(第139号)農地(田及び畑)は主に「一般農地」と「市街化区域農地」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、農地(田及び畑)は主に「一般農地」と「市街化区域農地」についてです。

田及び畑の評価上の分類

 田及び畑の評価方法については、評価基準では「一般農地」「市街化区域農地」「宅地等介在農地」「勧告遊休農地」の4つに分類し、それぞれの評価方法を示しています。

<農地(田・畑)の種類>

(1)一般農地

 一般農地とは、農地のうち宅地等介在農地、市街化区域農地及び勧告遊休農地を除いた農地をいいます。

(2)宅地等介在農地

 宅地等介在農地とは、次に掲げる農地をいいます。

① 農地法第4条第1項及び第5条第1項の規定により、宅地等への転用許可を受けた田及び畑。
② 農地法第4条第1項及び第5条第1項による届出のみを行い許可を受けることを必要としない田及び畑で宅地等への転用が確実と認められる田及び畑。
③ その他の田及び畑で宅地等への転用が確実と認められる田及び畑。

(3)市街化区域農地

 市街化区域農地とは、都市計画法第7 条第1項に規定する市街化区域内にある農地をで、おおむね10年以内に宅地化する農地をいいます(評価基準第1章第2 節の2 )。

(4)勧告遊休農地

 勧告遊休農地とは、農地のうち農地法第36条第1項の規定により、農業委員会から農地中間管理機構による農地中間管理権の取得に関し当該農地中間管理機構と協議すべき旨の勧告があった農地をいいます。

一般農地(田・畑)の評価及び課税

一般農地の評価

 一般農地の評価の流れは、次のとおりとなります。

<一般農地の評価の流れ>

1)状況類似地区の区分

 状況類似地区の区分に当たって、「地勢、土性、水利等の状況を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる田又は畑の所在する地区ごとに区分するものとする。この場合において、状況類似地区は、小字の区域ごとに認定するものとし、相互に当該状況が類似していると認められる小字の区域は、これらを合わせ、小字の区域内において当該状況が著しく異なると認められるときは、当該状況が異なる地域ごとに区分するもの」(評価基準第1章第2 節二2 )とされています。

(2)標準田・畑の選定

 「標準田又は標準畑は、状況類似地区ごとに、日照、かんがい、排水、面積、形状等の状況からみて比較的多数所在する田又は畑のうちから、一の田又は畑を選定するもの」(評価基準第1章第2 節二3 )とされています。
 この場合、自然条件、立地条件、耕作上の条件、災害等の状況からみて、その地区における標準的な田又は畑を選定することになります。

(3)標準田・畑の評点数の付設

 標準田畑の評点数は、売買田畑の売買実例価額から適正な時価に基づいて、①~③により付設します。

① 売買田畑の正常売買価額の算定
 売買田畑の正常売買価額 = 売買田畑の売買実例価額 − 不正常要素に基づく価額

② 標準田畑の正常売買価額の算定
 標準田畑の正常売買価額 = 売買田畑の正常売買価額 × 売買田畑と標準田畑との地形等の相違による修正

③ 標準田畑の評点数の付設
 標準田畑の評点数(標準田畑の適正な時価) = 標準田畑の正常売買価額 × 0.55(※農地の限界収益修正率)

※「農地の限界収益修正率」とは…農地の売買は、一般的に小規模な面積を単位として行われます。この場合、買受側は、買足しに伴う耕作面積の拡大により農業経営の効率が増進されます。このため、農地の売買実例価額は農地の平均収益額を超える限界収益額を前提として成立していると考えられていることから、その割高分を修正する必要があるためです。

(4)各筆田畑の比準表の適用

 各筆田畑の評点数を付設する際には、標準田畑との状況の差を比較考慮し、評価基準に定められている固定資産評価基準の「田の比準表」又は「畑の比準表」を適用して評点数を補正します。

(5)各筆田畑の評点数の付設

 各筆田畑の評点数は、まず、標準田畑の単位地積当りの評点数に、「田の比準表」又は「畑の比準表」によって求めた各筆の比準割合を乗じて、各筆の単位地積当りの評点数を求め、この評点数に地積を乗じて求めます。

・ 各筆の田畑の単位地積当りの評点数 = 標準田畑の単位地積当りの評点数 × 各筆の比準割合
・ 各筆の田畑の評点数 = 各筆の田畑の単位地積当りの評点数 − 当該筆の地積

一般農地の課税

 一般農地及び生産緑地地区内農地には、農地の負担調整措置が適用されます。

 負担調整措置は、土地の評価額の急激な上昇に伴う税負担を軽減するための措置で、①か②のいずれか少ない額です。

①(本則税額) : 評価額 × 税率
②(調整税額) : 前年度の課税標準額 × 負担調整率×税率

・負担水準(一般農地)= 前年度の課税標準額/当該年度の評価額
・負担水準(市街化区域農地)=前年度の課税標準額/当該年度の評価額
×1/3
<農地の負担調整措置>

市街化区域農地の評価及び課税

 市街化区域農地とは、都市計画法7条1項に規定する市街化区域内の農地をいいます。市街化区域農地は、宅地としての潜在的価値を有し、売買価値も宅地と同水準にあると認められています。

 市街化区域は、都市計画法7条2項の規定により「すでに市街地を形成している地域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域」です。また農地として利用されていても、農地法4条1項7号及び5条1項6号の規定により届出をするだけで宅地に転用することができる農地となります。

市街化区域農地の評価

 市街化区域農地は、宅地としての潜在的な価値を有しており、売買価額も宅地の価値に準じた水準にあると考えられますので、これらの農地を評価するに当たっては、付近の宅地との均衡を図る必要があります。

 しかし、市街化区域農地はあくまでも田・畑であり、宅地とするには、土盛り整地をしなければならないため、評価する場合には、宅地としての価額から土盛り整地等の造成費相当分を控除する方法により行います。

 市街化区域農地の評価 = ①基本価額 — ②造成費相当額

(1)基本価額

 基本価額は、類似宅地の価額を基準として求めますが、宅地の評価方法(市街地宅地評価法)とはやや異なり、直接類似宅地の価額を基準にして価額を求めます(市街地宅地評価法に準じて求めます)。

(2)造成費相当額

 市街化区域農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額ですが、その範囲は、一般的には土砂購入費、土盛整地費、擁壁費及び法止・土止費をいいます。

市街化区域農地の課税

 市街化区域農地には、一般市街化区域農地と三大都市圏の特定市に適用される特定市街化区域農地の2種類があり、それぞれ負担調整措置が適用されます。

① 一般市街化区域農地の負担調整措置
 一般市街化区域農地は、「一般農地の負担調整措置」が適用されます。
 A(本則税額) : 評価額×1/3×税率
 B(調整税額) : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率

② 特定市街化区域農地の負担調整措置
 三大都市圏の特定市の市街化区域農地は、「宅地の負担調整措置」が適用されます。

 なお、農地の詳細な基準は、各市町村による「固定資産評価事務取扱要領」(自治体により名称が異なります)を確認してください。
 
2025/07/21/19:00
 

 

(第138号)「標準宅地比準方式」の評価方法について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、「標準宅地比準方式」の評価方法についてです。

「標準宅地比準方式」とは

 「標準宅地比準方式」とは、宅地評価の2つの方法(「市街地宅地評価法」と「その他の宅地評価法」)のうちの「その他の宅地評価法」(以下「標準宅地比準方式」)です。

<宅地の評価方法>

 この「標準宅地比準方式」は、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地の評価に適用されるものです。

 具体的には、家屋の連たん度が低く「市街地宅地評価法(路線価方式)」を適用する必要が認められない地域について適用する評価方法です。
(評価基準第1章第3節二(二))

「標準宅地比準方式」の流れ

状況類似地区の区分

 「路線価方式」では「用途地区の区分」を経て「状況類似地域の区分」と進みますが、「標準宅地比準方式」では「状況類似地区の区分」から始まります。

<状況類似地区の区分>-評価基準第1章第3節二(二)2
「 状況類似地区の区分状況類似地区は、宅地の沿接する道路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他宅地の利用上の便等を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる宅地の所在する地区ごとに区分するものとする。」

① 利用状況による地区区分
 利用状況によって、ア.商店が相当連たんしている地域、イ.専用住宅が相当連たんしている地域、ウ.家屋の連たん度が低い地域に区分します。

② 利用上の便等による地区区分
 利用状況による地区区分が行われた宅地は、さらにア.道路条件、イ.接近条件、ウ.宅地条件により区分されます。

「標準宅地」の設置

 次に、「状況類似地区」を基本的な地域区分として、その中で1カ所「標準宅地」を選定します。地価公示、地価調査がある場合はその地点を選択し、無い場合は不動産鑑定評価により設定します。

<標準宅地の選定基準>-評価基準第1章第3節二(二)3
「標準宅地の選定標準宅地は、状況類似地区ごとに、道路に沿接する宅地のうち、奥行、間口、形状等からみて、標準的なものと認められるものを選定するものとする。」
<基準宅地の選定>-評価基準第1章第3節三2(1)
「指定市の長は、(中略)「その他の宅地評価法」のみを適用して各筆の宅地の評点数を付設している場合にあつては単位地積当たりの適正な時価が最高である標準宅地を、基準宅地として選定するものとする。」

標準宅地の適正な時価の評定

 平成6年度の評価替えから宅地の評価に当たって、公的土地評価の均衡化・適正化を推進するため、「標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の7割を目途として評定するものとする。」(評価基準第1章第12節一)とされています。

「各筆の評点数」の付設

 各筆の評点数は、標準宅地の1㎡当り評点数に比準宅地の比準割合を乗じ、これに当該宅地の地積を乗じて付設します。

 この比準宅地の比準割合は、一画地ごとに「宅地の比準表」を適用して求めます。

① 画地の認定
 まず画地を認定する必要があります。

② 宅地の比準表
 各画地の比準割合は、ア.奥行による比準割合、イ.形状等による比準割合、ウ.その他の比準割合(画地と道路との関係、沿接する道路の状況)です。

③ 各筆の評点数の付設
 評点数 = 比準宅地の1㎡当り評点数 × 地積


2025/07/20/17:00
 

 

(第137号)「路線価方式」による画地計算法の具体例(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、「路線価方式」による画地計算法の具体例の説明です。

画地計算法の基本

 状況類似地域に路線価が設定されたら、次はいよいよ個別画地の固定資産税評価に入ります。

 画地計算の基本は筆単位ですが、複数筆により同一用途で画地が形成されている場合は画地単位で評価します。

<画地計算の計算式>

固定資産評価基準の「画地計算法」

 固定資産評価基準では、画地計算補正率表として、次の8つの補正率表があります。
 奥行価格補正率表、側方路線影響加算率表、二方路影響加算率表、不整形地補正率表、間口狭小補正率表、奥行長大補正率表、がけ地補正率表、通路開設補正率表。

「総務省の通知」による「所要の補正」

 また、「総務省の通知」によっても、具体的には市町村の条例等で施行されています。
 日照阻害補正、都市計画施設予定地補正、鉄道・高速道路による騒音・振動補、幹線道路による騒音・振動補正。

市町村の「評価事務取扱要領」と「所要の補正」

 固定資産税の評価の基本は固定資産評価基準ですが、「市町村長は宅地の状況に応じて必要があるときは『所要の補正』をすることができる」とされています。

 全国の市町村では、税条例の他に「固定資産評価事務取扱要領」を有していますが、これは、あくまでも市町村内部の事務取扱いについて定めたもので、法的な拘束力はありません。

 しかし、市町村長は評価の均衡を図るため、宅地の状況に応じ必要があるときは固定資産評価基準の「画地計算法」の附表等又は「宅地の比準表」について、「所要の補正」を加えて評価を行います。

「路線価地域」の「画地計算法」具体例

奥行価格補正

<奥行の長さと土地評価>

 宅地の価格は、道路からの奥行が長くなるに従い漸減します。著しく短い場合も同様です。


※ 奥行価格補正率は、以下「補正率①」とします。
    路線価   補正率①  1㎡当り評点数
  200,000  ×  0.97  =  194,000

間口狭小補正

<間口が狭い土地評価>

 宅地の価格は、間口が狭いと使い勝手が悪く価値が減少します。


  路線価   補正率①  間口狭小補正率 1㎡当り評点数
 200,000   ×  1.0   ×     0.97     =  194,000

奥行長大補正

<間口と奥行のバランス>

 奥行が間口に比べて長大な画地は、画地バランスが劣り価値が減少します。


・奥行長大補正率
   奥行距離 間口距離          奥行長大補正率
    20        ÷     8  =     2.5          0.98

      路線価    補正率① 奥行長大補正率  1㎡当り評点数
     200,000   ×  1.0  ×     0.98        =        196,000

不整形地補正

<蔭地割合法により算定>


・ 蔭地割合

(想定整形地面積—対象地面積)/想定整形地面積
  ・ 想定整形地面積 15m × 12m = 180㎡
  ・ 蔭地割合  40㎡ ÷ 180㎡ = 22%

・ 不整形地補正率
    ・ 間口狭小補正率  間口4m   ⇒   0.94(A)
    ・ 不整形地補正率 蔭地割合  22% ⇒ 0.92(B)
    ・ 奥行長大補正率 15m÷4m = 3.75 ⇒ 0.96(C)

・  補正率の比較(①②の小を採用)
    A×B= 0.94×0.92=0.86 ①
  A×C= 0.94×0.96=0.90 ②
・ 不整形補正率 ⇒ 0.86

無道路地補正

<最大で4割減価>


・無道路地補正率  0.60

・補正率の合計
      奥行35m  奥行20mの   無道路地
       の①        通路開設補正率  補正率   補正率
     0.93   ×    0.80  ×         0.60   =     0.45

         路線価     補正率  1㎡当り評点数
     200,000   ×  0.45   =      90,000

角地(側方路線影響加算法)

<正面と側方に路線がある画地>


・基本1㎡当り評点数
     路線価  補正率①
    200,000   ×   1.0 = 200,000

・側方路線加算
     側方路線価  補正率①   加算率
       100,000     ×    1.0    ×    0.03  =  3,000

・1㎡当り評点数
     正面路線 側方路線   1㎡当り評点数
   200,000  +   3,000  =  203,000

二方路線影響加算

<正面と裏面に路線がある画地>


・基本1㎡当り評点数
    正面路線価  補正率①
      200,000     ×    1.0   =   200,000

・裏路線加算1当り評点数
  側方路線価  補正率①   加算率
      150,000    ×     1.0     ×     0.02  =  3,000

・1㎡当り評点数
    正面路線   裏路線  1㎡当り評点数
     200,000  +  3,000   =     203,000

がけ地補正

<がけ地の面積割合により補正>


・がけ地割合
   がけ地の地積  評価対象地の地積   面積割合  がけ地補正率
   (6m×10m)  ÷(21m×10m)×100 =       29%    ⇒      0.90

    路線価  補正率①  がけ地補正率 1㎡当り評点数
   200,000  ×   1.0    ×       0.90      =       180,000

騒音・振動補正

<新幹線、高速道路等>


・面積割合
   騒音の影響を
  受ける地積   評価対象地の地積     面積割合  補正率
     (8m×15m) ÷  (15m×20m)×100 = 40% ⇒ 0.85

     路線価  補正率①  補正率  1㎡当り評点数
    200,000   ×  1.0    ×    0.85   =    170,000

高圧線下地

<高圧線下の面積割合補正>


・高圧線下の面積割合
     高圧線下
    部分の地積        総地積面積              割合   補正率
     (100㎡) ÷ (15m×20m)×100 = 33%  ⇒   0.85

     路線価   補正率①   補正率     1㎡当り評点数
    200,000     × 1.0    =   0,85   =    170,000

地下阻害物減価

<地下鉄, 地下道, 公共下水道>


・地下阻害部分の面積割合
  地下阻害のある
      部分の地積    総地積    面積割合
           40㎡ ÷   150㎡×100 =  27%
    路線価  補正率①  補正率  1㎡当り評点数
   200,000   ×   1.0   ×   0.90    =   180,000

道路より低い土地

<日照, 水はけ補正>

・道路より低い宅地
 道路より低い位置にあるため、一般の画地に比べ、日照や水はけなどの状況が不良であると認められる画地です。

日照阻害補正

<冬至日の日影時間>


 
2025/07/19/17:00
 

 

(第136号)宅地評価の「路線価方式」による画地計算法について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 前号でも解説しましたが、固定資産税宅地の評価方法には、①市街地宅地評価法(路線価方式)と②その他宅地評価法(標準宅地比準方式)の2とおりがあります。

<宅地の評価方法>

 今回は、そのうちの「路線価方式」による画地計算法についての説明です。

画地計算法の流れ

 路線価方式での宅地の評価方法(路線価方式)は、固定資産評価基準で規定されています。

<宅地の評価(「路線価方式」)>-固定遺産評価基準・第1章土地・第3節
「宅地の評価
 宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によるものとする。(以下省略)」

<画地計算法の流れ>

 「路線価方式」による画地計算法は、次の流れになります。

用途地区の区分

 路線価の付設にあたっては、まず、大きな用途地区(商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区)に区分し、さらに必要に応じて細区分します。

① 商業地区
 商業地区は、主として商業店舗が連続する地区で、繁華街、高度商業地区Ⅰ、高度商業地区Ⅱ、普通商業地区に区分されます。

② 住宅地区
 住宅地区は、主として住宅用の宅地が連続する地区で、高級住宅地区、普通住宅地区、併用住宅地区に区分されます。

③ 工業地区
 工業地区は、主として工業用宅地が連続する地区で、大工場地区、中小工場地区、家内工業地区に区分されます。

④ 観光地区
 観光地区は、温泉街地区、門前仲見世地区、名勝地区、海水浴場地区など、一般の商業地区とは若干性格を異にする地区をいいます。

状況類似地域の区分

 状況類似地域は、街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便による条件が「相当に相違する地域」ごとに区分します。

主要な街路の選定

 状況類似地域内において、最も代表的で評価の拠点としてふさわしいものを「主要な街路」として1カ所選定します。地価公示地及び都道府県地価調査地の所在する街路は「主要な街路」となります。

標準宅地の選定

 主要な街路に沿接する宅地のうちから、奥行、間口、形状等が標準的なものを選定します。

標準宅地の適正な時価の評定

 選定された標準宅地について、地価公示価格、都道府県地価調査価格及び不動産鑑定士による鑑定評価から求められた価格の7割を目途に標準宅地の適正な時価を評定します。

主要な街路の路線価の付設

 標準宅地の適正な時価に基づき1㎡当たりの価格を算出し、その価格を主要な街路の路線価(主要路線か)として付設します。

その他の街路の路線価の付設

 主要な路線価を基準として、その他の街路の路線価(その他路線価)を付設します。その他路線価の付設に当たっては、状況類似地域区分の基準(街路の状況、公共施設等の接近の状況、家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便)を総合的に考慮します。

画地計算法による各筆の評点数の付設

 「路線価方式」における宅地の評点数は、路線価に基づき「画地計算法」を適用してそれぞれの画地の単位当たりの評点数を算出し、これに各筆の地積を乗じて算出します。

用途地区と状況類似地域

<用途地区と状況類似地域>

 
 「路線価方式」においては、まずその地域の用途性に基づき用途地区に区分し、その用途地区において、地域の類似性に応じて状況類似地域に区分します。

 「路線価方式」では、この状況類似地域が固定資産税評価の基準となる地域となります。

状況類似地域内で路線価を設定

<状況類似地域>

 
 路線価は状況類似地域の中で標準宅地が接する路線が主要路線価となり、そこから基本的にすべての街路(原則として公道)をその他路線価とします。

 標準宅地は、地価公示か地価調査がある場合はその7割を主要街路の路線価としますが、無い場合には不動産鑑定士による鑑定評価額の7割を用います。
 
2025/07/18/15:00
 

 

(第135号)土地の地目と面積及び宅地の評価方式について(更新版)

(更新版・令和7年7月)
 今回は「土地の地目と面積及び宅地の評価方式について」です。

土地の地目認定は「現況主義」

固定資産評価基準による土地の地目

 地方税法(341条1項2号)には「田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。」と10種類の地目が規定されていますが、固定資産評価基準には9種類が定められています。

<固定資産評価基準の地目>-固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
①田、②畑、③宅地、④鉱泉地、⑤池沼、⑥山林、⑦牧場、⑧原野、⑨雑種地」

 地方税法も固定資産評価基準もほぼ同様な地目ですが、地方税法の「塩田」は固定資産評価基準には有りませんが、「⑨雑種地」が①から⑧以外の全てを網羅する幅広い地目になります。

土地の地目は現況主義

 固定資産税の土地評価上の地目の認定は、当該年度の初日の属する年の1月1日現在の地目(「現況主義」)によります。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には家屋が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

 地目認定の単位は、原則として1筆ごとに行います。

 ただし、地目は土地の現況や利用目的に重点を置いて認定しなければならないものであり、部分的に僅少の差異があるときでも土地全体としての状況を観察て行います。

 また、1筆の土地が相当の規模で、2以上の全く別の用途に利用されている場合(例えば、1,000㎡の土地の700㎡が畑、300㎡が宅地として利用)には、これらの利用状況に応じて区分して、それぞれの地目を定めることになります。

地目認定の実地調査

 土地の地目の「現況主義」は、現地調査で認定することが比較的容易であるからですが、この現地調査については、地方税法で規定されています。

<固定資産税の実地調査>-地方税法408条
「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地にさせなければならない。」

土地の面積は原則「登記簿主義」

「登記簿主義」の理由

 土地の面積は見ただけでは分からないことから、実測しなければ判断できません。しかし、全国の土地すべてを市町村で実測することは、時間的にも技術的にも難しいと言わざるをえません。また、一部のみを測量することは不公平にもなりかねません。

 そのようなことから、固定資産税の土地の地積認定においては、原則として、「登記簿主義」を採用しています。

「登記簿主義」の例外

 土地面積の認定は「登記簿主義」が原則ですが、例外として現況地積を認めています。

<地積の認定>-固定資産定資産評価基準第1章第1節二
「 各筆の土地の評価額を求める場合に用いる地積は、次に掲げる場合を除き、原則として登記簿に登記されている土地については登記簿に登記されている地積によるものとし、登記簿に登記されていない土地については現況の地積によるものとする。
1. 登記簿に登記されている土地の登記簿に登記されている地積が現況の地積よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は、現況の地積によるものとする。
2. 登記簿に登記されている土地の現況の地積が登記簿に登記されている地積よりも大きいと認められ、かつ、登記簿に登記されている地積によることが著しく不適当であると認められる場合においては、当該土地の地積は、現況の地積によることができるものとする。」

 この固定資産評価基準にあるとおり、土地の面積を例外的に認める場合、2つの例外があります。

<登記簿主義の原則と例外>

 
① 登記簿地積>現況地積の場合(いわゆる「縄縮み」)
 この場合は「登記簿主義」の例外で、「現況の地積による」ことなります。ただし、申告が必要です。

② 登記簿地積<現況地積の場合(いわゆる「縄延び」)
 この場合は「地積差が著しい場合」で登記地積によることが著しく不適当な場合には例外で「現況地積によることができる」ことなります。

※「縄縮み」とは…中世から近世にかけて行われた検地の際に、年貢の負担を軽くするため、実際よりも長めに目盛りを記した縄を使って、地積を小さめに測量したことに由来しています。
※ 「縄伸び」とは…地主が小作人に小作料を多く納めさせるため、あるいは市街地で売買代金を高くすは「るために故意に公簿面積を大きくしたようです。

宅地の評価は「路線価方式」と「標準宅地比準方式」

 宅地の評価は、各筆の宅地を評価して評点数を求め、その評点数に評点1点当りの価額を乗じて求める方法です。

 その場合の宅地の評価方法としては、「市街地宅地評価法(路線価方式)」及び「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)」の2通りあります。

<宅地の評価方法>

<評点数の付設>-固定資産評価基準第3節宅地二
「各筆の宅地の評点数は、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法」によつて、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法」によつて付設するものとする。ただし、市町村の宅地の状況に応じ必要があるときは、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地についても、「市街地宅地評価法」によつて各筆の宅地の評点数を付設することができるものとする。」

市街地宅地評価法(「路線価方式」)

 「市街地宅地評価法」は、主に都市部の住宅が密集した地域における、土地の固定資産評価に用いられるもので、「路線価方式」とも呼ばれています(以下「路線価方式」)。

 「路線価方式」は、道路1本ごとに価格(路線価)をつけ、1つの同じ道路に接する土地について、すべて同一路線価から計算する方法です。

 この「路線価方式」は、短時間に大量の土地評価ができること、評価後の価格に大きなばらつきが出ずに公平な課税が可能であること、地域ごとの評価バランスがとりやすいことなどの利点があります。

その他の宅地評価法(「標準宅地比準方式」)

 「その他の宅地評価法」は、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地の評価に適用されます(以下「標準宅地比準方式」)。

 具体的には、家屋の連たん度が低く「路線価方式」を適用する必要が認められない地域について適用される評価方法です。
 
2025/07/17/15:00