(第103号)「空き家」を取り壊した後の「更地」は、住宅用地ではないが商業地等の負担調整措置となる

(投稿・令和5年10月)

 「空き家」問題では、「空家等対策特別措置法」(以下「空き家法」)により「特定空き家」の指定がありますが、新しく「管理不全空き家」が創設されています(2023年12月施行予定)。

 現在「空き家」問題では、家屋の取壊しだけではなく、有効活用も検討される等様々な動きも出てきています。

 一方、固定資産税の土地評価では、家屋がある土地は住宅用地の負担調整措置による減額の特例措置がありますが、家屋を取壊して「更地」にすると、この減額特例は適用されなくなります(再建築予定地は別)。

 しかし、この「更地」については、商業地等の負担調整措置があります。

固定資産税の土地とは何か 

 まず、「更地」は間違い無く土地の部類ですので、固定資産税の根拠法である地方税法における土地の位置づけについてみていきます。

<固定資産税に関する用語の意義>
※地方税法341条1項2号
「土地とは、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、山林、牧場、原野その他の土地をいう」

 ところで、地方税法では用語の定義はされていませんが、具体的には不動産登記法(事務取扱手続準則)の定める通りとされています。

<不動産登記法—地目>
※不動産登記事務取扱手続準則第68条
「次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。」

 不動産登記事務取扱手続準則(68条)では23種類の地目が定められていますが、ここに主なものを掲げます。

※ここには「更地」の用語はありませんが、宅地の一形態とみることができます。

住宅用地の負担調整措置 

 固定資産税の評価において、土地は住宅用地と非住宅用地から成ります。

 まず、住宅用地とは「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地」(地方税法第349条の3の2第1項)と定義されています。

 住宅用地の例としては、住宅用家屋(専用住宅・アパート等)の敷地、住宅用家屋の敷地と一体となっている庭・自家用駐車場があります。つまり、住宅用地は家屋が存在している土地ということになります。

 ところで、地方税法第349条の3の2は「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」条文なのですが、では課税標準とは何かということになります。

 課税標準額とは、税率をかけて固定資産税の税額を算出する基になる金額のことで、通常は評価額と同一ですが、住宅用地については土地の負担調整措置が適用され、特例として評価額よりも低くなります。

 土地の負担調整措置では、価格(評価額)、本則課税標準額、前年度課税標準額、今年度課税標準額からなるため、複雑な仕組みとなっています。

 ここに住宅用地の負担調整措置の仕組み(小規模住宅用地の場合)を掲げます。

「住宅用地の負担水準と負担調整措置」

 固定資産税の価格は地価公示価格の7割とされています。

 そして住宅用地の場合は、200㎡までが小規模住宅用地で価格に1/6,200㎡を超える部分は1/3を乗じたものが本則課税標準額となります。

 次に、その年の課税標準額(今年度課税標準額)を求めるには、本則課税標準額に対する前年度の課税標準額の割合(これを負担水準と言います)を求めますが、これは前年度の課税標準額が、本則課税標準額のどこまで達しているかということです。

 そして、その負担水準に応じて今年度の課税標準額が決まってきます。したがって、今年度課税標準額=本則課税標準額×負担水準となり、今年度課税標準額×税率=税額となります。

非住宅用地(商業地等)の負担調整措置 

 それに対して家屋が存在しない、例えば「空き家法」が特定空き家に指定され、家屋を取り壊した場合の「更地」は、非住宅用地(商業地等)としての負担調整措置が適用されます。

 非住宅用地の例としては、業務用家屋(店舗、事務所、工場、倉庫、旅館等)の敷地、外部貸駐車場(月極駐車場、コインパーキング、カーシェアリングやシェアサイクルの用地など)、資材置場、空地(=更地)、住宅建築中の土地等があげられます。

 ここに商業地等(「更地」)の負担調整措置の仕組みを掲げます。
(この「商業地等の負担調整措置の仕組み」は、地方税法附則第18条に規定されています。)

「商業地等(「更地」)の負担調整措置」

 つまり、住宅用地の家屋が取り壊された「更地」でも負担調整措置が行われているのです。

 そのため、「固定資産税は建物が取り壊されると、土地が『更地』になるので価格が最高6倍となる」ことはありません。「空き家」が取り壊されて「更地」になると、評価額は「通常3~4倍」になります。

 非住宅用地の上限価格は、地価公示価格の7割から更に7割の引下げ特例が定められていることから、6分の1を廃止しても6倍にはならないのです。

不動産鑑定評価での更地 

 上記のとおり、「更地」は非住宅用地(商業地等)の一つであります。

 しかし、この「更地」の定義については、不動産登記法(事務取扱手続準則)や地方税法では明確にされていませんが、不動産鑑定評価では明確に定義されています。

 不動産鑑定評価基準では、①地域の種別(宅地地域)→②土地の種別(宅地)→③宅地の種別(更地)→④更地とは、と順に定義されています。(第2章 不動産の種別及び類型)

① 地域の種別⇒宅地地域
「地域の種別は、宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられる。 宅地地域とは、居住、商業活動、工業生産活動等の用に供される建物、構築物等の敷地の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいい、住宅地域、商業地域、工業地域等に細分される。」

② 土地の種別⇒宅地
「土地の種別は、地域の種別に応じて分類される土地の区分であり、宅地、農地、林地、見込地、移行地等に分けられ、さらに地域の種別の細分に応じて細分される。 宅地とは、宅地地域のうちにある土地をいい、住宅地、商業地、工業地等に細分される。」

③ 宅地の類型⇒更地
「宅地の類型は、その有形的利用及び権利関係の態様に応じて、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権等に分けられる。」

④ 更地とは
「更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう。」
 
2023/10/02/15:00
 

 

(第102号)震災、風水害等により被災した「住宅用地のみなし特例」について

(投稿・令和5年9月)

 今年(2023年)の夏は、「地球温暖化」を超えて「地球沸騰化」の時代とも言われ(国連グテーレス事務総長の発言)、異常気象による世界的な大災害が発生しました。

 そして、日本でも異常降雨、崖崩れ等の災害が続発し、住宅が滅失、倒壊する等の被害も発生しました。

 ところで、震災、風水害等の災害により住宅が滅失、損壊すると、その住宅の敷地となっていた土地が住宅用地として使用することができなくなってしまいます。

 そこで今回は、被災して住宅用地ではなくなった場合、固定資産税評価はどうなるかの解説です。

住宅用地とは何か(復習)

 まず、住宅用地とは何かの一部を復習します。

 住宅用地とは「専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地」(地方税法第349条の3の2)です。

 住宅用地のうち戸建住宅の場合の固定資産税は、200㎡までが1/6(小規模住宅用地)に、それを超える面積分は1/3(一般住宅用地)に減額されることとなります。
 また、都市計画税の小規模住宅用地は1/3、一般住宅用地は2/3となります。

 なお、一般住宅用地の固定資産税1/3・都市計画税2/3は住宅の床面積の10倍までが限度となります。

<住宅用地の仕組み(戸建住宅の場合>

 

「住宅用地のみなし特例」とは

「住宅用地のみなし特例」制度の趣旨

 この住宅用地は、原則として賦課期日(1月1日)の現況において現に住宅の存する土地であるものの、震災、風水害、火災等の災害により住宅が滅失し又は損壊のため取り壊された場合(以下「被災住宅用地」)には、住宅用地として認定できなくなってしまいます。

 そこで、被災住宅用地について所有者の税負担が急増することを回避し、住宅の再建を側面から支援する観点から、市町村長が「止むを得ない事由」と認定した場合には、次の「住宅用地のみなし特例」が適用されます。

 根拠法は地方税法第349条の3の3「被災住宅用地等に対する固定資産税の課税標準の特例」ですが、平成13年度、17年度、29年度に亘って改正されています。

(1)平成13年度の改正
 震災、風水害等の発生後2年度分の固定資産税(以下「都市計画税も含む」)を住宅用地とみなします。

(2)平成17年度の改正
 災害対策基本法に基づく避難指示等(避難勧告及び警戒区域の設定を含む)の期間が災害発生年の翌年以後に及んだ場合、住宅再建に着手し得る状況が整った後に賦課期日が到来する3年度分の固定資産税を住宅用地とみなします。

(3)平成29年度の改正
 被災市街地復興特別措置法に基づく被災市街地復興推進地域に定められた場合には、震災発生後4年度分の固定資産税を住宅用地とみなします。

震災、風水害等とは

 震災、風水害等とは、震災、風水害、雪害、落雷、噴火等の自然的災害、及び火災、爆発、事故等の人為的災害に起因して、住宅が滅失し、又は損壊した場合を指します。
 ただし、自己の放火や自己都合による建物取壊しの場合は、これに含まれません。

「止むを得ない事由」とは

 市町村長が被災住宅用地を住宅用地として使用することができない「止むを得ない事由」と認定し、「住宅用地のみなし特例」が適用される事例は、次の場合等です。

・ がれき等の処理で物理的に使用できない。
・ 権利関係の調整に時間がかる。
・ 復旧工事用の資材置場として用地を提供したため使用できない。
・ 経済的事情により、住宅再建まで時間が必要である。

特例適用可能な所有者の範囲

 本特例措置の適用を受けることができる所有者等の範囲は、次のとおりです。

(1) 被災年度に係る賦課期日(1月1日)における所有者

(2) 震災等の発生した日の属する年の1月2日から当該震災等の発生した日までの間に土地の全部又は一部を取得した者

(3) (1)又は(2)に該当する者から相続により、土地の全部又は一部を取得した者

(4) (1)又は(2)に該当する者から土地の全部又は一部を取得した三親等内の親族

(5) (1)又は(2)に該当する法人についての合併又は分割により、土地の全部又は一部を取得した法人

特例対象地積の範囲

 被災住宅用地について、一部が分割譲渡された場合、又は共有関係の変更があった場合等について、特例を受ける対象地積の範囲は、次のとおりです。

一部が分割譲渡された場合

 被災住宅用地の一部について、震災等の発生した日の翌日以後に、第三者に分割譲渡された場合は、当該譲渡された部分の地積が譲渡する前の全体の地積に占める割合により、その部分を「みなし住宅用地の特例」の適用から除外します。

共有関係の変更があった場合

(1)被災共用土地の場合
 被災共用土地については、建物が滅失した後についても従前と同様に、連帯納税義務の解除及び共用土地に係る税額の按分を行いますが、住宅用地とみなされる地積の算定については、通常の区分所有家屋の敷地の場合に準じます。

 すなわち、被災前の居住用部分に相当する部分の被災区分所有家屋の床面積に対する割合を元に、住宅用地とみなす部分を算定します。
 ただし、被災前に居住用であった部分の持分に対応する持分が第三者に譲渡された場合には、その持分に対応していた部分は居住部分ではなかったものとみなします。

(2)被災共用土地以外の土地の場合
 新たな第三者が取得した共用持分や本来の対象者であっても被災後新たに取得した共有持分は対象としません。

「被災住宅用地」適用には申告が必要

 震災、風水害等により被災した「住宅用地のみなし特例」の適用にあたっては、所有者から市町村長への申告が必要とされています。

 これは、市町村の市税条例で定められていますが、ここに例として千葉市の『被災住宅用地申告書』を紹介します(「千葉市のサイト」より)。
<『被災住宅用地申告書(千葉市)』>

 
2023/09/27/08:00
 

 

(第101号)「役に立つ固定資産税講座」100号達成-これまでの閲読では「宅地評価」「課税誤り」「非課税」「減免」などが上位

(投稿・令和5年9月)

 この「役に立つ固定資産税講座」は平成25年10月から始めましたが、100号を達することができました。

 これまでの皆様のご熱心な閲読に励まされて、ここまで到達することができました。有り難うございました。

 このブログソフト「WordPress」には、毎日の閲覧数を記録する機能であるプラグイン「Count Per Day」を搭載していますので、全ての記録が残っています。

 そこで今回は、①初号から現在までと②最近1週間の上位閲読(1位から10位まで)のナンバーを紹介することにします。

 多くの人が「固定資産税のどの内容を知りたいのか」が分かりますので、参考にしていただけましたら幸いです。

 なお、①②の一覧表と該当ブログのアドレスリンクのみとさせていただきますので、各ブログはアドレス(赤字)をクリックの上ご覧いただきますようお願い致します。

① 初号から現在までの閲読状況


 
◇1位<第36号>(50,021回)
 ・固定資産税の宅地の評価方法(「その他の宅地評価法-標準宅地比準方式」)
 
◇2位<第27号>(47,049回)
 ・固定資産税の課税誤り(過誤納金)の返還期間-地方税法及び「過誤納金返還要綱」
 
◇3位<第22号>(46,188回)
 ・物的(用途)非課税の例(2)-社会福祉法人等による「老人福祉施設」
 
◇4位<第15号>(43,911回)
 ・固定資産税「減免」の要件と市町村条例
 
◇5位<第16号>(26,531回)
 ・固定資産税(土地)の地目認定は現況主義による
 
◇6位<第28号>(25,225回)
 ・固定資産税の課税誤りの返還期間(20年間ー国家賠償法適用)―最高裁判決
 
◇7位<第19号>(22,591回)
 ・固定資産税の家屋とはどういうものか(基本編)
 
◇8位<第2号>(20,410回)
 ・固定資産税は市町村税の「基幹税」で、土地と家屋は「賦課課税方式」
 
◇9位<第13号>(19,158回)
 ・固定資産税が課税されない非課税制度とは
 
◇10位<第24号>(17,610回)
 ・固定資産評価は相続税、不動産取得税、登録免許税でも活用
 

② 最近1週間の閲読状況


 
◇1位<第21号>(153回)
 ・物的(用途)非課税の例(1)-私道でも「公共の用に供する道路」であれば非課税
 
◇2位<第64号>(92回)
 ・区分所有マンションの固定資産税評価について
 
◇3位<第29号>(83回)
 ・一般家屋の(固定資産税)床面積の算定について
 
◇4位<第27号>(72回)
 ・固定資産税の課税誤り(過誤納金)の返還期間-地方税法及び「過誤納金返還要綱」
 
◇5位<第22号>(61回)
 ・物的(用途)非課税の例(2)-社会福祉法人等による「老人福祉施設」
 
◇6位<第28号>(52回)
 ・固定資産税の課税誤りの返還期間(20年間ー国家賠償法適用)―最高裁判決
 
◇7位<第17号>(52回)
 ・固定資産税の土地面積は原則として「登記簿主義」、例外的に現況地積も
 
◇8位<第16号>(49回)
 ・固定資産税(土地)の地目認定は現況主義による
 
◇9位<第13号>(48回)
 ・固定資産税が課税されない非課税制度とは
 
◇10位<第95号>(47回)
 ・私道が「公共の用に供する道路」として非課税になる場合(具体的要件)
 

ご意見・ご感想のお願い

 この「役に立つ固定資産税講座」ブログでは、固定資産税の様々な課題を取り上げてきましたが、これからも、テーマはダブル可能性はありますが、できるだけ新しい課題の面から考察して情報を発信していくつもりです。

 そこでお願いですが、各ページの最下段に『お問合せ、ご意見・ご感想欄』を設けましたので、是非この欄からの情報発信をお願い致します。
 
2023/09/21/20:00
 

 

(第100号)宅地内の「赤道」(里道)が公道に指定されている問題点

(投稿・令和5年9月)

 今回は、宅地内の「赤道」(あかみち)問題ですが、固定資産税だけではない幅広いテーマになりますが、是非このような事実を知っていただきたいとの思いから、説明させていただきます。

「赤道」(あかみち)とは何か 

 「赤道」とは、古くから道路として利用された土地のうち、道路法の適用のない法定外公共物である道路(国有地)であったため、公図上で地番が記載されず赤色で着色されていたことから「赤道」と呼ばれています(里道とも言われています)。
(水路は青色で着色されていたことから「青道」と呼ばれています。)

 明治9年(1876年)太政官達第60号「道路ノ等級を廃し国道県道里道を定む」により、道路はその重要度によって国道・県道・里道の3種類に分けられました。

 大正8年(1919年)に(旧)道路法が施行され、いったん全ての道路は国の営造物(国有地)とされ、府県道は府県知事が、市町村道は市町村長が管理するようになりました。その際、重要な里道のみを市町村道に指定したため、それ以外の里道については道路法の適用外で国有のまま取り残されました。里道のままとされた道路は、小さな路地や農道、山道(林道、けもの道)です。

 市町村道に指定された道路は市町村の道路台帳等に登記され、実質的な道路状態の管理や維持が行われましたが、未登録の里道はその多くが公図に「赤線」で記載があるのみで、実質的な維持管理は周辺の住民任せで放置されていたのが実情でした。

 そして、平成12年4月1日に地方分権一括法が施行され、国土交通省(旧建設省)所管の「赤道(里道)・青道」などのいわゆる法定外公共物を無償で市町村へ譲与(所有権移転)されることになりました。

 つまり、「赤道(里道)・青道」は国から市町村が無償で譲り受けているのです。

宅地内「赤道」の公道指定 

 「赤道」でも普通に道路として使用されていれば問題は無いのです(そのケースは現に存在しています)が、多くの「赤道」は宅地内を通っているのです。

 例えば50年以上前から住み続けている宅地において、敷地内に「赤道」が通っているのですが、それが公道と指定されている場合があります。

 敷地内に公道が通っていること、この状況は全国的にも多いのではないかと思いますが、問題ではないでしょうか。

 「そもそも道路とは何か」ということですが、道路法第2条に道路の定義が規定されていますが、「道路とは、一般交通の用に供する道」ですので、宅地内に公道がある筈が無いのです。

<道路法>
(用語の定義)
第2条 この法律において「道路」とは、一般交通の用に供する道で次条各号に掲げるものをいう。
(道路の種類)
第3条 道路の種類は、左に掲げるものとする。
① 高速自動車国道
② 一般国道
③ 都道府県道
④ 市町村道

 筆者はY市の宅地所有者から「宅地内に『赤道』が公道指定されている」との相談を受けましたが、同じような例が同市内にもかなりあります。
 また、行政から何の説明も無いため、宅地内に公道が走っていること自体も認識していない土地所有者も相当いる筈です。


 
 この左図は登記所の公図ですが、道路部分は地番が入っていません。昔はこの部分が赤色で着色されていたため「赤道」と呼ばれています。
(現在の公図では、道路は赤色にはなっていません。)

 一方右図は、Y市の道路法「認定路線図」ですが、この「赤道」には「○○456号線」との番号が記載されていますが、これは公道に指定(認定道路)されていることを意味します。

※ 認定道路とは
 道路法が適用される都道府県道、市町村道等を通称「認定道路」と呼んでいます。この認定道路とは、道路法に規定する路線の認定(道路法第8条)、区域の決定(道路法第18条1項)供用の開始(道路法第18条2項)の行政行為を経た道路のことです。

 しかし、既に50年以上前から建物が建っている宅地地域に公道を設定すること自体あり得ないのではないでしょうか。

 宅地内を通っている「赤道」は既に道路(公道)としての機能は果たしておらず、実質的な維持管理も土地所有者任せとされているのが実態なのです。

 最高裁などの訴訟での判例がいくつかありますが、宅地所有者がその「赤道」を時効取得する判決です。

 市町村では、この「取得時効」を防ぐために公道指定(路線認定)をしているのか、と疑わざるを得ません。
 しかし、50年以上も前から宅地の敷地として利用している「赤道」が路線認定されただけで時効取得の対象にならないのかどうか、これは実際に訴訟をしてみないと分かりません。

 しかしまた訴訟も大変なので、現実的には「赤道」の土地所有者は市町村から払下げを受ける(買い取る)方法に従っているのです。

「赤道」払下げの手続き 

 ところで、「赤道」を市町村から払下げを受ける場合、複雑な手続きや費用が発生します。

土地測量と「赤道」部分の特定

 「赤道」の払下げを受ける際には、土地所有者の責任で土地測量を行い、宅地部分の面積と「赤道」部分の面積を確定する必要があります。当然、測量事務所に費用を支払うことにもなります。(市町村によっては補助金制度があります。)

「赤道」沿いの所有者の承諾書

 払下げを受ける所有者の責任で「赤道」沿いの他の所有者の「承諾書」を取得する必要があります。何故、払下げを受ける所有者が「赤道」沿いの他の所有者から「承諾書」を取得する必要があるのか、根拠の法律も無いし理解できません。

市町村議会での「公道廃止決議」

 宅地内の「赤道」が公道になっている場合は、議会での「公道廃止決議」が必要になります。この手続きは市町村の道路部局が行いますが、市町村議会の定例会議での決議ですので、それなりの時間がかかります。

払下げ費用の支払い

 「赤道」が公道とされている市町村では、宅地所有者は払下げを受ける(買い取る)ことになりますのが、市町村で決められている土地代金を支払うことになります。計算方法は条例で定められていないですし、計算方法は市町村毎に異なると思われます。

※Y市の払下げ土地代金(計算方法の例)
<地価公示価格(又は払下げ対象地の固定資産税路線価÷0.7)×1/2×実測面積>
(商業地の場合は1/2の箇所が0.8。)
※固定資産税路線価は地価公示価格の7割ですので(固定資産税路線価÷0.7=地価公示価格)です。

宅地内「赤道」公道化の問題点 

法的根拠が定かではない

 先に紹介したとおり、道路法第2条に「道路とは一般交通の用に供する」ことが要件とされていますので、宅地内の「赤道」が公道とされるのは、道路法に反することにならないのでしょうか。
(認定道路(公道)の指定手続きは道路法によりますが、そもそも、この宅地内の「赤道」を公道化すること自体が妥当なのかが問題なのです。)

「赤道」では新築・建替えが不可能

 「赤道」が宅地内に存在している場合には、(原則として)建物の新築・建替え等は認められないため、所有者は市から「赤道」の払下げを受けることになります。

※「赤道」のある宅地内でも、新築・建替え等が行われているケースがあるようですが(「赤道」が払下げされていれば問題ありませんが)、建築基準法上の取扱いですのでコメントは控えさせていただきます。

「赤道」に対する他市の見解

 この宅地内の「赤道」を公道として指定し、必要に応じて土地所有者に払下げすることは、多くの市町村でも行われていると思います。ただし、これに対しては公的な調査結果はありませんので、全国的な実施状況は分かりません。

 そこで筆者は、いくつかの(公道指定している)市に電話で確認してみました。

<質問>
「宅地内の「赤道」を公道指定して、有償で払い下げる法的根拠は何なのですか?」

<回答>
・A市…「……?、今までも行われているからです。」
・B市…「根拠法は道路法です。」
 ※この答えに対して「道路法の道路とは”一般の交通の用に供する道路”ですが」と問い返しましたが「……?」と回答無しでした。
・C市…「道路の上に勝手に家を建てているので、有料で買ってもらうのは当然です。」

宅地内「赤道」の固定資産税 

 それでは、上記のように宅地内に「赤道」があった場合に、固定資産税評価をどう行うかです。

 まず、この宅地内での「赤道」を公道化すること自体の法的根拠が不明確であるということです。

 そこで固定資産税評価においては、この「赤道」を正式な公道として扱うのではなく、宅地面積から「赤道」部分の面積を控除した部分を課税地積とすべきです。
 筆者が関わった宅地(Y市)もそのような評価がされています。

 仮に、宅地内を通過している「赤道」を正式な公道として認めて土地評価を行うとなると、路線価の扱いや画地分割した面積、形状等かなり複雑な評価になってきます。

 いずれにしても、このような理解し難い制度は、(道路局部門の役割ですが)検討・見直しをしていただきたいものです。
 
2023/09/10/17:00
 

 

(第99号)地方税における固定資産税・都市計画税の位置づけ

(投稿・令和5年9月)

 今回は、固定資産税・都市計画税が地法税の中でどのような位置づけになっているかを図と表を中心に見ていきます。

固定資産税・都市計画税の概要

 固定資産税・都市計画税の内容については、これまで複数の号で説明してありますので、ここでは一覧表を掲載します。

 固定資産税は、土地、家屋、償却資産から構成されますが、課税客体は、全国で土地が約1億8,042万筆、家屋が約5,880万棟存在しています。
 また、納税義務者は、土地が約4,122万人、家屋が約4,192万人、償却資産が約466万人となっています。
 一方税収は、土地3兆4,853億円、家屋3兆9,578億円、償却資産1兆7,556億円となっており、税収比率は4:4:2の関係になっています。

地方税の中での地位は

 では、固定資産税は地方税の中でどのような地位にあるのでしょうか。

 固定資産税は、令和3年度決算額のうち「国税・地方税の税収内訳」として、地方税合計の21.8%を占め、市町村税においては41.0%、都市計画税と併せると46.9%を占める基幹的な税であります。

<固定資産税の地方税収の地位(令和3年度)>


 

世界の中での資産税負担率

 日本は諸外国と比べて、2020年度の資産課税の割合がどうなのかです。

 次のグラフは国民所得比に対しての諸税の負担率がどのくらいかを示したものですが、アメリカ、イギリス、フランスは日本よりも資産課税の割合が高いことが分かります。

<国民所得比での税負担率>

 

令和5年度地方税収の構成

 次は、令和5年度地方財政計画での固定資産税の位置づけです。

 令和5年度の計画として、地方税全体が429,397億円に対して、固定資産税が96,696億円(22.6%)、都市計画税が13,873億円(3.2%)となっていて、割合としてはトップを占めています。

<令和5年度地方税収の構成>

 

償却資産の税収割合

 最後に、固定資産税の一つである償却資産の税収割合の多い市町村の表です。

 償却資産というと家屋との関係に目が行きがちですが、この表のとおりダムや原発も大規模償却資産の一種となります。

<償却資産の税収割合が高い市町村>

 
 太陽光パネルも償却資産の課税対象ですが、やはりダム、原発は規模・税収額が大きいのが分かります。
 
2023/09/04/11:00