(第110号)固定資産税と相続税の違いについて

(投稿・令和6年1月)

 今回は、「固定資産税と相続税の違い」について説明します。

 「固定資産税と相続税の違い」については、これまで「宅地評価方法の違い」として、第42号(基本的事項)から第43号(1)~第47号(5)で紹介してきました。

 
 そこで今回は、「宅地評価方法」に限定しない基本的な内容について、改めて説明していきます。

 内容は大きく分けて、(1)固定資産税と相続税の根拠法、(2)固定資産税と相続税の評価方法、(3)固定資産税と相続税の課税方法、(4)相続税でも固定資産税評価を活用、について説明します。

固定資産税と相続税の根拠法

固定資産税の根拠法

1. 地方税法

 まず、固定資産税の根拠法は地方税法になります。
 地方税法第三章「市町村の普通税」の第二節に「固定資産税」があります。

<固定資産税とは>
※地方税法341条1項1号~4号
「1号 固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。
2号 土地 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。
3号 家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。
4号 償却資産 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものをいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする(中略)。」

 なお、固定資産税とともに都市計画税が課税される場合には同時に課税されており、納税通知書・課税明細書にも併せて記載されています。

 固定資産税は普通税ですが、都市計画税は目的税で地方税法の第四章「目的税」の第六節「都市計画税」に規定されています。

<都市計画税の課税客体等>
※地方税法702条1項
「1項 市町村は、都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため、当該市町村の区域で都市計画法第5条の規定により都市計画区域として指定されたもののうち同法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課税標準として、当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。当該都市計画区域のうち同項に規定する市街化調整区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課さないことが当該市街化区域内に所在する土地及び家屋の所有者に対して都市計画税を課することとの均衡を著しく失すると認められる特別の事情がある場合には、当該市街化調整区域のうち条例で定める区域内に所在する土地及び家屋についても、同様とする。(中略)」

(なお、以下本号では固定資産税を中心にして解説します。)

2. 市町村の条例、規則

 固定資産税(土地、家屋)は、全国に存在する土地(1億8,076筆)及び家屋(5,877万棟)は基本的に全て課税されることが原則ですが、地方税法のみでは、必ずしも全て網羅できないことから、地方税法の委任により、各市町村において条例(東京都23区は都税条例)を制定されることとされています。

3. 総務省の「基本通知(改正告示)」

 固定資産税の手続について、総務省から全国の市町村に周知するため、総務省の「基本通知(改正告示)」が必要に応じて発せられています。
 市町村では、その「基本通知(改正告示)」に従って固定資産税業務を遂行することになります。

相続税の根拠法

 相続税の根拠法は、民法及び相続税法です。

 民法は、第五編に「相続編」(第822条~1050条)があり、相続及び贈与に関する権利関係等の一般的ルールが定められています。

 これに対して相続税法は、相続税額の計算等細かい税のルールが規定されています。

 相続に関しては、民法が一般法ですが、相続税の計算等は相続税法が特別法になります。
 相続税法は、課税の公平性という観点から、民法に一定の修正を加えていますが、その場合は、特別法である相続税法が民法より優先されることになります。

固定資産税と相続税の評価方法

固定資産税、相続税の評価基準

 まず、固定資産税の評価は、「固定資産評価基準」によります。

 この「固定資産税評価基準」は、地方税法第403条で規定されており、法的拘束力が強いものです。

<固定資産評価基準>
※地方税法403条
「1項 市町村長は(中略)固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

 一方、相続税の評価方法は国税庁による「財産評価基本通達」により定められていますが、相続税の評価は、あくまでも時価を求めるもので、必ずしもこの「財産評価基本通達」が100%とは限りません。

 例えば、時価を証明するために、不動産鑑定評価による評価が採用される場合があります。
 土地の個別画地の評価について、固定資産税では不動産鑑定評価は原則認められませんが、この点が相続税では異なります。

公的土地評価の一元化

 平成元年に「土地基本法」が成立し、そこで土地の公的評価の一元化が図られました。

 土地の公的評価とは、時価(実勢価格)、地価公示価格、相続税路線価、固定資産税評価額を指します。

 過去には、この4価格がアンバランスであったことから、一元化(地価公示を100とした場合の割合)を図ることなりました。

<公的土地評価の一元化>
※土地基本法第17条
「国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」

 その結果、地価公示は時価と同一レベル(100)とし、相続税を地価公示の8割、固定資産税を地価公示の7割と決められました。

土地の負担調整措置が複雑に

 実は平成5年以前の土地の固定資産税評価額は地価公示ベースの10~20%であった訳ですが、これをいきなり70%に引上げる訳にはいかないため、固定資産税では負担調整措置という制度が設けられました。

 これは、いきなり70%に引き上げるのではなく、徐々に近づけていく方法ですが、この負担調整措置の仕組みが土地評価を複雑にしています。

 なお、この内容については、第4号と第6号で説明しています。

 

固定資産税と相続税の課税方法

固定資産税は賦課課税方式

 固定資産税は全国の土地、家屋が基本的に全て課税されており、都市計画税と併せると市町村税の約47%を占めており「市町村の基幹税」とも言われています。

 そのため、課税方法も所有者の申告を経ずに、役所が一方的に評価・課税する方式(賦課課税方式)となっています。
 ※償却資産は、毎年1月末までに申告が義務づけられている申告課税です。

相続税は申告課税方式

 固定資産税は賦課課税方式ですが、相続税は申告課税方式です。

 相続(又は遺贈)により財産を取得し、相続税の納税義務がある者は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に被相続人の最寄の税務署に申告書の提出が必要となります。

<相続税の申告書>
※相続税法第27条
「1.項 相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。(中略)」

相続税でも固定資産税評価額を活用

倍率方式での相続税評価

1. 土地の倍率方式

 相続税の土地評価には路線価方式と倍率方式があります。

 路線価方式は、設定されている路線価を基に「財産評価基本通達」により評価額を算定します。

 一方、倍率方式における土地の相続税評価は、その土地の固定資産税評価額に地域、地目ごとに定められた倍率を乗じて評価額を算出します。
 例えば、相続税対象の土地(宅地)の固定資産税額が800万円で、宅地の倍率が1.1の場合には、800万円×1.1で8,80万円となります。

2. 家屋の相続税評価額

 家屋の相続税評価額は、固定資産税の評価額をそのまま活用して相続税の評価額とすることになります。
 
2024/03/10/15:00
 

 

(第109号)「空き家法」の改正により「管理不全空き家」が指導、勧告される

(投稿・令和5年12月)

 今回、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家法」)が改正されました。

 総務省が5年毎に実施している「住宅・土地統計調査」の平成30年調査では、総住宅数6240万7千戸に対して空き家は約849万戸となっており、空き家率は13.6%となっています。また、長期にわたって不在の住宅などの「居住目的のない空き家」は349万戸で、この20年で約1.9倍に増加しています。

 このように空き家の増加が見込まれる中、周囲に著しい影響を及ぼす「特定空家」になることを待つことなく、事前に管理の確保を図ることが必要とされ「空き家法」が改正されました。 

「空き家法」の「特定空家」とは

「特定空家」とは何か

 空き家対策をめぐっては、平成26年に成立した「空き家法」で、空き家を放置して倒壊の恐れがあるなど特に危険性が高い物件を「特定空家」に指定し、空き家を撤去できるようにしました。

 この「空き家法」については、第91号で紹介しています。

 
 まず、空き家と「特定空家」とはどういうものかです。

<空き家及び「特定空家」の定義>
※「空き家法」第2条
「1. この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
2. この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」

 つまり、「特定空家」とは空き家のうち次のいずれかに該当するものをいいます。
① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

住宅用地の減額特例が解除

 そして、「特定空家」に指定されると、固定資産税の住宅用地の減額特例が解除されることになります。

 この住宅用地の減額特例が解除されると、小規模住宅用地(200㎡以下)の特例(6分の1)及び一般住宅用地(200㎡を越える部分)の特例(3分の1)が適用されないこととなります。

 ところで、令和3年度までに「空き家法」により「特定空家」として措置(助言・指導、勧告、命令、代執行)された件数は約3万4千戸となります。

 (「特定空家」の措置状況)

「空き家法」の改正(概要) 

「管理不全空き家」が新設

 しかし、これまでの「空き家法」による「特定空家」の指定によっても、空き家が増え続けていることから、今回、対策強化を盛り込んだ「空き家法」の改正が行なわれた訳です。

 今回の「空き家法」の改正では、改正前が第16条までであったものが、改正後は第30条までと大幅な改正が行われました。

 この改正法では、空き家を放置すれば「特定空家」になる可能性がある物件を新たに『管理不全空き家』に指定され、管理指針に則した措置が「指導」されます。

 そして、「指導」してもなお状態が改善しない場合には「勧告」が可能となります。

<適切な管理が行われていない空家等の所有者等に対する措置>
※改正「空き家法」第13条
「1. 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2. 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。」

 また、この「勧告」を受けたときは、「特定空家」の指定と同様に、当該敷地の固定資産税の住宅用地の減額特例を解除できるとされています。

(「特定空家」化を未然に防止)

 
 なお、この「管理不全空き家等」の設置に伴い、地方税法の「住宅用地の減額特例の解除」に関する条項も一部改正されました(下線部分)。

<住宅用地の減額特例の解除>
※地方税法349条の3の2
「1 (前略)空家等対策の推進に関する特別措置法第13条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第13条第1項に規定する管理不全空家等及び同法第22条第2項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第2条第2項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。(後略)」

財産管理人による空家の管理・処分

 民法(第25条~第29条)では、土地・建物等の所有者が不在・不明である場合等には、利害関係人又は検察官の請求により裁判所が選任した財産管理人が管理や処分を行うことができる、とされています。

<不在者の財産の管理>
※民法第25条
「1. 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。」

 今回の「空き家法」改正では、財産管理人の選任請求権を、空家等の適切な管理のために特に必要があると認めるときには、市区町村長も選任請求可能になりました。

<空家等の管理に関する民法の特例>/span>
改正「空き家法」第14条
「1. 市町村長は、空家等につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法第25条第1項の規定による命令又は同法第952条第1項の規定による相続財産の清算人の選任の請求をすることができる。」

 
2024/02/28
 

 

(第108号)雑種地の固定資産税評価について(「狭小な雑種地」)

(投稿・令和5年12月) <閲覧上位5位(第16号)の関連版>

※第16号は過去の閲覧記録で第5位です。

 
 また、雑種地の固定資産税評価については、第68号及び第69号で解説しています。

 
 そこで今回は、「地目認定は現況主義」のみでは簡単過ぎますので、地目のうち分かりづらい雑種地について、とくに「その他の雑種地」の中で「狭小な雑種地」の評価について解説します。

 なお、「狭小な雑種地」については、一般財団法人・資産評価システム研究センターによる「令和5年度・土地に関する調査研究」からの抜粋によるものです。

雑種地の基本

 その前に、雑種地の基本について簡単にまとめていきます。

地目の認定は現況主義

 まず、地目認定の時期ですが、固定資産税の賦課期日が1月1日とされており、地目の認定も1月1日現在の土地の現況や利用目的を重視することから1月1日現在の認定となります。

<固定資産税の賦課期日>
※地方税法第359条
「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする。」

 次に認定の取扱いですが、固定資産税の土地評価上の地目の認定は現況の地目(「現況主義」)によります。

 では、土地の地目が登記簿と現況が異なる場合は、どうなるのでしょうか。

 例えば、登記簿上の地目が「山林」となっているのに、実際には建物が建っている土地の場合ですが、この土地の固定資産税の地目は、「現況主義」によって「宅地」と認定されます。

地目の種類は9種類

 それでは、固定資産税評価における土地の地目は何かですが、固定資産評価基準では次のとおり9種類とされています。

<固定資産評価基準の地目>
※固定資産評価基準第1章第1節
「土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合における土地の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
①)田、②畑、③宅地、④鉱泉地、⑤沼、⑥山林、⑦牧場、⑧原野、⑨雑種地」

 以上の9種類ですが、⑨雑種地は他の8種類以外の全てを含むことになります。

雑種地の固定資産税評価

 雑種地の評価については、固定資産評価基準において(ア)「ゴルフ場等用地の評価」、(イ)「鉄軌道用地の評価」及び(ウ)「その他の雑種地」の3種類とされています。

「雑種地の固定資産税評価」
 雑種地の評価方法は、(ア)と(イ)の評価方法は固定資産評価基準で定められていますが、(ウ)「その他の雑種地」の評価は。売買実例価額から評価額を求める方法と、売買実例価額が無い場合は付近の土地に比準して評価額を求める方法(近傍地比準方式)とされています。

 この(ウ)「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 「その他の雑種地」の評価方法は、売買実例地比準方式が原則ですが、売買実例が少ないことから、多くの市長村では近傍地比準方式により評価されているのが実際です。

「狭小な雑種地」の評価

「狭小な雑種地」とは

 「狭小な雑種地」とは、ゴミ置き場、防火水槽、残地・潰れ地等の雑種地です。

 一般的に、狭小な土地は画地規模が小さくなるにつれて利用可能な用途が限定され、用途の多様性が損なわれることから利用価値が減少します。

 「狭小な雑種地」は、主に次の区分がされています。

(1)建物の敷地として利用が困難な狭小な雑種地(通常の狭小地)
 建物の敷地としては利用困難であるものの、駐車場等として利用が可能な程度の画地規模が小さい(概ね15㎡から30㎡程度)土地です。

(2)単独では利用が困難な程度に狭小な雑種地(極狭小地)
 駐車場としての利用も困難な、画地規模が極めて小さな(概ね20㎡未満)土地です。

「狭小な雑種地」の評価方法

 「その他の雑種地」としては、売買実例地比準方式が原則ですが、「狭小な雑種地」の売買実例を収集することが困難なため、近傍地比準方式により評価される場合が多いと考えられます。

 「狭小な雑種地」の評価では、実務上、次の方法が考えられます。

(1)付近の土地の価額に、狭小地減価を含む比準割合を乗じる方法
 付近の標準的な規模の土地の価格(路線価等)に、狭小地であることの減価を含んだ比準割合を直接乗じる評価方法です。

(2)画地計算法等の適用により考慮する方法
 規模が狭小なことによる減価を、所要な補正を含めた画地計算法(奥行価格補正、間口狭小補正)を補正した上で適用することと市町村長が設定した狭小地補正を適用する方法等です。

 なお、「狭小な雑種地」については固定資産評価基準には規定が無いため、市町村の「所要の補正」(『固定資産評価事務取扱要領』)により行われています。
 
2023/12/01/16:00
 

 

(第107号)固定資産税の「非課税」「減免」「課税免除及び不均一課税」について

(投稿・令和5年11月-見直し・令和6年2月)
※今回は過去閲覧歴10位までの第3位(22号)、第9位(13号)の「非課税」と第4位(15号)の「減免」をまとめ「非課税、減免、課税免除及び不均一課税」を一覧表にしました。

 なお、それぞれの詳細については、次の各号をご覧ください。

 
<「非課税、減免、課税特例及び不均一課税」一覧表>

 
2023/12/07/14:00
 

 

(第106号)固定資産税が課税されない非課税制度とは—社会福祉法人等による「老人福祉施設」の場合

(投稿・令和5年11月) <閲覧上位再生版(第22号&第13号)>

 今回は過去の閲覧数で第3位の第22号と第9位の第13号の再生版です。

 
 固定資産税は、毎年1月1日の固定資産の所有者が納税義務者となり、課税されます。
 しかし、地方税法では、固定資産税が課税されない非課税制度というものが規定されています。

 この非課税とは固定資産税を『課税しない』ということではなく、市町村の意思いかんにかかわらず納税義務を負わせることができない、固定資産税を『課税してはいけない』という法的な課税禁止の制度なのです。

 この固定資産税の非課税制度には、2つの種類があります。

①「人的非課税」…固定資産の所有者の性格によるもの。
②「物的(用途)非課税」…固定資産それ自体の性格、用途によるもの。

「人的非課税」とは

  地方税法第348条1項では、国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができないとされています。

<固定資産税の「人的非課税>
※地方税法第348条1項
「市町村は、国並びに都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区に対しては、固定資産税を課することができない。」

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

 この国、都道府県、市町村が有する固定資産については、それが、どのような性格を有するものであろうと、また、どのような用途に供されているものであるかを問わず、すべて固定資産を課することができないということを意味します。

 しかし、「人的非課税」といえども、国や地方公共団体が所有している固定資産が一般の固定資産と異ならないような状態で使用収益されているもの、例えば、公務員の宿舎や民間への貸付土地等は、「人的非課税」扱いはされません。

 この場合は、「国有資産等所在市町村交付金法」により、固定資産税に準ずるものとして、その固定資産の所有者は、所在の市町村等に対して固定資産税相当額(国有資産等所在市町村交付金)を納付しなければなりません。

「物的(用途)非課税」とは

固定資産税の「物的(用途)非課税」の内容

 固定資産税の非課税で注目すべきは、「物的(用途)非課税」の方です。

 「物的(用途)非課税」は、例えば、宗教法人、墓地、公共の用に供する道路(私道)、社会福祉法人、学校法人、国宝、重要文化財等が所有している固定資産の場合です。

 地方税法第348条2項各号に列挙する固定資産及び同条第4項、第5項、第6項、第7項、第8項、第9項に規定する固定資産は69項目が規定されています。

 この規定は、これ以外は認めることが出来ない「限定列挙」となります。

<固定資産税の「物的(用途)非課税」>
※地方税法第348条2項
「2項.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。」(本項のみ掲載—以下略)

「物的(用途)非課税」が適用されない場合

 次の場合には、固定資産税の物的(用途)非課税は適用されません。

①有料使用の場合の課税
 地方税法第348条2項各号に列挙する資産に該当するものであっても、その固定資産を有料で借り受けた者がこれを使用する場合においては、その固定資産の所有者に固定資産税を課税することができます(地方税法第348条2項ただし書)。

 例えば、国や地方公共団体が私人に地代及び家賃を支払って建物を借りている場合には、官公庁用が使用していても、貸している所有者に課税されます。

②目的外使用の場合の課税
 法第348条2項各号の固定資産がそれぞれ各号に定められている目的外の目的に使用される場合には、その固定資産税は課税されます。

<目的外使用の場合の課税>
※地方税法第348条第3項
「3項. 市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使 用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」

「物的(用途)非課税」には申告が必要

 なお、「物的(用途)非課税」を適用するにあたっては申告が必要とされています。

 この申告制度は、地方税法には規定されておらず、総務省の通知に基づいて、市町村毎の条例により定められています。

<地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)第3章第1節19>
「非課税等特別措置の適用に当たっては、定期的に実地調査を行うこと等により利用状況を的確に把握し、適正な認定を行うこと。また、実地調査時点の現況等を記載した対象資産に関する諸資料の保管、整理等に努め、その的確な把握を行うとともに、利用状況の把握のため必要があると認められる場合には、条例により申告義務を課することが適当であること。」

 この場合の問題は、固定資産税は本来申告が必要無い「賦課課税方式」である訳ですので、仮に申告が無かった場合は過去に納付した分が還付されるのかということです。

「老人福祉施設」に対する物的非課税

 ここでは、物的(用途)非課税のうち閲覧数の多い「老人福祉施設」(第36号—第3位)について説明します。

「老人福祉施設」の非課税内容

 「老人福祉施設」の非課税については、地方税法第348条2項10の5に規定されています。

<固定資産税の「老人福祉施設」非課税>
※地方税法348条2項10の5
「2.固定資産税は、次に掲げる固定資産に対しては課することができない。ただし、固定資産を有料で借り受けた者がこれを次に掲げる固定資産として使用する場合には、当該固定資産の所有者に課することができる。
…………
10の5 社会福祉法人その他政令で定める者が老人福祉法第5条の3に規定する老人福祉施設の用に供する固定資産で政令で定めるもの」

 ここでは、所有者が「社会福祉法人その他政令で定める者」で、固定資産が「固定資産で政令で定めるもの」とされ、「者」と「もの」それぞれの政令を確認する必要があります。

 まず、「老人福祉施設」で非課税が認められる「者」は、必ずしも運営主体が社会福祉法人に限りません。

 地方税法施行令第49条の13では、1項で(1)の運営する「者」が、2項で(2)の固定資産が非課税となる「もの」とされています。

(1)運営主体(「者」)
①社会福祉法人
②社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
③公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、消費生活協同組合、健康保険組合、国民年金基金、商工組合、医療法人等
④老人介護支援センターの届出をした者

(2)非課税となる固定資産(「もの」)
a.①が経営する養護老人ホーム
b.①②が経営する特別養護老人ホーム
c.①②③が経営する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設軽費老人ホーム、老人福祉センター
d.①②③④が経営する老人介護支援センター

 なお、社会福祉法人はそもそも地方税法348条2項10の5で規定されていますので、地方税法施行令では「社会福祉法人以外の者」が規定されています。

<老人福祉施設等を運営する者-運営主体>
※地方税法施行令第49条の13第1項
「法第348条第2項第10の5に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
1.老人福祉法附則第6条の2の規定により社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
2.公益社団法人、公益財団法人、農業協同組合、農業協同組合連合会(前号に掲げるものを除く。)、消費生活協同組合、消費生活協同組合連合会、健康保険組合、健康保険組合連合会、企業年金基金、確定給付企業年金法に規定する企業年金連合会、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会、国民健康保険組合、国民健康保険団体連合会、国民年金基金、国民年金基金連合会、商工組合(組合員に出資をさせないものに限る。)、商工組合連合会(会員に出資をさせないものに限る。)、石炭鉱業年金基金、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団及び医療法人
3.前2号に掲げる者以外の者で老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターの設置について同法第15条第2項の規定による届出をしたもの」

<老人福祉施設等で非課税となる固定資産-施設>
※地方税法施行令第49条の13第2項
「法第348条第2項第10の5に規定する政令で定める固定資産は、次に掲げる固定資産とする。
1.社会福祉法人が経営する老人福祉法第20条の4に規定する養護老人ホームの用に供する固定資産
2.社会福祉法人及び前項第1号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の5に規定する特別養護老人ホームの用に供する固定資産
3.社会福祉法人並びに前項第1号及び第2号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の2の2に規定する老人デイサービスセンター、同法第20条の3に規定する老人短期入所施設、同法第20条の6に規定する軽費老人ホーム及び同法第20条の7に規定する老人福祉センターの用に供する固定資産
4.社会福祉法人及び前項各号に掲げる者が経営する老人福祉法第20条の7の2に規定する老人介護支援センターの用に供する固定資産」

 特に「医療法人」(地方税法施行令第49条の13第1項2号の最後尾)が運営する「老人福祉施設等の用に供する固定資産」の非課税については、数年前ですが、かなりの市町村で課税誤り(非課税にもかかわらず課税していた)があった、とそれぞれの市町村のホームページで明らかにされています。

 某市町村の発表によりますと、「平成11年度地方税法改正により非課税範囲が拡大した(「医療法人」が追加された)ものの、市町村職員の理解が不十分であったため、非課税にもかかわらず課税を行った」とのことです。

 なお、株式会社が経営する「老人福祉施設」は非課税にはなりません。

「老人福祉施設」に土地を貸している場合

 ところで、固定資産税が非課税になるのは、運営法人等が固定資産を所有している場合に限りません。土地所有者が、運営法人等の利用の用に供するために土地を無償で貸している場合、その土地も非課税になります。

 ただし、有償で土地を貸している場合は、その土地は固定資産税が課税されます。
 例えば、次の図のように、社会福祉法人(A)が「老人福祉施設」を建設して運営し、その土地を(B)所有者から借りている場合、無償か有償かで異なります。

 
 社会福祉法人が土地と家屋を所有し、目的の用途に沿っていれば、当然、土地、家屋ともに固定資産税は非課税となります。

 しかし、固定資産がその目的以外に使用される場合は、固定資産税は非課税となりません。地方税法348条3項にその「課税規定」があります。

<課税規定-地方税法348条3項>
「3.市町村は、前項各号に掲げる固定資産を当該各号に掲げる目的以外の目的に使用する場合においては、前項の規定にかかわらず、これらの固定資産に対し、固定資産税を課する。」
 
2023/11/5