(68)固定資産税の価格に不服がある場合の対応方法(その2)

 それでは、固定資産の価格(評価)に不服がある場合、どのような対応をすれば良いのか、ということになります。

 まず、固定資産税の価格に不服がある場合には、地方税法の手続きとして、同法432条による「審査の申出」をすることができます。

 それと、地方税法第417条に「その登録された価格に『重大な錯誤』があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならない」とされていますので、価格に疑問がある場合は、「重大な錯誤」があるのか否かを見極める必要があります。そのためにも、前号で指摘した「評価計算書」が必要となるのです。

 また、平成22年の最高裁判決により、「公務員の過失によつて、違法に損害を加えたときは賠償する責任がある」とされ、最高20年間の訴求(固定資産税の課税であれば還付請求)も可能とされています。

 今号では前号に続いて、この内容を解説していきます。

審査申出制度とは

審査申出制度の内容

 今回、Kさんは令和3年度が評価替え年度でもあり、納税通知書を受け取ってから3ヵ月以内に、N市固定資産評価審査委員会宛に審査申出書を提出し、N市からの弁明書が出され、Kさんが反論書を提出し意見陳述を行い、固定資産評価審査委員会から決定書(棄却)が出された訳です。

 この方法は、地方税法第432条に従って行われており、手続き上では問題はありません。

※「地方税法」第432条1項-価格に関する審査の申出
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について、納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日まで間において、文書をもつて、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」(中略)

 また、固定資産評価審査委員会の規定は、地方税法第423条にあります。

※「地方税法」第423条-固定資産評価審査委員会の設置,選任等
「1 固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために,市町村に,固定資産評価審査委員会を設置する。
2 固定資産評価審査委員会の委員の定数は3人以上とし,当該市町村の条例で定める。
3 固定資産評価審査委員会の委員は,当該市町村の住民,市町村税の納税義務がある者又は固定資産の評価について学識経験を有する者のうちから,当該市町村の議会の同意を得て,市町村長が選任する。」

 市町村の固定資産税担当の窓口では、「この固定資産税の評価に疑問があります」と伝えた場合、「評価計算書」で丁寧に説明される場合が普通ですが、なかには「不服があるのであれば、地方税法による審査申出でお願いします」と窓口で”門前払い”される場合もあります。

審査申出制度の限界

 では、地方税法に従って審査申出を行った場合、市町村からどのように対応されるのでしょうか。
 まず上記の条文にあるとおり、固定資産税の価格に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会という第三者委員会に対して審査申出を行うことになります。この委員会を補佐する市町村の事務局も、固定資産税の評価・課税とは異なる部局が担当します。
 しかし、この審査申出は地方税法上の原則ではありますが、訴訟と違ってかなり形式的・単純な手続きとなります。

 今回のKさんは、所有されているビルを途中で購入されていて、固定資産税が自己所有の他のビルと比較して評価が高いと気がついた訳です。
 ところが、N市では、その家屋の前所有者からは評価の不服や訴えが無かったため、この家屋の評価には問題は無いと判断したようなのです。
 前期の再建築費評点数を基にした計算から固定資産評価基準どおり行われていると弁明している訳で、これは在来家屋の評価方法で、そもそもの評価額は問題無かったとの主張になっているのです。それを、固定資産評価審査委員会では、そのまま受け取り棄却決定となっているようです。

 第三者委員会の固定資産評価審査委員にも法律、税務、不動産評価の専門家がおりますが、必ずしも固定資産税の家屋評価に熟知されている方々とは限りません。

価格等に「重大な錯誤」があった場合

「重大な錯誤」による価格の修正(地方税法417条)

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録されることにより行われます。しかし、地方税法417条1項で、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。

※「地方税法」第417条1項-価格等の決定又は修正等
「市町村長は、(中略)登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。

 中古家屋で、これまで価格に対する所有者からの訴えが無かったとしても、「重大な錯誤」があるかもしれないため、課税部局は慎重に対応すべきなのです。

 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。
 もっとも、市町村の具体的な対応は様々あるように思われます。特に家屋の場合では、主体構造や面積の誤りであれば速やかに判明しますが、建築細部の評価を検証するのは大変な作業になります。

 ともすると担当課の窓口で「評価基準どおりやってます」とか「評価の誤りは納税者に主張立証してもらいます」などと言われてしまい、納税者は”お手上げ状態”に陥ってしまう訳です。

国家賠償法による訴訟対応

 平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

※「国家賠償法」第1条1項
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」場合は「手抜き」があったとされ、国家賠償法第1条の「過失」になり、国家賠償請求(訴訟)をすることができます。
 通常、固定資産税の価格に対する訴訟は、審査申出の決定がなされて6ヵ月以内となっていますが、「過失」(いわゆる「手抜き」程度)があった場合は、審査申出の期限にかかわらず国家賠償請求訴訟が出来るということです。
 この訴訟で「過失」が認められた場合、還付期間は最高20年間となります。

市町村との直接交渉

 市町村によっては、地方税法の417条の「重大な錯誤」があったと認めた場合、20年間の還付に応じている場合もありますので、あわてて訴訟に持ち込まずしっかりと交渉してみることも必要です。
 また最近では、市町村によっては『市税に係る返還金の支払要綱』(市町村で名称が異なる)により「瑕疵ある課税処分に基づき納付又は納入された市税で、地方税法の規定によっては還付することができない過誤納金に相当する額等を納税者に返還することにより、納税者の不利益を補填し、もって税負担の公平の確保と行政に対する信頼の回復を図ることを目的とする。」(川崎市)としっかりと対応されているところもあります。
 家屋の複雑な評価は所有者だけでは分からないことが多いのが現実です。そのようなときには、ぜひ筆者(固定資産税のコンサルタント)にご相談ください。
 詳しい内容は、電話、メール(ZOOMも可能)のやりとりで行わせていただきます。

(67)固定資産税の価格に不服がある場合の対応方法(その1)

 最近、N市に家屋(マンション)をお持ちのKさんから、次のようなご相談をいただきました。

 ①自分の所有しているマンションの評価額が隣接のマンションと比較して約1.4倍、自分が所有している他のマンションと比べても約1.6倍になっています。
 ②N市税務課に家屋の「評価計算書」(家屋新築時の課税計算書、名称は市町村により異なる)の提出を求めたところ、「『評価計算書』は廃棄してみつからない」との回答がありました。
 ③そこで、N市に対して5月に審査申出書を提出したところ、弁明書による回答がありました。そこには「建築時に算出した再建築費評点数に対して評価替ごとに再建築費評点補正率を乗じて、現在の再建築費評点数を算出している」との記載がありました。
 ④しかし、仮に課税誤りがあるとすれば、新築時に算出した再建築費評点数の誤りが原因である筈なのですが、弁明書では、今までの評価額は正しいものとの前提なのです。
 ⑤その後、反論書を提出し、意見陳述を行ったものの、N市固定資産評価審査委員会から、門前払いに近い回答(棄却)を頂きました。

 まず、家屋評価は複雑で課税誤りの原因になり易いとの解説をNO43、NO44で解説していますので再掲いたします。

※(失礼ですが)ビルの所有者が「評価計算書」をみても分からないのがほとんどですので、ここではコンサルタントが「検証」を請け負うことを前提にしています。

N市対応の問題点

 あくまで相談されたKさんの主張が事実であることを前提にしたものですが、この件でのN市の対応等には次の問題点を指摘することができます。

「評価計算書」がなぜ示されないのか

 ①のKさんの「隣接ビルとの比較」は付随的な主張でしょうが、②のN市の「『評価計算書』は廃棄して見つからない」との回答には驚きです。
 そもそも「評価計算書」は市町村の内部資料ですが、どこの市町村でも所有者から説明を求められると、この資料により評価内容を説明し、所有者に手渡されるのが一般的です。
 所有者が事前に評価内容を検討するためにも「評価計算書」が必要で、その家屋の評価額そのものが、どのように算定されているのかを説明し「課税誤り」が無いことを示す必要がある訳です。

なぜ建築当初の評価額が審査されないのか

 Kさんの審査申出の趣旨は「そもそも再建築費評点数の算定が正しいのか」ですが、③~⑤においてのN市の弁明は、前年の再建築評評点数に補正率を乗ずる方法(在来家屋の評価方法)の説明に終始されています。
 中古ビルで、前の所有者から評価の訴えが無かったので、新所有者からの審査申出においても、この家屋の評価は問題無い、と在来家屋の評価方法のみで弁明している訳です。

審査申出制度の限界か

 固定資産評価審査委員会の決定(棄却)もほとんど課税当局の弁明書を踏襲した結果となっています。固定資産評価審査委員会は第三者委員会ですが、どこの市町村でも、審査申出の手続きでは課税部局の主張がそのまま採用されることがほとんどではないかと思います。
 これは、ある意味では「審査申出制度の限界」でもあると言えます。

「評価計算書」とはどのようなものか

「課税明細書」と「評価計算書」の違い

 固定資産税については、毎年4~5月に「納税通知書」「納付書」とともに「課税明細書」が3点セットとして所有者に送られてきます。しかし、そこには家屋の価格(評価額)が記載されているのみで、それがどのように計算されたのか、なぜこの価格になったのかは一切分かりません。
 まず、毎年所有者に送られてくる「課税明細書」は次のようになっています。
「課税明細書(例)」

 どうでしょうか、この課税明細書の価格(評価額)をみても、どのように計算されてこの価格になっているのかは分かりません。

 そのために「評価計算書」の提出を求めるのですが、ここに「評価計算書」の例を掲げます。
「評価計算書(例)」

 ここに掲げた「評価計算書」は全体の一部です。また市町村によっては形式も名称も異なっています。
 ブログNO33、44でお知らせしたとおり、固定資産家屋の評価は非常に複雑な内容ですので、それを計算する「評価計算書」も複雑になっています。

 最近では、どこの市町村でも電子システムを活用していますが、それ以前は「パンチカード」(名称は市町村により様々)という方式で作成・保管され、仮に担当者がコピーを廃棄したとしても、組織としてはデータが保存されている筈なのです。
 そうでなければ、所有者にとって大切な財産である固定資産に対して評価・課税している根拠が疑われ、信頼性も損なわれることになります。

「評価計算書」の取得方法

 この「評価計算書」は役所の内部資料ですので、一般的には公開されていません。従って、所有者または委任状を受けた代理人のみが入手することが出来ます。

 繰り返しになりますが、N市が「『評価計算書』は廃棄したのでみつからい」とは、あまりにも無責任ではないでしょうか。

 筆者の経験では、所有者から委任を受けて、多くの市町村に「評価計算書」の提出を求めてきましたが、そのように対応されたことはありません。

価格に不服がある場合の役所の対応

 今回Kさんは、固定資産税の評価額に不服があるとして審査申出を行ったのですが、不満足の結果であった訳です。もっとも、市町村の課税部局に価格の相談に行けば「不服があるのでしたら、地方税法に従って審査申出を行ってください」と言われることが多いのです。

 しかし、その審査申出に対しては、地方税法上「公正を期す」との理由から、第三者委員会である固定資産評価審査委員会が審査を担当することになります。審査委員会では、課税当局から弁明書の提出以外にも聞き取り調査等も行って審査していまが、家屋評価のような超複雑な案件には限界があります。

 結局、今回のN市もそうですが、家屋評価の元となる新築時点の再建築評点数の評価方法が正しかったのかどうの判断は行われず、既にある再建築評点数を基準にして経年減価等の補正を行う在来(中古)家屋の評価方法のみの判断で決定(棄却)がなされています。

 所有者が「この審査申出の決定には異議があります」と申し出たところで、審査委員会と課税部局から「それなら6ヵ月以内に訴訟を提起することができます」と言われるだけです。所有者からすると、訴訟となるとそれなりの費用等もかかるため断念せざるを得ない「打つ手なし」という例が多いのです。
 果たして、こういうことで良いのでしょうか?
<第68号に続きます>

(66)「空家法」に基づく『特定空家』と固定資産税の対応

 これまで空き家に関して、第30号「空き家対策と固定資産税の減額特例」及び第33号「「空き家」から更地になると固定資産税は6倍ではなく3~4倍になる」で解説してきました。

 今回は「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」という)の施行に基づく、全国の空き家の状況と市町村の取り組み状況及び固定資産税の対応についてお知らせします。

全国の空き家の状況

 総務省が5年毎に実施している「住宅・土地統計調査」によると、平成30年調査で、総住宅数6240万7千戸に対して空き家は848万9千戸となっており、空き家率は13.6%となります。この空き家率は、5年前の13.5%から0.1ポイント上昇し、過去最高となっています。

「空き家数及び空き家率の推移」

空き家対策の市町村の状況

 「空家法」は平成27年2月に施行されていますが、現在では、全国ほとんどの市町村で「空家等対策計画」が策定されており、また、かなりの市町村で「空家対策条例」が制定されています。

空き家の問題点

 空き家が発生・増加することによる問題としては次の点があげられます。
① 防災性の低下(倒壊、崩壊、屋根・外壁の落下、火災発生のおそれ)
② 防犯性の低下(犯罪の誘発)
③ ごみの不法投棄
④ 衛生の悪化・悪臭の発生(蚊、蝿、ねずみ、野良猫の発生)
⑤ 風景・景観の悪化

「特定空家等」の現状

 ところで、「空家法」第2条には、特定空家等の定義がされていますが、令和元年10月時点で、全国の市町村で約1万6千戸が特定空家等として把握されています。

 そこで、特定空家等とは何かですが、空き家のうち次のいずれかに該当するものをいいます。
① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

※「空家法」第2条2項-特定空家等の定義
「2項 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

※「空家法」第14条-特定空家等に対する措置
「1項 市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、当該特定空家等に関し、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置(そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、建築物の除却を除く。次項において同じ。)をとるよう助言又は指導をすることができる。
2項 市町村長は、前項の規定による助言又は指導をした場合において、なお当該特定空家等の状態が改善されないと認めるときは、当該助言又は指導を受けた者に対し、相当の猶予期限を付けて、除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告することができる。」

 次に、参考までに「横浜市空家等に係る適切な管理、措置等に関する条例」(令和3年8月1日施行)による「空家対策の流れ」を掲げます。

「空家対策の流れ」

 全国では、周辺の生活環境等に悪影響を及ぼす特定空家等について、助言・指導などの措置の件数が年々増えており、令和元年10月1日までの4年半の累計で、助言・指導が17,026件、勧告が1,00件、命令が131件、代執行(行政代執行と略式代執行)が196件となっています。また、特定空家等の除却等に至った件数7,552件に及んでいます。

特定空家等に関する地方税法の対応

「住宅用地の課税標準の特例」が空き家を助長

 地方税法では、土地(宅地)の面積が200㎡以下の部分を小規模住宅用地として、固定資産税価格が1/6(200㎡を越える部分は1/3)とされています。
 これは、家屋が在る限り空き家であっても適用されることから、空き家を取り壊さず放置されている場合が多いのです。
 この状態を是正するためにも、「空家法」と市町村の取り組みが期待されています。
「住宅用地の例」

「住宅用地の特例率」

「地方税法」が改正

 「空家法」の制定を受けて、平成27年5月、地方税法が改正されました。
 その改正により、固定資産の所有者等に対して「空家法」第14条1項、2項の規定によ特定空家等の勧告がなされた空き家については「住宅用地の課税標準の特例」の対象から除かれることになりました。(地方税法第349条の3の2)

 「住宅用地の課税標準の特例」の対象から除かれる土地とは、次の①②の両方に当てはまる場合になります。
① 「空家法」第2条2項に規定される特定空家等であること。
② 「空家法」第14条第2項」による勧告が所有者等になされていること。

 この「住宅用地の課税標準の特例」から除外されると、小規模住宅用地(200㎡まで)の特例(6分の1)及び一般住宅用地(200㎡を越える部分)の特例(3分の1)が適用されないこととなります。

※「地方税法」第349条の3の2-住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例
「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第11項を除く。)の規定の適用を受けるもの及び空家等対策の推進に関する特別措置法第14条第2項の規定により所有者等(同法第3条に規定する所有者等をいう。)に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第352条の2第1項及び第3項並びに第384条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第349条及び前条第11項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の3分の1の額とする。
2 住宅用地のうち、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める住宅用地に該当するもの(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第349条、前条第11項及び前項の規定にかかわらず、当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の6分の1の額とする。
一 住宅用地でその面積が200平方メートル以下であるもの 当該住宅用地
二 住宅用地でその面積が200平方メートルを超えるもの 当該住宅用地の面積を当該住宅用地の上に存する住居で政令で定めるものの数(以下この条及び第384条第1項において「住居の数」という。)で除して得た面積が200平方メートル以下であるものにあつては当該住宅用地、当該除して得た面積が200平方メートルを超えるものにあつては200平方メートルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地」

 近年、この「空家法」や市町村の「空家等対策計画」や「空家対策条例」により空き家率が減少しつつある市町村もありますが、全国的な空き家数は増え続けているのが現実です。

 なお、かつて週刊誌等で「土地の評価1/6が適用されなくなると固定資産税が6倍になる」と報道されていましたが、住宅用地から更地(非住宅用地)になった場合、非住宅用地の負担調整措置がありますので、6倍ではなく3~4倍になります。(この内容については第33号で説明していますので、そちらをご覧ください。)

(65)固定資産税の歴史はシャウプ勧告(昭和24年)から始まる

 今回は、固定資産税はどのようにして誕生したのかという「そもそも論」になります。

 固定資産税は、土地、家屋、償却資産の三つの固定資産が課税客体となっていますが、いつからこのようになったのでしょうか。

 固定資産税は、第二次世界大戦後の昭和24年のシャウプ勧告に基づいて創設されました。このシャウプ勧告の中では、それまでの土地を課税客体としていた「地租」から土地へ、家屋を課税客体としていた「家屋税」から家屋へ引き継ぎ・統合した上で、新たに償却資産を課税客体に加えて固定資産税を創設することが勧告されました。

「固定資産税の歴史」

土地税は地租改正から

 土地に関する租税は、古代から現代に至るまで主要な税目の地位を保っています。

 近世の日本は、領主制の下で、領主ごとに土地に対する税が課されていました。農村の土地には年貢が課されていたのに対し、都市は年貢が免除されることも多く無税地が大きな割合を占めていました。
 明治政府は、このような制度を廃して、全国の土地について統一的な基準で全ての土地地籍を把握し、その土地に税を課すことを目指し、明治6年に地租改正を始めました。

 地租改正における地籍調査と地価調査は、その土地の所有者自身による申請から出発することが原則になっていました。府県は、提出された地籍と地価の検査を行い、必要に応じて再調査や書類の補訂を指示し、地券台帳を作成し、地券台帳から土地所有者に地券を発行し土地の証書としました。

 この明治6年の地租改正によって、近世の石高(こくだか)制による貢租(年貢)制度は廃止され、私的土地所有を前提にした「地租」が国税として誕生しました。
 そして、明治11年には、府県が「地租付加税」として課税できるようになり、明治21年には市町村でも「地租付加税」を課税できるようになりました。

 「地租」は第二次大戦後の昭和22年に地方に移譲されて府県税の独立税になり、昭和24年のシャウプ勧告により、昭和25年に市町村税の固定資産税となりました。

家屋は「家屋税」(府県税)から

 家屋は、明治15年に創設された「家屋税」から始まります。「家屋税」は府県税でしたが、当初は東京、大阪、京都、神奈川の大都府県に限定されていました。
 また、大正15年の税制改革で、市町村でも「家屋税」に「家屋税付加税」として課税できるよになり、昭和22年には「家屋税」も「地租」と同様に府県の独立税となりました。
 そして、土地と同じく、昭和24年のシャウプ勧告により、昭和25年に市町村税の固定資産税となりました。

償却資産はシャウプ勧告により創設

 償却資産は昭和24年のシャウプ勧告による税制改革で昭和25年に固定資産税の一つとして創設されました。
 しかし、この償却資産に似ている税が実は既に存在していました。昭和15年に旧地方税法により、法定外独立税が市町村に対して認められました。
 この法定外独立税は、内務、大蔵両大臣の許可に基づき、市町村の条例により設定するものでしたが、この税の中には原動機や冷凍機、織機、製材機、印刷機など各種事業用償却資産がありました。

シャウプ勧告に基づく固定資産税の創設

 シャウプ勧告とは、アメリカの財政学者カール・シャウプを団長とする使節団によって昭和24年に、連合国最高司令官マッカーサーに提出された日本の税制改革に関する報告書のことです。
 シャウプ勧告では、当時の日本の地方財政について、次の5つの点が指摘されています。
①市町村、都道府県及び中央政府間の事務の配分及び責任の分担が不必要に複雑であり、また重複している。
②この3つの段階の統治機関の間における財源の配分が若干の点において不適当であり、また中央政府による地方財源の統制が課題である。
③地方自治体の財源は、地方の緊要経費を賄うには不足である。
④国庫補助金及び交付金は独断的に決定されることが多い。
⑤地方団体の起債の制限は極めて厳重に制限されている。

 冒頭のとおり、シャウプ勧告では、府県の独立税となっていた「地租」と「家屋税」を統合するだけでなく、償却資産をも課税客体に加えて、固定資産税とすることが勧告され、昭和25年に創設されました。

 このシャウプ勧告の意図は、固定資産税を固定資産と市町村の提供する公共サービスとの関連性を明確にして、市町村税の独立税とすることを勧告したと解されています。

 シャウプ勧告がされるまでの我が国の「地租」や「家屋税」は、賃貸価格を課税標準とする収益税であった訳ですが、シャウプ勧告では固定資産税の課税標準を賃貸価格から資本価格にすることを勧告しています。

 これまで、固定資産税は収益税なのか財産税なのかとの議論もありましたが、シャウプ勧告の資本価格論とともに、現在の地方税法における「価格=適正な時価をいう」の解釈からも、固定資産税は財産税と考えるのが一般的と思われます。

 ところで、この「適正な時価」とは何かで、平成15年の最高裁判決により「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち客観的な交換価値と解される」とされています。

 当然、最高裁判決の決定は尊重されるべきものですが、固定資産税の基本的性格を「交換価値」と表現して良いものかどうかについては、やや疑問もあります。
(この件につきましては、機会を改めて触れさせていただきます。)

(64)所有者不明土地の固定資産税への対応

 今回は47号「所有者が不明の土地・家屋の固定資産税」に続く内容です。

 一般財団法人「国土計画協会」の所有者不明土地問題研究会による試算結果によると、日本全国の所有者不明土地は、現在推計で410万ヘクタール(20.3)で、九州の土地面積(約368万ヘクタール)を越える面積となり、2040年までには720万ヘクタールに膨らむ見通しです。北海道本島の土地面積(約780万ヘクタール)に匹敵する面積になります。
 近年、所有者不明の土地が全国的に増加しており、公共事業の推進や生活環境面で様々な問題が生じています。
 そこで、所有者不明土地の固定資産税の課税上の課題に対応するため、所有者情報の円滑な把握や課税の公平性の観点から、令和2年度税制改正において、措置が講じられました。

所有者が不存在・特定できないため課税できないケース

 まずは、所有者が不存在あるいは特定できないため課税できないケースを確認しておきます。
 第47号で、「なぜ所有者不明の土地・家屋が発生するか」を説明しましたが、総務省のホームページに次の4つのケースが掲載されていますので、紹介します。
 1.死亡した登記名義人から賃借していた者が居住を継続している
 Aの生前からBが賃借していたが、登記簿は土地・建物のは死亡したA名義のまま、またAの相続人は全員相続放棄している。この場合、土地・家屋ともに課税できない。
 2.相続放棄した者とその関係者が居住している
 登記は土地・建物C名義だがCが死亡し、Cの相続人は全員が相続放棄している。この場合、土地・家屋とのに課税できない。
 3.登記が正常に記録されていない土地で店舗を営業している
 土地の登記が複数人によるものだが、住所記載が無いなど正常に登記されておらず、建物はH名義で店舗を営業している。この場合、土地は課税できず、家屋はHに対して課税されている。
 4.外国籍の所有者が死亡し、相続人が特定できない
 マンションの一区画及び敷地を外国籍のX名義であるが死亡している。この場合、国内に戸籍等が存在しないため、相続関係が確認できず、土地・家屋ともに課税できない。

所有者不明の土地への税制改正対応

現に所有している者(相続人等)の申告の制度化

 これまで、登記簿上の所有者が死亡している場合、課税庁の市町村等では「現に所有している者」(通常は相続人)の把握のため、法定相続人全員の戸籍調査等多大な時間と労力を割いてきています。
 このため、相続登記がされるまでの間における現所有者(相続人等)に対し、市町村の条例で定めるところにより、氏名・住所等必要な事項を申告させることができることとされました。

※地方税法第384条の3
「第384条の3 市町村長は、その市町村内の土地又は家屋について、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている個人が死亡している場合における当該土地又は家屋を所有している者(以下この条及び第386条において「現所有者」という。)に、当該市町村の条例で定めるところにより、現所有者であることを知つた日の翌日から三月を経過した日以後の日までに、当該現所有者の住所及び氏名又は名称その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。」

使用者を所有者とみなす制度の拡大

 これまでは、法律上、震災等の事由によって所有者が不明の場合に、使用者を所有者とみなして課税できる規定がありましたが、調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかにならない場合、(事前に使用者に通知をした上で)使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課すことができることとされました。

※地方税法第343条4項5項
「4.市町村は、固定資産の所有者の所在が震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。
5.市町村は、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお固定資産の所有者の存在が不明である場合(前項に規定する場合を除く。)には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

相続登記の申請義務化が決定(2024年までに施行)

相続登記が義務でないことが最大の不明要因

 所有者不明土地問題の解消に道筋をつけるため、相続登記の申請が義務化となります。
 この「所有者不明の土地」の最大の原因が、相続登記が義務化されていないことであることからすると、今回の「相続登記申請義務化」は明るいニュースと言えます。
 今回の相続登記に関する法改正の大きなポイントは、以下の3つあります。
 1.相続登記の申請義務化(3年以内の施行)
 2.相続人申告登記の(仮称)の創設(3年以内の施行)
 3.所有権の登記名義人の氏名または名称、住所の変更の登記の義務づけ(5年以内の施行)

相続登記の申請義務化は3年以内(新制度の概要)

 ここでは、1の相続登記の申請義務化(3年以内の施行)についてのみ、お知らせします。
 親が亡くなり、相続で不動産の所有権を取得した場合、相続の開始を知って、かつ、所有権を取得したと知った日から3年以内に移転の登記を申請しなければなりません。
 遺産分割で所有権を取得した際は、分割の日から3年以内の登記が義務づけられます。たとえば、遺産分割協議が2年後にまとまった場合、その日から3年以内に登記を申請しないといけません。もしも、正当な理由がないのにも関わらず、この二つの申請を怠った時は、10万円以下の過料を求められます。

 このように3年以内に相続登記の義務化がされることとなりましたが、これにより固定資産税の課税がスムーズに進むことを期待したいものです。