収益還元法

収益還元法-収益性に着目した価格

収益還元法(収益価格)

 この土地は、これだけの収益を生み出す能力があるから、いくらで買おうかという場合の価格が、その土地の収益価格となります。

 収益価格は、賃貸用建物が現に稼働している複合不動産(土地・建物)、商業系の不動産において特に重視されるべき方式ですが、必ずしも複合不動産、商業系用途に限らず、更地、あるいは住居系用途の不動産でも適用されます。

 今回は、対象不動産を「更地」と仮定していますので、収益還元法の中の土地残余法という求め方を解説します。

 土地残余法とは、土地と建物が一体として稼いだ収益から、建物の稼いだ収益分を引いて、その残りが土地の生み出した収益として、その収益を利回りで割る(還元する)ことによって収益価格を求める方法です。

最有効使用の建物の想定

 土地残余法では、仮にその土地に建物を建てて賃貸したらいくらの賃料が得られるか、という考え方に立って評価します。

 そのためには、その土地に最有効に使用できる建物を建てることを想定して、そこから総収益(賃料収入や、敷金、権利金等)、及び総費用(必要な標準的な費用)を想定していきます。

総収益の算定

 総収益は、主として賃料収入、保証金等(敷金、保証金その他預り金的性格を持つ一時金)の運用益、権利金等(権利金、礼金その他の一時金)の運用益・償却額、その他(駐車場収入等)からなります。

総費用の算定

 総費用は、主として修繕費、維持管理費、公租公課、損害保険料、空室損失相当額、貸倒れ準備費からなります。
これら各項目について標準的な費用を求め、その合計額が総費用となります。

土地・建物一体の純収益

 上記の総収益から総費用を差し引くと、土地・建物一体としての純収益が求められます。

建物に帰属する純収益

 鑑定評価における土地残余法では、当初建てた建物の経済的耐用年数が尽きたら、これを取り壊し、同じ建物を再建して、また賃貸し……ということを永遠に繰り返すことを前提にしています。

 この建物の純収益には、建物を建設したときに投資した額(初期投資額)に見合う年々の純収益を期待する利回り(割引率)と、経済的耐用年数の間に初期投資額を回収して積み立てる場合の利率を加味して求めます。実務的には、建物の躯体、仕上げ、設備部分の耐用年数に対応する年賦償還率を用いて求めます。

土地に帰属する純収益と未収入期間補正

 上記の土地・建物一体の純収益から建物に帰属する純収益を差し引くと、土地に帰属する純収益が求められます。

 しかし、この値は更地状態のものであるため、建物を建てて、テナントを募集して、入居者が家賃を払うまで、一定の期間があることから、その期間(未収入期間)分の修正を行います。

土地の純収益を還元利回りで還元

 還元利回りを求める方法としは、不動産鑑定評価基準では「類似の不動産の取引事例との比較から求める方法」「借入金と自己資金に係る還元利回りから求める方法」「土地と建物に係る還元利回りから求める方法」「割引率との関係から求める方法」が例示されています。

 最後に上記で求められた土地に帰属する純収益を還元利回りで還元(割る)した価格が、土地の収益価格となります。