(第144号)固定資産税家屋評価の複雑な仕組みと対応(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税家屋評価の複雑な仕組みと対応についてです。

家屋評価の複雑な仕組み

 固定資産税の家屋評価は「再建築価格方式」で複雑な仕組みとなっています。
 ここでは、その仕組みの一部ですが、固定資産評価基準における用途別区分と部分別区分の紹介です。

 家屋は、固定資産評価基準で木造家屋と非木造家屋に区分され、その木造、非木造家屋それぞれに、再建築費評点基準表による用途別区分と部分別区分に基づいて、再建築価格が算出され、固定資産税額が決定されます。

(1)家屋の用途別区分

 家屋の用途別区分は、建物の利用目的(居住用、店舗、事務所など)に応じて木造家屋7種類、非木造家屋9種類に区分されています。

① 木造家屋の用途別区分(7種類)
 1.戸建形式住宅用建物、2.集合形式住宅用建物、3.事務所、店舗用建物、4.病院用建物、5.ホテル、旅館用建物、6.劇場用建物、7.工場、倉庫用建物

② 非木造家屋の用途別区分(9種類)
 1.戸建形式住宅用建物、2.集合形式住宅用建物、3.事務所、店舗用建物、4.病院、ホテル用建物、5.工場、倉庫用建物、6.軽量鉄骨造建物<(ア)戸建形式住宅用建物、(イ)集合形式住宅用建物、(ウ)事務所、店舗用建物、(エ)工場、倉庫用建物>

(2)家屋の部分別区分

 家屋の部分別区分は、建物の構造(木造、非木造)や使用されている建材、設備などに応じて上記(1)の用途別区分毎に木造家屋10種類、非木造家屋11種類に区分されています。

① 木造家屋の部分別区分(10種類)
 1.構造部<(ア)主体構造部、(イ)基礎>、2.外壁仕上、3.内壁仕上、4.床仕上、5.天井仕上、6.屋根仕上、7.建具、8.建築設備、9.仮設工事、10.その他工事

② 非木造家屋の部分別区分(11種類)
 (1) 構造部<(ア)主体構造部、(イ)基礎工事、(ウ)外周壁骨組、(エ)間仕切骨組み>、(2)外壁仕上、(3)内壁仕上、(4)床仕上、(5)天井仕上、(6)屋根仕上、(7)建具、(8)特殊設備、(9)建築設備、(10)仮設工事、(11)その他工事

 この部分別区分は、建築された家屋の表面に表れている部分から隠れた内部も推定して評価できるように、家屋の構造を外見的な面から区分されています。

複雑な家屋評価と市町村の対応

(1)「再建築評点数」査定の作業

 これまで説明したとおり、家屋の評価基準の仕組み自体が複雑で、特に「評点数」→「再建築費評点数」の査定が最大の難関となりますが、この「再建築評点数」を求めるためには、次の作業が必要となります。

家屋所有者に調査協力を依頼し、新築家屋の見積書や竣工図等を借用し情報を取得します。

実際に当該家屋に赴き、用途別区分とともに家屋の外観や内部の使用資材等を確認します。

借用・保存した見積書等から評価基準の部分別区分に照らして、必要な資材を拾い出し部分別分類を行います。

その上で、市町村が有する評価システムに評価要領の評点項目と使用資材量の数値を入力して評点数を算出します。

(2)家屋評価の共同作業の試み

 市町村の税務担当者は、通常、事務職であることことから建築の専門家ではありません。もちろん、研修等は行われていますが、建築の専門的名称や構造等を十分に理解するのには時間が掛かります。

 ところが、市町村の事務職は3~5年程度で異動するのが一般的であり、折角慣れた時期には異動するという事態が発生します。

 そのような事態を防ぐため、市町村によっては、家屋評価の専門的な職員を配置することや、市町村によっては「専門組織」設置の試みも進められています。

 また、大都市以外の市町村では、市町村間で共同組織を設置する等の新たな試みも進められています。

(3)非木造家屋の評価を都道府県に委託

 政令指定市以外の市町村では、大規模(300㎡~500㎡以上)の非木造家屋の評価を都道府県県(県税事務所)に委託しています。
(県税事務所では、不動産取得税の評価・課税を行っています。)

 固定資産税の課税権者はあくまでも市長村町長にありますので、都道府県が評価した結果を市町村に送付され、市町村が課税手続きを行います。

<不動産の価格の決定等>-地方税法第73条の21
「1項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について増築、改築、損かヽいヽ、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。
2項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。
3項 道府県知事は、前項の規定によつて不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

 なお、東京都23区域内の固定資産税の課税権者は東京都とされ、都税として課税されています。つまり、具体的な課税及び徴収事務は、23区内の都税事務所が行っています。
 
2025/07/29/11:00
 

 

(第143号)固定資産税家屋の評価は「再建築価格方式」(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税家屋の評価は「再建築価格方式」についてです。

家屋評価の「再建築価格方式」

 固定資産税における家屋の評価は、再建築価格を基準として評価する方式(「再建築価格方式」)を採用しています。

<新築家屋の評価計算-「再建築価格方式」>

(1)「再建築価格」とは

 再建築価格とは、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点において新築するとした場合に必要となる建築費(新築家屋の評点数)であり、実際にその家屋をいくらで建築したのか(建築費)、あるいはいくらで取得したのか(取得費)とは異なります。

(2)新築家屋の評点数

 新築家屋の評点数は次の方法で求めます。 

 <①再建築費評点数×②損耗の状況による減点補正率×③需給事情による減点補正率>

 実は、固定資産税の新築家屋の評価において、この部分の作業が大部分を占める大変な作業になります。

① 再建築費評点数
 再建築費評点数の付設については、「部分別による方法」と「比準による方法」がありますが、非木造家屋においては、一般に「部分別による方法」が採用されています。

<「部分別による方法」>

(ア)評点項目
 評点項目は、非木造家屋の構造に応じて、非木造家屋評点基準表の各部分ごとに一般的に使用されている資材の種別及び品等、施工の態様等の区分によって標準評点数を付設する項目として設けられています。

(イ)標準評点数
 標準評点数は、評点項目の区分に従い、非木造家屋の各部分別の標準的な単位当たり施工量である標準量に対する工事原価を基礎として算出されたものです。

 この標準評点数は、基準年度の賦課期日の属する年の2年前の7月現在の東京都における物価水準により算定した工事原価に相当する費用に基づいて、その費用を1円1点としています。

(ウ)標準量
 標準量とは、非木造家屋の評点基準表に示されている標準評点数の積算基礎となった各用途別、部分別の標準的な施工量です。

(エ)補正項目及び補正係数
 評点項目及び標準評点数は、標準的な家屋の各部分の施工量等を基準として決定されていますが、評価する個々の家屋の施工態様は必ずしも標準的なものではないため、補正項目と補正係数が設けられています。

 補正係数は、施工数量と施工状況の良否に基づく、補正項目ごとに適用すべき「標準」「増点補正率」「減点補正率」が示されており、それを適用します。

(オ)計算単位
 標準評点数は、各部分別の標準的な施工数量を基礎として積算されていますが、部分別再建築費評点数は、各部分別の標準評点数に床面積、個数、箇所数等の単位を乗じて算出します。

② 損耗の状況による減点補正率
 非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は、原則として経過年数に応ずる減点補正率(経年減点補正率)によります。

(ア)経年減点補正率
 経年減点補正率は、通常の維持管理を行う場合において、年数の経過に応じた通常生ずる減価を基礎として定められ、非木造家屋の用途別区分及び構造別区分に従い、非木造家屋経年補正率基準表に示されています。

 ただし、この補正率を乗じた経年減点補正率は20%より下がらず、その家屋が存在する限りは20%相当の評価額が続くことになります。これを「最終残価率」と言います。

(イ)損耗減点補正率
 各部分別の損耗の現況を通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる損耗の状態に修復するものとした場合に要する費用を基礎として定められたものであり、この基準表は特別な場合のみ適用されます。

③ 需給事情による減点補正率
 需給事情による減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている非木造家屋、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる非木造家屋等について、その減少の価額の範囲において求めるものとされています。

(3)評点一点当たりの価額

 評点一点当たりの価額は、次のとおりとなります。

 <1円×①物価水準による補正率×②設計管理費等による補正率>

① 物価水準による補正率
 物価水準による補正率は、家屋の資材費、労務費等の工事原価に相当する費用等の東京都特別区との地域的格差を考慮して定められています。

② 設計管理費等による補正率
 設計管理費等による補正率は、家屋の建築費に通常含まれる設計監理費、一般管理費、利潤等の工事原価に対する割合を考慮して定められています。

中古家屋は新築評価が継続

(1)在来家屋の評価計算方法

 在来(中古)の家屋に係る再建築評点数は、原則として、基準年度の前年度における再建築評点数(全基準年度に適用した評価基準によって求めた再建築評点数)に再建築評点補正率を乗じ、更に経年減点補正率を乗じて求めます。

<在来(中古)家屋の評価計算>

(2)在来家屋は評価額が上がっても据置

 在来家屋は、経年減点補正率は毎年下がりますが、再建築費評点補正率は3年毎に建築物価の状況に会わせるため上昇する場合があります。

 例えば、物価上昇期に再建築費補正率が上がり、計算上の再建築費評点数が前年を上回った場合はどうなるかですが、その場合の家屋の評価額は「据置き」となります。

<物価上昇期は評価額が据置>

(3)在来家屋評価では新築時の審査可能

 在来家屋の評価は(1)のとおりですが、建築当初の価格の見直しがされないことが多いのです。そうしますと、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになってしまいます。

 ところで、平成25年4月16日の東京高裁判決で「在来(中古)家屋の固定資産税評価で新築時の審査が可能」との判断がされています。

 そして、平成26年7月24日の最高裁判決で上告が棄却され、東京高裁の判断が確定されています。

<東京高裁判決(一部)>-平成25年4月18日
「 固定資産評価基準に従って決定された価格は「適正な時価」であると推認されるというにすぎない。このことは,その適用の誤りが,前記のような「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」である場合であっても,当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り,同様である。本件において,「建築当初の再建築費評点数の算出の誤り」は,「前年度(平成17年度)の再建築費評点数」に影響を及ぼし,ひいては平成18年度の価格に影響を及ぼすことが明らかである。」

(4)家屋の最終残価率は20%

 法人税の減価償却においては減価償却の残価額が1円(備忘価額)とされていますが、固定資産税の経年減価による最終残価率は20%で、評価額はそれ以下には下がりません。

 つまり、家屋の固定資産税は、何年経過しても家屋を使用(保有)している限りは最低限20%の評価・課税がされ続けるということになります。

 この最終残価率20%の制度は、「年数の経過に伴って家屋の価値は減少していくが、通常の維持補修を行い家屋として効用を発揮している家屋であれば、家屋の持つ使用価値はゼロにはならず、最低限の価値は保たれる。」とされているからです。

<固定資産税家屋の最終残価率>

 
2025/07/28/13:00
 

 

(第142号)固定資産税の家屋の定義と要件について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、 固定資産税の家屋の定義と要件についてです。

固定資産税の家屋とは

家屋の歴史

 固定資産税としての家屋は、昭和24年にシャウプ勧告が出されて、昭和25年に地方税法が制定され、そこで市町村税として土地、償却資産とともにスタートしました。

 それ以前は、明治15年に家屋税が大府県(東京、大阪、京都、神奈川)に対して創設され、明治21年にこれらの府県の市町村に家屋税付加税が、その後明治23年に全国で課税されるに至っています。

家屋の定義

 固定資産税の家屋は、不動産登記法における建物と意義を同じくする、とされています。

<地方税法の施行に関する取扱について>-総務省通知(市町村税関係)
「 家屋とは不動産登記法の建物とその意義を同じくするものであり、したがって登記簿に登記されるべき建物をいうものであること。」

 そこで、「不動産登記法上の建物」についてみていきます。

<建物の種類(12種類)>-不動産登記規則113条1項
「 建物の種類は、建物の主な用途により、居宅、店舗、寄宿舎、共同住宅、事務所、旅館、料理店、工場、倉庫、車庫、発電所及び変電所に区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて定めるものとする。」

<建物の種類の定め方(25種類)>-不動産登記事務取扱手続準則第80条1項
「 規則第113条第1項に規定する建物の種類の区分に該当しない建物の種類は、その用途により、次のように区分して定めるものとし、なお、これにより難い場合には、建物の用途により適当に定めるものとする。
校舎、講堂、研究所、病院、診療所、集会所、公会堂、停車場、劇場、映画館、遊技場、競技場、野球場、競馬場、公衆浴場、火葬場、守衛所、茶室、温室、蚕室、物置、便所、鶏舎、酪農舎、給油所」

固定資産税家屋としての要件

 固定資産税の課税客体となる家屋の認定に当たっては、次の(1)から(6)の要件が必要とされています。

(1)屋根を有すること(外気分断性)

 屋根は、雨露をしのぐために必要不可欠です。不動産登記規則111条では「屋根及び周壁又はこれらに類するものを有すること(外気分断性)」とあります。

 ただし、高架下の建造物については、家屋として評価すべき屋根はないものの、屋根に相当する構築物があるため家屋として取り扱われます。

(2)周壁を有すること

 家屋は、周壁により内側に一定の利用空間が発生し、外気分断性が有るものと判断されます。

 ここで周壁を有するとは、概ね3面以上に周壁がある(その面の3分の2程度以上の部分に壁があることをもってその面は周壁を有する)ことをいいます。

(3)土地に定着した建造物であること(土地への定着性)

 土地に定着した建造物であるということは、建造物が建造されている土地から容易に移動できないことをいいます。

 土地に定着している建造物は、次の2つの要件を充足していることが必要です。
① 建物の大きさ、重さ、構造、基礎の施工の程度、 建築設備の状況により物理的または経済的に他の場所に移動させて利用することが容易でないこと。
② 建物の用途、目的からしてある程度の期間(通常賦課期日をはさんで1 年以上)継続し利用することが予定されていること。

(4)家屋本来の用途に供しうること(用途性)

 家屋本来の目的は、その空間を居住、作業、貯蔵、営業、保管等の用途に供しうるものでなくてはなりません。

 例えば、アーケードは、道路の用途を高めるものであって家屋本来の目的とは異なるので家屋とは認定できません。

(5)恒久性を有すること

 不動産登記法準則第77条に「半永久的な建造物と認められるものに限る」とあるように、家屋は、恒久性を有することが必要です。

 なお、家屋として認定しないものを例示すると次のものがあります。
① 園芸用ハウス(温室)で屋根、周壁がビニール・シートのもの
② ビニール・シート等で葺き上げた車庫
③ 簡易な鶏舎、豚舎等の畜舎、堆肥舎等

(6)賦課期日に完成していること

 なお、家屋の要件とは異なりますが、建築中の建物がどの程度まで完成していれば家屋の課税対象となるかについては、昭和59年の最高裁判決により「固定資産税の性質目的及び地方税法の規定の仕方からすれば、新築の家屋は、一連の新築家屋が完了したときに、固定資産税の課税客体となる」とされ、1月1日現在で完成していることが必要となります。
 
2025/07/27/14:00
 

 

(第141号)固定資産税の雑種地の評価について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税での雑種地の評価についてです。

固定資産評価基準の雑種地

 雑種地は、(1)「ゴルフ場等用地の評価」、(2)「鉄軌道用地の評価」及び(3)「その他の雑種地」とされています。

<雑種地の評価>-固定資産評価基準・第10節一
「 雑種地の評価は、二(ゴルフ場等用地の評価)及び三(鉄軌道用地の評価)に掲げる土地を除き、雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法によるものとする。ただし、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

<雑種地評価の一覧>

(1)「ゴルフ場等用地」の評価について

 「ゴルフ場等用地」の評価は、ゴルフ場を開設するに当たり要した土地の取得価額に、ゴルフ場用地の造成費を加算した価額を基準として、ゴルフ場の位置、利用状況等を考慮して求めます。

 なお、クラブハウスの敷地は宅地と認定されます。

 ゴルフ場用地の評価額 = (ゴルフ場用地の取得価額 + ゴルフ場の造成費)×位置・利用状況による補正

(2)「鉄軌道用地」の評価について

 「鉄軌道用地」の評価は、沿接する土地の価額」の3分の1で評価します。

 鉄軌道用地の評価額=沿接する土地の価額×1/3

 ここで「沿接する」との意味は、「近接する」や「附近の」とは異なります。「沿接する」とは、まさに直接接していることで、線路敷地に直接接している状態にあることになります。

 なお、鉄軌道用地が「運送の用に供する部分」と「運送以外の用に供する部分」と複合的に利用されている土地の評価については、複合利用鉄軌道用地として評価します。

<複合利用鉄軌道用地の評価>

(3)「その他の雑種地」の評価

 固定資産評価基準による「その他の雑種地」の評価方法は、①雑種地の売買実例価額から評定する適正な時価によってその価額を求める方法及び②市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法、の2通りとなっています。

① 売買実例地比準方式

 市町村内に雑種地の売買実例価額がある場合は、その売買実例価額から評定する適正な時価によってその評価額を求めます。

<売買実例地比準方式>

② 近傍地比準方式

 市町村内に雑種地の売買実例価額がない場合は、当該雑種地の位置、利用状況等を考慮し、付近の土地の価額に比準してその評価額を求めます。

<近傍地比準方式>

③ 「その他の雑種地」は近傍地比準方式が多い

 「その他の雑種地」の評価方法として、多くの市町村では②の近傍地比準方式により評価されているのが実際のところです。

 ところで、「その他の雑種地」の例としては、駐車場、資材・廃材置場、太陽光パネル設置用地、干場、鉄塔用地、私道、農業用施設用地、高圧線下地等があげられますが、これ以外にも、その他の全ての土地が「その他の雑種地」となります。

 つまり、「その他の雑種地」は雑種地の評価の中心です。

「太陽光パネル設置用地」の評価

 「太陽光パネル設置用地」は雑種地のうちの「その他の雑種地」に当たります。

 また、その評価方法は、ほとんどの市町村で「近傍地比準方式」が採用されています。

(1)「その他雑種地」の「近傍地比準方式」

 「近傍地比準方式」は、市町村内に売買実例価額がない場合においては、土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める方法です。

① 比準元の選定
 「太陽光パネル設置用地」の比準元の選定においては、「土地の位置、利用状況等」を考慮する必要があります。

 土地の位置については、「附近の土地」ですが、必ずしも接続する路線価でなくても良く、社会通念として「近い」と解される範囲内であれば良い訳です。

 利用状況については、附近に類似の雑種地があれば、その雑種地の選定で良いのですが、全国の「太陽光パネル設置用地」のうち9割弱の土地の評価において、比準元となる「附近の土地」が宅地とされています。

② 宅地間比準(比準の第一段階)
 この方法は、比準元を宅地とした場合、「太陽光パネル設置用地」は本来は雑種地です、一旦そこを宅地と想定し、宅地同士の比準を行います。

 その比準は、通常の宅地評価で考慮される要素である地域的格差及び個別的格差を比準することになります。

③ 地目間比準(比準の第二段階)
 次に、宅地と「その他の雑種地」の間における格差、すなわち、同位置・同形状の土地に係る地目間の格差を反映するための比準となります。

 この場合、評価対象地である「その他の雑種地」が宅地となるべき要素として、造成費相当額が主なものとなります。つまり、想定された宅地としての価格から造成費相当額を控除して求めることになります。
(※ 市町村によっては、造成費相当額ではなく、一定の比準割合を設定して適用する方法も多く行われています。)

(2)「太陽光パネル」には償却資産が課税

 以上のとおり、「太陽光パネル設置用地」は土地で地目は雑種地のなかの「その他の雑種地」となりますが、「太陽光パネル」自体には償却資産が課税されています。

 なお、この「太陽光パネル」の償却資産の評価・課税については、市町村単位で「わが町特例」による減額特例が適用されています。

(3)「わが町特例」とは

 「わがまち特例」は、地方税法の定める範囲内で市長村が特例率を条例で定めることができる仕組みとして、平成24年度の税制改正により導入されています。

 「わがまち特例」は、法律に基づき、国が市長村に対して特例措置の実施を求める場合であっても、市長村の裁量を認めた方が効果的な特例措置については、全国一律の特例措置ではなく、法律の定める範囲で、市長村が特例措置の内容を条例で定めることができる仕組みです。

 太陽光発電施設は土地だけでなく、土地上に設置されている太陽光パネル等が償却資産として課税されていて、償却資産の特例措置として「わがまち特例」が導入されています。
 
2025/07/25/16:00
 

 

(第140号)固定資産税の山林(一般山林、介在山林)評価について(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税の山林評価についてです。

固定資産評価基準における山林

 山林の評価については、固定資産評価基準の第1章第7節により次のように定めらており、一般山林と介在山林の2種類からなります。

<山林の評価>-固定資産評価基準第1章第7節
「 山林の評価は、各筆の山林について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価額に乗じて各筆の山林の価額を求める方法によるものとする。
ただし、宅地、農地等のうちに介在する山林及び市街地近郊の山林で、当該山林の近傍の宅地、農地等との評価の均衡上、上記の方法によって評価することが適当でないと認められるものについては、当該山林の均衡の宅地、農地等の価額に比準してその価額を求める方法によるものとする。」

※ この基準で、前半の部分が一般山林で、後半の但し書き部分が介在山林です。

一般山林の評価

 一般山林とは、介在山林以外の山林で、林業経営が継続されることを前提に山林としての生産力に着目して評価します。

 一般山林の評価は、おおまか次の流れにより行います。

状況類似地区の区分

 状況類似地区の区分にあたっては、地勢、土層、林産物の搬出の便等を基準として、概ねその状況が類似する地区ごとに区分します。

標準山林の算定

 標準山林は各状況類似地区ごとに、位置、地形、土層、林産物の搬出の便等の状況からみて比較的多数所在する山林のうちから、一つの山林を選定します。
 一般的には、状況類似地区の中央部に位置し、最も多い林相を示す山林が選定されます。

標準山林の評点の付設

 標準山林の評点数は、その標準山林が所在する状況類似地区内における売買実例価額から評定する適正な時価に基づいて付設します。

山林の比準表の適用

 各筆の山林の評点数を付設する際に、標準山林との状況の差を比較考慮し固定資産評価基準に定められている「山林の比準表」を適用して評点数を補正します。

各筆の山林の評点数の付設

 各筆の山林の評点数は、まず、標準山林の単位地積当たりの評点数に、「山林の比準表」(別表第7の1)によって求めた各筆ごとの比準割合を乗じて、各筆の単位地積当たりの評点数をもとめ、これに当該筆の地積を乗じて、各筆の山林の評点数を求めます。

介在山林の評価

 介在山林とは、宅地・農地等のうちに介在する山林や市街地近郊の山林で、一般山林の評価方法によって評価することが適当でない山林をいいます。

「路線価方式」に所在する山林評価

 「路線価方式」が適用されている地域に所在する介在山林の場合は、路線価を基に画地計算を行い、介在山林が宅地であったとした場合の価額を求め、この価額から宅地転用にあたって通常必要と認められる造成費相当額を控除して評価額を算定します。

「標準宅地比準方式」に所在する山林評価

 「標準宅地比準方式」が適用されている地域に所在する介在山林の場合は、当該介在山林の付近の宅地から、立地条件や画地の状況が類似している宅地を選び、介在山林が宅地であったとした場合の価額を求め、この価額から宅地転用にあたって通常必要と認められる造成費相当額を控除して評価額を算定します。

介在山林の傾斜角度等の比準割合から求める方法

 市町村によっては、上記の造成費相当を控除する方法ではなく、介在山林の傾斜角度等から比準割合を定めている場合もあります。

 その場合の具体的評価方法は、当該市町村の「固定資産評価事務取扱要領」により定められています。

 ここにY市の介在山林の比準割合を紹介します。

<介在山林の比準割合(例)>

緑地保全による固定資産税の減免

「都市緑地法」による特別緑地保全地区

 特別緑地保全地区は、都市緑地法第12条に規定されており、都市計画区域内において、樹林地、草地、水沼地などの地区が単独もしくは周囲と一体になって、良好な自然環境を形成しているもので、無秩序な市街化の防止や、公害又は災害の防止となるもの、伝統的・文化的意義を有するもの、風致景観が優れているもの、動植物の生育地等となるもののいずれかに該当する緑地が、指定の対象となります。

 この地区に指定されると、固定資産税評価額が最大2分の1まで減額される優遇措置があります。

市町村による緑地保全制度と山林の買取り

 自治体によっては、緑地を保全するための条例が制定され、市街化区域、市街化調整区域の一定以上の樹林地を保存する施策が展開されています。この制度の優遇措置の一つとして、固定資産税(都市計画税)の減免があります。

 また自治体によっては、一定の要件に合う山林を買い取る制度もあります。例えば、横浜市では「横浜緑アップ計画」による買取制度があります。

 これは、あくまでも自治体の条例による制度ですので、当該の自治体にご相談ください。
 
2025/07/23/16:00