(66)「空家法」に基づく『特定空家』と固定資産税の対応

 これまで空き家に関して、第30号「空き家対策と固定資産税の減額特例」及び第33号「「空き家」から更地になると固定資産税は6倍ではなく3~4倍になる」で解説してきました。

 今回は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」という)の施行に基づく、全国の空き家の状況と市町村の取り組み状況及び固定資産税の対応についてお知らせします。

全国の空き家の状況

 総務省が5年毎に実施している「住宅・土地統計調査」によると、平成30年調査で、総住宅数6240万7千戸に対して空き家は848万9千戸となっており、空き家率は13.6%となります。この空き家率は、5年前の13.5%から0.1ポイント上昇し、過去最高となっています。

「空き家数及び空き家率の推移」

空き家対策の市町村の状況

 「空家法」は平成27年2月に施行されていますが、現在では、全国ほとんどの市町村で「空家等対策計画」が策定されており、また、かなりの市町村で「空家対策条例」が制定されています。

空き家の問題点

 空き家が発生・増加することによる問題としては次の点があげられます。
① 防災性の低下(倒壊、崩壊、屋根・外壁の落下、火災発生のおそれ)
② 防犯性の低下(犯罪の誘発)
③ ごみの不法投棄
④ 衛生の悪化・悪臭の発生(蚊、蝿、ねずみ、野良猫の発生)
⑤ 風景・景観の悪化

「特定空家等」の現状

 ところで、「空家法」第2条には、特定空家等の定義がされていますが、令和元年10月時点で、全国の市町村で約1万6千戸が特定空家等として把握されています。

 そこで、特定空家等とは何かですが、空き家のうち次のいずれかに該当するものをいいます。
① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

※「空家法」第2条2項-特定空家等の定義
「2項 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

※「空家法」第14条-特定空家等に対する措置
「1項 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2項 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。」

 次に、参考までに「横浜市空家等に係る適切な管理、措置等に関する条例」(令和3年8月1日施行)による「空家対策の流れ」を掲げます。

「空家対策の流れ」

 全国では、周辺の生活環境等に悪影響を及ぼす特定空家等について、助言・指導などの措置の件数が年々増えており、令和元年10月1日までの4年半の累計で、助言・指導が17,026件、勧告が1,00件、命令が131件、代執行(行政代執行と略式代執行)が196件となっています。また、特定空家等の除却等に至った件数7,552件に及んでいます。

特定空家等に関する地方税法の対応

「住宅用地の課税標準の特例」が空き家を助長

 地方税法では、土地(宅地)の面積が200㎡以下の部分を小規模住宅用地として、固定資産税価格が1/6(200㎡を越える部分は1/3)とされています。
 これは、家屋が在る限り空き家であっても適用されることから、空き家を取り壊さず放置されている場合が多いのです。
 この状態を是正するためにも、「空家法」と市町村の取り組みが期待されています。
「住宅用地の例」

「住宅用地の特例率」

「地方税法」が改正

 「空家法」の制定を受けて、平成27年5月、地方税法が改正されました。
 その改正により、固定資産の所有者等に対して「空家法」第14条1項、2項の規定によ特定空家等の勧告がなされた空き家については「住宅用地の課税標準の特例」の対象から除かれることになりました。(地方税法第349条の3の2)

 「住宅用地の課税標準の特例」の対象から除かれる土地とは、次の①②の両方に当てはまる場合になります。
① 「空家法」第2条2項に規定される特定空家等であること。
② 「空家法」第14条第2項」による勧告が所有者等になされていること。

 この「住宅用地の課税標準の特例」から除外されると、小規模住宅用地(200㎡まで)の特例(6分の1)及び一般住宅用地(200㎡を越える部分)の特例(3分の1)が適用されないこととなります。

※「地方税法」第349条の3の2-住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例
「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第11項を除く。)の規定の適用を受けるもの及び空家等対策の推進に関する特別措置法第14条第2項の規定により所有者等(同法第3条に規定する所有者等をいう。)に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第352条の2第1項及び第3項並びに第384条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第349条及び前条第11項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とする。
2 住宅用地のうち、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める住宅用地に該当するもの(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第349条、前条第11項及び前項の規定にかかわらず、当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の6分の1の額とする。
一 住宅用地でその面積が200平方メートル以下であるもの 当該住宅用地
二 住宅用地でその面積が200平方メートルを超えるもの 当該住宅用地の面積を当該住宅用地の上に存する住居で政令で定めるものの数(以下この条及び第384条第1項において「住居の数」という。)で除して得た面積が200平方メートル以下であるものにあつては当該住宅用地、当該除して得た面積が200平方メートルを超えるものにあつては200平方メートルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地」

 近年、この「空家法」や市町村の「空家等対策計画」や「空家対策条例」により空き家率が減少しつつある市町村もありますが、全国的な空き家数は増え続けているのが現実です。

 なお、かつて週刊誌等で「土地の評価1/6が適用されなくなると固定資産税が6倍になる」と報道されていましたが、住宅用地から更地(非住宅用地)になった場合、非住宅用地の負担調整措置がありますので、6倍ではなく3~4倍になります。(この内容については第33号で説明していますので、そちらをご覧ください。)