(75号)家屋評価簡素化の検討と今後の在り方(取得価格方式を採用すべき)

(第1回目投稿:令和3年、第2回目見直し:令和4年6月)

 今号は、前号に続いての「家屋評価簡素化の検討と今後の在り方(取得価格方式を採用すべき)」になります。

今までの家屋評価簡素化の検討

  家屋評価の簡素化については、これまでも財団法人資産評価システム研究センター内の「固定資産税制度に関する調査研究委員会」や「家屋に関する調査研究委員会」等で検討がされてきています。
 そこで検討された主な評価方法は、取得価格方式、広域的比準評価方式、㎡単価方式で、それぞれのメリット、デメリットも指摘されています。

取得価格方式

 取得価格方式とは、事業用家屋について、申告された取得価格を基礎として、取得後の経過年数に応じた減価を考慮して評価する方式です。
 この取得価格方式については、「事業用家屋の評価事務の簡素化」や「申告を基本とするため、評価の透明性や納税者から理解が得られやすい」といったメリットがある一方で、「申告義務が課されることで、新たな負担が生じる」といったデメリットが指摘されています。

広域的比準評価方式

 広域的比準評価方式は、都道府県等の一定の地域内に所在する家屋を、その実態に応じ、構造、程度、規模等に区別し、各区分ごとに標準とすべき家屋を標準家屋として定め、そこから比準して評価する方式ですが、固定資産評価基準に定められている比準評価方法を広域的に適用しようとの方式です。
 この広域的比準評価方式については、「同様の家屋について広域的に均衡が図られる」、「現状の評価方法との差異が少なく、取り入れやすい」等のメリットがある一方で、「広域設定の基準が課題となる」、「対象家屋が類型化しやすいものに限定される」等のデメリットが指摘されています。

㎡単価方式

 ㎡単価方式は、基準となる家屋の延べ床面積1㎡当たりの再建築評点数を再建築価格基準単価とし、これに補正率及び評価対象家屋の延べ床面積を乗ずることにより評価する方式です。
 この㎡単価方式については、「個々の自治体で、基準家屋を設定する必要がなく、事務の軽減につながる」、「同様の家屋について広域的に均衡が図られる」等のメリットがある一方で、「全国一律の家屋を設定した場合、地域的な要因を反映しにくい」、「部分別評価と比較し、乖離が生じる可能性が高い」等のデメリットが指摘されています。

取得価格方式を採用すべき

取得価格方式を採用すべき理由

 以上の簡素化検討の3方式については、長年検討がされてきていますが、未だに実現には至っていません。
 筆者としましては、家屋評価簡素化として検討されている3方式のうち「取得価格方式を採用すべき」と考えます。
 「取得価格方式を採用すべき」とする主な理由は次のとおりです。
(1)固定資産税はその名のとおり「資産税」ですので、事業用、非事業用にかかわらず実際に費やした費用を根拠にした取得価格方式が納税者にとっても理解しやすい評価方法になります
(2)これまでの検討の中での取得価格方式のデメリットとして「申告義務が課されることで、新たな負担が生じる」とあり、そのため事業用家屋に限って検討されています(事業用であれば法人税で税務署へ申告されるからとの理由です)が、現在の再建築価格方式においても、新築時の再建築評点数を評価する場合においては、所有者(建築主)から竣工図や見積書などの資料の提出を求めています。
 この取得価格方式では、償却資産と異なり「毎年の申告は必要なく」、家屋を新増築したときの申告ですので「不動産登記の申請」レベルと考えれば良い訳です。
(3)現在の家屋評価の問題点として、大都市以外の市町村では、大規模非木造家屋の評価を県(県税事務所)に委ねており、市町村において新築家屋評価の説明が十分に出来ないという問題があります。この取得価格方式を採用すれば、県に委任することも必要なくなります。
(4)上記の(1)~(3)からすると、取得価格方式は現実的で、家屋評価を行う市町村にとっても評価(事務)の簡素化を図ることができるでしょう。

採用すべき取得価格方式の内容

 この取得価格方式についても、現行の再建築方式の枠内での方法(A方式)と再建築方式に代わる方法(B方式)が検討されていますが、筆者の主張している取得価格常識はB方式になります。
 現在の再建築価格方式では、計算した価格が結果として概ね取得価格の6~7割程度となっているようですので、取得価格方式では、取得価格に調整率を加え、経年減価補正率を乗じて評価額を求める方法となります。
<提案の取得価格方式>
 評価額 = 取得価格 × 調整率(※)× 経年減価補正率
※木造:6割、非木造:7割を想定

 この方法で進めるとなると、「申告課税方式」になり、また、既存家屋の在来家屋評価との不整合も生じる可能性も有りありますが、ここは長期的な視点から、大胆にこの取得価格方式を採用すべきではないかと考えます。