(投稿・令和7年6月)
今回は、家屋の附帯設備に関する償却資産との関係についてです。
具体的には、家屋の附帯設備に係る固定資産税の課税に当たり、テナント等の家屋の所有者以外の者が取り付けた附帯設備をどのように課税すべきかです。
家屋の附帯設備とは
改めて家屋とは何かですが、固定資産税の課税客体である家屋は「住家、店舗、エ場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物」と規定されています。
<家屋とは>(復習)
「地方税法第341 条第3 号」
「家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」
また、固定資産税の家屋は不動産登記法における建物と同義であると解されており、不動産登記法事務取扱手続準則では「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」と規定されています(不動産登記法事務取扱手続準則136条1項)。
家屋の附帯設備とは、家屋と一体となって機能し、家屋の価値を高める設備のことで、具体的には、電気設備、ガス設備、給排水設備、空調設備、照明設備、防災設備などが含まれます。
そして、家屋の所有者が家屋の附帯設備を取り付けた場合には、家屋の所有者が納税義務者となります。
家屋所有者以外の附帯設備への課税
しかし、家屋の所有者以外の者が附帯設備を取り付けた場合の課税はどうなるでしょうか。
1. 不動産の「付合」
まず、民法第242 条には不動産の「付合」の規定があります。
<不動産の「付合」>
「民法第242条」
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」
本来は、家屋所有者が「付合」により所有者となり納税義務者となるのですが、このただし書(権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない)が、テナント等の家屋所有者以外の者が取り付けた附帯設備に対してどのように課税すべきかについて、課税庁を悩ます課題でもあった訳です。
2. みなし償却資産課税制度
そこで、平成16 年度税制改正において、みなし償却資産課税制度が創設され、課税上の取扱いが明確になりました。
<みなし償却資産課税制度>
「地方税法第343条10項」
「家屋の附帯設備であって、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第1項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」
このように、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされました。
ところで、当初、みなし償却資産は、システムキッチンや取付型の空調設備、内装、壁等を想定していたものと考えられていました。
ここに、従来から考えられている「家屋(附帯設備)と償却資産の区別」を掲げます。下表は例示であり、必ずしもこのとおりとならない場合もあります。「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。
しかし、その後の調査で、これらを越える附帯設備(例えば、エレべーター等の運搬設備等)もみなし償却資産課税制度の適用対象とされ、テナントの償却資産として課税されている実態もあります。
償却資産として課税されると、都市計画税が課税されない等の不公平となる場合もあるのです。
では、どうすれば適正なみなし償却資産課税制度が実現できるのかですが。
実は、課税庁において家屋の使用者の使用実態やその変化を把握することが困難であり、使用実態が変更され、みなし償却資産課税制度の対象外となった場合でも再評価されずに、家屋としても償却資産としても課税されず、かえって租税回避に悪用されること等難しい面もあり得ます。
そこで、今後検討すべき案としては、附帯設備のうち家屋として課税すべきものの範囲を法令上明確化することですが、さてどうなるでしょうか。
2025/06/18/15:00