(48)新型コロナウイルスによる事業収入減少の固定資産税

 新型コロナウイルス感染症の影響で事業収入が減少している中小企業者・小規模事業者(以下「中小事業者等」)に対して固定資産税・都市計画税の減免が行われます。
 政府は、令和2年4月30日に「地方税法等の一部を改正する法律」を改正・施行しました。
 この改正の中で固定資産税に関する項目としては、①徴収の猶予制度の特例、②中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置、③生産性革命の実現に向けた固定資産税の特例措置の拡充、があります。
 今回は、②の中小事業者等が所有する償却資産及び事業用家屋に係る固定資産税等の軽減措置についてお知らせします。
(これは、新型コロナウイルス対策という時限的対応ですので、ご注意ください。)

軽減措置の概要

 中小事業者等の税負担を軽減するため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のための措置に起因して、事業収入が減少した中小事業者等が所有する事業用家屋及び償却資産について、令和3年度分の固定資産税又は都市計画税の課税標準額を事業収入の減少割合に応じて、ゼロ又は2分の1とされます。

軽減措置の要件等

(1)対象者

 令和2年2月から10月までの任意の連続する3ヵ月間の事業収入が、前年の同期間の事業収入と比べて、30%以上減少している中小事業者等であること。
※中小事業者等とは
・会社及び資本又は出資を有する法人 : 賦課期日において資本金又は出資の総額が1億円以下
・資本又は出資を有しない法人や個人 : 賦課期日において従業員1,000人以下
・みなし大企業に該当しない

(2)事業収入の減少幅及び特例率

・事業収入が50%以上減少している場合→適用される特例率「ゼロ」
・事業収入が30%以上50%未満減少している場合→適用される特例率「2分の1」

(3)特例の対象となる範囲

 事業用家屋の事業の用に供している部分(居住の用に供している部分は適用対象外)及び所有する事業の用に供する償却資産。

(4)特例が適用される期間

 令和3年度のみ

申告方法

 中小事業者等は、税理士、会計士等の認定経営革新等支援機関等に①中小事業者等であること、②事業収入の減少、③特例対象家屋の居住用・事業用割合についての確認書を発行してもらい、令和3年1月まで固定資産税の納付する市町村に申告することになります。
※ 詳細については、各市町村にお問合わせください。

(47)所有者が不明の土地・家屋の固定資産税

 今回は、所有者が不明な土地と家屋の固定資産税についてです。
 そもそも、なぜ所有者不明な固定資産(土地と家屋)が生じるのでしょうか。
 まず所有者不明な土地と家屋が増加する原因としては、相続が生じても相続登記が行われないことにあります。この傾向は、今後、超高齢化社会と人口減少が進むにつれ、更に深刻な問題となっていくことが予想されます。
 その前に、固定資産税の納税義務が地方税法上どうなっているのかについて、復習しておきたいと思います。

固定資産税の納税義務者とは

(1)納税義務者は登記・登録されている所有者

 固定資産税(土地及び家屋に限定)の納税義務者は、原則として登記簿に所有者として登記されている者(登記簿所有者)又は土地・家屋補充課税台帳に登録されている者をいいます(地方税法第343条1項、2項)。
その意味では、固定資産税の納税義務者は、必ずしも真実の所有者とは限りません。
 また、この納税義務者は賦課期日(毎年の1月1日現在)に登記・登録されている者ですが、この登記・登録されている者が賦課期日前に死亡しているときは、固定資産税を「現に所有している者」が固定資産の所有者となります。

※地方税法第343条1項、2項(中略)
「1.固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
2.前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」

(2)連帯納税義務

 納税義務者が賦課期日前に死亡した場合、相続人間で遺産分割協議が成立していて相続登記がされていれば、その者が新たな納税義務者になりますが、遺産分割協議が行われていない場合には、法定相続人全員が共有者として「現に所有している者」として納税義務者になります。
 これは連帯納税義務として、法定相続人全員が各々独立して全部の納税義務を負うことになります。
 一方、賦課期日後に納税義務者が死亡した場合、納税義務者はあくまでも賦課期日時点(1月1日)の所有者となります。
 ここで、相続人が複数おり、遺産分割協議が行われた場合には、その者が現実の納税義務者となっていますが、仮に遺産分割協議が行われていない場合は、各相続人はその法定相続分により按分した額の納税義務を負うことになります。この点が賦課期日前に死亡したときと異なります。
 また、この場合、市町村の長は、納税通知書等を受領する代表者を指定することができます。

※地方税法第9条の2(中略)
「1.納税者につき相続があつた場合において、その相続人が2人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において、その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2.地方団体の長は、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。」

なぜ所有者不明の土地・家屋が発生するか

(1)所有者不明土地・家屋の発生要因

 ところで、納税義務者が死亡して相続登記がなされる場合には、その情報が課税する市町村に通知され新たな納税義務者を把握することが出来ますが、相続登記がなされない場合には、死亡の事実の把握も新たな納税義務者を決めることも簡単ではありません。
 納税義務者の住所地が固定資産税の課税庁と同一であれば、情報の連携・共有を図ることにより、死亡の事実を把握することは可能ですが、住所地が課税市町村と異なる場合の納税義務者(住民登録外者)の場合には、死亡の事実を把握することは容易ではありません。

(2)住民登録外者の本人(死亡情報)確認の方法

 平成11年に総務省が、市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理を行うため、地方公共団体共同のシステムとして、住民基本台帳のネットワークシステム化を図りました(「住基ネット」)。
 しかし、この活用のためには、課税台帳とマイナンバーの連携が必要なところ、マイナンバーの活用自体が進んでいないことから、この住基ネットの活用も進んでいません。
 また、納税義務者の法定相続人を特定するため、課税担当として戸籍調査を行っていますが、この作業は被相続人と法定相続人全員の本籍地に対して戸籍簿を請求・取得する必要があります。これは、相続の階数が増えている場合や、相続人が多数に及ぶ場合には相当な時間がかかることになります。

所有者不明の固定資産への対応策

 それでは、所有者不明の固定資産税はどのように課税されているのでしょうか。
 もちろん、課税担当として相続人を調査して判明すれば、その者に課税しますが、法定相続人の調査が出来きれない場合や法定相続人の一部が判明した場合には、その一部の者に対して納税通知書を送付している市町村も多いようです。
 また、賦課期日に現に所有している者の一部が特定できている場合、判明している所有者のみに課税を行っている市町村もあります、
 一方では、戸籍等による相続人調査が途中で途切れてしまい、相続人の存否すら明らかにならない場合もあり、お手上げ(課税保留)の場合もあります。
 そこで、この所有者不明な土地・家屋への対応としては、まず「相続登記の法的義務化ができないか」ということでしょう。また、「市町村の条例で”現に所有する所有者”の届出の義務づけができないか」等々の検討が必要となっています。

所有者不明土地法が施行

 ところで、国土交通省は「所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法」(「所有者不明土地法」という法律を施行(平成30年6月13日公布)されています。この法律の概要は①所有者不明土地を円滑に利用する仕組み②所有者の探索を合理化する仕組み③所有者不明土地を適切に管理する仕組み、の3点からなります。
 なお、平成28年度地籍調査において、所有者不明土地の割合が全国で約20%になるとのことです。

(46)固定資産税の家屋とはどういうものか

 今回は、順番が逆になりましたが、そもそも「固定資産税の家屋とはどういうものか」です。
 その前に、家屋の税金としての歴史を簡単に見ていきます。

固定資産税家屋の歴史

 固定資産税としての家屋は、昭和24年にシャウプ勧告が出されて、昭和25年に地方税法が制定され、そこで市町村税として土地、償却資産とともにスタートしました。
 それ以前は、明治15年に家屋税が大府県(東京、大阪、京都、神奈川)に対して創設され、明治21年にこれらの府県の市町村に家屋税付加税が、その後明治23年に全国で課税されるに至っています。
 このように、現在の税としての家屋は、土地(地租)、償却資産(船税、電柱税、軌道税)に対する課税とともに、長い歴史を有しています。

固定資産税家屋の定義

 そこで、固定資産税の家屋とは何かということですが、地方税法341条に次のとおり規定されています。

※地方税法341条第3号(固定資産税に関する用語の意義)
「家屋とは、住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」

 この用語の定義は、地方税法創設から一貫して変わっていませんが、これは単に種類を列挙して間接的に定義しているにすぎません。
 では、具体的に固定資産税の家屋とは何かということですが、不動産登記法における建物と意義を同じくする、とされています。次の「地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)」は総務省の通知ですが、次のとおり説明されています。

※地方税法の施行に関する取扱について(市町村税関係)
「 家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること。」

 そこで、次から不動産登記法上の建物についてみていきます。

不動産登記法の建物とは

 不動産登記法の建物は、不動産登記規則(113条)で12種類、不動産登記事務取扱手続準則(80条)で25種類、併せて37種類が規定されています。ただし、これにより難い場合には、建物の用途により適当に定めるものとする、とされています。

※不動産登記法の37種類の建物
・ 居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所(不動産登記規則:12種類)
・ 校舎,講堂,研究所,病院,診療所,集会所,公会堂,停車場,劇場,映画館,遊技場,競技場,野球場,競馬場,公衆浴場,火葬場,守衛所,茶室,温室,蚕室,物置,便所,鶏舎,酪農舎,給油所(不動産登記事務取扱手続準則:25種類)

固定資産税の家屋とは(家屋の意義)

 固定資産税の課税客体となる家屋の認定に当たっては、次の(1)から(5)の要件が必要とされます。

(1)屋根を有すること

 屋根は、雨露をしのぐために必要不可欠です。不動産登記規則111条では

「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること」(外気分断性)

とあります。
 ただし、高架下の建造物については、家屋として評価すべき屋根はないが、屋根に相当する構築物があるため家屋として取り扱われます。

(2)周壁を有すること

 家屋は、周壁により内側に一定の利用空間が発生し、外気分断性有りと判断されます。
 ただし、周壁については、厳密な意昧での外気との分断がされていなくても、建造物の使用目的、利用状況等を考慮して外気分断性があると判断される場合もあります。例えば、駐車場では外周壁が腰壁程度しかないものが見受けられますが、外気分断性があると認められます。

(3)土地に定着した建造物であること(土地への定着性)

 土地への定着性の判定は、基礎工事や付帯設備の状況により、土地への物理的な結合状態を判断基準とします。ただし、この建物の規模、構造、耐久性、使用目的、利用状況等をも総合的に考慮し、継続的な土地への定着性を有するか否かにより判断されます。

(4)家屋本来の用途に供しうること(用途性)

 家屋本来の目的は、その空間を居住、作業、貯蔵、営業、保管等の用途に供しうるもの(人貨滞留性)でなくてはなりません。

(5)恒久性を有すること

 不動産登記法準則第77条に「半永久的な建造物と認められるものに限る」とあるように、家屋は、恒久性を有することが必要です。
 なお、特殊な構造等のものについては、個々の利用状況等も考慮して判断することになります。

(※)賦課期日に完成していること

 これは家屋の意義とは異なりますが、建築中の建物がどの程度まで完成していれば家屋の課税対象となるかについては、昭和59年の最高裁判決により「固定資産税の性質目的及び地方税法の規定の仕方からすれば、新築の家屋は、一連の新築家屋が完了したときに、固定資産税の課税客体となる」とされ、1月1日現在で(完全に)完成した建物となります。
 となると、新築建物は12月に完成させるよりも、次の年の1月に完成させた方が1年課税を遅らせることができるということになります。

(45)家屋評価の簡素化の検討

今回は、「家屋評価の簡素化の検討」です。

 43号と44号で、固定資産家屋の評価は、固定資産評価基準によって再建築価格方式により行われていると書きました。

 この再建築方式は、評価対象家屋と同一のものを評価の時点で、その場所において新たに建築とするものとした場合に必要とされる建築費(再建築費)を算出することを基礎として、その評価額を求める方式です。

再建築価格方式が見直される理由

 再建築価格方式に基づく評価方法は、固定資産税における適正で均衡の確保された家屋の評価額として、最高裁の判例等においても、その合理性が認められています。

 ところが、前号でも指摘したとおり、建築費を積算する手法であることから、市町村の評価事務も相当複雑煩瑣なものとなり、評価誤りの一因ともなっています。

 ところで、再建築方式は固定資産評価基準により、木造、非木造ともに次の3つの方法が規定されています。

①部分別評価方法

 部分別評価方法は、再建築価格方式の本来的な方法ですが、評価担当者の相当数の確保や建築構法と建築資材等に関する知識、評価実務経験を得るための相応の期間が必要不可欠となります。

 ところが一方では、市町村職員の人事異動のサイクルが短くなる傾向にあり、この部分別評価方法の習得環境が厳しくなっています。

②比準評価方法

 比準評価方法は、上記の部分別評価方法の煩雑さを軽減し、評価事務の簡素化を図る目的として固定資産評価基準で位置づけられました。

 この方法は、市町村で標準家屋を設定して、新築家屋をこの標準家屋の部分別建築費表点数に比準して求める方法ですが、新築家屋(主に木造)の件数が比較的多い大きな都市ではかなり採用されているものの、比較的規模の小さな市町村では採用されていないという傾向があります。

③在来分評価方法

 この在来分評価方法は、既に算出されている前評価基準による再建築費表点数に対し、資材費等の価格の変動割合を基礎として定められた再建築費評点補正率を乗じることにより、基準年度の再建築費表点数を求める方法(いわゆる既存家屋の評価方法)で、固定資産評価基準でも規定されています。また、平成15年度基準から、国が再建築費評点補正率を定める方法にされたことにより、在来家屋(既存家屋)の評価の簡素化に繋がっています。

過去に検討された家屋評価方法

 これまでも、財団法人資産評価システム研究センターを通じて、地方公共団体職員を委員とする「家屋の新たな評価方法検討委員会」において、家屋評価の簡素化の検討がされてきています。

 その検討内容は、①再建築価格方式、②㎡単価方式、③広域比準評価方式の3方法になります。

 検討に当たっては、新たな評価方法が「シンプルであること」「客観的であること」「メンテナンスが容易であること」「公平性を欠かないこと」を条件として比較検討されてきましたが、その結果②の㎡単価方式が最も望ましいとの判断がなされ、議論されてきました。

 では、㎡単価方式とはどのようなものでしょうか。

㎡単価方式の基本構造

 ㎡単価方式は、「基準家屋の延べ床面積1㎡当たりの再建築表点数を再建築価格基準単価とし、これに補正率及び評価対象家屋の延べ床面積を乗ずることにより当該評価対象家屋の再建築費表点数を求める方式」です。

 これを計算式で示しますと次のようになります。

 再建築価格基礎単価×補正率×計算単位(延べ床面積)=再建築表点数

 しかし、この㎡単価方式も未だに家屋評価の方式として採用されてはおりません。

 前号でも記したとおり、家屋の評価は土地と比較しても相当な複雑な仕組みとなっており、市町村の職員への負担と、納税者にはなかなか見抜けない評価誤りの原因ともなっているのです。

(44)家屋評価(再建築価格方式)の複雑さと課税誤り(その2)

 前号(43号)の「家屋評価(再建築価格方式)の複雑さと課税誤り(その1)」では、固定資産税家屋の評価が再建築価格方式であり、合理的で公平な方式ではあるが複雑煩瑣な仕組みで、課税誤りの原因の一つともなっていると指摘しました。
 なにしろ固定資産評価基準(家屋)の別表だけでも200ページ(A4版)を超える分量ですし、その上、各市町村では「固定資産評価事務要領」(市町村により名称は異なる)に膨大な基準が定められています。
今回は、「家屋評価の仕組み」で記した、時の経過によって生ずる損耗の状況による減点補正の仕組みを説明します。

経年減価の基準=経年減点補正率基準表

 家屋は時の経過とともに損耗が生じるため、固定資産評価基準による経年減点補正率基準表に基づき、3年に一度の基準年度ごとに評価替えを行い評価額が減額されます。
 ただし、次の場合は減額とはなりません。
①基準年度単位での物価上昇率が減価率を上回る場合は「据置」となります。
②評価割合(残価率)が20%になると、それより評価額は低くはならず、家屋が存在する限り20%の評価・課税となります(以下「最終残価率」)。
 家屋の損耗の状況による減点補正は、新築後の年数の経過に応じて生ずる通常の減価ですが、固定資産評価基準では、この他に積雪寒冷地域に存する家屋の積雪寒冷地域の補正や天災、火災その他の事由により通常以上の損耗が生じている場合の損耗残価率も定められています。

<木造家屋の経年減点補正率基準表>
 木造家屋の経年減点補正率基準表は、次の9種類に分類されています。
①専用住宅、共同住宅、寄宿舎及び併用住宅用建物
②農家住宅用建物
③ホテル、旅館及び料亭用建物
④事務所、銀行及び店舗用建物
⑤劇場及び病院用建物
⑥公衆浴場用建物
⑦工場及び倉庫用建物
⑧土蔵用建物
⑨附属家

「木造家屋経年減点補正率基準表(例)」
 「木造(専用住宅、共同住宅等)」

<非木造家屋の経年減点補正率基準表>
 非木造家屋の経年減点補正率基準表は次の8種類に分類されています。
①事務所、銀行用建物及び②~⑧以外の建物
②住宅、アパート用建物
③店舗及び病院用建物
④百貨店、劇場及び娯楽場用建物
⑤ホテル及び旅館用建物
⑥市場用建物
⑦公衆浴場建物
⑧工場、倉庫、発電所、変電所、停車場及び車庫用建物

「非木造家屋経年減点補正表(例)」
 「非木造(事務所、銀行用建物等)」 

 上記の木造、非木造ともに次の最終残価率20%まで、基本的に経年減点補正が行われますが、木造及び非木造の住宅・アパート用建物のみ初期減価が行われます。初期減価は新築後1年目に0.8(つまり20%減価)されるということです。

固定資産税特有の最終残価率20%

 上記のとおり、固定資産税評価は時の経過とともに価値が減少していきますが、固定資産税評価においては、最終的に価値はゼロとはならず、20%の価値が残り続けます。
 この最終残価率20%の制度は、「年数の経過に伴って家屋の価値は減少していくが、通常の維持補修を行い家屋として効用を発揮している家屋であれば、家屋の持つ使用価値はゼロにはならず、最低限の価値は保たれる。」と従来から説明されています。
 つまり、家屋の固定資産税は、何年経過しても家屋を使用(保有)している限りは最低限20%の評価・課税がされ続けるということになります。

固定資産税家屋評価の論点

 固定資産税の家屋評価については、これまでも様々な検討が行われきていますが、いくつか論点を上げてみます。

(1)木造・非木造の区分けについて

 前号(43号)と今号で家屋評価の再建築費評点基準表と経年減点補正率基準表を掲げましたが、木造、非木造ともに両者の分類区分が一致していません。このことも家屋評価の複雑さの一因となっています。
 ところで、近年では木造建築の技術も進み、かつての無垢材ではなく木材の集成材により非木材と同様の耐久性もみられる家屋も現に建築されています。
 このような状況にもかかわらず、現在の固定資産評価基準の再建築費評点基準表と経年減点補正率基準表の内容は「時代遅れ」と言わざるを得ません。

(2)リフォームや用途変更が行われた場合の適用について

 家屋を新増築した場合は評価担当側でも把握は可能ですが、リフォームをされた場合や途中で用途が変更された場合(例えば住宅用から事務所用)、適切に経年減価変動率の適用が出来ているのかどうかは疑問です。
現実の不動産取引においては、リフォームやリノベーションを加えた家屋は高目に取引されますが、固定資産税評価には反映されていないのが現状のようです。

(3)最終残価率20%について 

 法人税の減価償却において法定耐用年数が定められていますが、固定資産税の最終残価年数とは制度趣旨が異なるため、必ずしも同一ではありません。しかし、法人税の減価償却ではゼロまで償却されますが、固定資産税は残価率20%で評価額はそれ以下には下がりません。

「(参考)法人税の法定耐用年数」
 「(参考)法人税の法定耐用年数」 

この固定資産税の残価率20%については、「最終残価率はなぜゼロにならないのか」との反対意見も多くあります。逆に、木造にしても非木造にしても、現実の耐久性も良くなっており、建築専門家の方々からは「最終残価までの年数が短か過ぎる」との意見もあります。
 ところで、「最終残価率をゼロに」との意見に対しては、「そもそも固定資産税は何故課税されているのか」という”そもそも論”に目を向ける必要があります。”そもそも論”とは「固定資産税は行政サービスの対価としての費用分担の一つである」ということです。最近では、この「行政サービスの対価」との主張がほとんどなされていないようですが、この点も不思議です。

不動産取引における建物の評価

(※不動産取引や鑑定評価の世界では、「家屋」ではなく「建物」の名称を使うのが一般的です。とは言え固定資産評価基準の再建築費評点基準表と経年減点補正率基準表では「建物」の用語が使われています。この理由はよく分かりません。)
 日本では、土地から独立して建物のみの取引は伝統的に採用されていないこともあり、不動産取引における建物価値の査定では、上記の法定耐用年数を参考にするケースが多く、希に固定資産税評価額を建物の価格として採用する場合もあります。
 また、不動産鑑定の評価では、建物の減価率査定においては、「経済的残存耐用年数」という概念を採用し、仮に法定耐用年数を経過している建物でも、実際にあと何年使用できるかという年数により査定します。また、現に居住に供されている建物でも相当程度劣化が進んでいれば、土地・建物一体の最有効使用を更地と査定して、建物取り壊し費用を土地価格から控除する評価を行う場合もあります。

再建築価格方式の見直し

 固定資産税評価における再建築価格方式は、昭和25年に地方税法が創設されて以来一貫して採用されており、「適正な時価」や「正常価格」の基準となりうる最適な方式とされています。
 しかし、一方では、市町村での評価担当者からすると、この再建築方式は複雑過ぎて難しいという指摘がされており、また当然、納税者にとっても理解が難しく、何度か固定資産評価の簡素・合理化についての検討はされてはいますが、未だ実現に至ってはいません。

(次号は「家屋評価の簡素化の検討」の予定です。)