(69)中古家屋に対して新築時の評価が正しいかを検証できるか

 本号は、前号(68号)の「家屋データを廃棄して計算説明ができないN市の杜撰さと傲慢さ」に関連して「中古家屋に対して新築時の評価が正しいかを検証できるか」になります。

 繰り返しになりますが、前号のN市税務課の「『評価計算書』は廃棄したので無いが、評価は正しく行われている。」との説明は矛盾に満ちています。データが無いのに、何故「正しく行われている」と分かるのでしょうか?
 「正しく行われている」のであれば、「正しく説明すれば良い」のです。

 そこで問題は、中古家屋の納税者は、現在の基準年度において、新築時(過去の)価格に対して意見等を申出ることができるかということになります。

中古家屋の新築時評価の是非について

 家屋の基準年度の評価額は、一つ前の基準年度の価格(正式には「再建築費評点数」)を基礎として算定されています(在来家屋=中古家屋の評価)。この場合、建築当初の価格は見直しがされないことから、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになります。

中古家屋でも新築時評価を争うことができる

 この点については、平成25年4月16日の東京高等裁判所において、新築時の審査を認める司法判断が示されています。
 この事例では、被控訴人(東京都)はN市と同じように、在来(中古)家屋の評価が適正であるので問題無いと主張したのですが、東京高等裁判所の判決では、新築時の評価が正しかったのか否かの証明が必要と判断されています。

 「被控訴人は,平成18年度価格についての不服として,本件家屋の建築当初の評価を争うことは原則としてできず,その評価を争うことができるのは,建築当初の評価において適切に評価できなかった事情がその後に判明した場合や,建築当初の評価の誤りが重大で,それを基礎に評価をすることが適正な時価の算定方法として不合理であると認められるような場合に限られるとし,このように解さないと,①建築当初の評価額についての争いをいつでも蒸し返すことができることになり,固定資産税の賦課決定処分の前提問題である固定資産税評価額を早期に確定させることによって法的安定性を招来しようとする地方税法の趣旨に反する結果となる,②当初の評価から時間が経過するほど,評価の対象となった建物には経年変化が生じ,また,補修や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,そうなれば,当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になっていくことが当然に予想される,などと主張する。
 しかし,(中略)固定資産評価基準に従って決定された価格は「適正な時価」であると推認されるというにすぎない。このことは,その適用の誤りが,前記のような「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」である場合であっても,当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り,同様である。本件において,「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼすことが明らかである。(中略)被控訴人主張のような制限をすることはできない。」

 また、本判決において、建築当初の関係書類が廃棄されると、新築当時の評価が困難にになる、とも判断されています。

 「建築当初の評価から時間が経過すればするほど,評価の対象となった家屋には経年変化が生じ,修復や増改築等による変更が生じることが当然に予想され,さらには,建築当初の建築関係書類が廃棄又は紛失されることがあることも想像に難くなく,そうすると,時の経過と共に建築当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になることも当然に予想されるということはできる。

 <東京高等裁判所判決文>
 「東京高裁判決文」 (←詳細はここをクリック)

 この判決に対して、最高裁への上告がなされたものの、平成26年7月14日に棄却され、この高裁の判断が確定しました。

 この事例では、当然ですが、この家屋の新築当初の評価内容が課税当局から明らかにされているのが前提となっています。
 しかしながら、前号(68号)のKさんの場合、N市からデータを廃棄されたと言われてしまい、この判決の中でも懸念されているとおり、訴訟で争う手段も失われてしまっている訳です。
 更に、N市はデータを廃棄しただけではなく、Kさんに対してN市税務課の幹部から「もしこの家屋の評価が高いと思うならば、Kさん自身から計算して示してください」とまで言われているのです。「データを廃棄しているのに納税者としても「検証」できる訳がありません。
 そもそも固定資産税は、納税者の申告に基づかず役所が一方的に評価し課税する賦課課税でありますし、市町村税の約46%を占める重要な基幹税でもあります。
 このN市税務課幹部の発言は、賦課課税の責任を納税者に転嫁する、まさに杜撰さと傲慢さが感じられます。

今後の改善のための提案

大規模非木造家屋の評価は県が担当

 上記の東京高等裁判所の判決文にも「建築当初の建築関係書類が廃棄又は紛失されることがあることも想像に難くなく,そうすると,時の経過と共に建築当初の評価に誤りがあったかどうかを的確に判断することは困難になることも当然に予想されるということはできる。」とありますが、N市の対応はまさにこのとおりである訳です。
 しかし、大都市でない市町村(N市も含む)では、大規模の非木造家屋の新築評価は県(県税事務所)に委ねていることです。県と市町村の協定によっても異なりますが、通常は500㎡以上(N市の場合は300㎡以上)の非木造家屋がその対象です。
 その場合、評価データは実際に評価した県税事務所が保存していて、市町村では紙レベルの「評価計算書」のみを保有しているという場合が多いのです。また県税事務所では、不動産取得税の課税ですので、評価データはそれほど長期間保有していないと思います。

新築時家屋評価データの保存の必要性

 しかし、市町村の固定資産税の家屋(特に非木造家屋)であれば長期間の課税になりますので、データも長期間保有すべきです。 
 特に新築時の再建築評点数をどう評価したのかを所有者に説明するときにも必要ですし、仮に所有者が課税誤りに対して訴訟を提起した場合には必要な資料が存在しないことになってしまうのです。

 そこで、市町村にはぜひ次の2点を改善していただきたいと思います。

①県税事務所から市町村に送られる評価データは「電子データ」にしていただくこと。
(この点は種々課題もありますので両者の協定になります。)
②その評価データは「永年保存」か「家屋課税中は保存」にすべきこと。
(この点は市町村内部の判断で可能でしょう。)
 恐らく多くの市町村では、課税中家屋のデータは保存していると思いますが、敢えて「提言」させていただきます。

(68)家屋データを廃棄して計算説明ができないN市の杜撰さと傲慢さ

 最近、石川県河北郡津幡町に居住するKさんから、石川県能登地方のN市(「町」ではなく「市」です)に所有している家屋(マンション)の固定資産評価について、次のようなご相談をいただきました。

①自分の所有しているマンションの評価額が隣接のマンションと比較して約1.4倍、また自分が所有している他のマンションと比べても約1.6倍と高いので、5月に固定資産評価審査委員会(以下「審査委員会」)に審査申出を行ったものの棄却決定されました。
②その審査申出に対するN市からの弁明と審査委員会の決定では「建築時に算出した再建築費評点数に対して評価替ごとに再建築費評点補正率を乗じて、現在の再建築費評点数を算出している」とありました。しかし、仮に課税誤りがあるとすれば、新築当初の評価(再建築費評点数)に誤りがあった筈なのに、今までの評価は正しいとの前提なのです。
③そこで、N市の税務課に、新築当時の課税内容の説明を求めたところ、「当時の評価データは廃棄して無いが、間違いなく正しく評価している」との回答がありました。

 筆者は、Kさんから固定資産家屋評価見直コンサルタントとして相談を受けており(委任状も取得済み)、またKさんはN市の課税当局とのやりとりを録音していますので、これは事実で『作り話』ではありません。

N市課税当局対応の問題点

評価データを廃棄したこと

  まず、どこの市町村でも、課税中の家屋の評価データを保存しているのが普通ですが、このN市の対応には驚きました。
 評価データは、「評価計算書」とも言われ(名称は市町村により異なる)、市町村の内部資料ですが、どこの市町村でも所有者から説明を求められると、この資料により評価内容を説明し渡されるのが一般的です。
 所有者が評価内容を検討するためにも「評価計算書」が必要であるとともに、課税当局では、その家屋の評価額がどのように算定されているのかを説明し「課税誤り」が無いことを示す必要がある訳です。

建築当初の評価額が審査されないこと

 Kさんの審査申出の趣旨は「そもそも再建築費評点数の算定が正しいのか」ですが、課税当局の弁明と審査委員会の決定は、前年の再建築評評点数に補正率を乗ずる方法の説明に終始されています。これは在来(中古)家屋の評価方法になります。

 審査委員会の決定(棄却)もほとんど課税当局の弁明書を踏襲した結果となっています。審査委員会は第三者機関ですが、どこの市町村でも、審査申出の手続きでは課税当局の主張がそのまま採用されることがほとんどではないかと思います。
 「そもそも新築時の再建築費が正しいのか」との請求に対して、在来家屋の評価方法で決定(棄却)されていることも問題ですが、更に問題なのは、KさんがN市に直接説明を求めたときのN市側(「新築当時の資料は廃棄して無い」などの対応にあります。
 課税当局としては、その家屋の評価に「重大な錯誤」があるか無いかを確認した上で、問題が無ければ所有者に丁寧に説明し、仮に間違っていたら地方税法417条1項により、直ちに価格を修正しなければならないのです。
 しかし、N市は新築当時の資料を廃棄しているため、課税した当局自体が検証も出来ないし、説明も出来ないのです。

※地方税法第417条第1項
「市町村長は…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。…」

 つまり不服申立の原則は、3年に1度の評価替え(基準)年度に審査申出を行う仕組みですが、それに関わらず課税内容に不服や疑問があれば、市町村に働きかけてみることが必要なのです。

「評価計算書」とはどのようなものか

「課税明細書」と「評価計算書」の違い

 固定資産税については、毎年4~5月に「納税通知書」「納付書」とともに「課税明細書」が3点セットとして所有者に送られてきます。しかし、そこには家屋の価格(評価額)が記載されているのみで、それがどのように計算されたのか、なぜこの価格になったのかは一切分かりません。
 まず、毎年所有者に送られてくる「課税明細書」は次のようになっています。
「課税明細書(例)」

 どうでしょうか、この課税明細書の価格(評価額)をみても、どのように計算されてこの価格になっているのかは分かりません。

 そのために「評価計算書」の提出を求めるのですが、ここに「評価計算書」の例を掲げます。
「評価計算書(例)」

 ここに掲げた「評価計算書」は全体の一部です。また市町村によっては形式も名称も異なっています。
 固定資産税家屋の評価は非常に複雑な内容ですので、それを計算する「評価計算書」も複雑になっています。

 最近では、どこの市町村でも電子システムを活用していますが、それ以前は「データパンチ」(手書きの資料を電子化する)という方法で作成・保管され、仮に担当者がコピーを廃棄したとしても、組織としてはデータが保存されているのが普通なのです。特に家屋については、課税している間はデータを保存すべきなのです。
 そうでなければ、所有者にとって大切な財産である固定資産に対して評価・課税している根拠が疑われ、信頼性も損なわれることになります。

 ところで、平成25年4月16日の東京高等裁判所の判決「固定資産税評価審査決定取消請求控訴事件」において、本件と同様な事例が扱われていますので、次号で紹介します。

(78)建築設備の「家屋と償却資産」の二重課税(課税誤り)に注意

 今号は、固定資産税家屋の課税誤りの例として多く見られる、「建築設備の「家屋と償却資産」の二重課税(課税誤り)」についてです。

 家屋の建築設備の中にも、家屋に含めず、償却資産として取り扱うものがあり、判定の困難な場合も多く、中には家屋と償却資産が二重に課税されている課税誤りもあります。
 家屋は所有者の申告によらず役所が一方的に評価・課税する賦課課税ですが、償却資産は申告により課税される申告課税であることも課税誤りの原因の一つと思われます。

固定資産税の償却資産とは

 では、まず固定資産税の償却資産について簡単に説明します。
 償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上、損金又は必要な経費に算入されるものをいいます。
 償却資産を所有されている方は、毎年1月1日現在所有している償却資産の内容(取得年月、取得価額、耐用年数等)について、1月31日までに償却資産の所在する市町村に申告する必要があります。
※償却資産の例示

家屋の建築設備とは

 次は、家屋の建築設備とはどういうものかです。
 家屋の評価方法については、第45号及び46号で説明しましたが、木造家屋、非木造家屋ともに、まず用途別区分を行い、次に部分別区分を行った上で評点数を付設します。

 家屋の建築設備は、木造、非木造ともに部分別区分の一部ですが、ここに非木造家屋の部分別区分表を掲げます。

※非木造家屋の部分別区分

家屋の建築設備の要件

 上の表の⑫が建築設備になります。
 家屋は、居住、作業、貯蔵その他の目的に必要な、外界から遮断された空間を提供することを使命とするものであり、その目的とする機能を十分に発揮させるために、それぞれの目的に適した設備が設置されています。
 この目的により家屋に設置される設備は多種多様ですが、家屋に含めて評価するものとされる建築設備は、固定資産評価基準で次のように規定されています。

※固定資産評価基準第2章第1節七(建築設備の評価)
「家屋の所有者が所有する電気設備、ガス設備、給水設備、排水設備、衛生設備、冷暖房設備、空調設備、防災設備、運搬設備、清掃設備等の建築設備で、家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となつて、家屋の効用を高めるものについては、家屋に含めて評価するものとする。」

「家屋の所有者が所有する」

 「家屋の所有者が所有する」とは、家屋の所有者がその建築設備の所有権を有するものであることとなります。
 なお、家屋の所有者以外の者によってその家屋に取り付けられたものであっても、民法第242条の「不動産の付合」により、家屋の所有者がその取り付けられた」ものの所有権を取得した場合も該当します。

※民法第242条(不動産の付合)
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその附属させた他人の権利を妨げない。」

「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体なっている」

 同一の設備であっても、その設備の取付の状況によって、家屋の評価に含めるものと含めないものが生ずることとなります。

家屋の評価に含める建築設備は、当該家屋の特定の場所に固定されているものであることです。
 建築設備が埋込方式又は半埋込方式により取り付けられているものは家屋の評価に含めることとなりますが、取り外しが容易で、別の場所に自在に移動できるものは家屋の評価に含めません。

壁仕上、天井仕上、床仕上等の裏側に取り付けられているものは家屋の評価に含めます。
 また、家屋に固定されていない配線であっても、壁仕上、天井仕上、床仕上等の裏側に取り付けられているものは、家屋と構造上一体となっているものとして家屋に含めます。

屋外に設置された電気の配線及びガス・水道の配管並びに家屋から独立して設置された焼却炉等は、家屋と構造上一体となっているものではないので、家屋には含めません。

給水設備の給水タンクや空調設備の屋外機などが屋外に設置されている場合であっても、配管、配線等により屋内の機器と一体となって一式の建築設備として家屋の効用を高めているものは一式をもって家屋に含めます。

消耗品に属するものは、家屋に含めません。例えば、電気設備・照明器具設備における電球、蛍光管等は家屋に含めません。

「家屋の効用を高めるもの」

 「家屋の効用を高めるもの」とは、建築設備を家屋に設置することにより、「家屋自体の利便性」が高まるものをいいます。
 例えば、工場等のように物の生産、加工を業とする者がその業務のために使用する家屋には、通常の家屋に設置される設備のほか、物の生産、加工のために必要とされる設備が設置されている場合、このような設備は家屋の評価には含まれません。

建築設備の家屋と償却資産

 次に、建築設備で「家屋に含めるもの」と「償却資産とするもの」の例を掲げます。
 下表は例示であり、必ずしもこのとおりとならない場合もあります。「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。
 よく見られる家屋と償却資産の二重課税のケースは、賦課課税である家屋として評価計算されているにも拘わらず償却資産として申告されている場合です。この場合、家屋を評価する担当者と償却資産を担当する担当者が異なる場合があることから、二重評価に気づかず課税され続けている、ということになるのです。

※家屋と償却資産の二重課税に注意!

(77)一般家屋の(固定資産税)床面積の算定について

 先に「区分所有(分譲)マンションの面積把握について」(第70号)と「タワーマンション(居住用高層建築物)の固定資産税家屋の評価方法につて」(第76号)を解説しましたが、今号は、家屋評価の基本である「一般家屋(※)の床面積」の算定方法について解説します。

 
※「一般家屋」とは、戸建住宅のような、区分所有(分譲)マンションの「専有部分」が無い家屋の意味で用いています。

家屋の床面積の算定

 固定資産評価基準では、床面積の算定について、「各個の家屋の再建築費評点数を付設する場合の計算単位として用いる家屋の床面積は、各階ごとに壁その他区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として算定した床部分(階段室又はこれに準ずるものは、各階の床面積に算入するものとし、吹抜の部分は、上階の床部分に算入しないものとする。)の面積によるものとする。」とあります。

 ここから、戸建住宅のような一般家屋の床面積は、「壁芯面積」で算定するものとされています。(区分所有(分譲)マンションの専有部分は「内法面積」で算定します。)
※一般家屋は「壁芯面積」で算定

床面積の具体的な判定

 固定資産税家屋の床面積の具体的な判定は、一般的に不動産登記取扱手続準則(以下「準則」という)第82条によることとされています。
 しかし、固定資産評価基準の床面積は、あくまでも再建築費評価の適正な評価額を求めるものであり、不動産登記法上の床面積又は建築基準法上の建築面積と異なっても差し支えないとされています(平成2年11月6日、福岡地裁判決)ので、判定に当たっては該当する市町村の「固定資産評価事務取扱要領」(市町村によって名称が異なる)を確認してください。

※平成2年11月6日・福岡地裁判決
「評価基準上の床面積は、再建築費評価の計算単位たる床面積、すなわち、適正な評価額を反映させるための床面積であり、不動産登記法上の床面積とは性格を異にしている。この性格の違いから、便宜上不動産登記法における床面積とは異なる取扱をすることができるものと解する。」

 ここでは、主な床面積について解説します。

(1)地階、屋階(特殊階)の床面積

「天井の高さ1.5m未満の地階及び屋階(特殊階)は、床面積に算入しない。ただし、一室の一部が天井の高さ1.5 m未満であっても、その部分は当該ー室の面積に算入する(準則第82条第1号)」
① 天井の高さとは、床面上から天井面までの高さをいいます。天井面がない場合は梁の下端までの高さをいうものとし、梁もない場合は母屋の下端、母屋もないときは垂木の下端等、梁に代わるべきものまでの高さをいいます。
※梁のある場合とない場合

②地階は天井の高さが1.5m未満である場合は床面積に算入しません。ただし、家屋の一部であるので家屋としては評価します。
※地階1.5m未満……床面積に算入しない

③斜面に建物を建築するためにつくられた大規模な基礎又は人工地盤により形成された空間については、その天井高が1.5m以上である場合であっても、床面積に算入しません。
※人工地盤による空間1.5m以上……床面積に算入しない

(2)上屋の有る停車場、荷物積卸場

「停車場の上屋を有する乗降場及び荷物積卸場の床面積は、その上屋の占める部分の面積と乗降場及び荷物積卸場の面積のうち、重なる部分の面積をもって算定する(準則第82条第2号)」
※停車場……床面積はa×b

(3)地下停車場、地下駐車場及び地下街

「地下停車場、地下駐車場及び地下街の家屋の床面積は、壁又は柱により区画された部 分の面積により定める。ただし、常時一般に解放されている通路及び階段の部分を除く(準則第82条第4号)」
※シャッターを有する通路……床面積に算入する

(4)階段室、エレベーター室

「階段室、エレベーター室又はこれに準ずるものは、床を有するものとみなして各階の床面積に算入する。(準則第82条6号)」
※階段室、エレベーター室……床面積に算入する(a×b)

(5)屋外の階段

「建物に附属する屋外の階段は、床面積に算入しない(準則第82条第7号)」
一般的に簡易な屋外階段は床面積に算入せず、階段部分は屋外階段とし、建築設備又は特殊設備として評価します。
※屋外階段の例……床面積に算入しない

(6)建物内部の煙突、ダストシュート

「建物の内部に煙突、ダストシュートがある場合(その一部が外部に及んでいるものを含む。)には、その部分は各階の床面積に算入し、外側にあるときは算入しない(準則第82条第1a号)」
※建物内部と外部にあるダストシュート

(7)出窓

「出窓は、その高さが1.5m以上のものでその下部が床面と同一の高さにあるものに限り床面積に算入する(準則第82条11号)」
 出窓に物入、敷居、かまち等があり、これらが多少部屋の床面よりもあがっていても床面と同ーとみなし床面積に算入します。
※出窓……床面積に算入する場合

※出窓……床面積に算入しない場合

(8)バルコニー(ベランダ)、外廊下

「バルコニー(ベランダ)、外廊下のように周壁の不完全な部分は、原則として、床面積に算入しない。」
※バルコニー(ベランダ)……床面積に算入しない

※外廊下……床面積に算入しない

(9)ピロティ、玄関、車寄せ

「ピロティ、玄関、車寄せ等は、床面積に算入しない。」
※ピロティー……床面積に算入しない

※車寄せ……床面積に算入しない

(43)固定資産税の家屋とはどういうものか

 今号は、「固定資産税の家屋とはどういうものか」ですが、その前に、家屋の税金としての歴史を簡単に見ていきます。

固定資産税家屋の歴史

 固定資産税としての家屋は、昭和24年にシャウプ勧告が出されて、昭和25年に地方税法が制定され、そこで市町村税として土地、償却資産とともにスタートしました。
 それ以前は、明治15年に家屋税が大府県(東京、大阪、京都、神奈川)に対して創設され、明治21年にこれらの府県の市町村に家屋税付加税が、その後明治23年に全国で課税されるに至っています。
 このように、現在の税としての家屋は、土地(地租)、償却資産(船税、電柱税、軌道税)に対する課税とともに、長い歴史を有しています。

固定資産税家屋の定義

 そこで、固定資産税の家屋とは何かということですが、地方税法341条に次のとおり規定されています。

※地方税法341条第3号(固定資産税に関する用語の意義)
「家屋とは、住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」

 この用語の定義は、地方税法創設から一貫して変わっていませんが、これは単に種類を列挙して間接的に定義しているにすぎません。
 では、具体的に固定資産税の家屋とは何かということですが、不動産登記法における建物と意義を同じくする、とされています。次の「地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)」は総務省の通知ですが、次のとおり説明されています。

※地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)
「 家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること。」

 そこで、「不動産登記法上の建物とは」についてみていきます。

不動産登記法の建物とは

 不動産登記法の建物は、不動産登記規則(113条)で12種類、不動産登記事務取扱手続準則(80条)で25種類、併せて37種類が規定されています。ただし、これにより難い場合には、建物の用途により適当に定めるものとする、とされています。

※不動産登記法の37種類の建物
・ 居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所(不動産登記規則:12種類)
・ 校舎,講堂,研究所,病院,診療所,集会所,公会堂,停車場,劇場,映画館,遊技場,競技場,野球場,競馬場,公衆浴場,火葬場,守衛所,茶室,温室,蚕室,物置,便所,鶏舎,酪農舎,給油所(不動産登記事務取扱手続準則:25種類)

固定資産税の家屋とは(家屋の意義)

 固定資産税の課税客体となる家屋の認定に当たっては、次の(1)から(5)の要件が必要とされます。

(1)屋根を有すること

 屋根は、雨露をしのぐために必要不可欠です。不動産登記規則111条では「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること」(外気分断性)とあります。
 ただし、高架下の建造物については、家屋として評価すべき屋根はないが、屋根に相当する構築物があるため家屋として取り扱われます。
※高架下の建造物は家屋として認定

(2)周壁を有すること

 家屋は、周壁により内側に一定の利用空間が発生し、外気分断性有りと判断されます。
 ここで周壁を有するとは、概ね3面以上に周壁がある(その面の3分の2程度以上の部分に壁があることをもってその面は周壁を有する)ことをいいます。
 ただし、周壁については、厳密な意昧での外気との分断がされていなくても、建造物の使用目的、利用状況等を考慮して外気分断性があると判断される場合もあります。例えば、駐車場では外周壁が腰壁程度しかないものが見受けられますが、外気分断性があると認められます。
※3面に周壁を有するので家屋として認定

(3)土地に定着した建造物であること(土地への定着性)

 土地に定着した建造物であるということは、建造物が建造されている土地から容易に移動できないことをいいます。
①建物の大きさ、重さ、構造、基礎の施工の程度、 建築設備の状況により物理的または経済的に他の場所に移動させて利用することが容易でないこと
②建物の用途、目的からしてある程度の期間(通常賦課期日をはさんで1 年以上)継続し利用することが予定されていること
の2つの要件を充足している建物の場合には、通常、土地に定着している建造物といえます。
 土地に対する定着性が欠ける建造物と考えられるものは、次の例示によります。
ア   容易に運搬できる切符売場、入場券売場等
イ   単に置いた程度のスチール製の物置、簡易便所等

(4)家屋本来の用途に供しうること(用途性)

 家屋本来の目的は、その空間を居住、作業、貯蔵、営業、保管等の用途に供しうるもの(人貨滞留性)でなくてはなりません。
 次のようなアーケードは、道路の用途を高めるものであって家屋本来の目的とは異なるので家屋とは認定できません。
※アーケードは家屋として認定しない

(5)恒久性を有すること

 不動産登記法準則第77条に「半永久的な建造物と認められるものに限る」とあるように、家屋は、恒久性を有することが必要です。
 なお、特殊な構造等のものについては、個々の利用状況等も考慮して判断することになります。
 家屋として認定しないものを例示するとつぎのものがあります。
ア 園芸用ハウス(温室)で屋根、周壁がビニール・シートのもの
イ ビニール・シート等で葺き上げた車庫
ウ 簡易な鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等

(※)賦課期日に完成していること

 これは家屋の意義とは異なりますが、建築中の建物がどの程度まで完成していれば家屋の課税対象となるかについては、昭和59年の最高裁判決により「固定資産税の性質目的及び地方税法の規定の仕方からすれば、新築の家屋は、一連の新築家屋が完了したときに、固定資産税の課税客体となる」とされ、1月1日現在で(完全に)完成した建物となります。
 となると、新築建物は12月に完成させるよりも、次の年の1月に完成させた方が1年課税を遅らせることができるということになります。