(1号R2)そもそも固定資産税とはどのようなものか—市長村の基幹税—

(投稿・平成25年-Review1・令和4年10月、Review2・令和4年11月)

 今回は、本講座の1号として「そもそも固定資産税はどのようなものか」の解説です。まず基本的事項を確認して、次号以降に具体的な内容を解説していくこととします。

固定資産税は土地、家屋、償却資産

 では、そもそも固定資産税とはどのような税なのでしょうか?

<固定資産税とは>
※地方税法341条1項1号
「固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。」

 固定資産税は、シャウプ勧告を契機として行われた昭和25年の地方税制度の根本的改革に伴い創設されましたが、当時から、土地、家屋、償却資産の3つの資産に課税される市町村税です。
 固定資産税は、固定資産(土地、家屋及び償却資産)の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づき、資産価値に応じて、所有者に対し課税される財産税です。

 ここに、地方税法の「用語の意義」を引用します。

<土地とは>
※地方税法341条1項2号
「土地 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。」

<家屋とは>
※地方税法341条1項3号
「家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」

<償却資産とは>
※地方税法341条1項4号
「償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のもの(これに類する資産で法人税又は所得税を課されない者が所有するものを含む。)をいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

 固定資産税は、どの市町村にも広く存在する資産を課税客体としており、税源の偏りが小さく市町村税としてふさわしい基幹税目であります。
 この図にありますように、固定資産税は都市計画税(市街地的地域の目的税です)と併せると、市長村税のうち約47%を占めています。

 ところで、固定資産税は「土地と建物に課税される税金」と答える人がほとんどですが、これは正確ではありません。

 固定資産税では、建物ではなく家屋と呼びます。
 また、固定資産税とは別に償却資産税があると勘違いされがちですが、償却資産税という税目はありません。償却資産税ではなく「固定資産税のうちの償却資産」というのが正解です。

納税義務者は1月1日の所有者

 固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日(これを賦課期日といいます)における、固定資産の所有者(正確には登記簿上の所有者又は固定資産補充課税台帳に登録されている者)となります。

<固定資産税の納税義務者>
※地方税法343条
「1 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録がされている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録がされている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第348条第1項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
3 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

 ところで、令和2年度の地方税法改正により、所有者以外に使用者にも課税する「使用者課税」が可能となっています。それまでは、震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合に限って「使用者を所有者とみなす」ことができたのですが、次の5項が追加され「存在が不明である場合」の所有者課税が認められました。

<使用者課税>
※地方税法343条5項
「市町村は、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお固定資産の所有者の存在が不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」
 

 

固定資産税1.4%、都市計画税0.3%

 次に固定資産税及び都市計画税の税率ですが、通常、固定資産税は1.4%、都市計画税0.3%と言われています。
 しかし、正確に言いますと、固定資産税の1.4%は標準税率で、都市計画税の0.3%は制限税率(上限)とされています。

<固定資産税の税率>
※地方税法359条
「1 固定資産税の標準税率は、100分の1.4とする。」

 固定資産税の税率は全国ほぼ全てが1.4%とされていますが、これを超える場合は、市長村の条例で定める必要があります。1.4%を超える税率が採用されている市は、北海道夕張市が1.45%とされています。

<都市計画税の税率>
※地方税法702条の4
「都市計画税の税率は、100分の0.3を超えることができない。」

 都市計画税は目的税ですが、税率は0.3%を超えることはできません。
 なお、東京都23区の都市計画税の税率は、住宅用地の範囲に限り都税条例により減額特例(0.15%)が行われています。

役所が一方的に評価・課税する賦課課税

 固定資産税は全国どこでも土地や家屋を所有していれば(非課税を除いて)課税される資産税で、基本的に役所が一方的に評価し課税するもので、これを賦課課税と言います。(償却資産は原則として申告を前提にしています。)

 これに対して相続税は、申告に基づく申告課税と言います。

 全国で課税対象となる固定資産税の土地の数はおおよそ1億8千万筆、家屋は約6千万棟とされ、基本的に全国すべての土地及び家屋が評価され課税されます。

 そのため固定資産税評価は「大量一括評価」あるいは「大量画一評価」とも呼ばれ、そこでは同じ基準の下に同じ方法で評価されることが要請されます。

 その基準となるのが地方税法と固定資産評価基準です。そして地方税法と固定資産評価基準の下に市町村ごとに、評価関係では「事務取扱要領」が定められ、課税関係は条例、規則が定められています。
 
2022/04/12

 

(86号)「物的(用途)非課税」の例(3)-「宗教法人の境内建物と境内地」「墓地」(「納骨堂」は不可)

(投稿・令和4年10月)

 固定資産税の非課税については、第13号「固定資産税が課税されない非課税制度とは」で紹介しています。

 「物的(用途)非課税)」については、地方税法で69項目が列挙されています(「物的(用途)非課税一覧表」(PDF)参照)が、今号では、そのうちの「宗教法人の境内建物及び境内地」及び「墓地」について紹介します。

 また、「納骨堂」は「宗教法人の境内建物及び境内地」に該当するのかについてもみていきます。

 

「宗教法人」「墓地」に関する関係法令

「宗教法人」の非課税の範囲

 「宗教法人」及び「墓地」の固定資産税の非課税の範囲は、地方税法348条2項三、四に規定されています。

<「宗教法人の境内建物及び境内地」「墓地」の非課税>
※地方税法348条2項三及び四
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
……………
三.宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む。)
四.墓地 」

 また都市計画税についても、同法702条の2第2項「市長村は法348条2項の規定により固定資産税を課することができない土地又は家屋に対しては、都市計画税を課することができない」旨の規定があります。

宗教法人法の規定

 では、宗教法人法による(1)宗教団体の定義、(2)境内地建物及び境内地の定義、(3)公益事業その他の事業、に関する規定はどうなっているかです。

(1)宗教団体の定義
 宗教団体の定義は、宗教法人法2条に規定があります。

<宗教団体の定義-宗教法人法2条>
「この法律において「宗教団体」とは、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とする左に掲げる団体をいう。
一 礼拝の施設を備える神社、寺院、教会、修道院その他これらに類する団体
二 前号に掲げる団体を包括する教派、宗派、教団、教会、修道会、司教区その他これらに類する団体」

 また、同法4条には法人格の定義があります。
「1. 宗教団体は、この法律により、法人となることができる。
2.この法律において「宗教法人」とは、この法律により法人となつた宗教団体をいう。」

(2)境内地建物及び境内地の定義
 境内地建物及び境内地の定義は、宗教法人法3条に規定があります。

<境内建物及び境内地の定義-宗教法人法3条>
「この法律において「境内建物」とは、第一号に掲げるような宗教法人の前条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の建物及び工作物をいい、「境内地」とは、第二号から第七号までに掲げるような宗教法人の同条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいう。
一.本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)
二.前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地(立木竹その他建物及び工作物以外の定着物を含む。以下この条において同じ。)
三.参道として用いられる土地
四.宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地(神せん田、仏供田、修道耕牧地等を含む。)
五.庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
六.歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
七.前各号に掲げる建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地」

(3)公益事業その他の事業
 宗教法人法6条には、宗教法人は公益事業を行うことができる旨の規定があります。

<公益事業その他の事業-宗教法人法6条>
「1.宗教法人は、公益事業を行うことができる。
2.宗教法人は、その目的に反しない限り、公益事業以外の事業を行うことができる。この場合において、収益を生じたときは、これを当該宗教法人、当該宗教法人を包括する宗教団体又は当該宗教法人が援助する宗教法人若しくは公益事業のために使用しなければならない。」

 以上、宗教法人法の規定を紹介してきましたが、では、次の図のようなお寺の駐車場はどうでしょうか。
 この駐車場は参詣者用ですので、お寺の宗教法人が「もっぱらその本来の用に供する土地」として非課税となります(但し、有料ではないことが必要です)。

 

「墓地」の非課税の範囲

 上記のとおり、地方税法348条2項四には、固定資産税の非課税として「墓地」が規定されていますが、この348条2項四では運営主体や条件の規定はなく単に「墓地」とだけ規定されているのみです。

 固定資産税の物的(用途)非課税は、これらの固定資産が供されている用途の特質にかんがみ非課税とされているもので、原則としては(規定で所有者及び固定資産が特定されていない場合は)、所有者が誰であろうと非課税とされます。

納骨堂に関する非課税の適否

 納骨堂とは、「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事を受けた施設」をいいます(墓地、埋葬等に関する法律2条6号)

平成28年5月24日東京地裁判決

 近年では、お墓に埋葬するのではなく、納骨堂を利用する傾向が多く見られますが、平成28年5月24日の東京地裁判決において、この納骨堂に関係する判決が出されています。

 この訴訟は、宗教法人が納骨堂として使用している土地及び建物が、固定資産税が非課税となる「境内建物及び境内地」に当たるかどうかが争われたものですが、原告の宗教法人が被告・課税庁(東京都)に敗訴したという内容です。

 東京都は、寺務所、本堂、庫裏等は非課税としましたが、参拝堂、納骨堂、客殿等の建物部分及びこれに対応する土地面積相当分については固定資産税を課税する賦課決定処分をしました。

 そして、東京地裁は、この東京都の賦課決定処分を認めました。
 つまり、納骨堂は「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地には該当しない」と判断された訳です。

<平成28年5月24日東京地裁判決(一部)>
「(本件非課税対象外部分)の使用状況を,一般の社会通念に基づいて外形的,客観的にみると,原告は,本件非課税対象外部分につき,A宗の教義をひろめ,儀式行事を行い,信者を教化育成するという主たる目的のために使用していないとはいえないが,当該目的のために必要な,本来的に欠くことのできない建物の一部であると評価することにはやや困難がある。また,仮にそのような評価が可能であるとしても,本件納骨堂の使用者については宗旨宗派を問わないとされているのみならず,本件建物においては,原告以外の宗旨宗派の僧侶等が主宰する法要などの儀式行事が行われることが許容され,その場合,使用者は原告に対して施設使用料を支払うこととされ,実際にも,それが例外的とはいえない割合で行われており,原告は,上記のような使用者を訴外会社を通じて広く募集していることに照らすと,原告が,上記の各部分(本件非課税対象外部分)を,専ら,宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるとは認められないといわざるを得ない。」

 

納骨堂に関する若干の検討

 正直なところ、宗教法人法で公益事業を認めているにも拘わらず、ここまで厳しく判断されるのか、と驚きました。

 本件の対象となっている納骨堂及びその利用は今後も増加することが予想されますが、348条2項四「墓地」と比較すると、348条2項三の「宗教法人の境内建物及び境内地」の規定は、たしかに議論を呼びやすい内容ではあります。

 このような事態を明確にするためにも、「墓地」のみではなく、「納骨堂」をいかに位置づけるか等、固定資産税の物的(用途)非課税の規定を見直す時期にあるのではないでしょうか。
 
2022/10/30/19/12

 

(22号R1)「物的(用途)非課税」の例(2)-社会福祉法人等による「老人福祉施設」

(投稿・平成25年-Review1・令和4年10月)

 固定資産税の非課税については、第13号「固定資産税が課税されない非課税制度とは」で紹介しています。

 「物的(用途)非課税)」については、地方税法で69項目が列挙されています(「物的(用途)非課税一覧表」(PDF)参照)が、今号では、そのうちの社会福祉法人等による「老人福祉施設」について紹介します。

 

「老人福祉施設」に対する非課税

「老人福祉施設」の非課税内容

 「老人福祉施設」の非課税については、地方税法第348条2項十の五に規定されています。

<固定資産税の「老人福祉施設」非課税>
※地方税法348条2項十の五
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
……………
十の五 社会福祉法人その他政令で定める者が老人福祉法第五条の三に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの」

 ここでは、所有者が「社会福祉法人その他政令で定める者」で、固定資産が「固定資産で政令で定めるもの」とされ、「者」と「もの」それぞれの政令を確認する必要があります。

 まず、「老人福祉施設」で非課税が認められる者は、必ずしも運営主体が社会福祉法人に限りません。
 地方税法施行令第49条の13では、1項で(1)の運営する「者」が、2項で(2)の固定資産が非課税となる「もの」とされています。

(1)運営主体
①社会福祉法人
②社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
③公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、消費生活協同組合、健康保険組合、国民年金基金、商工組合、医療法人等
④老人介護支援センターの届出をした者

(2)非課税となる固定資産
a.①が経営する養護老人ホーム
b.①②が経営する特別養護老人ホーム
c.①②③が経営する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設軽費老人ホーム、老人福祉センター
d.①②③④が経営する老人介護支援センター

 なお、社会福祉法人はそもそも地方税法348条2項十の五で規定されていますので、地方税法施行令では「社会福祉法人以外の者」が規定されています。

<①老人福祉施設等を運営する者-運営主体>
※地方税法施行令第49条の13第1項
「法第348条第2項第十の五に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
1.老人福祉法附則第6条の2の規定により社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
2.公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、農業協同組合連合会(前号に掲げるものを除く。)、消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会、健康保険組合、健康保険組合連合会、企業年金基金、確定給付企業年金法に規定する企業年金連合会、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、国民健康保険組合、国民健康保険団体連合会、国民年金基金、国民年金基金連合会、商工組合(組合員に出資をさせないものに限る。)、商工組合連合会(会員に出資をさせないものに限る。)、石炭鉱業年金基金、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団及び医療法人
3.前2号に掲げる者以外の者で老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターの設置について同法第15条第2項の規定による届出をしたもの」

<②老人福祉施設等で非課税となる固定資産>
※地方税法施行令第49条の13第2項
「法第348条第2項第十の五に規定する政令で定める固定資産は、次に掲げる固定資産とする。
1.社会福祉法人が経営する老人福祉法第二十条の四に規定する養護老人ホームの用に供する固定資産
2.社会福祉法人及び前項第1号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の5に規定する特別養護老人ホームの用に供する固定資産
3.社会福祉法人並びに前項第1号及び第2号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の2の2に規定する老人デイサービスセンター、同法第20条の3に規定する老人短期入所施設、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム及び同法第20条の7に規定する老人福祉センターの用に供する固定資産
4.社会福祉法人及び前項各号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターの用に供する固定資産」

 特に「医療法人」(地方税法施行令第49条の13第1項2号の最後尾)が運営する「老人福祉施設等の用に供する固定資産」の非課税については、数年前ですが、かなりの市町村で課税誤り(非課税にもかかわらず課税していた)があった、とそれぞれの市町村のホームページで明らかにされています。
 某市町村の発表によりますと、「平成11年度地方税法改正により非課税範囲が拡大した(「医療法人」が追加された)ものの、市町村職員の理解が不十分であったため、非課税にもかかわらず課税を行った」とのことです。

 なお、株式会社が経営する「老人福祉施設」は非課税にはなりません。

 

「老人福祉施設」に土地を貸している場合

 ところで、固定資産税が非課税になるのは、運営法人等が固定資産を所有している場合に限りません。土地所有者が、運営法人等の利用の用に供するために土地を無償で貸している場合、その土地も非課税になります。

 ただし、有償で土地を貸している場合は、その土地は固定資産税が課税されます。
 例えば、次の図のように、社会福祉法人(A)が「老人福祉施設」を建設して運営し、その土地を(B)所有者から借りている場合です。
 ※ 社会福祉法人(A)が(B)から土地を借りている場合

 
 社会福祉法人が土地と家屋を所有し、目的の用途に沿っていれば、当然、土地、家屋ともに固定資産税は非課税となります。
 しかし、固定資産がその目的以外に使用される場合は、固定資産税は非課税となりません。地方税法348条3項にその「課税規定」があります。

<課税規定-地方税法348条3項>
「3.市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」
 
2022/5/14/13:00

 

(21号R1)「物的(用途)非課税」の例(1)-私道でも「公共の用に供する道路」であれば非課税

(投稿・平成25年-Review1・令和4年10月)

 第13号で、固定資産税の非課税としては、「人的非課税」と「物的非課税(用途による非課税)」があり、「物的(用途)非課税)」として69項目が地方税法上規定されていると紹介しました。

 
 今回は、私道が「物的(用途)非課税)」となる場合の要件及び手続きを解説します。

「公共の用に供する道路」は非課税

 道路は通常、国道、県道、市町村道等のいわゆる公道ですので、固定資産税では公道は「人的非課税」になっています。

 それに対して、私道は個人の方の所有土地ですので、一般的には固定資産税の課税対象になります。

 しかし、その私道が「公共の用に供する道路」であれば、非課税になります。

<固定資産税の「私道」非課税>
※地方税法第348条2項五
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
……………
五.公共の用に供する道路、運河用地及び水道用地」

「公共の用に供する道路」私道とは

 では、「公共の用に供する道路」としての私道とは、どのような道路なのでしょうか。

 「公共の用に供する道路」の要件を満たす私道は、①利用上の制約を設けず不特定の人の利用に供されていること、②客観的に道路として認定できる形態を有することが必要です。

 具体的には、(1)「通り抜け私道」(2)「行止り私道」(3)「コの字型私道」(4)セットバック部分の私道になります。
 なお、(4)のセットバック部分は、道路法の道路又は(1)から(3)の私道と一体となって道路の効用を果たしている土地であることが必要です。

 「私道の種類」

(1)「通り抜け私道」
 「通り抜け私道」は、起終点が公道に接していること、幅員が1.8m以上であること、不特定多数の人に利用されていることが必要です。

(2)「行止り私道」
 「行止り私道」は、2軒以上の家屋に利用されていること、幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることの要件が必要となります。

(3)「コの字型私道」
 「コの字型私道」も(2)の「行止り私道」と同じく、2軒以上の家屋に利用されていること、幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることの要件が必要となります。

(4)「セットバック部分」
 幅員4mに満たない公道に面している土地の「セットバック部分」で、一体となって道路の効用を果たしているものです。公道と一体となって道路として使われていない場合は非課税とはなりません。
 なお、「セットバック部分」の道路部分が分筆されていれば問題ありませんが、分筆されてない場合でも、地積測量図などの資料を添えて申請すれば、「公共の用に供する道路」として非課税を認めてもらえます。
 

 

「公共の用に供する道路」は申告が必要

 以上の私道を「公共の用に供する道路」として認めてもらうためには、市町村(東京都23区は都)に申告をする必要があります。

 ここに、例として東京都の条例と申告書を紹介します。

<東京都条例・固定資産税に係る非課税申告>
※東京都都税条例施行規則第12条の14
「法第348条第2項本文、法附則第14条又は法附則第41条第8項(固定資産税に係る部分に限る。)の規定の適用を受けるべき者は、土地については第1号、第2号、第5号及び第6号に、家屋については第1号、第3号、第5号及び第6号に、償却資産については第1号及び第4号から第6号までに掲げる事項を記載した申告書を、当該土地、家屋又は償却資産を別の者に無料で使用させている場合には、その旨を証明する書類を当該申告書に添付して、知事に提出しなければならない。
1.住所及び氏名又は名称
2.土地の所在、地番、地目及び地積並びにその用途
3.家屋の所在、家屋番号、種類、構造及び床面積並びにその用途
4.償却資産の所在、種類及び数量並びにその用途
5.当該土地、家屋又は償却資産を法第348条第2項各号、法附則第14条又は法附則第41条第8項に規定する用に供し始めた時期
6.前各号に掲げるもののほか、知事において必要があると認める事項」

<東京都「公共の用に供する道路」申告書>

 
2022/05/12/10:00

 

(13号R1)固定資産税が課税されない非課税制度とは

(投稿・平成25年-Review1・令和4年10月)

 固定資産税は、毎年1月1日の固定資産の所有者が納税義務者となり、課税されます。
 しかし、地方税法では、固定資産税が課税されない非課税制度というものが規定されています。

 この非課税とは固定資産税を『課税しない』ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を『課税してはいけない』という法的な課税禁止の制度なのです。

 では、この非課税制度とはどのようなものなのでしょうか。

 非課税制度には、二つの種類があります。
 非課税の範囲を定める場合に、①その根拠を固定資産の所有者の性格に求めている「人的非課税」と、②固定資産それ自体の性格、用途の面に求めているもの「物的非課税」とに区別することができます。

固定資産税の「人的非課税」

「人的非課税」とは

 これは、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。

<固定資産税の「人的非課税>
※地方税法第348条1項
「市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

 これは、国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それが、どのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。

「人的非課税」の例外

 「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。

 この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産所在の市町村等に対して、国有資産等所在市町村(都道府県)交付金が交付されています。

<国有資産等所在市町村交付金法>
第2条(市町村に対する交付金の交付)
「国又は地方公共団体は、毎年度、当該年度の初日の属する年の前年(以下「前年」という。)の3月31日現在において所有する固定資産で次の各号に掲げる固定資産に該当するものにつき、当該固定資産所在の市町村に対して、国有資産等所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)を交付する。
一.当該固定資産を所有する国又は地方公共団体以外の者が使用している固定資産
二.空港の用に供する固定資産又は国が自衛隊の設置する飛行場若しくは日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第2条第4項(a)の規定に基づき日本国政府若しくは日本国民が使用する飛行場において一般公衆の利用に供する目的で整備し、かつ、専ら一般公衆の利用に供する施設の用に供する固定資産
三.国有林野の管理経営に関する法律第2条第1項の国有林野に係る土地
四.発電所、変電所又は送電施設の用に供する固定資産
五.水道法第3条第8項に規定する水道施設若しくは工業用水道事業法第2条第6項に規定する工業用水道施設のうちダム以外のものの用に供する土地又は水道若しくは工業用水道の用に供するダムの用に供する固定資産で、政令で定めるもの
六.石油の備蓄の確保等に関する法律第29条に規定する国家備蓄施設の用に供する固定資産」

固定資産税の「物的(用途)非課税」

 固定資産税の非課税で注目すべきは、むしろ「物的(用途)非課税」の方です。

「物的(用途)非課税」とは

 「物的(用途)非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。

 これらの固定資産以外にも、地方税法では「物的(用途)非課税」とされる固定資産が69項目が規定されています。地方税法第348条2項各号に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項に規定する固定資産に対しては課税することができません。
 またこの規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。

<固定資産税の「物的(用途)非課税」>
※地方税法第348条2項(本項のみ掲載
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」

 ここに「物的(用途)非課税」の一覧を掲げます。

 
※なお2ページ~10ページはPDFでご覧ください。

 

「物的(用途)非課税」が適用されない場合

①有料使用の場合の課税
 地方税法第348条2項各号に列挙する資産に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを同条同項各号の固定資産として使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます(地方税法第348条2項ただし書)。

 例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。

②目的外使用の場合の課税
 法第348条2項各号の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。

<目的外使用の場合の課税>
※地方税法第348条第3項
「3.市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使 用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

 これは、非課税とすべきかどうかは、単なる名目や形式によることなく、その使用実態に着目すべきものであるからです。
 

 

「物的(用途)非課税」には申告が必要

 なお、「物的(用途)非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。
 この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市長村毎の条例により定められています。

<地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)第3章第1節19>
「非課税等特別措置の適用に当たっては、定期的に実地調査を行うこと等により利用状況を的確に把握し、適正な認定を行うこと。また、実地調査時点の現況等を記載した対象資産に関する諸資料の保管、整理等に努め、その的確な把握を行うとともに、利用状況の把握のため必要があると認められる場合には、条例により申告義務を課することが適当であること。」

2022/05/04/12:00