(更新版・令和7年7月)
固定資産税の「非課税」制度
地方税法には、固定資産税が課税されない「非課税」制度というものが規定されています。
この「非課税」とは固定資産税を「課税しない」ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を「課税してはいけない」という法的な「課税禁止」の制度なのです。
固定資産税の「非課税」制度には、「人的非課税」と「物的非課税」の二つの種類があります。
固定資産税の「人的非課税」
「人的非課税」とは
市町村は、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。これを「人的非課税」と言います。
これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。
これは、国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それがどのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。
<固定資産税の「人的非課税」>-地方税法第348条1項
「 市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」
「人的非課税」の例外
「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。
この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産所在の市町村等に対して、国有資産等所在市町村(都道府県)交付金が交付されています。
<市町村に対する交付金の交付>-国有資産等所在市町村交付金法第2条
「 1.国又は地方公共団体は、毎年度、当該年度の初日の属する年の前年(以下「前年」という。)の3月31日現在において所有する固定資産で次の各号に掲げる固定資産に該当するものにつき、当該固定資産所在の市町村に対して、国有資産等所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)を交付する。」
上記の「各号に掲げる固定資産に該当するもの」とは、次が該当します。
・ その所有する固定資産で他のものに使用させているもの。
・ 空港の用に供する固定資産
・ 国有林野に係る土地
・ 発電所、変電所又は送電施設の用に供する固定資産
・ 水道施設又は工業用水道施設のうち取水施設等の用に供する固定資産
・ 石油の備蓄の確保等に関する国家備蓄施設の用に供する固定資産
固定資産税の「物的非課税」
「物的非課税」とは
<固定資産税の「物的非課税」>-地方税法第348条2項
「 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。
ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」
「物的非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。
地方税法では「物的非課税」とされる固定資産が約70項目規定されています。地方税法第348条2項各号(59項目)に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項(6項目)並びに法附則14条1項2項、14条の2,41条3項、41条8項(5項目)に規定する固定資産に対しては課税することができません。
またこの規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。
※ 物的非課税の詳細は、別表「固定資産税の物的非課税(一覧表)」をご覧ください。70項目全てを表示しています。
「物的非課税」が適用されない場合
(1)有料使用の場合の課税
地方税法第348条2項各号に列挙する資産等に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを同条同項各号の固定資産として使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます。(地方税法第348条2項ただし書)。
例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている 場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。
(2)目的外使用の場合の課税
法第348条2項各号等の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。
<目的外使用の場合の課税>-地方税法第348条第3項
「 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」
「物的非課税」には申告が必要
「物的非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。
この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市町村毎の条例により定められています。
固定資産税の「物的非課税一覧表」
なお、次に固定資産税の「物的非課税一覧表」(70項目)を掲載しますので、参考にしてください。
2025/07/12/18:00