(第147号)固定資産税で留意すべき内容(更新版)

(更新版・令和7年8月)

土地が「住宅用地」かどうかをチェック

 住宅用地は市町村の条例で申告が義務づけられていますが、仮に申告が無かった場合でも「住宅用地の減額特例」は適用されることになります。

 つまり、「住宅用地」は申告が有る無しに関わらず「減額特例」は適用されるべきで、過去に納付した金額の還付も可能になるのです。

 ところが、かなりの市町村では、申告が無いことを理由に、減額特例がされずに評価・課税されている「課税誤り」が生じています。

 是非、ご自分の資産が「住宅用地」かどうかをチェックしてください。

 ここで、住宅用地かどうか一見して分かりにくい例を紹介します。

(1)アパートの駐車場

 このパターンは、住宅用地を見逃し易い典型例として説明されますが、アパートの敷地の隣に駐車場があり、その駐車場はアパート住民が利用している駐車場である場合です。

 アパート敷地と駐車場とは地番が異なっている(筆が分かれている)場合もありますが、その場合でも駐車場敷地はアパートと一体の画地と認定され、住宅用地の軽減特例(6分の1)の対象になります(敷地が離れている場合は該当しません)。

 特にアパートの場合は1戸(部屋)につき土地200㎡が小規模住宅用地とされますので、かなり敷地が広くても敷地全体が6分の1に適用される可能性があります。例えば、そのアパートが8戸であれば、1600㎡までが小規模住宅用地となります。

(2)店舗廃業の居住用家屋

 近年では、シャッター通りと称されるように、店舗を閉店(廃業)した商店街も多く見受けられますが、店主は店舗を閉じた後もそこで居住し続ける場合が多く見られます。

 このような場合、店舗経営時の家屋の用途は「店舗」であり、土地は商業地(非住宅用地)で6分の1の減額特例はありません。しかし、店舗廃業後は居住用に変更したことから、住宅用地となり減額特例の対象となります。

 これは外観から分かりづらいため、商業地のまま評価・課税されている場合もあります。

(3)店舗の2階で居住している場合

 上記(2)と同類のケースですが、例えば2階建ての店舗で1階が店舗、2階部分に居住しているという場合ですが、居住部分の床面積が全面積の2分の1以上であれば、土地の全部が住宅用地の減額特例を受けることができます。

 これも外観からは分からないため、至急申告手続きをすべきです。

土地の価格=「客観的交換価値」は疑問

(1)固定資産税の価格は「適正な時価」

 地方税法において、固定資産税の価格は「適正な時価をいう」とされています。

<固定資産税の価格>-地方税法341条1項5号
「 固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
価格 適正な時価をいう。」

 それでは「適正な時価」とは何かということですが、平成15年6月20日の最高裁の判決では、土地の「適正な時価とは、客観的な交換価値をいう」とされています。

<土地に関する「適正な時価」>-平成15年6月26日最高裁判決
「 適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる。」

 ところで、固定資産評価基準でも、資産の譲渡を前提ではなく、利用=使用価値を基準にしているものと思われます。

 例えば、固定資産評価基準では、大規模画地補正は20万㎡を越える大規模工場用地のみで、宅地の補正率は「奥行価格補正」で行うこととされています。
※ 固定資産評価基準 別表第7の4「大規模工場用地規模格差補正率表」

 仮に「客観的な交換価値」とすると、市場流通性も考慮せざるを得なくなります。市場流通性とは、例えば住居地域で面積が大きくなると買い手が少なくなり、取引価格は下落することになります。

 しかし固定資産評価基準では、宅地の規模が大きい場合は「奥行価格補正」により補正するとされていますが、最大補正率が0.80(20%減価)とされています。
 仮に「客観的交換価値」であれば、この程度の減価率では済まない筈です。

(2)「交換価値」でなく「使用価値」

 ところで、市町村の固定資産税担当の実務では「固定資産税の時価は『使用価値』」と考えられていました。

 しかし、平成15年6月20日の最高裁の判決では、「適正な時価とは、『客観的な交換価値』をいう」とされ、驚いたのも事実です。

 そもそも、固定資産評価基準では「適正な時価」とまで規定されているものの、大規模画地補正等の具体的な補正率等では、固定資産税は財産価値を反映されるとして「使用価値」に基づくものとなっていると思われます。宅地規模の減価率を「奥行価格補正によるものとする」もその一種です。

家屋評価の簡素化の実現に向けて

 固定資産税の家屋評価は「再建築価格方式」が複雑で「課税誤り」の原因の一つですが、この簡素化については、これまでも総務省や財団法人資産評価システム研究センターで建築専門家等とともに検討されてきています。

 市町村によっては、家屋の比準評価方式が進められできたり、また最近では、民間業者と協力して電子化導入の検討を進めている市町村もあるようです。

 しかし、これらの試みは固定資産税評価の「抜本的な簡素化」には至っていないのが実状です。

(1)これまで検討された簡素化案

 これまで検討されてきた固定資産税家屋評価の簡素化案は、①「取得価格方式」、②「広域的比準評価方式」、③「㎡単価方式」で、それぞれのメリット、デメリットも指摘されています。

① 「取得価格方式」
 「取得価格方式」とは、事業用家屋について、申告された取得価格を基礎として、取得後の経過年数に応じた減価を考慮して評価する方式です。

(メリット)
 事業用家屋の評価事務の簡素化や、申告を基本とするため評価の透明性や納税者から理解が得られやすい。
(デメリット)
 申告義務が課されることで、新たな負担が生じる。

② 「広域的比準評価方式」
 「広域的比準評価方式」は、都道府県等の一定の地域内に所在する家屋を、その実態に応じ、構造、程度、規模等に区別し、各区分ごとに標準とすべき家屋を標準家屋として定め、そこから比準して評価する方式で、固定資産評価基準に定められている比準評価方法を広域的に適用しようとの方式です。

(メリット)
 同様の家屋について広域的に均衡が図られることや、現状の評価方法との差異が少なく、取り入れやすい。
(デメリット)
 広域設定の基準が課題となることや、対象家屋が類型化しやすいものに限定される。

③ 「㎡単価方式」
 「㎡単価方式」は、基準となる家屋の延べ床面積1㎡当たりの再建築評点数を再建築価格基準単価とし、これに補正率及び評価対象家屋の延べ床面積を乗ずることにより評価する方式です。

(メリット)
 個々の自治体で、基準家屋を設定する必要がなく、事務の軽減につながることや、同様の家屋について広域的に均衡が図られること。
(デメリット)
 全国一律の家屋を設定した場合、地域的な要因を反映しにくいことや、部分別評価と比較し、乖離が生じる可能性が高い。

(2)「取得価格方式」が合理的

 (1)の①~③の中で、納税者の感覚に合っているのは、実際にその家屋をいくらで建築したのか(建築費)、あるいはいくらで取得したのか(取得費)を根拠にした①の「取得価格方式」が合理的と言えます。

 ただし、実際の建築費や取得費を全額計上するのではなく、取得価格に調整率を加え、経年減価補正率を乗じて評価額を求める方法となります。

<「取得価格方式」の計算式>
 評価額 = 取得価格 × 調整率(※)× 経年減価補正率
 (※木造:6割、非木造:7割を想定)

 この「取得価格方式」は現実的で、家屋評価を行う市町村にとっても評価(事務)の簡素化を図ることができます。
 また、この方式は事業用に限定される必要も無いですし、「申告が必要」としても、最初の1回目のみです。

中古家屋の評価で新築時の検証が必要

(1)中古家屋の「審査の申出」結果

 最近、多くの中古ビル所有者様から「この固定資産税評価額は高いのではないか」とのご相談をいただき、「審査の申出」も行っています。

 しかし、ほとんどの「審査の申出」の審査結果は「建築時に算出した再建築費評点数に対して評価替ごとに再建築費評点補正率を乗じて、現在の再建築費評点数を算出しているので問題は無い」との理由で棄却されています。

 課税した市町村に対して、在来(中古)家屋は新築時評価を継続していますので、「新築時の評価が正しいのかどうか検証してください」と伝えても、「古い評価データは廃棄して存在していません」との回答です。

 これでは、在来(中古)家屋の評価検討は完全にストップしてしまうのです。

(2)新築時の家屋評価データは永年保存

 市町村の中には、10年廃棄ルールから、家屋の新築時の評価データを廃棄している場合もあります。
 また、逆に数十年経過している中古家屋の新築時の評価データを保存している市町村もあります。

 在来(中古)家屋の評価は新築時の評価が継続していますので、新築時の評価が正しかったのかどうかを検証する必要があります。
 廃棄している市町村と話をすると「どうもこの点を理解されていない」と思わざるを得ないのです。

 市町村は家屋の新築時の評価データを「永年保存」か「課税中保存」にすべきなのです。昨今では、電子化が進んでいますので、これも可能な筈です。
 
2025/08/04/13:00
 

 

(第146号)固定資産税の「課税誤り」と不服申立手続き(更新版)

(更新版・令和7年8月)

 今回は、固定資産税の「課税誤り」と不服申立手続きについてです。

「課税誤り」は潜在的に相当ある

(1)「課税誤り」とは

 固定資産税の「課税誤り」とは、市町村による固定資産税の評価及び課税に関して、固定資産評価基準等の規定とは異なる「評価計算間違い」等のことです。

 平成24年8月に総務省が発表した「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によると、全国1,544市町村のうち1件以上の「課税誤り」があったのは97.0%です。

<総務省発表資料(平成24年8月)>

※「総務省調査」では「課税誤り」の用語は使っておらず「税額修正」ですが、ここでは「課税誤り」と記します。

(2)「課税誤り」のトップは「評価額の誤り」

 「課税誤り」のうち、1番多い項目は土地、家屋ともに「評価額の誤り」がトップで約30%を占めています。

<「課税誤り」の内容>

(3)潜在的な「課税誤り」は更に多い

 なお、仮に「課税誤り」を行った市町村は、自らのホームページに公表することとされています。
 そこで、例えばグーグルサイトで『固定資産税、課税誤り、謝罪』とのキーワードで検索しますと、常に多くの市町村のホームページが登場します。

 このことから、固定資産税の潜在的な「課税誤り」がかなり存在することが想定できるのです。

価格に不服がある場合は「審査の申出」が原則

(1)原則的手続は「審査の申出」から

 固定資産税の「審査の申出」については、第1章6(5)に記載してありますが、価格に不服がある場合は、納税通知書の送付を受けた後3ヵ月以内に「審査の申出」を行うことができます。

 なお、「審査の申出」では、次の点に注意する必要があります。

「審査の申出」をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。
 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。

 固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。また、審査の申出は、代理人によってもすることができますが、代理人は弁護士や税理士等特定の職業に限定されていないことになっています。

「審査の申出」をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られます。

 例えば、価格ではない「固定資産税の課税内容(納税通知書の記載事項」等に対する不服は、「審査の申出」ではなく、「審査請求」によります。

「審査の申出」先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。
 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な(第三者)機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。

「審査の申出」は、原則として基準年度(3年毎)の価格に限定されています。

(2)「審査の申出」から取消訴訟へ

 固定資産評価審査委員会へ「審査の申出」を行い、その決定に不服がある場合は、決定があったことを知った日から6ヵ月以内に取消訴訟(訴訟)を提起できることになります。

 これが地方税法上の原則的な手続で、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行う必要があります。これを「審査請求前置主義」と言います。

<争訟の方式>-地方税法434条1項
「 固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」

<出訴期間>-行政事件訴訟法14条1項
「 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

地方税法417条による「重大な錯誤」

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録され公示されることにより行われます。しかし、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。

<価格等の決定又は修正等>-地方税法417条1項
「 市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、次のような場合とされています。

固定資産課税台帳に登録する際の誤記。
価格を決定する際の計算間違い。
明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合。

 そこで、納税者側からは、この制度を価格是正の手続きとして考えることもできるということです。

国家賠償法の「過失」での訴訟対応も可能

(1) 最高裁判決による判断

 固定資産税の価格に対する訴訟として、平成22年6月3日の最高裁判決で「国家賠償法の訴訟が可能」との判断がされました。

 なお、国家賠償法による訴訟が可能との判断は、第3章「土地の負担調整措置と住宅用地」(3)「住宅用地は申告が無くても適用される」で紹介した、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁判決でも示されています。

 この最高裁の判決によると、市町村の課税当局が「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない場合は「過失」があったとされ、「審査の申出からの訴訟」を経ないでも国家賠償請求をすることができるとされました。

 そして、仮に国家賠償請求が認められた場合は、20年の返還が可能となります。

<国家賠償法を認めた最高裁判決>-平成22年6月3日
「 公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

(2)事案の概要-冷凍倉庫の課税誤り

 これは名古屋市のある冷蔵会社が、名古屋市長の冷凍倉庫に対する誤った評価・課税に対して、不服申立手続を経ることなく国家賠償法により国家賠償を請求した事案です。

 この請求に対して、第1審(名古屋地裁)、第2審(名古屋高裁)ともに「国家賠償法に基づいて固定資産税等の過納金相当額を損害とする損害賠償請求を許容することは…妥当でない。」との判断のもと冷蔵会社は棄却されました。

 これに対して、冷蔵会社が最高裁に上告したところ、最高裁は国家賠償法による損害請求を認めて、名古屋高裁への差戻し判決がなされました。

 その後、平成22年10月名古屋高裁で、最高裁判決どおりの裁判上の和解(解決金800万円)が成立しており、この最高裁判決が確定しています。

(3)過徴収金返還の時効は20年

 地方税法上の還付金の時効は5年ですが、国家賠償の請求(「過失」)が認められた場合は、20年の返還となります。

<還付金の消滅時効>-地方税法第18条の3
「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から五年を経過したときは、時効により消滅する。」

<国家賠償法の適用>-国家賠償法第1条
「1 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
 2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。」

<民法の適用>-国家賠償法第4条
「国又は公共団体の損害賠償の責任については、前3条の規定によるの外、民法の定による。」

<不法行為による損害賠償請求権の消滅時効>-民法第724条
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
 1 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
 2 不法行為の時から20年間行使しないとき。」

 この「過失」とは、「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことの無いような場合」とされ、いわゆる「手抜き」と解釈されています。

 つまり、「手抜き」のような「過失」と思われる場合は、国家賠償法の対象になり得るということです。

<固定資産税の還付(返還)年数>

 
2025/08/02/15:00
 

 

(第145号)固定資産税の償却資産は「申告課税方式」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 これまで、市町村が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」としての土地及び家屋を解説していますが、固定資産税には、もうひとつ「申告課税方式」の償却資産があります。

 ところで、償却資産と言いますと、よく国税(法人税等)の「減価償却」と間違われる場合がありますが、固定資産税の償却資産は、「地方税の固定資産税の一種(償却資産)」であります。

 固定資産税の償却資産は、固定資産税全体(土地・家屋・償却資産)の税収の中でどの程度の割合を占めているかについてですが、令和5年度決算ベースで、償却資産は19.3%となっています。

地方税法上の償却資産とは

(1)償却資産とは

 地方税法において、償却資産は次のとおり定義されています。

<償却資産とは>-地方税法第341条第4項
「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものをいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

(2)償却資産の課税客体

 固定資産税の課税客体である償却資産とは、次の要件を備えるものとされています。

土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(事業用資産)であること。

その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるものであること。

鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産でないこと。

取得金額が少額である資産その他の政令で定める資産(少額償却資産※)でないこと。
 ※「少額償却資産」とは…耐用年数1年未満又は取得額が10万円未満のもので一時に損金又は必要な経費に算入されるもの、及び取得額が20万円未満のもので3年間で一括して損金又は必要な経費に算入されるもの。

自動車税の課税客体である自動車及び軽自動車税の課税客体である軽自動車等でないこと。

償却資産の申告制度

(1)償却資産の納税義務者

 固定資産税は、原則としてその年の1月1日(賦課期日)現在における固定資産の所有者に課税されます。

(2)償却資産の申告

 償却資産を所有する者は、毎年1月1日(賦課期日)現在の内容について、1月31日までに資産の所在する市町村に申告をする必要があります。

(3)償却資産の免税点

 同一の市町村に所在する償却資産の課税標準の合計額が150万円(免税点)を下回る場合は課税されません。

(4)課税客体から除かれる資産

 次の資産は償却資産の課税客体から除かれます。
自動車税、軽自動車税の課税対象となる資産
無形固定資産(ソフトウェア、特許権、電話加入権、営業権など)
繰延資産(創立費、開業費、開発費など)
商品・貯蔵品(販売目的として保有されている棚卸資産)

償却資産の種類

 業種別の主な償却資産は、次のとおりです。

<業種別の主な償却資産>

家屋と償却資産の課税区別

 家屋の建築設備の中にも、家屋に含めず、償却資産として取り扱うものがあり、判定の困難な場合も多く、中には家屋と償却資産が二重に課税されている課税誤りもあります。

 家屋は所有者の申告によらず役所が一方的に評価・課税する「賦課課税方式」ですが、償却資産は申告により課税される「申告課税方式」であることも課税誤りの原因の一つと思われます。

(1)家屋の所有者が所有するもの

 「家屋の所有者が所有する」とは、家屋の所有者がその建築設備の所有権を有するものであることとなります。

 なお、家屋の所有者以外の者によってその家屋に取り付けられたものであっても、民法第242条の「不動産の付合」により、家屋の所有者がその取り付けられたものの所有権を取得した場合も該当します。

<不動産の付合>-民法第242条
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその附属させた他人の権利を妨げない。」

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

<みなし償却資産課税制度>-地方税法第343条10項
「 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

(2)家屋の建築設備と償却資産

 次に、建築設備で「家屋に含めるもの」と「償却資産とするもの」の例を掲げます。
 「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。

 よく見られる家屋と償却資産の二重課税のケースは、賦課課税である家屋として評価計算されているにも拘わらず償却資産として申告されている場合です。この場合、家屋を評価する担当者と償却資産を担当する担当者が異なる場合があることから、二重評価に気づかず課税され続けている、ことが考えられます。

<家屋の建築設備と償却資産>

 
2025/07/30/16:00
 

 

(第144号)固定資産税家屋評価の複雑な仕組みと対応(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税家屋評価の複雑な仕組みと対応についてです。

家屋評価の複雑な仕組み

 固定資産税の家屋評価は「再建築価格方式」で複雑な仕組みとなっています。
 ここでは、その仕組みの一部ですが、固定資産評価基準における用途別区分と部分別区分の紹介です。

 家屋は、固定資産評価基準で木造家屋と非木造家屋に区分され、その木造、非木造家屋それぞれに、再建築費評点基準表による用途別区分と部分別区分に基づいて、再建築価格が算出され、固定資産税額が決定されます。

(1)家屋の用途別区分

 家屋の用途別区分は、建物の利用目的(居住用、店舗、事務所など)に応じて木造家屋7種類、非木造家屋9種類に区分されています。

① 木造家屋の用途別区分(7種類)
 1.戸建形式住宅用建物、2.集合形式住宅用建物、3.事務所、店舗用建物、4.病院用建物、5.ホテル、旅館用建物、6.劇場用建物、7.工場、倉庫用建物

② 非木造家屋の用途別区分(9種類)
 1.戸建形式住宅用建物、2.集合形式住宅用建物、3.事務所、店舗用建物、4.病院、ホテル用建物、5.工場、倉庫用建物、6.軽量鉄骨造建物<(ア)戸建形式住宅用建物、(イ)集合形式住宅用建物、(ウ)事務所、店舗用建物、(エ)工場、倉庫用建物>

(2)家屋の部分別区分

 家屋の部分別区分は、建物の構造(木造、非木造)や使用されている建材、設備などに応じて上記(1)の用途別区分毎に木造家屋10種類、非木造家屋11種類に区分されています。

① 木造家屋の部分別区分(10種類)
 1.構造部<(ア)主体構造部、(イ)基礎>、2.外壁仕上、3.内壁仕上、4.床仕上、5.天井仕上、6.屋根仕上、7.建具、8.建築設備、9.仮設工事、10.その他工事

② 非木造家屋の部分別区分(11種類)
 (1) 構造部<(ア)主体構造部、(イ)基礎工事、(ウ)外周壁骨組、(エ)間仕切骨組み>、(2)外壁仕上、(3)内壁仕上、(4)床仕上、(5)天井仕上、(6)屋根仕上、(7)建具、(8)特殊設備、(9)建築設備、(10)仮設工事、(11)その他工事

 この部分別区分は、建築された家屋の表面に表れている部分から隠れた内部も推定して評価できるように、家屋の構造を外見的な面から区分されています。

複雑な家屋評価と市町村の対応

(1)「再建築評点数」査定の作業

 これまで説明したとおり、家屋の評価基準の仕組み自体が複雑で、特に「評点数」→「再建築費評点数」の査定が最大の難関となりますが、この「再建築評点数」を求めるためには、次の作業が必要となります。

家屋所有者に調査協力を依頼し、新築家屋の見積書や竣工図等を借用し情報を取得します。

実際に当該家屋に赴き、用途別区分とともに家屋の外観や内部の使用資材等を確認します。

借用・保存した見積書等から評価基準の部分別区分に照らして、必要な資材を拾い出し部分別分類を行います。

その上で、市町村が有する評価システムに評価要領の評点項目と使用資材量の数値を入力して評点数を算出します。

(2)家屋評価の共同作業の試み

 市町村の税務担当者は、通常、事務職であることことから建築の専門家ではありません。もちろん、研修等は行われていますが、建築の専門的名称や構造等を十分に理解するのには時間が掛かります。

 ところが、市町村の事務職は3~5年程度で異動するのが一般的であり、折角慣れた時期には異動するという事態が発生します。

 そのような事態を防ぐため、市町村によっては、家屋評価の専門的な職員を配置することや、市町村によっては「専門組織」設置の試みも進められています。

 また、大都市以外の市町村では、市町村間で共同組織を設置する等の新たな試みも進められています。

(3)非木造家屋の評価を都道府県に委託

 政令指定市以外の市町村では、大規模(300㎡~500㎡以上)の非木造家屋の評価を都道府県県(県税事務所)に委託しています。
(県税事務所では、不動産取得税の評価・課税を行っています。)

 固定資産税の課税権者はあくまでも市長村町長にありますので、都道府県が評価した結果を市町村に送付され、市町村が課税手続きを行います。

<不動産の価格の決定等>-地方税法第73条の21
「1項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について増築、改築、損かヽいヽ、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。
2項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。
3項 道府県知事は、前項の規定によつて不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

 なお、東京都23区域内の固定資産税の課税権者は東京都とされ、都税として課税されています。つまり、具体的な課税及び徴収事務は、23区内の都税事務所が行っています。
 
2025/07/29/11:00
 

 

(第143号)固定資産税家屋の評価は「再建築価格方式」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税家屋の評価は「再建築価格方式」についてです。

家屋評価の「再建築価格方式」

 固定資産税における家屋の評価は、再建築価格を基準として評価する方式(「再建築価格方式」)を採用しています。

<新築家屋の評価計算-「再建築価格方式」>

(1)「再建築価格」とは

 再建築価格とは、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点において新築するとした場合に必要となる建築費(新築家屋の評点数)であり、実際にその家屋をいくらで建築したのか(建築費)、あるいはいくらで取得したのか(取得費)とは異なります。

(2)新築家屋の評点数

 新築家屋の評点数は次の方法で求めます。 

 <①再建築費評点数×②損耗の状況による減点補正率×③需給事情による減点補正率>

 実は、固定資産税の新築家屋の評価において、この部分の作業が大部分を占める大変な作業になります。

① 再建築費評点数
 再建築費評点数の付設については、「部分別による方法」と「比準による方法」がありますが、非木造家屋においては、一般に「部分別による方法」が採用されています。

<「部分別による方法」>

(ア)評点項目
 評点項目は、非木造家屋の構造に応じて、非木造家屋評点基準表の各部分ごとに一般的に使用されている資材の種別及び品等、施工の態様等の区分によって標準評点数を付設する項目として設けられています。

(イ)標準評点数
 標準評点数は、評点項目の区分に従い、非木造家屋の各部分別の標準的な単位当たり施工量である標準量に対する工事原価を基礎として算出されたものです。

 この標準評点数は、基準年度の賦課期日の属する年の2年前の7月現在の東京都における物価水準により算定した工事原価に相当する費用に基づいて、その費用を1円1点としています。

(ウ)標準量
 標準量とは、非木造家屋の評点基準表に示されている標準評点数の積算基礎となった各用途別、部分別の標準的な施工量です。

(エ)補正項目及び補正係数
 評点項目及び標準評点数は、標準的な家屋の各部分の施工量等を基準として決定されていますが、評価する個々の家屋の施工態様は必ずしも標準的なものではないため、補正項目と補正係数が設けられています。

 補正係数は、施工数量と施工状況の良否に基づく、補正項目ごとに適用すべき「標準」「増点補正率」「減点補正率」が示されており、それを適用します。

(オ)計算単位
 標準評点数は、各部分別の標準的な施工数量を基礎として積算されていますが、部分別再建築費評点数は、各部分別の標準評点数に床面積、個数、箇所数等の単位を乗じて算出します。

② 損耗の状況による減点補正率
 非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は、原則として経過年数に応ずる減点補正率(経年減点補正率)によります。

(ア)経年減点補正率
 経年減点補正率は、通常の維持管理を行う場合において、年数の経過に応じた通常生ずる減価を基礎として定められ、非木造家屋の用途別区分及び構造別区分に従い、非木造家屋経年補正率基準表に示されています。

 ただし、この補正率を乗じた経年減点補正率は20%より下がらず、その家屋が存在する限りは20%相当の評価額が続くことになります。これを「最終残価率」と言います。

(イ)損耗減点補正率
 各部分別の損耗の現況を通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる損耗の状態に修復するものとした場合に要する費用を基礎として定められたものであり、この基準表は特別な場合のみ適用されます。

③ 需給事情による減点補正率
 需給事情による減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている非木造家屋、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる非木造家屋等について、その減少の価額の範囲において求めるものとされています。

(3)評点一点当たりの価額

 評点一点当たりの価額は、次のとおりとなります。

 <1円×①物価水準による補正率×②設計管理費等による補正率>

① 物価水準による補正率
 物価水準による補正率は、家屋の資材費、労務費等の工事原価に相当する費用等の東京都特別区との地域的格差を考慮して定められています。

② 設計管理費等による補正率
 設計管理費等による補正率は、家屋の建築費に通常含まれる設計監理費、一般管理費、利潤等の工事原価に対する割合を考慮して定められています。

中古家屋は新築評価が継続

(1)在来家屋の評価計算方法

 在来(中古)の家屋に係る再建築評点数は、原則として、基準年度の前年度における再建築評点数(全基準年度に適用した評価基準によって求めた再建築評点数)に再建築評点補正率を乗じ、更に経年減点補正率を乗じて求めます。

<在来(中古)家屋の評価計算>

(2)在来家屋は評価額が上がっても据置

 在来家屋は、経年減点補正率は毎年下がりますが、再建築費評点補正率は3年毎に建築物価の状況に会わせるため上昇する場合があります。

 例えば、物価上昇期に再建築費補正率が上がり、計算上の再建築費評点数が前年を上回った場合はどうなるかですが、その場合の家屋の評価額は「据置き」となります。

<物価上昇期は評価額が据置>

(3)在来家屋評価では新築時の審査可能

 在来家屋の評価は(1)のとおりですが、建築当初の価格の見直しがされないことが多いのです。そうしますと、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになってしまいます。

 ところで、平成25年4月16日の東京高裁判決で「在来(中古)家屋の固定資産税評価で新築時の審査が可能」との判断がされています。

 そして、平成26年7月24日の最高裁判決で上告が棄却され、東京高裁の判断が確定されています。

<東京高裁判決(一部)>-平成25年4月18日
「 固定資産評価基準に従って決定された価格は「適正な時価」であると推認されるというにすぎない。このことは,その適用の誤りが,前記のような「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」である場合であっても,当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り,同様である。本件において,「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼすことが明らかである。」

(4)家屋の最終残価率は20%

 法人税の減価償却においては減価償却の残価額が1円(備忘価額)とされていますが、固定資産税の経年減価による最終残価率は20%で、評価額はそれ以下には下がりません。

 つまり、家屋の固定資産税は、何年経過しても家屋を使用(保有)している限りは最低限20%の評価・課税がされ続けるということになります。

 この最終残価率20%の制度は、「年数の経過に伴って家屋の価値は減少していくが、通常の維持補修を行い家屋として効用を発揮している家屋であれば、家屋の持つ使用価値はゼロにはならず、最低限の価値は保たれる。」とされているからです。

<固定資産税家屋の最終残価率>

 
2025/07/28/13:00