(95号)豪雨・洪水や土砂災害等の被害に対する固定資産税の減免措置について

 近年では、地球全体の気候変動の影響もあってか、猛暑が続いたと思ったら、線状降水帯による豪雨による河川の氾濫と洪水、土砂災害による被害発生も相次いでいます。
 また、日本は、東日本大震災・巨大津波に代表されるように”巨大地震の巣”とも言われており、同様な震災がいつ起きても不思議ではありません。

 これらの災害により、命が失われてしまう被害もありますし、家屋が倒壊したり、流される等の被害も相次いでいます。

 そこで、このような中で土地と家屋の被害に対して、固定資産税はどのような減免措置が用意されているのかについて見ていきます。

地方税法の減免規定

 地方税法では、上記の災害があった固定資産税については、減免する制度が古くからあります。

<固定資産税の減免>
※地方税法第367条
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 「減免」とは法律又は条例の定めるところによって課税権を行使した後に、納税者の申請により税額の全部又は一部を免除する制度です。これは、「非課税」(=当初から課税権を行使することができない)や「課税免除」(=本来課税の対象ではあるが地方団体自らが課税権を行使しない)とは異なります。

 この地方税法第367条により減免することができる者の範囲は、次の三つとされています。
①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
②貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
③その他特別の事情がある者

 大まかな減免要件は、上記①~③のとおりですが、具体的な内容は市長村の条例により定められていますので、次に紹介します。

 なお、地方税法では、この条文のほかに「被災住宅用地の特例措置」があります(地方税法第349条の3の3)。

条例による固定資産税の減免

 地方税法第367条の「固定資産税の減免」についての具体的な内容は、市長村の条例及び条例施行規則等で定められています。

 ところで、この市長村の条例の歴史は古いこともあってか、市長村毎に規定内容がかなり異なっています。

 そこで、ここでは東京都23区、横浜市、大阪市の三都市の条例等の内容について紹介させていただきます。

 なお、今回は「①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者」に限定させていただきます。また、ここでは”農地に対する被害”については、割愛します。)

東京都(23区)の都税条例

<「東京都都税条例」(一部)>
第134条(固定資産税の減免)
1項 次の各号のいずれかに該当する固定資産であつて、知事において必要があると認めるものに対する固定資産税の納税者に対しては、当該固定資産税を減免する。
一 生活保護法により生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税に係る固定資産
二 公益のために直接専用する固定資産(固定資産の所有者に課する固定資産税にあつては、当該所有者が有料で使用させるものを除く。)
三 災害等により、滅失し、又は甚大な損害を受けた固定資産で規則で定めるもの
四 前各号に掲げるものの外、規則で定める固定資産

 「東京都都税条例」第134条1項3号に規定する「災害等により、滅失し、又は甚大な損害を受けた固定資産で規則で定めるもの」は、「東京都都税条例施行規則」第31条で次のとおりとされています。

<「東京都都税条例施行規則」第31条1項1号-まとめ>
 固定資産の10分の1以上が被災した場合における当該固定資産に係る被災の程度に応じ、それぞれの減免額とする。
・ 被災の程度 : 10分の2未満 → 減免額 : 税額5分の1の額
・ 被災の程度 : 10分の2以上10分の3未満 → 減免額 : 税額の10分の3の額
・ 被災の程度 : 10分の3以上10分の5未満 → 減免額 : 税額の2分の1の額
・ 被災の程度 : 10分の5以上10分の7未満 → 減免額 : 税額の10分の7の額
・ 被災の程度 : 10分の7以上 → 減免額 : 税額の全額

横浜市の市税条例

<「横浜市市税条例」>
第62条(固定資産税の減免)
1項 市長は、次の各号の一に該当する固定資産に対し、特に必要があると認めた場合は、その固定資産税を減免することができる。
(1) 災害若しくは天候不順のため、収穫が著しく減じた田畑
(2) 生活保護法の規定により、生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税にかかる土地又は家屋
(3) 公益上その他の事由により特に減免を必要とする固定資産

 横浜市の場合は、1号の災害関連の条項は「田畑」が該当となっており、土地、家屋に関する減免は第3号の「その他の事由」として、「横浜市市税条例施行規則」第19条の3で次のとおり規定されています。

<「横浜市市税条例施行規則」第19条の3・3項イ-まとめ>
・ 損害の程度 : 10分の5以上 → 減免額 : 税額の全額
・ 損害の程度 : 10分の2以上 → 減免額 : 税額の10分の5の額
・ 被災の程度 : 10分の1以上 → 減免額 : 税額の10分の2の額

大阪市の市税条例

 大阪市の場合は、「大阪市市税条例」の第91条~94条が固定資産税の減免規定ですが、そのうち第91条が「災害により損害を受けた固定資産に対する固定資産税の減免」となっています。

 また大阪市では、本条例及び条例施行規則のほかに「大阪市固定資産税・都市計画税減免取扱要綱」及び「大阪市固定資産税・都市計画税減免事務実施要領」により、詳細に規定されています。

<大阪市市税条例>
第91条(災害により損害を受けた固定資産に対する固定資産税の減免)
1項 災害により損害を受けた土地に対する固定資産税は、申請に基づき、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定めるところにより減免する。
(1) 被害面積(災害により本来の用に供することができなくなった部分の面積をいう。以下この項において同じ。)の当該土地の面積に対する割合が10分の8以上であるとき 免除
(2) 被害面積の当該土地の面積に対する割合が10分の6以上10分の8未満であるとき 100分の80に相当する額の減額
(3) 被害面積の当該土地の面積に対する割合が10分の4以上10分の6未満であるとき 100分の60に相当する額の減額
(4) 被害面積の当該土地の面積に対する割合が10分の2以上10分の4未満であるとき 100分の40に相当する額の減額
(5) 被害面積の当該土地の面積に対する割合が10分の1以上10分の2未満であるとき 100分の20に相当する額の減額
2項 災害により損害を受けた家屋に対する固定資産税は、申請に基づき、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定めるところにより減免する。
(1) 家屋の原形をとどめないとき又は復旧が不能となったとき 免除
(2) 家屋の価格の10分の6以上の価値を減じたとき(前号に掲げる場合を除く。) 100分の80に相当する額の減額
(3) 家屋の価格の10分の4以上10分の6未満の価値を減じたとき 100分の60に相当する額の減額
(4) 家屋の価格の10分の2以上10分の4未満の価値を減じたとき 100分の40に相当する額の減額
(5) 家屋の価格の10分の1以上10分の2未満の価値を減じたとき 100分の20に相当する額の減額
※第3項が償却資産に対する固定資産税の減免が規定されていますが割愛します。

被災住宅用地の特例措置

 本ブログの第12号「固定資産税の住宅用地と減額特例について」において、土地の住宅用地の基本的解説を行っておりますが、この「被災住宅用地の特例措置」とは、土地上の家屋が被災によって無くなった場合の「被災住宅用地のみなし特例」になります。

 
 この「被災住宅用地等に対する固定資産税の課税標準の特例」は、地方税法第349条の3の3に規定されていますが、条文自体が”長く難解な表現”になっていますので、条文の紹介は割愛させていただきます。

 「被災住宅用地の見なし特例」は、平成13年度の地方税法の改正により新設されましたが、主な内容は次のとおりです。

 「震災、風水害、火災その他の災害により滅失し、又は損壊した家屋の敷地の用に供されていた土地」は、その土地上には家屋が存在しないため、本来であれば住宅用地(200㎡までが6分の1、200㎡を超える部分は3分の1に減額されている)ではなくなる訳ですが、この特例措置により一定の期間は住宅用地とみなされます。

 平成13年度の地方税法改正では、既に住宅用地としての課税標準の特例措置を受けていた被災住宅用地について、市町村長が当該土地を住宅用地として使用できないことを認定した場合には、震災等の発生後2年度分の固定資産税(都市計画税)が住宅用地としてみなされます。

 なお、平成17年度の改正で「災害対策基本法」に基づく避難指示等の期間や、平成29年度の改正による「被災市街地復興特別措置法」に基づく被災市街地復興推進地域においては、上記の2年に限定されませんので確認が必要です。

 固定資産税の減免の内容は市町村により相当異なりますので、確認が必要です。各市町村のホームページで「○○市長村・固定資産税・災害・減免」とのキーワードで検索されると間違いなく確認できます。

 

(94号)遊休農地のままの評価と農地中間管理機構に貸付けたときの減額特例

 農地(田・畑)の固定資産税評価と課税にいついては、第56号で解説してきました。

 
 今回の農地(田・畑)は一般農地(市街化調整区域農地)の場合となります。

 まず、今回テーマの要約を記載しておきます。

 農地が遊休農地として把握され放置されている場合は、農地の固定資産税評価額が「売買価格×0.55(農地の限界収益率)」となっているところ、この0.55を乗じない課税が強化され、結果的に1.8倍になります。

※「農地の限界収益修正率」とは
 農地の売買は、一般的に小規模な面積を単位として行われます。この場合、買受側は、買足しに伴う耕作面積の拡大ににより農業経営の効率が増進されます。このため、農地の売買実例価額は農地の平均収益額を超える限界収益額を前提として成立していると考えられていることから、その割高分を修正する必要があるためです(第56号参照)。

 しかし、この農地を農地中間管理機構に貸し付けた場合は、固定資産税が2分の1に軽減されることになります。

遊休農地の課税の強化(1.8倍)

対象となる遊休農地 

 遊休農地とは、「現に耕作されておらず、今後も耕作される見込みがない農地」(1号遊休農地)、または「周辺地域の農地に比べて利用の程度が著しく劣っている農地」(2号遊休農地)です。
(※ この1号2号とは、農地法第32条1項1号、2号です。)

<利用意向調査>
※農地法第32条1項
「農業委員会は、第30条の規定による利用状況調査の結果、次の各号のいずれかに該当する農地があるときは、農林水産省令で定めるところにより、その農地の所有者(その農地について所有権以外の権原に基づき使用及び収益をする者がある場合には、その者。以下「所有者等」という。)に対し、その農地の農業上の利用の意向についての調査(以下「利用意向調査」という。)を行うものとする。
1 現に耕作の目的に供されておらず、かつ、引き続き耕作の目的に供されないと見込まれる農地
2 その農業上の利用の程度がその周辺の地域における農地の利用の程度に比し著しく劣つていると認められる農地(前号に掲げる農地を除く。)」

 具体的に遊休農地とは、農地法に基づき、農業委員会からの利用意向調査において、機構への貸付けへの意思を表明せず、自ら耕作の再開も行わないなど放置している場合、農地中間管理機構と協議すべきことを勧告された農業振興地域内の農地となります。

農地中間管理機構とは 

 農地中間管理機構(農地バンク)とは、平成26年度に設置された都道府県の第3セクターで、「信頼できる農地の中間的受け皿」です。農地所有者が、この農地中間管理機構を活用できる場合は、「リタイアするので農地を貸したいとき」「利用権を交換して、分散した農地をまとめたいとき」「新規就農するので農地を借りたいとき」になります。

<農業振興地域とは>
 農業振興地域とは、農業の振興を促進することを目的として、今後相当期間(おおむね10年以上)にわたって農業振興を図るべき地域です。

農地中間管理機構の活用(1/2に減額)

遊休農地に関する手続き 

 農業委員会は、毎年1回、農地の利用状況調査を行います。

<利用状況調査>
※農地法第30条1項
「農業委員会は、農林水産省令で定めるところにより、毎年一回、その区域内にある農地の利用の状況についての調査(以下「利用状況調査」という。)を行わなければならない。」

 農地法に基づく、遊休農地に関する手続きは、次の流れで行われます。

①農業委員会が毎年1回、農地の利用状況を調査して、遊休農地の所有者等にに対する意向調査を実施します。

②利用意向調査の内容は、「自ら耕作するか」「農地中間管理事業を利用するか」「誰かに貸し付けるか」等です。

③意向どおり取組を行わない場合、農業委員会は、農地中間管理機構との協議を勧告し、最終的に都道府県知事の裁定により、同機構が農地中間管理権を取得できるよう措置します。

農地中間管理機構の活用 

 平成28年度の税制改正により、所有する全農地(10アール未満の自作地は残すことも可能)を、農地中間管理機構に10年以上の期間で貸し付けたときは、次の期間にわたり、農地の固定資産税の課税標準額が2分の1に軽減されます。

①10年以上15年未満の期間で貸し付けたときは3年間が2分の1

②15年以上の期間で貸し付けたときは5年間が2分の1

 なお、農業委員会から勧告を受けた上記の1号遊休農地や2号遊休農地を、農地中間管理機構の活用を行わずに放置すると、固定資産税が1.8倍に増額されますので、注意が必要です。

 

(56号)農地(田・畑)の固定資産評価及び課税

(第1回目投稿:令和3年、第2回目見直し:令和4年8月)

 固定資産税の農地(田・畑)は、一般的に、一般農地、市街化区域農地に区分され、評価及び課税されます。
 「農地の固定資産税(農林水産省HPより)」
※固定資産税評価基準では、このほか「宅地等介在農地」と「勧告遊休農地」が規定されていますが、本ブログでは、一般農地と市街化区域農地について解説します。
(参考)
・宅地等介在農地…農地法4条1項又は5条1項の規定により、転用許可を受けた農地
・勧告遊休農地…農地のうち農地法36条1項の規定により、農業委員会から農地中間管理機構による農地中間管理権の取得に関し協議すべき勧告があった農地(「農業振興地域」内に存する遊休農地に限らる)
・また、市街化区域農地のうち、生産緑地地区内の農地は一般農地と同様に扱われます。
 なお、農地とは土壌の養分を利用して作物を栽培する土地であり、用水を利用して耕作する田と、用水を利用しないで耕作する畑とに分けられます。

一般農地の評価及び課税

(1)一般農地の評価

 一般農地の評価の流れは、次のとおりとなります。
①状況類似地区の区分
 状況類似地区は、地勢、土性、水利等の状況を総合的に考慮し、おおむねその状況が類似していると認められる田又は畑の所在する地区ごとに区分します。
②標準田・畑の選定
 標準田又は標準畑は、状況類似地区ごとに、日照、かんがい、排水、面積、形状等の状況からみて比較的多数所在する田又は畑のうちから一つの(その地区における標準的な)田又は畑を選定します。
③標準田・畑の評点数の付設
 標準田畑の評点数は、売買田畑の売買実例価額から適正な時価に基づいて、ア~ウにより付設します。
ア.売買田畑の正常売買価額の算定
 売買田畑の売買実例価額 − 不正常要素に基づく価額 = 売買田畑の正常売買価額
イ.標準田畑の正常売買価額の算定
 売買田畑の正常売買価額 × 売買田畑と標準田畑との地形等の相違による修正 = 標準田畑の正常売買価額
ウ.標準田畑の評点数の付設
 標準田畑の正常売買価額 × 0.55(農地の限界収益修正率) = 標準田畑の適正な時価(標準田畑の評点数)
※「農地の限界収益修正率」を適用する理由…農地の売買は、一般的に小規模な面積を単位として行われます。この場合、買受側は、買足しに伴う耕作面積の拡大ににより農業経営の効率が増進されます。このため、農地の売買実例価額は農地の平均収益額を超える限界収益額を前提として成立していると考えられていることから、その割高分を修正する必要があるためです。
④各筆田畑の比準表の適用
 各筆田畑の評点数を付設する際には、標準田畑との状況の差を比較考慮し、評価基準に定められている「田の比準表」又は「畑の比準表」を適用して評点数を補正します。

⑤各筆田畑の評点数の付設
 各筆田畑の評点数は、まず、標準田畑の単位地積当りの評点数に、「田の比準表」又は「畑の比準表」によって求めた各筆の比準割合を乗じて、各筆の単位地積当りの評点数を求め、この評点数に地積を乗じて求めます。
 標準田畑の単位地積当りの評点数 × 各筆の比準割合 = 各筆の田畑の単位地積当りの評点数
 各筆の田畑の単位地積当りの評点数 − 当該筆の地積 = 各筆の田畑の評点数

(2)一般農地の課税

 一般農地及び生産緑地地区内農地には、農地の負担調整措置が適用されます。
負担調整措置は、土地の評価額の急激な上昇に伴う税負担を軽減するための措置で、これにより算定した調整税額(B)が、負担調整措置を行わずに計算した本則税額(A)を下回る場合には、調整税額(B)が納税額になります。
A(本則税額) : 評価額 × 税率
B(調整税額) : 前年度の課税標準額 × 負担調整率×税率
 「一般農地の負担調整率」

市街化区域農地の評価及び課税

 市街化区域農地とは、都市計画法7条1項に規定する市街化区域内の農地をいいます。市街化区域農地は、宅地としての潜在的価値を有し、売買価値も宅地と同水準にあると認められています。
 市街化区域は、都市計画法7条2項の規定により「すでに市街地を形成している地域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき地域」です。また農地として利用されていても、農地法4条1項7号及び5条1項6号の規定により届出をするだけで宅地に転用することができる農地となります。

(1)市街化区域農地の評価

 市街化区域農地は、宅地としての潜在的な価値を有しており、売買価額も宅地の価値に準じた水準にあると考えられますので、これらの農地を評価するに当たっては、付近の宅地との均衡を図る必要があります。しかし、市街化区域農地はあくまでも田・畑であり、宅地とするには、土盛り整地をしなければならないため、評価する場合には、宅地としての価額から土盛り整地等の造成費相当分を控除する方法により行います。
 市街化区域農地の評価 = ①基本価額 — ②造成費相当額
①基本価額
 基本価額は、類似宅地の価額を基準として求めますが、宅地の評価方法(市街地宅地評価法)とはやや異なり、直接類似宅地の価額を基準にして価額を求めます(市街地宅地評価法に準じて求めます)。
②造成費相当額
 市街化区域農地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費相当額ですが、その範囲は、一般的には土砂購入費、土盛整地費、擁壁費及び法止・土止費をいいます。
 これは、あくまで一般的な造成費相当額で、全国的には総務省から通知(平成29年)が出されていますが、各市町村で独自に決めている場合もあります。

(2)市街化区域農地の課税

 市街化区域農地には、一般市街化区域農地と三大都市圏の特定市に適用される特定市街化区域農地の2種類があり、それぞれ負担調整措置が適用されます。
①一般市街化区域農地の負担調整措置
 一般市街化区域農地は、「一般農地の負担調整措置」が適用されます。
A(本則税額) : 評価額×1/3×税率
B(調整税額) : 前年度の課税標準額×負担調整率×税率
 「一般市街化区域農地の負担調整率」

②特定市街化区域農地の負担調整措置
 三大都市圏の特定市の市街化区域農地は、「宅地の負担調整措置」が適用されます。
 「特定市街化区域農地の負担調整措置」

 なお、農地の詳細な基準は、各自治体による「固定資産評価事務取扱要領」(自治体により名称が異なります)を確認してください。

 

(93号)私道が非課税(公共の用に供する道路)にならない場合は1割評価が多い

 第23号で私道が「公共の用に供する道路」の場合は物的非課税(用途による非課税)」となると解説しました。

 
 しかし、そもそも私道は個人が所有する土地であるため、固定資産税が課税されるのが普通なのです。
 ただし、「公共の用に供する道路」として非課税にはならなくても、私道の評価には減額特例があります。
 その前に第23号の「公共の用に供する道路」の場合を簡単に復習しておきます。

「公共の用に供する道路」の要件 

 私道は個人の方の所有土地ですので、一般的には固定資産税の課税対象になりますが、「公共の用に供する道路」であれば、非課税になります。

「公共の用に供する道路」の私道として非課税となるためには、次の要件が必要です。
利用上の制約を設けず不特定の人の利用に供されていること
客観的に道路として認定できる形態を有すること

 そして、私道の種類ごとの要件は次のとおりです。

 「非課税になる私道の種類」
(a)「通り抜け私道」
「通り抜け私道」は、起終点が公道に接していること、幅員が1.8m以上であること、不特定多数の人に利用されていることが必要です。
(b)「行止り私道」
「行止り私道」は、2軒以上の家屋に利用されていること、幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることの要件が必要となります。
(c)「コの字型私道」
「コの字型私道」も②の「行止り私道」と同じく、2軒以上の家屋に利用されていること、幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることの要件が必要となります。
(d)「セットバック部分」
 幅員4mに満たない公道に面している土地の「セットバック部分」で、一体となって道路の効用を果たしているものは非課税になります。

 なお、「公共の用に供する道路」として非課税にするために、必要に応じて市長村への申告が求められています。

非課税にならない私道とは 

私道とはどのような土地か

 「公共の用に供する道路」ではない私道の類型(地目)は、正式には「その他の雑種地」に属します。
 その場合、雑種地の種類として、次の図の「近傍地比準方式」の「比準割合を適用」により評価されます。

「雑種地の分類」
 
 私道の定義は固定資産評価基準にはありませんが、一般に「私道とは、原則として私人が所有する公共の用に供する道路以外の道路で、かつ、道路部分が分割登記されているもの又はこれに類似するものをいう」とされています。

私道の補正率は0.1がほとんど

 ところで、肝心の、「公共の用に供する道路」ではない私道の補正率ですが、令和3年8月に総務省が行った「雑種地の評価方法に関する調査」(政令指定都市、中核市を中心とした139団体(東京都特別区を含む))によると、次のとおりです。

 比準元の土地の地目は「宅地」がほとんどで、比準割合については、市街化区域、市街化調整区域ともに「0.10~0.20未満」が一番多く、次に「0.10未満」となっています。

 なお、筆者が政令指定都市のいくつかを調査したところ、路線価方式の画地計算において、補正率「0.1」の私道補正率表を定めているところがほとんどでした。この場合、市長村の「所要の補正」として、「宅地」の画地計算の一つとして定めている市もあります。

「非課税でない私道例」
 
 なお、比準割合は、具体的には市町村毎に異なりますので、各市町村の「固定資産評価事務取扱要領」を確認してください。

相続税の私道評価(参考) 

 参考までに、相続税での私道評価を確認しておきます。
 相続税では財産評価基本通達(国税庁)により、「私道のしんしゃくは30%」とされています。

 相続税1㎡当りの評価額=路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率
 評価額=1㎡当りの評価額×地積×30/100

 全てではありませんが、私道割合は「固定1割・相続3割」と頭に入れておくことお薦めです。

 

(92号)有料駐車場は土地評価とともに償却資産も課税

 今回は、土地の有料駐車場の固定資産税(「その他雑種地」)について解説します。

 「その他の雑種地」の例として、一般的に考えられている利用形態としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられています。

 ところで駐車場は、例えば宅地と一体となっている駐車場の地目は宅地とされています。また、周辺一帯が宅地利用とされている地域での駐車場も宅地として評価されているのが一般的です。

 ただし、令和3年8月に行った総務省の「雑種地の評価方法に関する調査(アンケート調査)」(政令指定都市、中核市を中心とした139団体(東京都特別区を含む))では、駐車場は「その他の雑種地」と位置づけられていますので、このブログでも「その他の雑種地」の有料駐車場として解説します。

 なお、雑種地の基本編は第80号「雑種地の固定資産税評価について(基本編)」で紹介しています。

 
「雑種地の固定資産税評価」
 

「その他の雑種地」の評価方法

 雑種地の中でも種類が多いものは「その他の雑種地」になります。

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、
(1)売買実例地比準方式
 雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法
(2)近傍地比準方式
 市町村内に売買実例がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法
の2通りとなっています。

 原則は(1)の売買実例地比準方式ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では(2)の近傍地比準方式により評価されています。

駐車場の近傍地事例方式

 多くの市長村での駐車場の評価方法は、前記(2)の近傍地比準方式がほとんどですが、その方法として①宅地に比準する評価方法と②比準割合による評価方法の2通りの方法になっています。

①宅地に比準する評価方法
a.市街化区域の駐車場
 この方法による市街化区域の駐車場の評価方法は、宅地に比準して求めた基本価額から、当該雑種地を宅地に転用する場合において通常必要と認められる造成費に相当する額を控除して求めます。
 この評価方法は、市街化区域農地の評価方法と同じで、造成費相当額も市街化区域農地の造成費相当額を適用します。
<造成費相当額>
 造成費相当額とは、市街化区域農地を宅地に転用する場合において、通常必要と認められる造成費に、宅地の評価割合(地価公示価格等の割)を乗じて求めた評価上の造成費です。
 造成費相当額の判定にあたっては、平坦地(特に容易、容易、やや困難、困難)、傾斜地」(緩傾斜地、中傾斜地、急傾斜地)を前提にして査定します。
b.市街化調整区域の駐車場
 市街化調整区域内に所在し、かつ、開発許可等の区域内で建築行為が可能でない駐車場敷地の場合は、造成費相当額控除前の基本価額を70%減額します。つまり、市街化調整区域の駐車場基本価額は市街化区域の3割相当とされています。

②比準割合による評価方法
 全国の中でもかなりの市町村では、「その他の雑種地」の宅地比準割合表を作成して適用する評価方法を採用しています。
 この方法を採用している市町村では、「固定資産評価事務取扱要領」により「雑種地基準・宅地比準割合表」が定められています。

 なお、総務省が行ったアンケート調査によると、駐車場については、次のような状況が報告されています。
ア.市街化区域の場合に適用する比準割合
 比準割合1.0が最も多く、0.7~0.9がやや有り、0.5未満はほとんどみられません。ただし、比準割合1.0の場合でも造成が必要な場合には0.8とする等の団体もあります。
イ.市街化調整区域の場合に適用する比準割合
 比準割合0.5~0.6未満が最も多く、次に0.4~0.5未満、0.7~0.8未満の順となっており、0.8以上としている団体はほとんどありません。

 なお比準割合は、具体的には市町村毎に異なりますので、各市町村の「固定資産評価事務取扱要領」を確認してください。

有料駐車場は償却資産も課税

 ところで、土地の有料駐車場は事業用の資産になりますので、固定資産税は土地とともに償却資産が課税されます。

 固定資産税の償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、損金又は必要な経費に算入されるものをいいます。

 償却資産を所有されている方は、毎年1月1日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)について、1月31日までに償却資産の所在する市町村に申告する必要があります。

 固定資産税の償却資産(建築設備)については、第78号「建築設備の『家屋と償却資産の二重課税』(課税誤り)に注意」で説明しています。

 
 土地の有料駐車場内の償却資産の例としては、舗装路面(アスファルト、コンクリート舗装・砂利敷)、看板、精算機等の資産があり、申告・課税の対象となります。
 なお、精算機や昇降板、防犯カメラ、看板などの資産を管理会社が取付けた場合は、管理会社が申告義務者となります。

 また、償却資産には耐用年数がありますが、固定資産税の償却資産は、耐用年数が経過しても事業用資産として所有している限りは取得価額の5%が課税され続きますので、ご注意ください。

「有料駐車場の償却資産(松戸市のホームページより)」
外灯・フェンス・防犯カメラ・看板・舗装路面・精算機などが申告対象となります。