(第131号)固定資産税の「減免」・「課税免除及び不均一課税」・「免税点」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

固定資産税の「減免」とは

 「非課税」は市町村がそもそも「課税することが法律で禁止されている」制度でしたが、では、「減免」はどのような制度なのでしょうか。

 「減免」は、市町村で課税権が行使された後に、納税者の申請に基づき、担税力が薄弱なこと(納税資力が充分でない)等の理由により、税額の全部又は一部が免除される制度です。

 この減免規定の趣旨は、徴収猶予や納期限の延長等によっても納税が困難であると認められるような担税力が薄弱な者等に対する救済措置として設けられています。

<固定資産税の減免>-地方税法第367条
「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 固定資産税の「減免」は、各市町村の条例により定められていますが、概ね次の3つの形態に基づき定められているのが一般的です。

①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者
 震災、風水害、火災その他これらの災害があり、納税義務者がその財産について甚大な被害を被った場合など。

②貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者
 生活保護の規定による保護等の公的扶助を受けている者、又は公的扶助に準じて考えられるような扶助を受けている者など。

③その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)
 ①②の事由以外の事由で、客観的にみて担税力を喪失した者、公益上の必要があると認められる者など。

 「減免」内容は各市町村の条例で規定されていますので、若干条例内容が異なりますが、上記①~③の基本的事項は適用されています。

固定資産税の「課税免除及び不均一課税」

「課税免除及び不均一課税」とは

 地方税法には、「非課税」「減免」のほかに「課税免除及び不均一課税」という制度があります。

 「課税免除及び不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目した上で、「課税免除」は市町村(条例)による非課税とも言うべきもので、「不均一課税」は一般の税率と異なる適用をすることです。

<公益等に因る課税免除及び不均一課税>-地方税法第6条
「1 地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。
2 地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。」

 この第1項の「課税免除」は「減免」と似ていますが、「減免」は一旦賦課決定されたものに対してですが、「課税免除」は市町村の条例・議会の議決により単独で判断・決定されます。また、第2項の「不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目したものです。

「課税免除及び不均一課税」の適用例

 では「課税免除」が適用されている例ですが、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」や「地域未来投資促進法」に基づき適用している市町村があります。

 また「不均一課税」では、「国際観光ホテル整備法」や(県税による)「半島振興法における固定資産税の不均一課税」などがあります。

固定資産税の免税点

 同一の人が所有するすべての土地の課税標準額、家屋の課税標準額、償却資産の標準額の合計額がそれぞれ次の値に満たない場合は、固定資産税は課税されません。

<固定資産税の免税点>-地方税法第351条
「市町村は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る土地、家屋又は償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が土地にあつては30万円、家屋にあつては20万円、償却資産にあつては150万円に満たない場合においては、固定資産税を課することができない。ただし、財政上その他特別の必要がある場合においては、当該市町村の条例の定めるところによつて、その額がそれぞれ30万円、20万円又は150万円に満たないときであつても、固定資産税を課することができる。」

<固定資産税の免税点>

 
2025/07/15/09:00
 

 

(第130号)固定資産税が非課税となる具体例(更新版)

(更新版・令和7年7月)

私道は「公共の用に供する場合」

「公共の用に供する道路」とは

 道路は通常、国道、県道、市町村道等のいわゆる公道ですので、固定資産税で は公道は「人的非課税」になっています。

 しかし、私道は個人の方の所有土地ですので、一般的には固定資産税の課税対象になります。

 ところが、その私道が「公共の用に供する道路」であれば、非課税になります。

<固定資産税の私道が非課税>-地方税法第348条2項5号
「 2項 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。
 ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
5号 公共の用に供する道路、運河用地及び水道用地」

私道が非課税になる例

 「公共の用に供する道路」の要件を満たす私道は、(ア)所有者において何らの制約も設けず(開放性),(イ)広く不特定多数人の利用に供されいる(公共性)、(ウ)道路法による道路でなくても,それに準ずる土地であって,何らの制約なく一般公衆の利用に供されている(準道路性)ことが必要です。

 具体的には、①「通り抜け私道」②「行止り私道」③「コの字型私道」④セットバック部分の私道になります。

<私道の種類>

 
①「通り抜け私道」
 「通り抜け私道」は、起終点が公道に接していること、幅員が1.8m以上であること、不特定多数の人に利用されていることが必要です。

②「行止り私道」
 「行止り私道」は、2軒以上の家屋に利用されていること、幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることの要件が必要となります。

③「コの字型私道」
 「コの字型私道」も(2)の「行止り私道」と同じく、2軒以上の家屋に利用されていること、 幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることの要件が必要となります。

④「セットバック部分」
 幅員4mに満たない公道に面している土地の「セットバック部分」で、一体となって道路の効用を果たしているものです。公道と一体となって道路として使われていない場合は非課税とはなりません。
 なお、「セットバック部分」の道路部分が分筆されていれば問題ありませんが、分筆されてない場合でも、地積測量図などの資料を添えて申請すれば、「公共の用に供する道路」として非課税を認めてもらえます。

「老人福祉施設」が非課税となる

社会福祉法人と「老人福祉施設」の非課税

 「老人福祉施設」の非課税については、地方税法第348条2項10の5に規定されています。

<固定資産税の老人福祉施設>-地方税法348条2項10の5
「2項 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
10の5 社会福祉法人その他政令で定める者が老人福祉法第5条の3に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの」

 ここでは、所有者が「社会福祉法人その他政令で定める者」で、固定資産が「固定資産で政令で定めるもの」とされ、「者」と「もの」それぞれの政令を確認する必要があります。

 地方税法施行令第49条の13では、1項で(運営する「者」(運営主体)で、2項で固定資産が非課税となる「もの」(固定資産)が規定されています。

① 運営主体
ア. 社会福祉法人
イ. 社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
ウ. 公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、消費生活協同組合、健康保険組合、国民年金基金、商工組合、医療法人等
エ. 老人介護支援センターの届出をした者

② 非課税となる固定資産
a. アが経営する養護老人ホーム
b. ア、イが経営する特別養護老人ホーム
c .ア、イ、ウが経営する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設軽費老人ホーム、老人福祉センター
d. ア、イ、ウ、エが経営する老人介護支援センター
なお、株式会社が経営する「老人福祉施設」は非課税にはなりません。

「老人福祉施設」に土地を貸している場合

 固定資産税が非課税になるのは、運営法人等が固定資産を所有している場合に限りません。土地所有者が、運営法人等の利用の用に供するために土地を無償で貸している場合、その土地も非課税になります。

 ただし、その運営法人に有償で土地を貸している場合は、その土地は固定資産税が課税されます。
 また、固定資産がその目的以外に使用される場合は、固定資産税は非課税となりません。

<固定資産税の課税規定>-地方税法348条3項
「 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

「宗教法人」の施設が非課税

「宗教法人」の境内建物、境内地が非課税

 「宗教法人」の境内建物及び境内地は非課税となります。

<宗教法人の境内建物及び境内地の非課税>-地方税法348条2項3
「2項 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。(中略)
3.宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む。)」

境内建物及び境内地とは

 境内建物と境内地の定義は宗教法人法3条に規定があります。

① 境内建物
<境内建物の定義>-宗教法人法3条1号
「本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物」

② 境内地
<境内地の定義>-宗教法人法3条2~7号
「2.前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地
3.参道として用いられる土地
4.宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地
5.庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
6.歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
7.前各号の建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地」

「納骨堂」は課税される

 最近では、核家族化や埋葬に対する価値観の多様化によって、「先祖代々の墓」という従来の概念にとらわれることなく、自分のライフスタイルに合ったお墓を求める人が増えてきました。

 近年、じわじわと浸透してきた散骨や樹木葬に続き、「新たなお墓の形」として注目を集めているのが「納骨堂」です。

 「納骨堂」は運営母体によって、寺院が運営する「寺院納骨堂」、自治体が運営する「公営納骨堂」、宗教法人等が運営する「民営納骨堂」の3種類に分けられます。
 なお、「納骨堂」を経営するためには、都道府県知事の許可を受ける必要があります。

「納骨堂」とは

 「納骨堂」とは。「墓地、埋葬等に関する法律」に規定があります。

<「納骨堂」とは>-「墓地、埋葬等に関する法律」第2条6号
「 納骨堂とは、他人の委託を受けて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。」

<「納骨堂」の許可>-「墓地、埋葬等に関する法律」第10条1項
「 納骨堂を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。」

 そこで、問題は「納骨堂」が地方税法348条2項3号の「境内建物及び境内地」に該当するかどうかということになります。

<固定資産税の非課税の範囲>-地方税法第348条2項3号
「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地(旧宗教法人令の規定による宗教法人のこれに相当する建物、工作物及び土地を含む。)」

東京地裁での判決

 東京都が「納骨堂」に対して課税処分した件で、原告(A宗を宗派とする宗教法人)が提訴した、平成28年5月24日に東京地裁判決において、この「納骨堂」に関係する判決が出されています。

① 訴訟事案の内容
 この訴訟は、原告・宗教法人が「納骨堂」として使用している土地及び建物に対して、被告・東京都が「寺務所、本堂、庫裏等は非課税とした」が、「参拝堂、納骨堂、客殿等の建物部分及びこれに対応する土地面積相当分については固定資産税を課税する」との賦課決定処分をした、という内容です。

 つまり、「納骨堂」の固定資産税が非課税となる「境内建物及び境内地」に当たるかどうかが争われたものです。

② 東京地方裁判所の判断
<境内建物及び境内地について(一部)>
「地方税法348条2項3号に規定する「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」とは,次のことを言う。
 ① 当該宗教法人にとって,宗教の教義をひろめ,儀式行事を行い,信者を教化育成するという主たる目的のために必要な,本来的に欠くことのできない建物,工作物及び土地で,同条各号に列挙されたようなものであり、かつ
 ② 当該宗教法人が,当該境内建物及び境内地を,専ら,宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるものをいうと解すべきであり,当該要件該当性の判断は,当該建物及び土地の実際の使用状況について,一般の社会通念に基づいて外形的,客観的にこれを行うべきである。」

 そして東京地裁は、本件での「納骨堂」は「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地には該当しない」と判断しました。

<東京地裁判決(一部)>- 平成28年5月24日
「(本件非課税対象外部分)の使用状況を,一般の社会通念に基づいて外形的,客観的にみると,原告は,本件非課税対象外部分につき,A宗の教義をひろめ,儀式行事を行い,信者を教化育成するという主たる目的のために使用していないとはいえないが,当該目的のために必要な,本来的に欠くことのできない建物の一部であると評価することにはやや困難がある。
 また,仮にそのような評価が可能であるとしても,本件「納骨堂」の使用者については宗旨宗派を問わないとされているのみならず,本件建物においては,原告以外の宗旨宗派の僧侶等が主宰する法要などの儀式行事が行われることが許容され,その場合,使用者は原告に対して施設使用料を支払うこととされ,実際にも,それが例外的とはいえない割合で行われており,原告は,上記のような使用者を訴外会社を通じて広く募集していることに照らすと,原告が,上記の各部分(本件非課税対象外部分)を,専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるとは認められないといわざるを得ない。」

 本件の対象となっている「納骨堂」は今後も増加することが予想されますが、現在、東京都だけでなく全国の市長村でも、宗教法人の家屋であっても、「納骨堂」部分は課税対象とされ、土地は家屋内部の課税部分と非課税部分に面積按分のうえ課税されています。

 ところで、「納骨堂」が「専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態」にあれば非課税となり得ます。

 しかし最近では、本件同様「某宗を宗派とする宗教団体の建物において他の宗旨宗派の僧侶等が主宰する法要等にも使っている納骨堂事業」が多く、課税されている場合が多いのです。
 
2025/07/14/16:00
 

 

(第129号)固定資産税の「非課税」は「課税禁止」の制度(更新版)

(更新版・令和7年7月)

固定資産税の「非課税」制度

 地方税法には、固定資産税が課税されない「非課税」制度というものが規定されています。

 この「非課税」とは固定資産税を「課税しない」ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を「課税してはいけない」という法的な「課税禁止」の制度なのです。

 固定資産税の「非課税」制度には、「人的非課税」と「物的非課税」の二つの種類があります。

固定資産税の「人的非課税」

「人的非課税」とは

 市町村は、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。これを「人的非課税」と言います。

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

 これは、国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それがどのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。

<固定資産税の「人的非課税」>-地方税法第348条1項
「 市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」

「人的非課税」の例外

 「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。

 この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産所在の市町村等に対して、国有資産等所在市町村(都道府県)交付金が交付されています。

<市町村に対する交付金の交付>-国有資産等所在市町村交付金法第2条
「 1.国又は地方公共団体は、毎年度、当該年度の初日の属する年の前年(以下「前年」という。)の3月31日現在において所有する固定資産で次の各号に掲げる固定資産に該当するものにつき、当該固定資産所在の市町村に対して、国有資産等所在市町村交付金(以下「市町村交付金」という。)を交付する。」

 上記の「各号に掲げる固定資産に該当するもの」とは、次が該当します。
・ その所有する固定資産で他のものに使用させているもの。
・ 空港の用に供する固定資産
・ 国有林野に係る土地
・ 発電所、変電所又は送電施設の用に供する固定資産
・ 水道施設又は工業用水道施設のうち取水施設等の用に供する固定資産
・ 石油の備蓄の確保等に関する国家備蓄施設の用に供する固定資産

固定資産税の「物的非課税」

「物的非課税」とは

<固定資産税の「物的非課税」>-地方税法第348条2項
「 固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。
ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」

 「物的非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。

 地方税法では「物的非課税」とされる固定資産が約70項目規定されています。地方税法第348条2項各号(59項目)に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項(6項目)並びに法附則14条1項2項、14条の2,41条3項、41条8項(5項目)に規定する固定資産に対しては課税することができません。

 またこの規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。

「物的非課税」が適用されない場合

(1)有料使用の場合の課税
 地方税法第348条2項各号に列挙する資産等に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを同条同項各号の固定資産として使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます。(地方税法第348条2項ただし書)。

例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている 場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。

(2)目的外使用の場合の課税
法第348条2項各号等の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。

<目的外使用の場合の課税>-地方税法第348条第3項
「 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

「物的非課税」には申告が必要

 「物的非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。
 この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市町村毎の条例により定められています。

固定資産税の「物的非課税一覧表」

 なお、次に固定資産税の「物的非課税一覧表」(70項目)を掲載しますので、参考にしてください。

 
2025/07/12/18:00
 

 

(第128号)固定資産評価は相続税、不動産取得税、登録免許税でも利用(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 固定資産税の価格(評価額)は、他の税金の評価でも活用されています。

 では、どのような税金に活用されているのでしょうか。

 固定資産税の価格は、(1)相続税の「倍率方式による評価」、(2)相続税の「家屋の評価」、(3)不動産取得税の「課税標準額」、(4)登録免許税の「課税標準額」の評価に用いられています。

相続税の「倍率方式による評価」

 相続税の宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式がありますが、倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。主に市街化調整区域(非住宅地区)内の宅地、また、農地や山林、原野もこの倍率方式が採用されています。

 この倍率方式とは、固定資産税の価格(評価額)に、地域ごとに決められた倍率(例えば1.1とか1.2など)を乗じて評価する方法です。

<相続税の倍率方式>

 
<相続税倍率方式とは>—相続税財産評価に関する基本通達21
「倍率方式とは、固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式をいう。」

相続税の「家屋の評価」

 相続税の家屋の評価は、固定資産税評価額を用います。

<相続税家屋の評価>—相続税財産評価に関する基本通達89
「家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に別表1に定める倍率(現在は1.0)を乗じて計算した金額によって評価する。」

 つまり家屋の相続税評価額は固定資産税家屋評価額をそのままとなります。

 相続税家屋の評価額 = 固定資産税家屋評価額 × 1.0

不動産取得税の「課税標準額」

 土地や家屋を購入したり、家屋を建築するなどして不動産を取得したときに、都道府県により不動産取得税が課税されます。
 不動産取得税は、市町村が毎年課税する固定資産税と違って、不動産を取得した時に一度だけ納める。いわゆる流通税の一種であり、不動産の移転という事実に着目して課されるものです。

 この不動産取得税の「取得した不動産の価格」も固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)とされています。

 なお、令和9年3月31日までに取得した土地及び住宅の税率は3%です。
ただし、宅地(住宅のある土地)の場合は1/2の負担調整措置が講じられています。

<不動産取得税の納税義務者等>—地方税法73条の2
「 1.不動産取得税は、不動産の取得に対し、当該不動産所在の道府県において、当該不動産の取得者に課する。」
<不動産取得税の価格の決定等>—地方税法73条の21
「 1. 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について増築、改築、損かヽいヽ、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。」

登録免許税の「課税標準額」

 土地や建物の所有権移転登記、建物の所有権保存登記の際に、登録免許税が課税されます。

 土地の所有権移転登記では、「不動産の課税標準額」に1000分の20の税率が乗じられますが、ここでも固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)が用いられます。

 なお、登録免許税の税額につきましては、種類も多く、軽減税率等もありますので、詳しくは最寄りの登記所等で確認してください。
 
2025/07/11/06:00
 

 

(第127号)固定資産税の納税義務者は所有者課税が原則(更新版)

(更新版・令和7年7月)

所有者課税の原則とは

 固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日(これを賦課期日と言います)における固定資産の所有者(正確には登記簿上の所有者又は固定資産補充課税台帳に登録されている者)となります。

<所有者課税の原則>

 
<固定資産税の納税義務者>-地方税法343条1~3項
「1 固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
   2 前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている者をいう。
この場合において、所有者として登記又は登録がされている個人が賦課期日前に死亡しているとき、若しくは所有者として登記又は登録がされている法人が同日前に消滅しているとき、又は所有者として登記されている第348条第1項の者が同日前に所有者でなくなつているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。
   3 第1項の所有者とは、償却資産については、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者をいう。」

所有者課税の例外(使用者課税)

 令和2年度の地方税法改正により、所有者以外に使用者にも課税する「使用者課税」が可能となっています。
 それまでは、震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合に限って「使用者を所有者とみなす」(343条4項)ことができたのですが、343条5項が追加され「存在が不明である場合」の所有者課税が認められました。

災害等によって所有者の所在が不明の場合

 災害等により所有者の所在が不明である場合(所有者が誰であるか分からない場合、生死が分からない場合、住所ないし居所がわからない場合等)には、使用者を所有者とみなして固定資産税を課税することができます。
 また、その不明である原因は、震災、風水害、火災、戦災、海難等であることを要し、引っ越しによって転出先の住所が不明でるというような日常の一般的な事由により不明である場合は含まれません。

<災害等によって不明な場合>-地方税法343条4項
「 市町村は、固定資産の所有者の所在が震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

調査を尽くしても所有者の所在が不明の場合

 市町村が住民基本台帳及び戸籍簿等の調査並びに使用者と思われる者その他の関係者への質問その他必要な調査をしても所有者の存在が不明の場合には、使用者を所有者とみなして固定資産税を課税することができます。

<調査を尽くしても所在が不明な場合>-地方税法343条5項
「 市町村は、相当な努力が払われたと認められるものとして政令で定める方法により探索を行つてもなお固定資産の所有者の存在が不明である場合には、その使用者を所有者とみなして、固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができる。この場合において、当該市町村は、当該登録をしようとするときは、あらかじめ、その旨を当該使用者に通知しなければならない。」

テナントが取り付けた家屋の附帯設備

 テナントが、建築設備、間仕切等の附帯設備を家屋に取り付けて、これらの附帯設備が家屋に付合する場合は、当該附帯設備は家屋の所有者が所有するものとされます(民法242条)。

 しかし、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされています。

<テナントが取り付けた家屋の附帯設備>-地方税法343条10項
「 家屋の附帯設備であつて、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」 という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第一項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

納税義務者が変更した場合

 固定資産税の納税義務者は、毎年の賦課期日(1月1日時点)で登記又は登録している者ですが、その納税義務者が変更した場合はどうなるかです。

 ここに、所有者XからYに所有権移転された場合、その移転が①賦課期日前と②賦課期日後かによって違いがあります。

<賦課期日前後に所有者が交代>

賦課期日前に所有者XからYに所有権移転した場合

 賦課期日前にXからYに所有権が移転され、所有権移転登記もされていれば、問題なくYが年度納税義務者となります。

 しかし、所有権が移転されているにもかかわらず、賦課期日現在でXからYに所有権移転登記がされていない場合には、Xがその年度の納税義務者となってしまいます。

 固定資産税は、登記簿に登記されている土地及び家屋については、登記簿上の所有者が納税義務者となり、真実の所有者が誰であるかにかかわらず登記簿上の所有者に対して課税されることになります。

 なお、登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたとき、所有権等の登記の抹消、登記名義人の氏名・住所等の変更をしたときは、10日以内にその旨を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知をすることとなっています。

<登記所からの通知等>-地方税法第382条1項
「 登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、10日以内に、その旨その他総務省令で定める事項を当該土地又は家屋の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

賦課期日後に所有者XからYに所有権移転した場合

 賦課期日にはXが納税義務者ですので、年度途中でYに移転しても、その年度はXが納税義務者となります。

 ただし、売買による所有権移転の場合には、不動産業者により「固定資産税の精算」が行われるのが普通で、これにより、契約(決済)日以降の固定資産税はYの負担として、日割計算でその日以降の固定資産税分がYからXに渡されます。
 しかし、この場合でも、法的な納税義務者はXですので、精算時にはXが全納していることを条件とされています。

納税義務者が死亡した場合

 それでは、納税義務者が死亡した場合はどうなるかです。
 その場合も、その死亡が①賦課期日前と②賦課期日後かによっても違います。

<賦課期日前後に所有者が死亡>

賦課期日前に所有者Xが死亡した場合

 賦課期日前に所有者Xが死亡した場合、相続の遺産分割協議及び所有権移転登記が行われ、賦課期日現在の納税義務者が確定しているときは、その相続人(登記者)が納税義務者で問題ありません。

 ここで、問題となるケースは、所有者Xが死亡し法定相続人が複数いるが、遺産分割もされず不動産登記もXのままになっている場合です。

 この場合には、法定相続人全員が「現に所有している者」となり、法定相続人は「連帯納税義務」を負うことになります。
 「連帯納税義務」とは、仮に法定相続人が3名であったとした場合、その3名はそれぞれが全員分の納税義務を負うという意味ですので、「自分は3分の1のみ負担する」との主張はできません。

<連帯納税義務>-地方税法第10条
「 地方団体の徴収金を連帯して納付し、又は納入する義務については、民法第436条、第437条及び第441条から第445条までの規定を準用する。」

賦課期日後に所有者Xが死亡した場合

 この場合も法定相続人3名で遺産分割協議と所有権移転登記が行われている場合は、その固定資産を取得し登記名義人となった者が「事実上」の納税義務者となります。

 しかし、法定相続人3名の間で遺産分割協議が成立していない場合にどうなるかということです。
事例①の場合は、法定相続人3名の「連帯納税義務」でしたが、この事例②では「法定相続分の割合負担」で各自責任を負うということになります。

<相続による納税義務の承継>-地方税法第9条2項
「 相続人が2人以上あるときは、各相続人は、被相続人の地方団体の徴収金を民法第900条から第902条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し、又は納入しなければならない。」

<相続人からの徴収の手続>-地方税法第9条の2
「1 納税者につき相続があつた場合において、その相続人が2人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから書類を受領する代表者を指定することができる。
 この場合において、その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2 地方団体の長は、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。」
 
2025/07/10/12:00