は、以下の額が令和4年度の課税標準額となります。
 令和3年度課税標準額+C×5%
 ただし、上記により計算した額が、C×20%を下回る場合には、C×20%が令和4年度の課税標準額となります。

(57)固定資産税はなぜ評価誤りが多いのか、どのように評価誤りを見つけ正していくのか

 今号は、固定資産税はなぜ評価誤りが多いのか、どのように評価誤りを見つけ正していくのか、について説明します。
 過去のブログと重複する部分もありますが、「1.固定資産税の評価誤りがなぜ発生するのか」→「2.固定資産税評価の誤りを正す方法」→「3.評価誤りがあった場合何年分戻ってくるのか」→「4.固定資産税見直しコンサルタントの活用」の流れで説明します。
 固定資産税は、土地、家屋、償却資産からなりますが、土地と家屋は役所が一方的に評価し課税する「賦課課税方式」が採用されています。
 この「賦課課税方式」は納税者からすると評価や課税の内容が分かりませんし、また評価した市町村の側でも、誤っていることに気づかずに評価・課税し続けているということも多いのです。
 例えばWEBサイトの検索画面で、『固定資産税・評価誤り・お詫び』とキーワードを入力して検索しますと、次のような市町村による評価誤りへの『お詫びサイト』が検索されます。
 「令和3年3月15日のGoogleChromeによる検索結果(一部)」

 いかがでしょうか。これは、検索結果の極一部ですが、常にこのような状態ですので、潜在的な固定資産税の評価誤りがいかに多いかということが想像できる訳です。
 ところで、なぜこのようにサイトで検索できるかですが、平成12~13年頃から自治体の情報公開条例が出来ており、自治体行政のミスがあった場合には、必ず住民にお知らせ(お詫び)をすべきとされ、そのための記者発表資料を自治体のホームページに掲載すると、その結果としてサイトで検索できる訳です。

1.固定資産税の評価誤りがなぜ発生するのか

 固定資産税の評価誤りは様々な原因によりますが、そのなかで主なものは次のとおりとなります。

(1)土地評価の誤り

<住宅用地の評価(減額)の見落とし>
 土地の評価では、地目認定は現況利用から判断されますので、現地調査を行うことにより外見からも判断できるため、家屋と比べて評価誤りは少ないと言えます。
 しかしその中でも、住宅用地は200㎡までが6分の1(200㎡を超える部分は3分の1)に減額されるのですが、それが見落とさている場合があります。
 例えば、アパートの隣地が駐車場である場合、その駐車場をアパートの居住者が利用しているのであれば、一体画地として6分の1(3分の1)になるべきですが、雑種地として課税されている場合が見られます。
 このような場合、外観からどのように使用されている土地か判断が難しいため、市町村では、条例で「申告」を義務づけていますが、仮に「申告」がなくても住宅用地であるか否かを市町村が判断しなければならないとされています。これは固定資産の土地と家屋は「賦課課税」であるから、「申告が無いからといて住宅用地を否定するものではない」との見解が正式なものとなっているのです。

<太陽光発電施設用地>
 最近では、太陽光発電施設用地の相談が多くなっています。これは、評価誤りというよりも、太陽光発電施設用地評価の全国基準が存在していないため、市町村により評価方法が異なっていることから、評価額の高低差があり、納税者としては混乱する傾向にあります。

  太陽光発電施設用地については、上記41号、42号では説明しきれていませんので、今後掲載していきます。

(2)家屋評価の誤り

<「再建築価格方式」の複雑さによる誤り>
 家屋は土地と比べても評価誤りが多いと言えます。
    家屋は新築時に評価されれば、その後は増改築等が無い限り、その評価により経年減価等により在来家屋として評価・課税されていきます。
 従って、問題は「新築時の評価に誤りがあるかどうか」ということになります。家屋の評価は「再建築価格方式」によりますが、固定資産評価基準(家屋編)や各市町村の固定資産評価事務取扱要領(名称は市町村により異なります)に詳細な基準が定められています。実は、その詳細な基準が、家屋の評価誤りの原因となっているとも言えます。

(3)償却資産の評価誤り

<家屋と償却資産の二重課税>
 償却資産は、土地と家屋と異なり、所有者からの申告に基づいて課税されます。
 そこで、評価誤りがあるとすると、家屋と償却資産の二重課税があり得るということです。家屋として評価されているのに償却資産としても申告し、市町村でも気づかずに二重課税がされている状況です。この二重課税が意外と多いので、担当される税理士さんも気をつけてください。

2.固定資産税評価の誤りを正す方法

 固定資産税評価の誤りを正すには、その誤りを課税当局の市町村に認めてもらうことが絶対要件になります。
 そこで、どのような方法で進めていくのかについて説明します(ここでは、納税者自身が行うことを前提にします)。

(1)市町村に説明を求める

 毎年の年度当初に市町村から、納税通知書と課税明細書が送られてきます(市町村によって4月~6月)ので、固定資産税の評価又は課税額(以下「賦課決定」)に疑問や不服があれば、まず市町村の担当者に説明してもらうことをお勧めします。市町村では、評価計算書等で説明してくれます。

(2)「審査の申出」を行う

 仮に、その説明が納得できず、賦課決定に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に「審査の申出」ができます。この審査の結果、課税価額が固定資産評価基準に照らして不適当なものであると認められると、課税価額が修正されることとなります。
 この「審査の申出」が出来る期間は、3年に1度の評価替え(基準)年度で、納税通知書が到達してから3ヶ月以内が原則となっています。
 ただし、地方税法417条1項により、価格等に「重大な錯誤」がある場合には、「審査の申出」の期間に関わらず、市町村は評価額を修正しなければならないことになっています。

<地方税法第417条第1項>
「市町村長は…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。…」

 つまり不服申立の原則は、3年に1度の評価替え(基準)年度(30年度、33年度、36年度…)に「審査の申出」を行うことですが、それに関わらず賦課決定に不服があれば、市町村に働きかけてみることが必要なのです。

(3)訴訟を提起する

 固定資産税の賦課決定に不服があり、訴訟を提起する場合は、原則として(地方税法上では)、上記の「審査の申出」を行い、その結果に不服がある場合に限られます。訴訟は「審査の申出」の決定があってから6ヶ月以内とされています。

<地方税法434条第1項(争訟の方式)>
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

 しかし、第32号でも触れましたが、平成22年6月3日の最高裁判決により「職務上通常尽くすべき注意義務が尽くされていない場合」は、国家賠償法による違法性が認めらています。つまり、地方税法上の「審査の申出」を経る必要が無いということです。ここで言う「通常尽くすべき義務が尽くされていない場合」とはいわゆる「手抜き」と解されています。

3.課税誤りがあった場合何年分戻ってくるのか

 固定資産税の評価誤りが認められると、過去に遡って減額され、その減額分は戻ってきますが、それを還付金と言います。
 それでは、何年間遡って還付されるのでしょうか。

(1)地方税法上の原則-5年間

 地方税法では、遡る年数は5年間とされています。

<地方税法18条の3(還付金の消滅時効)>
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

(2)「固定資産税過誤納付金補填支払要綱」による還付-10年間(20年間)

 全国の7割ほどの市町村が「固定資産税過誤納付金補填支払要綱」を定めていますが、それによると「重大な錯誤」により評価誤りが有った場合は、10年間還付されます。また、納税した領収書が保存されている場合には20年間遡る場合もあります。
※「要綱」とは、行政内部で定めた規程で、議会を通じて制定される条例とは異なります。

(3)国家賠償法による場合-20年間

 上記の最高裁判決により「通常尽くすべき義務が尽くされていない場合(手抜きがあった場合)」には20年間の還付が可能となります。

⇒ 第32号「固定資産税の課税誤り(過徴収金)の返還期間-最高裁判決(20年間)」

4.固定資産税見直しコンサルタントの活用

 以上の固定資産税の評価誤りの見直し手続きには、専門的で納税者ご自身で対応するのが難しいというのが実際のところです。
 そのような方は、ぜひ「固定資産評価見直しコンサルタント」(任意団体)までご相談ください。
 ご依頼される場合の手数料は、着手金(前金)は不要で、あくまでも成功報酬(還付金額の2分の1)のみとなります。
 詳しくは、下記のホームページ「固定資産評価見直しコンサルタント」をご覧ください。

 

(56)農地(田・畑)の固定資産評価及び課税

 固定資産税の農地(田・畑)は、一般的に、一般農地、市街化区域農地に区分され、評価及び課税されます。
※固定資産税評価基準では、このほか「宅地等介在農地」と「勧告遊休農地」が規定されていますが、本ブログでは、一般農地と市街化区域農地について解説します。
(参考)
・宅地等介在農地…農地法による転用許可を受けた農地
・勧告遊休農地…農地のうち農地法36条1項の規定による勧告があったもの(農地として利用されず単に資産として保有している場合)
 また、市街化区域農地のうち、生産緑地地区内の農地は一般農地と同様に扱われます。
 なお、農地とは土壌の養分を利用して作物を栽培する土地であり、用水を利用して耕作する田と、用水を利用しないで耕作する畑とに分けられます。

一般農地の評価及び課税

(1)一般農地の評価

 一般農地の評価の流れは、次のとおりとなります。
①状況類似地区の区分
 状況類似地区は、地勢、土性、水利等の状況を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる田又は畑の所在する地区ごとに区分します。
※宅地の場合は「状況類似地域」ですが、農地の場合は「状況類似地区」です。
②標準田・畑の選定
 標準田又は標準畑は、状況類似地区ごとに、日照、かんがい、排水、面積、形状等の状況からみて比較的多数所在する田又は畑のうちから一つの田又は畑を選定します。
③標準田・畑の評点数の付設
 標準田畑の評点数は、田畑の売買実例価額から適正な時価に基づいて、ア~ウにより付設します。
ア.売買田畑の正常売買価額
 売買田畑の売買実例価額−不正常要素に基づく価額=売買田畑の正常売買価額
イ.標準田畑の正常売買価額
 売買田畑の正常売買価額×売買田畑と標準田畑との地形等の相違による修正=標準田畑の正常売買価額
ウ.標準田畑の適正な時価
 標準田畑の正常売買価額×0.55(農地の限界収益修正率)=標準田畑の適正な時価(標準田畑の評点数)
※「農地の限界収益修正率」とは、我が国での農業経営を配慮した効率性を表したもので、固定資産評価基準に明記されています。
④各筆田畑の評点数の付設
 各筆田畑の評点数は、標準田畑の評点数に「田の比準表」又は「畑の比準表」により求めた各筆の田畑の比準割合を乗じ、これに田畑の地積を乗じて各筆の田畑の評点数とします。
 「田の比準表」

 「畑の比準表」

(2)一般農地の課税

 一般農地及び生産緑地地区内農地には、農地の負担調整措置が適用されます。
負担調整措置は、土地の評価額の急激な上昇に伴う税負担を軽減するための措置で、これにより算定した調整税額(B)が、負担調整措置を行わずに計算した本則税額(A)を下回る場合には、調整税額(B)が納税額になります。
A(本則税額) : 評価額×税率
B(調整税額) : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率
 「一般農地の負担調整率」

市街化区域農地の評価及び課税

 市街化区域農地とは、都市計画法7条1項に規定する市街化区域内の農地をいいます。市街化区域農地は、宅地としての潜在的価値を有し、売買価値も宅地と同水準にあると認められています。
 市街化区域は、都市計画法7条2項の規定により「すでに市街地を形成している地域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域」です。また農地として利用されていても、農地法4条1項7号及び5条1項6号の規定により届出をするだけで宅地に転用することができる農地となります。

(1)市街化区域農地の評価

 市街化区域農地は、宅地としての潜在的な価値を有しており、売買価額も宅地の価値に準じた水準にあると考えられますので、これらの農地を評価するに当たっては、付近の宅地との均衡を図る必要があります。しかし、市街化区域農地はあくまでも田・畑であり、宅地とするには、土盛り整地をしなければならないため、評価する場合には、宅地としての価額から土盛り整地等の造成費相当分を控除する方法により行います。
 したがって、市街化区域農地の評価は、①基本価額—②造成費相当額により求めます。
①基本価額
 基本価額は、類似宅地の価額を基準として求めますが、宅地の評価方法(市街地宅地評価法)とはやや異なり、直接類似宅地の価額を基準にして価額を求めます(市街地宅地評価法に準じて求めます)。
②造成費相当額
 市街化区域農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額ですが、その範囲は、一般的には土砂購入費、土盛整地費、擁壁費及び法止・土止費をいいます。
 これは、あくまで一般的な造成費相当額で、全国的には総務省から通知(平成29年)が出されていますが、各市町村で独自に決めている場合もあります。

(2)市街化区域農地の課税

 市街化区域農地には、一般市街化区域農地と三大都市圏の特定市に適用される特定市街化区域農地の2種類があり、それぞれ負担調整措置が適用されます。
①一般市街化区域農地の負担調整措置
 一般市街化区域農地は、「一般農地の負担調整措置」が適用されます。
A(本則税額) : 評価額×1/3×税率
B(調整税額) : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率
 「一般市街化区域農地の負担調整率」

②特定市街化区域農地の負担調整措置
 三大都市圏の特定市の市街化区域農地は、「宅地の負担調整措置」が適用されます。
 「特定市街化区域農地の負担調整措置」

なお、農地の詳細な基準は、各自治体による「固定資産評価事務取扱要領」(自治体により名称が異なります)を確認してください。

(55)固定資産評価の宅地における画地計算法

 これまで様々な画地計算法を紹介してきましたが、この辺で一度どのような画地計算法があるのかをまとめたいと思います。
 画地計算法には、固定資産評価基準による画地補正、総務省の通知による画地補正、市町村ごとの「所要の補正」による画地補正の3種類があります。

固定資産評価基準による画地補正

 固定資産税評価は全国一律の基準として固定資産評価基準に基づき行われています。
 その固定資産評価基準では、宅地の画地計算法として、次の10項目が規定されています。計算方法につきましては、これまでも説明していますので割愛します。
① 奥行価格補正割合法
② 側方路線影響加算法
③ 二方路影響加算法
④ 三方又は四方において路線に接する画地の評点算出法
⑤ 不整形地評点算出法
⑥ 無道路評点算出法
⑦ 間口が狭小な画地
⑧ 奥行が長大な画地
⑨ がけ地等を有する画地
⑩ 特別緑地保全地区内の画地

総務省の通知による画地補正

 同じく全国一律の基準として、総務省の通知による画地計算法が4項目あります。
① 住宅地区で日照阻害の影響を受ける画地
② 都市計画施設予定地
③ 鉄道及び高速道路による騒音、振動のある画地
④ 幹線道路による騒音、振動のある画地

市町村ごとの「所要の補正」による画地補正

 市町村長は、評価の均衡を図るため宅地の状況に応じ必要があるときは「画地計算法」の附表等又は「宅地の比準表」について、「所要の補正」を加えて適用することができるとされています。
 この「所要の補正」は、価格の低下等の原因が画地の個別的要因により、その影響が局地的であること等から、その価格事情を路線価の付設又は状況類似地区の設定により評価に反映させることができない場合に、市町村単位で設けることができます。
 なお、この市町村ごとの「所要の補正」は、各市町村の「固定資産評価事務取扱要領」に規定されていますので、個別の確認が必要です。
 次の表は、全国の市町村での「所要の補正」の集計です(平成25年版)。
 「所要の補正」による画地計算法(市町村数)