(第39号)家屋評価「再建築価格方式」の複雑な評価方法について(1)

 
(投稿・令和2年-見直し・令和7年2月)

 前号(第38号)「固定資産税の家屋評価と「再建築価格方式」について」に続いて、家屋評価の複雑な「再建築価格方式」についてです。

 
 実は、この「再建築価格方式」の仕組みが大変複雑で、市町村の評価実務にも負担が大きく、家屋の課税誤りが発生する一つの原因であるとも考えられます。

 では、「再建築価格方式」とはどのようなものなのでしょうか。

再建築価格とは

 再建築価格とは、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点において新築するとした場合に必要となる建築費をいいます。
 不動産鑑定評価での、原価法による再調達原価と同一の概念です。

 この再建築価格(再調達原価)は、実際にその家屋をいくらで建築したのか、あるいはいくらで取得したのか建築費(取得費)とは異なるものです。

 この「再建築価格方式」は50年以上にわたって採用されている評価方法ですが、この方式は仕組みが複雑であるため、これまで総務省や市町村では(資産評価システム研究センターを通じて)、家屋評価の簡素合理化が検討されてきています。 しかし、これまでの経緯や様々な要因により、抜本的な簡素合理化には至っていないのが現実でもあります。

再建築評点数の算出方法

 家屋評価は「再建築価格方式」により、まず用途別区分(木造13種類、非木造9種類)及び部分別区分(木造11種類、非木造14種類)により、再建築費評点基準表により再建築費表点数を算出します。

 次に、この求められた再建築表点数に時の経過によって生ずる損耗の状況による減点補正等を行い、評価の対象となった家屋の表点数を算出します。

 この場合の評点一点当たりの価額は、1円に物価水準による補正率及び設計管理費等による補正率を乗じた価額となります。

<家屋評価の仕組み>

家屋評価の用途別区分

 家屋は、固定資産評価基準で木造家屋と非木造家屋とに区分され、その木造、非木造家屋それぞれに、再建築費評点基準表による用途別区分が規定されています。

 そこで、まず用途別区分ですが、木造家屋が13種類、非木造家屋が9種類に分類されています。

<木造家屋の用途別区分(13種類)>
①専用住宅用建物、②共同住宅及び寄宿舎用建物、③併用住宅用建物、④ホテル、団体旅館及び簡易旅館用建物、⑤普通旅館及び料亭用建物、⑥事務所及び銀行用建物、⑦店舗用建物、⑧劇場用建物、⑨病院用建物、⑩工場、倉庫用建物、⑪附属家用建物、⑫簡易附属家用建物、⑬土蔵用建物

<非木造家屋の用途別区分(9種類)>
①事務所、店舗、百貨店用建物、②住宅、アパート用建物、③病院、ホテル用建物、④劇場、娯楽場用等のホール型建物、⑤工場、倉庫、市場用建物、⑥住宅用コンクリートブロック造建物、⑦軽量鉄骨造建物(ア.住宅、アパート用建物、イ.工場、倉庫、市場用建物、ウ.事務所、店舗、百貨店等用建物)

 この用途別区分は、以前は木造、非木造ともに20~30種類ほどありましたが、平成30年度基準では上記のとおり13種類と9種類に統合されています。(実際の建築現場では逆に種類が増えているのが現実です。)

家屋評価の部分別区分

 次に上記の用途別区分ごとに部分別区分が規定されています。

 木造家屋では11種類、非木造家屋では14種類に区分され、再建築費表点数を計算します。そして、それらの部分別を合計して、その家屋の再建築表点数を算出することになりますが、家屋評価においては、この作業で大部分を占めることになります。

<木造家屋の部分別区分(11種類)>
①屋根、②基礎、③外壁、④柱・壁体、⑤内壁、⑥天井、⑦床、⑧建具、⑨建築設備、⑩仮設工事、⑪その他の工事

非木造家屋の部分別区分(14種類)>
①主体構造部、②基礎工事、③外周壁骨組、④間仕切骨組、⑤外部仕上げ、⑥内部仕上、⑦床仕上、⑧天井仕上、⑨屋根仕上、⑩建具、⑪特殊設備、⑫建築設備、⑬仮設工事、⑭その他工事

 この部分別区分は、建築された家屋の表面に表れている部分から隠れた内部をも推定して評価できるように、家屋の構造を外見的な面から区分されています。したがって、この部分別区分は、実際の建築の見積書の区分とは異なることになります。

 また、この部分別区分ごとに使用資材の種類、品質、施工の態様に応じて「標準評点数」が決められており、さらに実際に家屋を見て「補正項目」「補正係数」を査定し、床面積等の「計算単位」を乗じることにより部分別再建築費表点数を求めることになります。
(計算内容は詳細に亘るため割愛します。)

複雑さが課税誤りの原因に

 上記のとおり、固定資産評価の区分と実際の建築見積書の工事別区分とは異なります。
 そのため、市町村の担当者は実際の建築見積書や図面から、固定資産評価の用途別区分及び部分別区分に該当する項目を拾い出す作業を行わなければなりません。

 仮に、固定資産評価基準での木造家屋の専用住宅用建物再建築評点基準表だけでも8ページに亘り、非木造家屋の事務所、店舗、百貨店用建物となると24ページに亘る基準表になっています。

<木造の例(専用住宅用建物)>

<非木造の例(事務所・店舗・百貨店用建物)>
 上記のとおり、非木造家屋の用途別は9種類ですので、この再建築費評点基準表の9倍になる訳で膨大な量になります。

 市町村の税務担当者は、通常、事務職であることから建築の専門家ではありません。もちろん、研修等は行われますが、建築の専門的名称や構造等を十分に理解するのには時間が掛かります。

 ところが、市町村の事務職は3~5年程度で異動するのが一般的であり、折角慣れた時期には異動するという事態が発生します。

 そのような事態を防ぐため、市町村によっては、家屋評価の専門的な職員を配置することや、京都府内の京都地方税機構のように京都府と(京都市を除く)25市町村での広域連合のような共同化の試みも進められています。

 また、政令指定市以外の市町村では、300㎡あるいは500㎡以上の非木造家屋の評価は県(県税事務所)に依頼しています。

 ところで、毎年送られてくる固定資産税(都市計画税)納税通知書を見ると、土地については「前年度課税標準額、本則課税標準額、課税標準額」の金額が異なる等分かりにくくなっています。

 家屋は「単に課税標準額」に税率を乗ずると税額が分かる記載になっていますが、そもそも家屋評価自体が大変複雑で、固定資産税家屋の評価・課税の潜在的な誤りが多いと思われます。

※なお、この用途別区分は令和3年度基準までの基準でして、令和6年度基準からは、木造家屋が13種類から7種類へ、非木造家屋が9種類から6種類に整理統合されています。
 また、この部分別区分については、令和6年度基準からは、木造家屋が11種類から10種類へ、非木造家屋が14種類から11種類に整理統合されています。

 
2022/05/29/10:00
 

 

(第38号)固定資産税の家屋評価の「再建築価格方式」について

 
(投稿・令和2年5月-見直し・令和7年2月)

 今号は、固定資産税家屋の評価方法の基本的な部分を解説していきます。

 固定資産税における家屋の評価は、「再建築価格方式」を基準として評価する方式を採用しています。

「再建築価格方式」とは

 この「再建築価格方式」は、評価の対象となる家屋と同一のものを、評価する時点において、その場所に新築するとした場合に必要とされる建築費(再建築価格)を求め、この再建築価格に時の経過等によって生ずる損耗の状況による減価を考慮し、必要に応じて需給事情による減価を考慮して家屋の価格を算出します。

 「再建築価格方式」が決定される経過は、昭和34年4月から昭和36年3月の間に固定資産評価制度調査会において、家屋の評価方法として
ア.再建築価格を基準として評価する方法
イ.取得価格を基準として評価する方法
ウ.賃貸料の収益を基準として評価する方法
エ.売買実例価格を基準として評価する方法
の4つの方法について検討されました。その結果、ア.「再建築価格方式」が採用され今日に至っています。

 その理由として、再建築価格は、家屋の構成要素として基本的なものであり、その評価の方式化も比較的容易であるので、「再建築価格方式」が適当であるとして決定された訳です。

 この「再建築価格方式」については、昭和50年12月の京都地裁判決や平成15年7月の最高裁判決においても「最も妥当な方法」「適正な時価であると推認するのが妥当」との判断がなされています。

 たしかに「再建築価格方式」は妥当で方式化は容易であるかもしれませんが、固定資産税評価でこの方式による事務作業は大変なものとなっているのも事実であります。

<「再建築価格方式」の計算方法>

 ところで、固定資産税における評価の基礎とされる再建築価格は、建築費を構成する一切の費用に相当するもととされており、工事原価だけでなく、設計監理費や一般管理費等も含まれることになります。

<建築費と固定資産評価基準における再建築費の関係>

評点数の算定

 上図のとおり、固定資産税家屋の評価額は<評点数×評点1点当たりの価額>により求めますが、その評点数は<再建築費評点数 × 損耗の状況による減点補正率 × 需給事情による減点補正率>により求めます。

 まず「再建築費評点数」ですが、実は、固定資産税の新築家屋の評価において、この作業が大部分を占める大変な作業になります。

1.再建築評点数

 再建築評点数の付設については、「部分別による方法」と「比準による方法」がありますが、一般的(特に非木造家屋)では「部分別による方法」が採用されています。

 新築分の各部分別の再建築評点数の算式は<標準評点数×補正係数×計算単位の数値>ですが、ここでは(1)評点項目、(2)標準評点数、(3)標準量、(4)補正項目及び補正係数、(5)計算単位の順でみていきます。

(1) 評点項目
 評点項目は、家屋の構造に応じて、家屋評点基準表の各部分ごとに一般的に使用されている資材の種別及び品等、施工の態様等の区分によって標準評点数を付設する項目として設けられています。

(2)標準評点数
 標準評点数は、評点項目の区分に従い、家屋の各部分別の標準的な単位当たり施工量である標準量に対する工事原価を基礎として算出されたものです。
 この標準評点数は、基準年度の賦課期日の属する年の2年前の7月現在の東京都における物価水準により算定した工事原価に相当する費用に基づいて、その費用を1円1点としています。

(3)標準量
 標準量とは、家屋の評点基準表に示されている標準評点数の積算基礎となった各用途別、部分別の標準的な施工量です。

(4)補正項目及び補正係数
 評点項目及び標準評点数は、標準的な家屋の各部分の施工量等を基準として決定されていますが、評価する個々の家屋の施工態様は必ずしも標準的なものではないため、補正項目と補正係数が設けられています。

 補正係数は、施工数量と施工状況の良否に基づく、補正項目ごとに適用すべき「標準」「増点補正率」「減点補正率」が示されており、それを適用します。

(5)計算単位
 標準評点数は、各部分別の標準的な施工数量を基礎として積算されていますが、部分別再建築費評点数は、各部分別の標準評点数に床面積、個数、箇所数等の単位(m、㎡、㎥、t、個等)を乗じて算出します。

2.損耗の状況による減点補正率

 家屋の損耗の状況による減点補正率は、原則として経過年数に応ずる減点補正率(経年減点補正率)によります。

(1)経年減点補正率
 経年減点補正率は、通常の維持管理を行う場合において、年数の経過に応じた通常生ずる減価を基礎として定められ、家屋の用途別区分及び構造別区分に従い、家屋経年補正率基準表に示されています。

 ただし、この補正率を乗じた経年減点補正率が100分の20に満たない場合は100分の20とされます。つまり、経年減点補正率は20%より下がらず、その家屋が存在する限りは20%相当の評価額が続くことになります。これを「最終残価率」と言います。

(2)損耗減点補正率
 損耗減価率、各部分別の損耗の現況を通常の維持管理を行うものとした場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる損耗の状態に修復するものとした場合に要する費用を基礎として定められたものであり、部分別損耗減点補正率基準表により求めます。ただし、この基準表は特別な場合のみ適用されます。

3.需給事情による減点補正率

 需給事情による減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている家屋、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる家屋等について、その減少の価額の範囲において求めるものとされています。

評点一点当たりの価額

 評点一点当たりの価額は<1円 × 物価水準による補正率 × 設計管理費等による補正率>です。

1.物価水準による補正率

 物価水準による補正率は、家屋の資材費、労務費等の工事原価に相当する費用等の東京都特別区との地域的格差を考慮して定められます。

2.設計管理費等による補正率

 設計管理費等による補正率は、家屋の建築費に通常含まれる設計監理費、一般管理費、利潤等の工事原価に対する割合を考慮して定められています。

在来分家屋の再建築評点数


 在来(中古)家屋の計算方法は、上図の赤枠部分に該当します。

 在来分(中古)の家屋に係る再建築評点数は、原則として、基準年度の前年度における再建築評点数(全基準年度に適用した評価基準によって求めた再建築評点数)に再建築評点補正率を乗じて求めます。

 在来家屋の基準年度の評価額は、一つ前の基準年度の価格(正式には「再建築費評点数」)を基礎として算定されています。

 この場合、建築当初の価格は見直しがされないことから、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになります。
 
2022/5/29/09:30
 

 

(第37号)固定資産税の評価・課税における都道府県の役割について

 
(投稿・令和4年5月-見直し・令和7年1月)

 今回は、固定資産税の評価、課税において都道府県はどのような位置づけになっているのか、ということの説明になります。

 固定資産税の課税主体(課税権者)は、基本的にその固定資産の所在する市町村長となります。

<市町村が課することができる税目>
※地方税法第5条第2項-固定資産税
「市町村は、普通税として、次に掲げるものを課するものとする。(後略)
一 市町村民税
二 固定資産税
三 軽自動車税
四 市町村たばこ税
五 鉱産税
六 特別土地保有税」

※地方税法第5条第6項-都市計画税
「市町村は、(中略)目的税として、次に掲げるものを課することができる。
一 都市計画税
二 水利地益税
三 共同施設税
四 宅地開発税
五 国民健康保険税」

 このように、市町村長が固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税」)の課税権者となっています。

東京都23区は固定資税産の課税権者

 ところが、東京都23区だけは、上記の例外として、固定資産税の課税権者となっているのです。

<都における普通税の特例>
※地方税法第734条第1項
「都は、その特別区の存する区域において、普通税として、第四条第二項に掲げるものを課するほか、第一条第二項の規定にかかわらず、第五条第二項第二号及び第六号に掲げるものを課するものとする。この場合においては、都を市とみなして第三章第二節及び第八節の規定を準用する。」
<都における目的税の特例>
※地方税法第735条第1項
「都は、その特別区の存する区域において、目的税として、道府県が課することができる目的税を課することができるほか、第一条第二項の規定にかかわらず、第五条第五項及び第六項第一号に掲げる目的税を課することができる。(後略)」

 このように東京都23区域内の固定資産税の課税権者は東京都とされ、都税として課税されています。具体的な課税及び徴収事務は、23区内都税事務所が行っています。

固定資産税評価における道府県の役割

 以上のとおり、基本的には市町村が、東京23区は東京都が固定資産税の評価・課税の担当となっていますが、東京都以外の道府県はどのような役割があるのでしょうか。

 地方税法では、道府県知事は市町村長に対して「固定資産税評価について援助(助言)や勧告をすること」と規定されています。

 その中で固定資産評価事務として大きな役割を担っているのが「一定規模以上の新築非木造家屋の評価」であります。

 これは、大都市以外の市町村における非木造家屋の新築評価を道府県(道府県税事務所)が担っているということです。

 道府県によって詳細は異なりますが、おおよそ次の仕組みとなっています。

新築の大規模(300㎡~500㎡以上)非木造家屋の評価を道府県が担当します。
(旧政令指定都市のような大都市では、自ら家屋の評価を行っています。)

評価が出来上がると、道府県知事から市町村長に対して決定通知書と電子データが渡され、課税権者による市町村長により課税されます。

 以上の法的根拠は、地方税法第73条の21の2項(不動産の価格の決定等)になります。

<不動産の価格の決定等>
※地方税法第73条の21
「1項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について増築、改築、損かヽいヽ、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。
2項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。
3項 道府県知事は、前項の規定によつて不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

今後改善(検討)すべき内容

 道府県知事が大規模非木造家屋の新築評価を担っている仕組みは昔からですが、筆者のコンサルタントとしての経験から、率直な感想を述べさせていただきます。

市町村の固定資産税担当に対して、非木造家屋の新築評価の説明を求めたところ、十分に説明をしていただけない場面が何度かあります。

 これは「自ら評価していない」ことから、非木造家屋のような複雑な評価内容の説明は難しいのだろうと推測しています。

 「自ら評価していない」とは、道府県が評価を行っていることと、新築当時の担当者が既に異動してしまっている、との二重の意味があります。

それだけではなく、ある市では、県から送られてきた資料(「評価計算書」)は「保存期間の10年を過ぎているため廃棄してありません」と言われてしまうことです。

 在来家屋の評価が正しいのかどうか、「評価誤り」があるのかを確認するためには、あくまでも新築当時の資料が必要であるのに、その資料が存在していないのです。
 つまり、課税権者の担当者も、その家屋の新築評価について説明が出来ないのです。

 「賦課課税方式」である固定資産税で、そのようなことで良いのでしょうか。

 是非とも、固定資産税家屋の資料保存期間は10年ではなく「家屋課税中保存、又は永年保存」にしていただきたいものです。

実は、上記の①②の根底をなしている問題は、固定資産税家屋の評価方法が「再建築価格方式」という非常に複雑な仕組みとなっていることにも原因があります。

 この件については「評価の簡素化」が必要なのですが、これまでも検討されてきていますが、是非とも実現を急いでいただきたいものです。
 
2022/05/28/15:00
 

 

(第36号)固定資産税の宅地の評価方法(「その他の宅地評価法-標準宅地比準方式」)

 
(投稿・令和4年6月-見直し・令和7年2月)<100号達成時の閲覧数1位>

 この第36号は、本ブログが100号達成したときの統計で第1位を獲得しました。
 正直なところ驚いたのですが、この統計はワードプレスの「Count per Day – 統計」機能が自動的に集計しているもので、人為的ではありません。

 固定資産税宅地の評価方法としては、「市街地宅地評価法」(路線価方式)と「その他の宅地評価法」(標準宅地比準方式)の2通りがありますが、今回は「その他の宅地評価法-標準宅地比準方式」の解説になります。

 なお「市街地宅地評価法」(路線価方式)の説明は、第10号「固定資産税の宅地の評価方法(「市街地宅地評価法ー路線価方式」)」にあります。

 
<宅地の評価方法>

「その他の宅地評価法」の評価とは

 「その他の宅地評価法」は、主として市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地の評価に適用されます。

 具体的には、家屋の連たん度が低く「市街地宅地評価法」(路線価方式)を適用する必要が認められない地域について適用される評価方法です。

 まず状況類似地区ごとに標準宅地を選定し、この標準宅地の適正な時価から求めた評点数に比準して、状況類似地区内の各筆の宅地の評点数を付設します。

「その他の宅地評価法」の評価

 「その他の宅地評価法」では、「市街地宅地評価法」(路線価方式)と異なり道路ごとに路線価を付設せずに、状況類似地区の区分とその中で標準宅地を選定し、土地の宅地比準を行い求めます。

 宅地の価格事情がほぼ同等で広域に亘るため、路線価を付設する必要性が無い等から路線価方式を採用しない訳です。

<「その他の宅地評価法」の流れ>

状況類似地区の区分

 「その他の宅地評価法」では、まず状況類似地区に地区区分します。

 「市街地宅地評価法」では、用途地区がありましたので状況類似「地域」と表現しましたが、「その他の宅地評価法」では状況類似「地区」となります。

標準宅地の選定と評価

 次に、その状況類似地区の中で標準宅地を選定し、標準宅地の評価額を設定します。

 これは「市街地宅地評価法」と同じく、地価公示と地価調査がある場合はその価格の7割を、無い場合には標準宅地を鑑定評価をして、その7割を標準宅地の適正な時価とします。

 そして、標準宅地の評点数を計算し、原則として、全ての筆(画地)の評点数を計算します。

各筆の評点数の付設

 評点数の計算方法としては、標準宅地の比準計算により行われます。

 固定資産評価基準では、比準割合の項目として、「奥行による比準割合」、「形状等による比準割合」、「その他の比準割合」の3つの類型の相乗積により求めることとされています。

<「その他の宅地評価法」の比準割合>

 
2022/05/27/15:00
 

 

(第35号)固定資産税土地評価における不動産鑑定士の役割について

 
(投稿・平成25年-見直し・令和7年2月)

 今回のテーマは、固定資産税の土地評価に対して、不動産鑑定評価がどこまで関与しているか(できるか)ということについてです。

 筆者は不動産鑑定士とともに固定資産税見直コンサルタントをしていますが、固定資産税に関する苦情や相談をいただく機会が少なからずあります。
「自分の固定資産税が安くならないか」、「この土地の評価額は高いのでは」、「評価が間違っているのではないのか」等々です。

 このような場合、不動産鑑定士ではなく固定資産税見直コンサルタントとして対応することにしています。

固定資産税評価での鑑定士の役割

 不動産鑑定士は、毎年、地価公示価格と地価調査価格の鑑定評価に携わっているとともに、3年毎(基準年度)の固定資産税評価の基礎となる標準宅地の鑑定評価にも携わっています。

 固定資産税土地(宅地)の評価方法は、①市街地宅地評価法(路線価方式)と②その他の宅地評価法(標準宅地方式)の2通りありますが、どちらの手法においても一定の地域(状況類似地域・地区)内に標準宅地を選定します。

 そして、3年毎(基準年度)の評価替えにおいて、その標準宅地の評価が行われ、地価公示価格、地価調査価格とともに、その7割を主要な路線価として設定され、それに基づき各筆(画地)の評価が行われています。

 不動産鑑定士は、それぞれの市町村において、その標準宅地の鑑定評価と主要な路線価の設定の業務を担っています。

 また、固定資産税の評価は3年単位で評価替えが行われていますが、平成11年度から、評価替え年度以外(据置年度)でも地価が下がっている場合には下落修正が行われていますが、その業務にも関わっています。

個別の画地は固定資産評価基準による

 上記のとおり、固定資産税の土地(宅地)評価の均衡化及び適正化は、不動産鑑定士による地価公示、地価調査に加えて標準宅地の鑑定評価により行われています。

 その面では、固定資産税評価における土地評価の基礎は不動産鑑定士が担っていると言ってもよいと思います。

 しかし、固定資産税(土地)の評価は、標準宅地や路線価だけでなく、原則として、すべての土地、全国で約1億6千万筆が評価され課税されています。

 固定資産税では、この個別の土地(画地)評価は、地方税法による固定資産評価基準に基づき、各市町村の担当者により評価されているので、ここまでは不動産鑑定士は関与していないのが一般的です(市町村により異なりますが)。

 同じ資産税でも相続税評価の場合は、不動産鑑定書による時価証明(税務署に鑑定書の提出)も認められる場合もあります。

 ところが、固定資産税宅地の各筆(画地)の評価は、固定資産評価基準に従って評価されていますので、不動産鑑定評価(意見書)でそれを覆す(適正な時価を証明する)のは難しいと考えられています。

 この固定資産税の個別の土地評価において、不動産鑑定評価で時価証明することが難しい理由は、地方税法において「固定資産評価基準」の法的拘束力(拘束性)があるからです。
※相続税の評価は「財産評価基本通達」により行われますが、この通達は相続税法には規定されていません。

<固定資産税に係る総務大臣の任務>
「地方税法第388条第1項」
「総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続(以下「固定資産評価基準」という。)を定め、これを告示しなければならない。」
※地方税法第403条1項(固定資産の評価に関する事務に従事する市町村の職員の任務)
「市町村長は、(中略)第388条第1項の固定資産評価基準によって、固定資産の価格を決定しなければならない。」

「その他の雑種地」での鑑定士の役割

 「雑種地」及び「その他の雑種地」の評価は別途説明しますが、「その他の雑種地」の評価は大きく分けて「売買実例地比準方式」と「近傍地比準方式」があります。ただし、売買実例が少ないことから「近傍地比準方式」を採用しているのが一般的です。

 この「近傍地比準方式」は「土地の位置、利用状況等を考慮し、附近の土地の価額に比準してその価額を求める」(固定資産評価基準)とされていますが、土地の種類毎に比準割合を定めている市町村が大多数になります。

 比準割合も市町村によって異なっていますが、この比準割合を決定するに当たって「専門家の意見」として、不動産鑑定士が役割を果たしています。

2022/5/27/10:00