(第112号)固定資産税・土地の「課税誤り」は「住宅用地の見落とし」が多い

(投稿・令和6年3月)

 前号(第111号)では、「固定資産税の家屋がなぜ分かりにくく『課税誤り』が多いのか」をお知らせしましたが、今号は「土地の課税誤り」についてです。

 

ホームページに「課税誤り」が掲載

 ところで、「固定資産税の『課税誤り』がどのくらいあるのか」ということは正直なところ誰にも分かりません。
 課税当局の市町村担当者でも、仮に「課税誤り」があっても気がつかずに課税を続けていると思われます。

 そこで、Googleの検索サイトで「固定資産税・課税誤り・お詫び」とのキーワードで検索しますと、数えられない程の市町村のホームページが登場します。

 ここに、最近(令和6年3月)「固定資産税・課税誤り・お詫び」で検索した結果の一部を掲載します。

※ 「課税誤り」の掲載ホームページがどのくらいあるかチェックしてみましたが、100件(市町村)までは数えることはできましたが、更にあります。
※ なお、市町村によっては「課税誤り情報」は3ヵ月程度で削除している場合もありますので、仮に3ヵ月後に「固定資産税・課税誤り・お詫び」のキーワードで改めて検索すると、別の市町村のホームページが現れてきます。

 そのことは、固定資産税の「潜在的な課税誤りが多い」ことを示しているとも考えられます。

<Googleでの検索「固定資産税・課税誤り・お詫び」結果(一部)>

 土地の「課税誤り」の内容は様々ですが、ホームページを確認しますと、「住宅用地の見落とし」が多いのが分かります。

 ところで昔は、固定資産税の「課税誤り」があっても公にはされませんでしたが、20年以上前頃から、役所でもコンプライアンス(法令遵守)とディスクロージャー(情報開示)を重視すべきことが確認されてきました。

 そのため、固定資産税の業務において「課税誤り」があった場合には、マスコミに情報を伝えるとともに、市町村のホームページにも掲載することが求められているのです。

住宅用地の「負担調整措置」

 土地の固定資産税は、本来は価格(地価公示価格の7割)に税率(一般的には固定資産税1.4%、都市計画税0.3%)を乗じて求めるのですが、現状はそのようにはなってはいません。

 平成6年度に地価公示価格の7割を固定資産税の価格とすることにしたものの、それまでは実質的に10%〜20%程度であったものを一気に上げることが出来ないことから、少しずつ上げていくという経過的措置(「負担調整措置」)が採用されました。

住宅用地は小規模住宅用地と一般住宅用地

 まず住宅用地とは、居住用の家屋の敷地とされている土地のことですが、200㎡までが小規模住宅用地で、それを超える部分が一般住宅用地とされています。

 ここに300㎡の土地の上に、延床面積150㎡の家屋があることを想定します。

 この場合、200㎡までが小規模住宅用地で評価額が1/6となり、残りの100㎡が一般住宅用地1/3となります。

 なお、一般住宅用地の上限は、家屋の延床面積の10倍(この図では1500㎡)までとされています。


 

住宅用地の「負担調整措置」の仕組み

 土地の課税標準額(税額の元になる評価額)は地価公示価格の7割が本来ですが、小規模住宅用地の場合はそれの1/6、一般住宅用地の場合は1/3が本則課税標準額となります。

 この仕組みは平成9年度に成立していますが、その年の課税標準額は本則課税標準額(地価公示価格×7割×1/6又は1/3)よりかなり低い水準にありました。

 そこで、前年度の課税標準額が本則課税標準額に達していない場合(ほとんどがそうですが)には、本則課税標準額に達するまで徐々に引き上げていくことにしました。


 
 まず、前年度の課税標準額(B)が本則課税標準額(A)にどこまで達しているのかをB/Aにより求めます。このB/Aを負担水準と言います。

 仮に負担水準(B/A)が80%であった場合は、「前年度の課税標準額B+(本則課税標準額A×5%」として、本則課税標準額の5%を加えて今年度課税すべき課税標準額(今年度課税標準額)を算出します。

 そして負担水準(B/A)が100%以上となった場合は、今年度課税標準額は本則課税標準額(A)に引き下げます。

非住宅用地の負担調整措置

 固定資産税の宅地系評価では、住宅用地と非住宅用地に分かれています。

 非住宅用地(商業地と更地)の「負担調整措置」の仕組みは、平成9年度の実施から現在まで変わっておりません。

非住宅用地の「負担調整措置」の仕組み


 
 非住宅用地の固定資産税の価格(本則課税標準額)は、地価公示価格の70%となり、これが負担水準では100%となります。

 しかし、これでは以前との乖離が大きいため、更にその70%を非住宅用地の上限とされており、負担水準がこの70%を上回った場合は70%まで引下げることになり、この負担水準70%~100%が「引下げゾーン」となります。

 つまり、非住宅用地では、地価公示価格のレベルからすると70%×70%で49%が上限となります。

 また、負担水準の60%~70%までを「据置きゾーン」とされています。

 そして、負担水準が60%に達しない場合は、今年度課税標準額を「前年度課税標準額+本則課税標準額×5%(引上げゾーン)」とします。


 

「空き家」が取り壊されると3~4倍となる

 前号でも説明しましたが、「空き家」が取り壊されると住宅用地(小規模住宅用地は1/6、一般住宅用地1/3)の軽減措置が無くなります。

 しかし、上図の仕組みのとおり、更地(非住宅用地)としての負担調整措置が適用されるため、単純に6倍となるのではなく「3~4倍」になるのが正解です。

住宅用地は申告が無くとも適用

住宅用地は申告が義務づけられている

 住宅用地の申告については、地方税法では「市町村長は条例により申告させることができる」との「できる規定」ですが、具体的には、市町村の条例により「申告が義務づけ」られています。

<住宅用地の申告>
地方税法第384条1項
「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。(後略)」

 そして、この地方税法の規定を受けて、全国すべての市町村の条例で「申告が義務づけ」られているのです。

なぜ申告が無くとも認められるのか

 そもそも固定資産税(土地、家屋)は、申告が無くとも役所が一方的に評価・課税する賦課課税方式であり、申告は必要無いのです。

 では、なぜ市町村の条例で申告が義務づけられているのかということですが、これは、市町村の職員が「住宅用地の認定誤りを防ぐため」と理解すべきなのです。

 かつては、市町村の税務職員から「条例で申告が義務づけられているのに申告が無いので適用されないのは当然でしょう」と言われたとの相談を受けたこともありますが、最近はどうなのでしょうか。

 実は、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁の判決で「申告が無いからといって、減額特例を適用しないとすることが許されるものではない」との判断が示されています。

 この点については、第20号「住宅用地の減額特例は申告が無くても適用される」で説明していますのでご覧ください。

 
 つまり、住宅用地について、申告が無かった場合でも減額特例がされていない場合、それは「課税誤り」となる訳です。

還付(返還)期間は最高20年間

  それでは、住宅用地の見落としの「課税誤り」があった場合、何年間遡って還付(返還)されるのかということです。

  この点については、第27号及び第28号で説明しています。

 
 まず、地方税法では、徴収し過ぎた税金(過徴収金)の返還請求権は5年で消滅時効になる、つまり5年間遡って還してもらえると定められています。

<還付金の消滅時効>
※地方税法第18条の3
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 ところが、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁判決及び平成22年6月3日の最高裁判決において、市町村側に「過失」があった場合には「国家賠償の請求を認める」との判断がなされたのです。

 この「過失」とは「手抜きがあった場合」とされていますが、過徴収金返還の時効は民法第724条が適用され最高20年間になります。

 仮に20年間の返還時効が認められた場合は、最初の5年間を地方税法上の「還付金」で、それを上回る期間分を国家賠償法・民法による「返還金」と称されています。

 昨今では、国家賠償法の訴訟を経ずに、市町村自らがが「過失」と認めて、最高20年間の還付(返還)を行う場合もあるようです。
 
2024/03/13/18:00
 

 

(第111号)固定資産税の家屋がなぜ分かりにくく「課税誤り」が多いのか

(投稿・令和6年2月)

 今回は、固定資産税の家屋評価方法が「分かりにくく『課税誤り』が多い」ことについてです。

評価方法(再建築価格方式)が複雑

 固定資産税家屋の評価方法は、再建築価格方式が採用されています。

 この再建築価格方式は、昭和34年から昭和36年にかけて固定資産評価制度調査会において審議され、家屋の評価方法として決定されて以来一貫して採用されています。

 この固定資産評価制度調査会においては、①再建築価格方式、②取得価格方式、③賃貸料収益方式、④売買実例価格方式が併せて検討されましたが、①の再建築価格方式が家屋の構成要素として基本的なものであり、その評価の方式化も比較的容易である、との理由で採用されています。

 再建築価格方式は、評価の対象となる家屋と同一のものを、評価する時点において、その場所に新築するとした場合に必要とされる建築費(再建築価格)を求め、この再建築価格に時の経過等によって生ずる損耗の状況による減価を考慮し、必要に応じて需給事情による減価を考慮して家屋の価格を算出します。

 
 しかし実は、この再建築価格方式は「評価の方式化が比較的容易」とありますが、建築の専門家でないと理解できない内容も数多くあり、大変複雑な内容になっています。

 

市町村での新築家屋評価の対応

「再建築費評点数」の査定が難しい

 この再建築価格方式は、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点において新築するとした場合に必要となる建築費を査定することになりますが、実際にその家屋をいくらで建築したのか、あるいはいくらで取得したのかの建築費(取得費)とは異なるもので、あくまでも固定資産評価基準(以下「評価基準」)に従って算出します。

<固定資産税家屋の評価方法>

 ところが、この評価基準の仕組み自体が複雑で、特にこの図の「評点数」→「再建築費評点数」の査定が最大の難関となります。

「再建築評点数」を求める作業

 再建築価格方式は「実際にその家屋をいくらで建築したのか、あるいはいくらで取得したのかとは異なる」のですが、「再建築費評点数」を求めるためには「当該新築家屋の内容を把握する」ことが必要になるため次の作業を行います。

  家屋所有者に調査協力を依頼し、新築家屋の見積書や竣工図等を借用し情報を取得します。
  実際に当該家屋に赴き、用途別区分とともに家屋の外観や内部の使用資材等を確認します。
  借用・保存した見積書等から評価基準の部分別区分に照らして、必要な資材を拾い出し部分別分類を行います。.
  その上で、市町村が有する評価システムに評価基準の評点項目と使用資材量の数値を入力して評点数を算出します。

 いかがでしょうか、大変ですが評価基準による再建築価格方式は、このような手順が必要とされているのです。

市町村の組織対応について     

市町村の職員は事務職で異動も頻繁

 そもそも市町村の固定資産課税部門の職員は事務職が殆どで、建築部門の知識を有していないのが現実です。

 例えば、建築専門用語として「屋根小屋組(屋根を支えるために設けた骨組み)」の名称だけでも、次のようなものがあります。

 「敷桁(しきげた)、小屋梁(こやばり)、小屋束(こやづか)、小屋貫(こやぬき)、火打梁(ひうちばり)、小屋折違(こやすじかい)、母屋(もや)、棟木(むなぎ)、隅木(すみぎ)、谷木(たにぎ)、垂木(たるき)、陸梁(ろくばり)、合掌(がっしょう)、真束(しんづか)、対束(ついづか)、釣束 (つりづか)、方杖(ほうづえ)」。

 しかも、通常4~5年で職場異動する職員が多いことから、組織として固定資産税家屋評価の知識を蓄積するのも十分ではないことになります。

市町村の固定資産税評価の対応

 仮に固定資産税職員が初心者の場合には、家屋の評価作業は難しいものです。

 所有者から提出された見積書を見て、記載されている資材・機器のうちどれが固定資産税の家屋評価に必要なのかを見分けること、必要な資材であると理解してもそれがどこに使用されているのか(上部分なのか下地材なのか等)、資材のグレードや規格を判断する等々の作業が必要となります。

 そこで、総務省及び一般財団法人資産評価システム研究センターでは、全国の市長村固定資産税職員に対する研修を積極的に進めています。

 また、市町村によっては、固定資産税の専門的な職員(「専任職」)や組織(「固定資産税センター」)等を設ける工夫もされています。
(※「専任職」や「固定資産税センター」は仮名です。)

 ところで、政令指定市以外の市町村では、300㎡あるいは500㎡以上の非木造家屋の評価は県(県税事務所)が対応しています。課税権は市町村長なのですが、家屋評価は県に委託しているのです。

 これは、地方税法第73条の21の1項に「道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。(以下略)」が根拠規定になります。

家屋の「課税誤り」の検証

 以上のような、固定資産税家屋の評価や市町村組織等からすると、残念ながら「課税誤り」が生じることも想定できます。

 例えば、Google検索ページで「固定資産税、課税誤り、お詫び」とのキーワードを入力すると、「課税誤り」があった市町村のホームページが表示されます。
 これは、「課税誤り」のあった市町村では公表する義務があるからですが、(推測の域を出ませんが)明らかになっていない「潜在的な課税誤り」もあるのではないでしょうか。

「課税誤り」の検証には新築時資料が必要

 固定資産税の家屋評価では、新築家屋の評価が複雑で大変ですが、在来(中古)家屋の評価はそれほどでもありません。

<在来家屋の評価>

 在来家屋の評価は、①前基準年度再建築費評点数×②再建築費評点補正率×③経年減点補正率となります。

 ここで、①は前基準年度(3年前)の評価額で、②は3年毎に東京都23区を基準とした建設物価率が総務省から示され、③は評価基準の該当表から補正率を適用します。 
 したがって、①の前基準年度再建築費評点数は「新築時の評価」を引き継いでいることになります。

 よく「固定資産税評価の見直しサポート」の依頼者様から、「所有している中古ビルの評価額が高いのでは」とのご相談があります。そこで、審査申出を行った場合、『在来家屋の評価として問題無い』との審査結果が出されることが多くあります。

 つまり、前基準年度再建築費評点数(新築時評価を引き継いでいる)が正しいものとの前提で審査されている訳です。

 これでは「ビルの評価そのものが正しいのか否か」の審査にはなっていません。そこで、新築時の評価計算書を求めても、『10年以上前の資料は廃棄して存在しない』との回答がある場合もあります。これでは、当該ビルの評価が正しいのかどうかをチェックすること自体できなくなる訳です。

家屋評価簡素化の動き

 これまで、総務省及び一般財団法人資産評価システム研究センターにより、「家屋評価の簡素化」の検討が進められてきています。

 その一つは「広域的比準評価方式」です。

 これは、都道府県等の一定の地域内に所在する家屋を、その実態に応じ、構造、程度、規模等に区別し、各区分ごとに標準とすべき家屋を標準家屋として定め、そこから比準して評価する方式ですが、非木造家屋にも適用している市町村もあります。

 そして、評価基準の「用途別区分」と「部分別区分」の見直し(整理統合)です。
 令和6年度においては、特に木造家屋の用途別区分が13種類であったところが7種類に整理統合されました。

 また、評価計算のデジタル化の開発(一般財団法人資産評価システム研究センターの「レクパス・オート5」等)も進められています。

 しかし、これらの簡素化はいずれも再建築価格方式におけるもので、必ずしも「抜本的な簡素化」になる訳ではありません。

 筆者は、以前から家屋評価の簡素化では「取得価格方式を採用すべき」と主張していますが、これについては第63号「『家屋評価の簡素化』の検討と今後の在り方」をご覧ください。

固定資産税業務の改革の動き

 現在、家屋評価だけでなく固定資産税業務全体の改革の動きが総務省及び各市町村で進められ始めています。

 固定資産税業務の標準化やIT社会に即したデジタル化並びに外部業者への委託等ですが、これらについては課題(問題点)もありますので、別号において報告する予定です。
 
2024/02/13/11:00
 

 

(第24号)固定資産評価は相続税、不動産取得税、登録免許税でも活用

(投稿・平成25年5月-見直し・令和6年4月)<過去閲覧数10位>

 固定資産税の価格(評価額)は、他の税金の評価でも活用されています。

 では、どのような税金に活用されているのでしょうか。

 固定資産税の価格は、①相続税の「倍率方式による評価」、②相続税の「家屋の評価」、③不動産取得税の「取得した不動産の価格(課税標準額)」、④登録免許税の「不動産の課税標準額」の評価に用いられています。

相続税の「倍率方式による評価」

 相続税の宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式がありますが、主に市街化調整区域(非住宅地区)内の宅地の相続税評価では、倍率方式が採用されています。

 この倍率方式とは、固定資産税の価格(評価額)に、地域ごとに決められた倍率(例えば1.1とか1.2など)を乗じて評価する方法です。

 農地や山林、原野もこの倍率方式が採用されています。

 「相続税倍率表」

 倍率地域の相続税(宅地)評価額=固定資産税評価額×倍率

※(参考)相続税の建物の評価については、固定資産税の家屋評価がそのまま用いられます。

相続税の「家屋の評価」

 相続税の家屋の評価は、固定資産税評価額そのものを用います。つまり倍率は1.0です。

 自用の家屋の相続税評価=固定資産税評価額×1.0
 貸家の相続税評価=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
 ※借家権割合…東京国税局管内は30%

 ところで、固定資産税家屋の建築費は、総務省で建築専門家等の作業部会を経て、3年に1度決定されています。

 相続税の解説書では、固定資産税の建築費は市場相場の5割とか6割などと説明されていますが、市場相場に対する割合が最初から決められている訳ではありません。一つの「目安」と理解するのが妥当であると思います。

不動産取得税の「取得した価格」

 土地や家屋を購入したり、家屋を建築するなどして不動産を取得したときに、不動産取得税が課税されます。

 この不動産取得税の「取得した不動産の価格」も固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)とされています。

 令和6年3月31日までに取得した土地及び住宅の税率は3%です。ただし、宅地(住宅のある土地)の場合は1/2の負担調整措置が講じられています。

 宅地の不動産取得税=固定資産税評価額×3%×1/2

 不動産取得税には特例措置、免税点、非課税等の規定があります。また、申告時期などは都道府県(取得した不動産の所在地)によって取扱いが異なる場合があるので、ご注意ください。

登録免許税の「不動産の課税標準額」

 土地や建物の所有権移転登記、建物の所有権保存登記の際に、登録免許税が課税されます。

 土地の所有権移転登記では、「不動産の課税標準額」に1000分の20の税率が乗じられますが、ここでも固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)が用いられます。

 なお、登録免許税も令和6年3月31日まで軽減措置があり、1000分の15とされます。

 土地所有権移転の登録免許税=固定資産税評価額×15/1000

 不動産の売買では、仲介の不動産業者が諸費用として計算し、司法書士が登記手続きを進めるのが一般的ですので、納税している感覚が無いかもしれません。

 なお、新築建物は未だ固定資産課税台帳に登録された価格が無いため、法務局が定める「新築建物課税標準価格認定基準表」により計算されます。

 
2022/05/16/17:00
 

 

(第107号)固定資産税の「非課税」「減免」「課税免除及び不均一課税」について

(投稿・令和5年11月-見直し・令和6年2月)
※今回は過去閲覧歴10位までの第3位(22号)、第9位(13号)の「非課税」と第4位(15号)の「減免」をまとめ「非課税、減免、課税免除及び不均一課税」を一覧表にしました。

 なお、それぞれの詳細については、次の各号をご覧ください。

 
<「非課税、減免、課税特例及び不均一課税」一覧表>

 
2023/11/20/14:00
 

 

(第19号)固定資産税の家屋とはどういうものか(基本編)

(投稿・令和1年-見直し・令和6年2月)<過去閲覧数7位>

 今号は、固定資産税の家屋で「固定資産税の家屋とはどういうものか」という基本編ですが、その前に、家屋の税金としての歴史を簡単に見ていきます。

固定資産税家屋の歴史

 固定資産税としての家屋は、昭和24年にシャウプ勧告が出されて、昭和25年に地方税法が制定され、そこで市町村税として土地、償却資産とともにスタートしました。
 それ以前は、明治15年に家屋税が大府県(東京、大阪、京都、神奈川)に対して創設され、明治21年にこれらの府県の市町村に家屋税付加税が、その後明治23年に全国で課税されるに至っています。

 このように、現在の税としての家屋は、土地(地租)、償却資産(船税、電柱税、軌道税)に対する課税とともに、長い歴史を有しています。

固定資産税家屋の定義

 そこで、固定資産税の家屋とは何かということですが、地方税法341条に次のとおり規定されています。

<固定資産税に関する用語の意義(家屋)>
※地方税法341条第3号
「家屋とは、住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」

 この用語の定義は、地方税法創設から一貫して変わっていませんが、これは単に種類を列挙して間接的に定義しているにすぎません。

 では、具体的に固定資産税の家屋とは何かということですが、不動産登記法における建物と意義を同じくする、とされています。次の「地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)」は総務省の通知ですが、次のとおり説明されています。

※地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)
「 家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること。」

 そこで、「不動産登記法上の建物」についてみていきます。

不動産登記法の建物とは

 不動産登記法の建物は、不動産登記規則(113条)で12種類、不動産登記事務取扱手続準則(80条)で25種類、併せて37種類が規定されています。ただし、これにより難い場合には、建物の用途により適当に定めるものとする、とされています。

<不動産登記規則113条(12種類)>
・ 居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所

<不動産登記事務取扱手続準則80条(25種類)>
・ 校舎,講堂,研究所,病院,診療所,集会所,公会堂,停車場,劇場,映画館,遊技場,競技場,野球場,競馬場,公衆浴場,火葬場,守衛所,茶室,温室,蚕室,物置,便所,鶏舎,酪農舎,給油所

固定資産税家屋としての要件

 固定資産税の課税客体となる家屋の認定に当たっては、次の(1)から(5)の要件が必要とされています。

(1)屋根を有すること

 屋根は、雨露をしのぐために必要不可欠です。不動産登記規則111条では「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること」(外気分断性)とあります。
 ただし、高架下の建造物については、家屋として評価すべき屋根はないが、屋根に相当する構築物があるため家屋として取り扱われます。

※高架下の建造物は家屋として認定

(2)周壁を有すること

 家屋は、周壁により内側に一定の利用空間が発生し、外気分断性有りと判断されます。
 ここで周壁を有するとは、概ね3面以上に周壁がある(その面の3分の2程度以上の部分に壁があることをもってその面は周壁を有する)ことをいいます。
 ただし、周壁については、厳密な意昧での外気との分断がされていなくても、建造物の使用目的、利用状況等を考慮して外気分断性があると判断される場合もあります。例えば、駐車場では外周壁が腰壁程度しかないものが見受けられますが、外気分断性があると認められます。

※3面に周壁を有するので家屋として認定

(3)土地に定着した建造物であること(土地への定着性)

 土地に定着した建造物であるということは、建造物が建造されている土地から容易に移動できないことをいいます。
①建物の大きさ、重さ、構造、基礎の施工の程度、 建築設備の状況により物理的または経済的に他の場所に移動させて利用することが容易でないこと
②建物の用途、目的からしてある程度の期間(通常賦課期日をはさんで1 年以上)継続し利用することが予定されていること
の2つの要件を充足している建物の場合には、通常、土地に定着している建造物といえます。
 土地に対する定着性が欠ける建造物と考えられるものは、次の例示によります。
ア   容易に運搬できる切符売場、入場券売場等
イ   単に置いた程度のスチール製の物置、簡易便所等

(4)家屋本来の用途に供しうること(用途性)

 家屋本来の目的は、その空間を居住、作業、貯蔵、営業、保管等の用途に供しうるものでなくてはなりません。
 次のようなアーケードは、道路の用途を高めるものであって家屋本来の目的とは異なるので家屋とは認定できません。

※アーケードは家屋として認定しない

(5)恒久性を有すること

 不動産登記法準則第77条に「半永久的な建造物と認められるものに限る」とあるように、家屋は、恒久性を有することが必要です。
 なお、特殊な構造等のものについては、個々の利用状況等も考慮して判断することになります。
 家屋として認定しないものを例示するとつぎのものがあります。
ア 園芸用ハウス(温室)で屋根、周壁がビニール・シートのもの
イ ビニール・シート等で葺き上げた車庫
ウ 簡易な鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等

(※)賦課期日に完成していること

 これは家屋の意義とは異なりますが、建築中の建物がどの程度まで完成していれば家屋の課税対象となるかについては、昭和59年の最高裁判決により「固定資産税の性質目的及び地方税法の規定の仕方からすれば、新築の家屋は、一連の新築家屋が完了したときに、固定資産税の課税客体となる」とされ、1月1日現在で(完全に)完成した建物となります。

2022/5/8/13:30