» 役に立つ固定資産税講座のブログ記事

 今回は、再生可能エネルギー発電施設用地(以下「再エネ施設用地」)、なかでも太陽光パネル設置用地の固定資産税評価について説明します。

 太陽光パネルの設置は、他の風力・水力・地熱等とともに再生可能エネルギーの固定価格買取制度が平成24年7月にスタートして以降、急速に拡大しています。
 平成25年9月に総務省により行われた「再生可能エネルギー発電施設の用に供する土地に係る固定資産税評価に関する調査」(以下「実態調査」)において、太陽光の稼働が192箇所、見込が975箇所となっています。

 筆者は、先頃ある事業者の依頼により、H市の太陽光パネル設置用地の固定資産税評価について相談を受けたのをきっかけに、改めて学ぶ機会を得ました。

 再エネ施設用地は歴史が新しいこともあって、固定資産税評価の方法も必ずしも統一されていない実態があります。

◆再エネ施設用地の地目は雑種地

 土地は様々な利用がなされていますが、地目により価格事情を異にしますので、地目ごとに評価方法が定められています。

 そこで、まず再エネ施設用地の地目は何かということになります。

 ここでは土地に直接太陽光パネルを設置して発電を行うものを仮定しますが、その場合、用地の大部分は建物を必要としない(建築物に該当しないよう設計されるケースが多い)ことから、その地目は雑種地とされるのが一般的です。
 前記の総務省の実態調査においても、8割超の市町村において、雑種地と地目認定されています。

◆固定資産評価基準の地目認定

「固定資産評価基準 第1章第1節1項 土地の評価の基本」
 土地の評価は、次に掲げる土地の地目の別に、それぞれ、以下に定める評価の方法によって行うものとする。この場合の地目の認定に当たっては、当該土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときであっても、土地全体としての状況を観察して認定するものとする。
(1)田 (2)畑 (3)宅地 (4)削除 (5)鉱泉地 (6)池沼 (7)山林 (8)牧場 (9)原野 (10)雑種地

 また、固定資産評価基準解説によると、「雑種地は、田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場及び原野以外の土地をいうものであって、これに包含される土地は、野球場、運動場、変電所敷地等のようにその現況が比較的宅地に類似しているものから、不毛地、砂地、土取場跡のように原野的なものにまで多岐にわたる。」とあります。

 つまり、雑種地は他の8種類でないもの全てを包含する地目で大変幅広いものであります。

◆雑種地の細分類と評価方法

 大変幅広い地目の雑種地ではありますが、固定資産評価基準では、次の①~③に分類され評価方法が定められています。
①「ゴルフ場等用地」
 ゴルフ場、遊園地、運動場、野球場、競馬場及びその他これに類似する施設の用に供する土地
<評価方法-固定資産評価基準第1章第10節2項>
 ゴルフ場等用地の評価は、当該ゴルフ場等を開設するに当たり要した当該ゴルフ場等用地の取得価額に当該ゴルフ場等用地の造成費を加算した価額を基準とし、当該ゴルフ場等の位置、利用状況等を考慮してその価額を求める方法によるものとする。
②「鉄軌道用地」
 鉄道又は軌道による運送の用に供する土地
<評価方法-固定資産評価基準第1章第10節3項>
 鉄軌道用地の評価は、当該鉄軌道用地に沿接する土地の価額の3分の1に相当する価額によってその価額を求めるによるものとする。
③「その他の雑種地」
 鉄塔敷地、水路敷地及び稲干場、塚地、柴草地、不毛地、砂地、荒ぶ地、土取場跡、へい獣捨て場等①②以外の土地

 再エネ施設用地は雑種地のうち③の「その他の雑種地」に当たります。

 それでは、この「その他の雑種地」の評価はどのようになるのでしょうか。

(42号に続く)

 今回は前号に続いての市町村長によって所要の補正がされた市町村ごとの「画地計算法」です。

 この所要の補正による「画地計算法」は市町村ごとに異なります。ここでご紹介するものも市町村によっては定められていない場合もありますし、内容も市町村によって異なります。これはあくまでも一つの例ですので、市町村ごとの「固定資産評価事務取扱要領」(市町村によって名称も異なります)を確認する必要がありますので、ご注意ください。

◆市町村ごとの所要の補正による「画地計算法」の例 

(1)高圧線下の土地評価
 大規模な土地の一部に高圧線下地となる部分が存在し、かつ高圧線下地が存することにより一つの土地としての価格が減価していると認められる場合。高圧線下地の地積に相当する価格とその他の部分の地積に相当する価格との加重平均によってその画地の価格を求めます。
「高圧線下地の土地評価のイメージ」
 「高圧線下土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(2)地下阻害のある土地評価
 例えば土地の下に地下鉄、地下道、公共下水道が存するため、一定の建築制限等があり価格が減価していると認められる場合に適用されます。地下阻害物までの深度は用途地区により異なりますが、この例は住宅地区で深さが20mまでの範囲とされています。
「地下阻害物のある土地評価のイメージ」
 「地下阻害土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(3)歩道橋が近くにある土地評価
 歩道橋が近くにあるため(この例では5m程度以内)、付近の土地と比べ特に状況が不良であると認められる土地評価です。
「歩道橋が近くにある土地評価のイメージ」
 「歩道橋土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(4)道路より低い位置にある土地評価
 土地が道路より1m以上低い位置にあるため、一般の土地に比べ日照や水はけなどの状況が不良であると認められる土地評価です。
「道路より低い位置にある土地評価のイメージ」
 「道路より低い土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(5)一部に私道を含む土地評価
 私道部分を当該土地の価値の1割として、私道部分以外の土地部と加重平均により求めます。なお、不特定多数人による公共的な私道は非課税となります。
「一部に私道を含む土地評価のイメージ」
 「一部に私道を含む土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(6)水路を介する土地評価
 水路幅員が概ね1mを超える水路(暗きょ敷は除く)を介して正面路線に接する土地は補正率0.90を乗じます。
「水路を介する土地評価のイメージ」
 「水路を介する土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

※ 他にも市町村ごとの所要の補正による「画地計算法」が定められているので確認してください。

 固定資産税の宅地の評価方法は、「市街地宅地評価法(路線価方式)」と「その他の宅地評価法」の2通りがあります。これについては、第7号「都市部の固定資産評価は市街地宅地評価法による」で説明していますので参照してください。

◆画地計算法の根拠規定

 路線価方式での各筆の評価方法は、固定資産評価基準で規定されています。
 「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、「画地計算法」を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じ、必要があるときは、「画地計算法」の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」(第1章土地・第3節宅地)
 ここから、「画地計算法」では、①固定資産評価基準で規定されている全国共通の「画地計算法」と②市町村長によって所要の補正がされた市町村ごとの「画地計算法」の2通りがあることが分かります。
 ①の全国共通の「画地計算法」としては、奥行価格補正、側方路線影響加算、二方路線影響加算、不整形地評点算出、間口狭小、奥行長大等が基本になりますが、今回はこれらを敢えて割愛して、土地評価が低くなるにも拘わらずとかく見落とされがちのものをご紹介します。
 今号でご紹介する①の「画地計算法」は、固定資産評価基準及び総務省通知で規定されており、基本的に全ての市町村で一律に適用されています。
 なお、市町村ごとに所要の補正で定められている②の「画地計算法」については、次号でご紹介します。

◆評価が低くなる土地評価(全国共通)

(1)無道路地の土地評価
 直接道路に接していない無道路地は、出入りが不便なことや家屋等の建築が困難であること等、その利用上強く制限を受けていることから、一般的にその利用価値が低くなり、その分評価が低くなります。
 評価は、無道路地補正率0.6と通路開設補正率を乗じて求めます。
「無道路地の土地評価のイメージ」
 「無道路地土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(2)がけ地等を有する土地評価
 土地の一部か又は全部ががけ地等で通常の用途に供することができない土地については、土地の総面積に対するがけ地部分の面積割合に応じた補正率により求めます。
 なお、がけ地の高さが5m以上の場合は0.8を乗じ,10m以上の場合は0.6を乗じた補正率を適用することもできます。
「がけ地を有する土地評価のイメージ」
 「がけ地土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(3)日照阻害の影響を受ける土地評価
 住宅地区で著しく日照の阻害を受ける土地は、日照阻害補正率により評価します。
「日照阻害における補正のイメージ」
 「日照阻害を受ける土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

(4)高速道路・幹線道路による騒音、振動のある土地評価
 高速道路及び鉄道又は幹線道路に近接する地域にあって、騒音・振動により価格減価が認められる土地に補正率が適用されます。
「高速道路(鉄道)・幹線道路の騒音・振動補正イメージ」
 「騒音・振動のある土地評価(イメージ)」 (←詳細はここをクリック)

 先日、ブログを読まれた方から、次のような電話をいただきました。

「事業を廃止し、住まいの土地が小規模住宅用地になったにもかかわらず、減額特例が適用されなかったので、市役所と交渉し固定資産税を返還してもらった。」
「しかし、返還されたのは5年間分だけで、申告しなかったので3割相殺はやむを得ないとしても、5年を越えて返してもらえるのではないか。」

 そこで今回は、住宅用地の減額特例の要件に該当するにもかかわらず、減額が見落とされ納税した「過払税額」は何年間遡って返還されるか(されるべきか)について、改めて考えてみたいと思います。

 (「住宅用地の減額特例」の解説については、過去のブログをご覧ください。)

◆住宅用地は申告が義務づけられている

 住宅用地については、地方税法により、市町村の条例により申告を義務づけることが認められています。

地方税法384条(固定資産の申告)

「市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定めるところによつて、当該年度に係る賦課期日現在における当該住宅用地について、その所在及び面積、その上に存する家屋の床面積及び用途、その上に存する住居の数その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項を申告させることができる。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、その申告すべき事項に異動がない場合は、この限りでない。」

 そこで、参考までに東京都の税条例を紹介します。(全国の他の市町村の条例も、東京都のものとほぼ同様です。)

東京都税条例136条の2(住宅用地の申告義務)

「法第349条の3の2第1項に規定する住宅用地(以下「住宅用地」という。)の所有者は、当該年度の賦課期日現在における当該住宅用地について、当該年度の初日の属する年の1月31日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を知事に提出しなければならない。ただし、当該年度の前年度に係る賦課期日における当該住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、既に申告した事項に異動がない場合は、この限りでない。
1.住宅用地の所有者の住所及び氏名又は名称
2.住宅用地の所在及び地積
3.住宅用地の上に存する家屋の所有者、所在、家屋番号、種類、構造、床面積、居住部分の床面積及び居住の用に供した年月日、住宅用地の上に存する住居の数(法第349条の3の2第2項に規定する住居の数をいう。)
4.前各号に掲げるもののほか、知事において必要があると認める事項」

 しかも、条例には、申告が無い場合は罰則(過料)が科される規定まであります。

東京都税条例137条(固定資産に係る不申告に関する過料)

「固定資産の所有者(法第343条第8項及び第118条第5項の場合にあつては、これらの規定によつて所有者とみなされる者とする。)が法第383条又は第136条の2の規定によつて申告すべき事項について正当な事由がなくて申告をしなかつた場合においては、その者に対し、10万円以下の過料を科する。」

◆固定資産税は申告に基づかない賦課課税方式

 ところで、固定資産税は申告に基づく申告課税方式ではなく、行政自らが調査し課税する賦課課税方式であることから、この申告義務との関係はどうなのかとの疑問が残ります。

 この件について判断された裁判例は、平成4年の浦和地裁判決及び平成17年の神戸地裁・平成18年の大阪高裁判決があります。

 浦和地裁判決では、固定資産税の条例による申告義務と賦課課税方式について、次のように判断されています。

 「固定資産税の賦課に関し必要な事項を申告させることができるとしたのは、納税義務者に対して右申告義務を課することにより課税当局において減税特例の要件に該当する事実の把握を容易にしようとしただけのものであって、右申告がないからといって、減税特例を適用しないとすることが許されるものではないことは課税の当局者にとっては見易い道理である。」

◆「過払税額」は何年間返還されるか

 まず、地方税法では、「還付金の消滅時効は5年」と定められています。

地方税法18条の3(還付金の消滅時効)

「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権(以下第20条の9において「還付金に係る債権」という。)は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 しかし、上記の浦和地裁判決及び神戸地裁・大阪高裁判決はいずれも「市職員に過失があったとして、国家賠償法を適用して5年分を超える返還」を認めています。

 大阪高裁の判決では次のように判断されています。

「住宅用地の特例の適用の可否は、住民票、土地課税台帳等の資料及び実地調査等から認定することが可能であり、本件土地について、これらの手段によっても住宅用地の特例の適用の可否の判断に困難を伴うなどの特段の事情が存した旨の主張立証はないことからすると、本件土地について住宅用地の特例を適用せずに本件課税処分をし、それに基づき過大な固定資産税を賦課・徴収したことについては、市職員に少なくとも過失があったものと認められる。」

「住宅用地の特例の適用の有無に関する事項は、固定資産課税台帳の登録事項であること、同登録事項に関する争訟方法は、地方税法上、固定資産評価審査委員会に対する審査の申し出及び同委員会の審査決定の取消しの訴えに限定されていること、被控訴人が本件課税処分につき、これらの手続をしていないこと……これらはあくまで税法上の手続であって、法令上、これらの手続を経ない限り、国家賠償訴訟を提起できないという根拠は見出し難いものというべきである。」

 つまり、課税当局の処分に違法(過失)があった場合は、地方税法の原則である審査申出や取消訴訟を経ることなく、国家賠償法の請求ができるという訳です。

国家賠償法1条1項

「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 また、国家賠償法4条では民法の規定を準用していることから、不法行為の時効期間は最高20年となります。

民法724条 (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)

「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」

 つまり、課税当局の職員に過失があった場合は、「過払税額」は最高20年間遡って返還されることになります。

 では、地方税法で条例による申告の義務を認めている立法趣旨との関係はどうなのか、との疑問が生じてきます。

 大阪高裁では、この点次の判断がされています。

「住宅用地の所有者に固定資産税の賦課徴収に必要な事項の申告をさせることができるとしたのは、賦課課税方式を採用しつつ、調査等の過誤を防止するため、住宅用地の特例によって固定資産税の逓減措置を受けられる住宅用地の所有者に必要事項の申告義務を負わせることとしたものであって、その限りでは、法は、申告により利益を得られる者が申告しない以上、利益を得られなくてもある程度はやむを得ないという立場を採っているとも言い得る」

 大阪高裁では、このような趣旨から、申告がなかった納税者に対して、バランス(?)として3割の過失相殺を認めました。

◆市町村課税当局とどう交渉するか

 課税誤りによる「過払税額」は何年間返還されるかですが、地方税法18条の3の規定から5年間までは返還されることは、まず間違いありません。

 しかし、課税当局自らが5年を越えて「国家賠償法による損害賠償」を行うかどうかが問題になります。

 国家賠償法が適用される場合は、「職員の過失があった場合」とされていますが、この「過失」とは、「通常尽くすべき注意義務を尽くしていない場合」とされています。

 上記の大阪高裁判決では、この点を具体的に「住民票、土地課税台帳等の資料及び実地調査等から認定することにより、住宅用地の特例の可否を判断する」としています。

 例えば、冒頭の電話の方の場合、「事業を廃止して住宅用地に変わった」ことが、申告無しで課税当局が実地調査等で把握できるのかどうかという問題になる訳です。

 ところで、全国の7割ほどの市町村では「固定資産税過徴収金返還要綱」(市町村によって名称が異なります)を定めています。(正式な統計調査は無く、最近では廃止する市町村も増えているようです。)

 この要綱では、過失による課税誤りに対しては、地方税法の原則5年を超えて10年間分返還できるとされています。

 したがって、当該の市町村にこの要綱があるかどうかをまず確認してみることも、有効な方法でもあります。

 また最近のサイトに掲載されている市町村の記者発表資料を見ますと、行政当局が自らの誤り(過失)を認めて、(必ずしも住宅用地の課税誤りではありませんが)5年を超えて返還するケースもかなり見受けるようになっているのも事実であります。
 <浦和地方裁判所判決文(平成4年2月24日)>
 「浦和地裁判決文」 (←詳細はここをクリック)
 <神戸地方裁判所判決文(平成17年11月16日)>
 「神戸地裁判決文」 (←詳細はここをクリック)
 <大阪高等裁判所判決文(平成18年3月24日)>
 「大阪高裁判決文」 (←詳細はここをクリック)

 住宅用地の減額特例については、これまで第8号、9号、30号、33号、35号と解説してきました。

・第8号「固定資産税の住宅用地の特例は申告が必要か」
・第9号「固定資産税の小規模住宅用地の仕組み(負担調整措置)」
・第30号「空き家対策と固定資産税の減額特例」
・第33号「空き家から更地になると固定資産税は6倍ではなく3~4倍になる」
・第35号「住宅用地減額特例の課税誤りとチェックの方法」

◆住宅用地の減額特例とは

 ここで住宅用地の減額特例についてのお復習いをしておきます。

 住宅用地とは「専ら人の居住の用に供する家屋(専用住宅)又は居住部分の床面積の割合が全床面積の4分の1以上の家屋(併用住宅)の敷地の用に供されている土地」を言います。

 これまでの号では、主に前者の専用住宅の敷地の用に供されている土地についての解説でありました。
 住宅用地の減額特例とは、土地の面積が200㎡以下の部分が小規模住宅用地として、固定資産税の本則課税標準額が6分の1に、200㎡を超える部分が3分の1に減額されます。

<住宅用地の減額特例>
 「住宅用地の減額特例(表)」 (←詳細はここをクリック)

<住宅用地の減額特例(イメージ図)>
 「イメージ図」 (←詳細はここをクリック)

◆併用住宅の場合

 住宅用地の減額特例で見落とされ易いのは、併用住宅の場合ではないかと思います。
 併用住宅とは、居住用部分と居住用でない部分が併用されている家屋ですが、居住用部分以外については、店舗、事務所、工場等その種類は問題とはなりません。
 ただし、併用住宅の場合は、居住部分の面積が一定の割合以上なければ特例は認められません。
 その家屋が「5階以上の耐火建築物」であるか「それ以外の併用住宅」かによって異なります。(次の表をご覧ください。)

 <併用住宅は居住部分の割合による>
 「併用住宅の居住割合」 (←詳細はここをクリック)

◆見落とされ易い事例

<アパートの場合>
 これまでも解説してきましたが、住宅用地の減額特例で注意すべきは、アパートの事例です。まず、アパートの場合は戸単位で小規模住宅用地(200㎡以下)がカウントされます。つまり8部屋あれば、土地が1600㎡までは小規模住宅用地として6分の1に減額されることになります。
 また、アパート居住者が使用する連続した駐車場も住宅用地として減額特例の対象になります。

<廃業店舗での居住>
 住宅用地かどうかは外見からは分からない場合があります。そのため、市町村では条例により、住宅用地の申告を義務づけています。
 ここで、見落とされがちの例として、商店街でときに見られる、店舗を閉じた後もそこで居住している場合です。店舗のみであれば、その土地は非住宅用地ですので減額特例はありませんが、居住用の家屋に変更されていれば特例の対象になります。

<店舗の2階での居住>
 上記の表にあるように、例えば2階建ての家屋で2階部分に居住している場合、その部分の床面積が2分の1以上であれば、土地の全部が住宅用地の減額特例を受けることができます。仮に3階建て家屋で2~3階部分に居住していれば、恐らく問題なく2分の1以上ではないでしょうか。

◆特定空家は適用除外

 平成27年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により「特定空家」として勧告を受けると住宅用地の減額特例の適用除外となりました。
 ここで「特定空家」とは、次のように周辺への影響が大きい状態にある空家を指します。
・そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 これに併せて、昨年、地方税法349条の3の2が改正され、「市町村長が特定空家等の所有者等に対して周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとることを勧告した場合は、当該特定空家等に係る敷地について固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外する。」となりました。

 今回は、固定資産税の価格に不服がある場合には、どのような手続きを行う必要があるのかについてお知らせします。

 なお、ここで紹介する手続きは、あくまでも固定資産税の価格(評価額)に対する不服に関するもので、これを「審査の申出」と呼びます。これとは別に、価格以外の固定資産税の課税に関する不服の手続きがありますが、こちらは「審査請求」として(似ていますが)若干異なる手続きとなります。

◆地方税法の原則的手続き

 固定資産税の納税者で、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して60日以内に、文書をもって固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができます。(地方税法432条1項)

 ここでは、次の点に注意する必要があります。

①審査の申出をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。
 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。また、審査の申出は、代理人によってもすることができますが、この代理人は弁護士や税理士等特定の職業に限定されていないことになっています。

②審査の申出をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られます。
 ここでの価格は、あくまでも3年サイクルで行われる評価替年度(基準年度)の価格であって、第2年度、第3年度において基準年度の価格が据え置かれた価格については対象とはなりません。

③審査の申出期間は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して60日以内です。仮に、審査申出書を郵便で提出する場合は、発信主義(消印日有効)とされています。

④審査の申出先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。
 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。

◆評価替年度(基準年度)以外の価格

 19号等でお知らせしましたが、固定資産税(土地及び家屋)の評価は3年単位で行われています。

 今年度(平成27年度)は3年に1度の評価替年度(基準年度)です。次の平成28年度(第2年度)及び平成29年度(第3年度)は、原則として基準年度の課税標準額が据え置かれることになります。
 据置期間が3年とされているのは、物価の変動、資産の状況の変化等の事情を考慮されたものであり、評価事務コスト等を考慮すれば、一定期間価格を据え置くのは合理的であるとされています。

 では、第2年度、第3年度でも、据え置かれている基準年度の価格に対して審査の申出ができるのでしょうか。

 この点、第2年度、第3年度では基準年度の審査申出は出来ず、次の場合に限り審査申出をすることができます。

①家屋の新築や土地の分筆等により、新たに価格が固定資産課税台帳に登録された場合

②家屋の増改築や土地の地目変換等によって価格が変わった場合

③地価の下落により修正された土地の価格の修正に関する部分

◆中古家屋の当初の家屋評価に対する審査申出

 家屋の基準年度の評価額は、一つ前の基準年度の価格(正式には「再建築費評点数」)を基礎として算定されています。この場合、建築当初の価格は見直しがされないことから、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになります。

 そこで問題は、中古家屋の納税者は、現在の基準年度において、建築当初の(過去の)価格に対して審査申出を行うことができるかということになります。

 平成25年4月16日の東京高等裁判所において、これを認める司法判断が示されました。

 「固定資産税の課税標準である価格は固定資産評価基準によって決定されなくてはならないが、その価格は、あくまでも適正な時価でなくてはならないのであり、固定資産評価基準に従って決定された価格は適正な時価と推認されるということにすぎない。固定資産評価基準の適用に誤りがあると上記推認はされず、このことは、その適用の誤りが、建築当初の再建築当初の再建築費評点数の算出の誤りであっても、当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り、同様である。」

 <東京高等裁判所判決文>
 「東京高裁判決文」 (←詳細はここをクリック)

 この判決に対して、最高裁への上告がなされ、平成26年7月14日に棄却されたことにより、この判断が確定しました。

◆「重大な錯誤」による価格の修正

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録され公示されることにより行われます。しかし、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。(地方税法417条1項)

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。
 そこで、納税者側から見た場合、この制度を価格是正の手続きとして考えることもできるということです。

 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。
 もっとも、市町村の具体的な対応は様々あるように思われます。特に家屋の場合では、主体構造や面積の誤りであれば速やかに判明しますが、建築細部の評価を検証するのは大変な作業になります。

 ともすると担当課の窓口で「評価基準どおりやってます」とか「評価の誤りは納税者に主張立証してもらいます」(これ自体間違っていませんが)などと言われてしまい、納税者はお手上げ状態に陥ってしまう訳です。

◆国家賠償法による訴訟対応

 32号で掲載しましたように、平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

 「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」場合は「手抜き」があったとされ、審査の申出を経ないで国家賠償請求をすることができます。

 上記の「重大な錯誤」も「手抜き」とほぼ同じと考えて差し支えないと思われますので、訴訟も辞さないとお考えの方は、国家賠償請求の方法も選択肢の一つになります。

 TVニュースで「固定資産税の住宅用地特例の課税誤り」が昨年6月に続き報道されていました。(平成27年8月10日)

 住宅用地特例の仕組みについては、本ブログ8号及び9号で紹介してきましたが、今回は課税誤りの原因と自らチェックする方法などについてお知らせします。

 WEB上で「固定資産税・住宅用地・課税誤り」のキーワードを入力し検索すると、市町村からの「住宅用地の特例措置の適用誤りについて」との“お知らせ”(お詫び文書)が表れます。この1年間だけでも10市町村になります。

 改めてですが、住宅用地の特例とは、居住用の家屋の敷地とされている土地の200㎡以下の部分(小規模住宅用地)の固定資産税評価額が6分の1に,200㎡を超える部分(一般住宅用地)が3分の1に減額される(上限は家屋面積の10倍)ことです。

 つまり、この特例措置の課税誤りとは、本来は住宅用地であるにもかかわらず、減額がされずに課税され続けてきたということです。

 一体、なぜ住宅用地の特例措置の適用誤りが、このように続出するのでしょうか。

◆住宅用地特例の課税誤りの原因

 今ここに分かり易い例(Aパターン)として、次のような場面を想定します。

 土地(150㎡と仮定)所有者が、その土地(更地)上に居住用の家屋を新築するとします。そして家屋が完成しますと、登記所へ不動産登記を申請します。登記所はその家屋の表示保存登記を行うとともに、所在地の市町村へ新築登記がされた旨の連絡をします。すると、市町村では実地調査を経て家屋の評価を行い、翌年度から家屋の固定資産税を新規に課税することになります。

 そのとき本来であれば、土地の評価額を6分の1にしなければなりません。家屋の担当者から土地の担当者に連絡し、土地担当者が住宅用地として手続き(電算入力等)をすることになります。

 ところが、土地への住宅用地の適用(電算入力)を怠り、その後も点検されないまま課税誤りが続いてきたということです。

 この「誤りの原因」として、平成27年1月27日付“つくばみらい市”の「固定資産税・都市計画税の課税誤りについて」では、
(1)家屋担当と土地担当の連携不足(情報伝達漏れ)
(2)電算入力の漏れ、電算入力の誤り
(3)電算入力後の確認体制不備

の3点があげられています。
まさに、この想定例のとおりです。

<つくばみらい市のお知らせ>
 「つくばみらい市のお知らせ」 (←詳細はここをクリック)

 ◆課税明細書でチェックしてみましょう

 実は、毎年所有者宛に納税通知書と一緒に送られてくる課税明細書により、所有者が住宅用地の特例が行われているかどうかを確認することができます。

 市町村の担当者は、コンピューターで出力された課税明細書を正しいものと信じて何のチェックもせずに(実務的にチェックは不可能ですが)送付してきますが、送られてきた所有者はチェックすることが可能なのです。

 ここでは、東京都23区のHP掲載の課税明細書から、その方法を紹介します。

<課税明細書の例(東京都HPより)>
 「課税明細書(東京都の例)」 (←詳細はここをクリック)

 まず課税明細書の家屋の「種類・用途」欄が「居宅」となっていることを確認します。次に土地の明細書を見て、土地面積が150㎡で小規模住宅用地になるため「小規模地積」欄に「150㎡」となっており、「備考欄」にも「小規模住宅用地」と記載されています。これで特例措置が正しく行われていることが確認できます。

 また、これを計算で確認する方法があります。「価格」が「45,000,000」となっていますが、この価格は地価公示(実勢)水準の7割の額となります。そして、この土地が小規模住宅用地であれば「固定本則課税標準額」が「価格」の6分の1となっている筈です。ここでは「7,500,000」ですので6分の1の額で間違いありません。仮に計算してそうなっていなければ、どこかに誤りがある可能性があります。

 なお、課税明細書には「固定前年度課標等」や「固定課税標準額」の紛らわしい用語が出てきますので、間違わないように注意する必要があります。

 通常、1枚の課税明細書に土地と家屋が収まっていますので、所有者自らが確認することはそう難しくありません。

 であれば、元データを有する市町村において、チェックできる電算システムを構築することが望まれます。少なくとも上記「誤りの原因(3)」を解消することが出来るはずです。

 と言いますよりも、そのような電算システムはあるのが当然ではないでしょうか(WEBで公表されている市町村の実状は把握しておりませんが)。

 筆者の出身市では、家屋担当と土地担当との連携システムは当然のこと、家屋の課税内容と土地の課税内容が照合しない場合には電算システムから「アンマッチリスト」が出力され、所有者単位の名寄せでも確認できるように構築されています。

◆住宅用地の別のパターン

 ところで、先の住宅用地の減額特例Aパターンでの「誤りの原因」は、明らかに市町村の手続きミスということになりますが、実は、住宅用地の減額特例はこのようなパターンに限られません。

 ここでは、一見して住宅用地かどうか分かりにくい、次のB及びCの2つのパターンをご紹介します。

<Bパターン(アパートの駐車場)>

 このパターンは、住宅用地を見逃し易い典型例として説明されますが、アパートの敷地の隣に駐車場があり、その駐車場はアパート住民が利用している駐車場である場合です。

 アパート敷地と駐車場とは地番が異なっている(筆が分かれている)場合もありますが、その場合でも駐車場敷地はアパートと一体の画地と認定され、住宅用地の軽減特例(6分の1)の対象になります(敷地が離れている場合は該当しません)。特にアパートの場合は1戸(部屋)につき200㎡が小規模住宅用地とされますので、かなり敷地が広くても敷地全体が6分の1に適用される可能性があります。例えば、そのアパートが8戸であれば、1600㎡までが小規模住宅用地となります。

<Cパターン(店舗廃業した居住用家屋)>

 近年では、シャッター通りと称されるように、店舗を閉店(廃業)した商店街も多く見受けられますが、店主は店舗を閉じた後もそこで居住し続ける場合が多く見られます。

 このような場合、店舗経営時の家屋の用途は「店舗」であり、土地は商業地(非住宅用地)で6分の1の減額特例はありません。しかし、店舗廃業後は居住用に変更したことから、住宅用地となり減額特例の対象となります。

 実は、このBパターン及びCパターンでは、外観からは一見住宅用地かどうか判断つきにくい場合があります。

 そのため、市町村では住宅用地の認定のために「住宅用地異動申告書」の提出を義務づけています。

◆過徴収金は何年分返還されるか

 今回WEB上で確認できる市町村のお知らせ(お詫び文書)は、基本的にAパターンによる課税誤りのようで、それは明らかに行政のミスであるため、誤って徴収され過ぎた固定資産税は最長20年間分返還するとされています。

 では、仮にB及びCパターンはどうでしょうか。行政のミスなのでしょうか、また徴収され過ぎた税金は何年間分返還されることになるのでしょうか。

 この件については、市町村の見解も分かれるかもしれませんので、ここではあくまでも筆者の個人的見解として述べるに留めます。

 まず、固定資産税(土地と家屋)については、行政が一方的に評価し課税する方法で、これを賦課課税方式と言いますが、例え申告がされなくても、住宅用地と認定すべきところをそうしていなかったときは、「行政の課税誤り(ミス)」ということになります。

 ただし、Aパターンのミスは「過失(いわゆる手抜き)があった」と認定されるのに対して、B及びCパターンはミスではあるものの「手抜きがあったとするのは無理」ではないかと思います。

 そうしますと、徴収され過ぎた固定資産税は、Aパターンでは、市町村の「過徴収金返還要綱」に基づくか、あるいは国家賠償法第1条の趣旨を尊重して、最長20年間の返還となります。

 一方、B及びCパターンでは、地方税法第18条の3により、5年間分の返還とされるのではないかと思います。(「過徴収金の返還」については31号及び32号を参照してください。)

 B及びCパターンは、まだまだ見逃されている場合が多いのではないかと思います。これらに該当される方は早急に市町村に連絡されることをお薦めいたします。

 平成23年12月9日、最高裁判所第二小法廷において、島根県邑南町(おおなんちょう)に在るゴルフ場クラブハウス(以下「クラブハウス」という。)の固定資産税家屋の「需給事情による減点補正」が争われた事件について、上告棄却の判決がありました。

 これに先立ち平成22年4月26日、松江地方裁判所においてクラブハウスの「需給事情による減点補正」を求めていた原告(M株式会社)勝訴、被告(邑南町)敗訴の判決が、平成23年1月26日、広島高等裁判所松江支部において、邑南町による控訴が棄却され、これに対して邑南町が最高裁判所に上告した結果、上告棄却となった訳です。

 この判決で、本件クラブハウスの「需給事情による減点補正」の補正率が58%とされました。

 つまり、この補正をする前のクラブハウスの固定資産評価額(邑南町の登録価格)から「需給事情による減点補正」を考慮して58%を超える部分は適正な時価を超えて違法で取り消すべき、とされた訳です。

 この一連の判決は、従来の固定資産税家屋の評価にとってはやや予想外(?)の結論でありました。

 そこで今号は、この判決に関連して固定資産税家屋における「需給事情による減点補正」について解説します。

◆家屋の評価は再建築価格方式による

 固定資産税の家屋を評価する方法は「再建築価格方式」とされています。

 再建築価格とは、評価する家屋と同様の家屋を新築した場合に必要とされる建築費のことを言います。固定資産税の家屋評価では実際に要した費用(この家屋をいくらで建築したか等)は採用されません。

<固定資産評価基準第2章第1節二(評点数の付設)>
 「各個の家屋の評点数は、当該家屋の再建築費評点数を基礎とし、これに家屋の損耗状況による減点を行って付設するものとする。この場合において、家屋の状況に応じ必要があるものについては、さらに家屋の需給事情による減点を行うものとする。」

◆固定資産評価における「家屋の需給事情による減点」

 上記の固定資産評価基準にもあるとおり、家屋の評価額は再建築評点数から家屋の損耗の状況による減点を行って求めます。損耗の状況による減点は、通常はその家屋が新築後何年経過しているかで減価する経年減点補正として行われます。

<固定資産税・新築家屋の計算方法>
 「新築家屋の計算方法」 (←詳細はここをクリック)

 本件で争われた「需給事情による減点補正」については、固定資産評価基準では次のように定められています。

<固定資産評価基準第2章第3節六(需給事情による減点補正率の算出方法)>
 「需給事情による減点補正率は、建築様式が著しく旧式となっている非木造家屋、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる非木造家屋等について、その減少する価額の範囲において求めるものとする。」

◆「需給事情による減点補正」の考え方

 ところで、この「需給事情による減点補正」は、例えば豪雪地帯における家屋など全国的にもかなり限定的に適用されてきたのが実状であります。おそらく、関東圏内の市町村においては「需給事情による減点補正」を適用した実績はほとんど無いのではないかと推測いたします。

 (財)資産評価システム研究センターにより実施(平成18年9月)された全市町村への調査において、約9割の市町村から「需給事情による減点補正率は適用していない」との回答があり、8割を超える市町村が「廃止しても差し支えない」と回答しています。また、「名称を変更すべきではないか」等の議論もされてきました。

 そして、これまでの「需給事情による減点補正」の取扱いも変遷してきました。

 「需給事情による減点補正」として、従来から「建築様式等による補正」「その他特殊事情による減点」「床面積の広さによる補正」「所在地域の状況による補正」とされ、総務省(自治省)の通達により減額率も示された時期があったものの、通達は廃止されてきた経緯があります(取扱は変わらず)。

 なお、今回の一連の判決を受けて、総務省では平成26年3月に全国都道府県・市町村へ新たな通知を発し、定性的な考え方(留意事項)を示しています。

◆不動産鑑定評価基準との関係

 固定資産評価基準の再建築価格方式は、不動産鑑定評価基準の原価法(積算価格)に由来する手法で類似のものと考えられています。

 不動産鑑定評価基準において、建物を原価法で評価する場合、建物の再調達原価(価格時点において同一の建物を新築することを想定した適正な原価)から、減価の要因に基づき発生した減価額を控除することによって評価します。

 不動産鑑定評価基準による減価の要因は、物理的要因(使用することによる摩滅及び破損、時の経過又は自然的作用により生ずる老朽化等)、機能的要因(建物と敷地との不適応、設計の不良、形式の旧式化、設備の不足等)、経済的要因(近隣地域の衰退、不動産とその付近の環境との不適合、付近の不動産との比較における市場性の減退等)とされています。これらの要因は独立しているものではなく、相互に関連して影響を与えていることに留意する必要があります。

 そして、これらの減価額を求める方法には、耐用年数に基づく法と観察減価法の二つの方法がありますが、後者の観察減価法は建物の有形的状態の観察を基礎とすべきとされています。

 実は、固定資産評価基準の再建築価格方式と不動産鑑定評価基準の原価法は類似しているものの、必ずしもピッタリと重なるものではありません。

 固定資産税では土地と家屋は独立して別々に評価されるとともに、固定資産評価基準では、家屋の再建築価格を求める際の部分別の再建築評点数等が詳細に規定されています。また、固定資産税の耐用年数も国税のそれと比較するとやや長期に設定され、耐用年数が徒過しても家屋が存する限り残価率2割で評価され課税されることになります。

 これら固定資産税の特徴は、全国同一の基準をもって、大量かつ一括に評価・課税するとから要請されものでもありあす>

◆本件判決における「需給事情による減点補正」の適用

 松江地方裁判所の判決は、当裁判所が依頼したN鑑定士の鑑定書(以下「地審鑑定」という。)に合理性があるとして、全面的に採用した結果であることが分かります。

 地審鑑定では、土地及び建物の試算価格として積算価格、比準価格、収益価格(直接還元法、DCF法)が求められており、その調整において次のウエイト付けを持って加重平均により鑑定評価額が決定されています。

・積算価格…1,773,575,048円(ウエイト50%)
・比準価格…494,878,063円(ウエイト20%)
・直接還元法…177,681,000円(ウエイト15%)
・DCF法…118,175,000円(ウエイト15%)

 この試算価格を各ウエイトで加重平均した結果、鑑定評価額が1,030,141,537円となり、この価額は積算価格1,773,575,048円を100とした場合の58%にあたり、これを調整率としています。

 また地審鑑定では、この調整率は積算価格を基準としたうえでの市場性減価の減価率にあたり、固定資産評価基準での「需給事情による減点補正率」に相当すると結論づけています。

◆松江地裁判決における「需給事情による減点補正」

 松江地方裁判所は、この地審鑑定の調整率58%を合理性があり妥当なものとして採用し、本件クラブハウスの固定資産評価基準の「需給事情による減点補正」を58%とし、この補正率を施した価額が適正な時価にあたり、邑南町の「需給事情による減点補正」を考慮していない登録価格から、これを上回る部分は違法である旨の判決を下しています。

<松江地方裁判所判決文>
 「松江地裁判決文」 (←詳細はここをクリック)
<広島高等裁判所判決文>
 「広島高裁判決文」 (←詳細はここをクリック)

 最高裁判所においてもこの判決を容認し上告棄却したことから、本件クラブハウスの「需給事情による減点補正」58%が確定しました。

 なお、松江地裁判決では、減点補正を行う必要性として、地審鑑定を引用する形で次の3点をあげています。

①本件クラブハウスは、本件ゴルフ場と一体利用されてはじめて機能性を発揮することができる建物であり、ゴルフ場から分離した場合には利用者が極めて少なく、他の転用の可能性が考えられないため、市場性は低く、需要はゴルフ場の需給動向に左右される。

②本件ゴルフ場は島根県の山間部にあり、冬場の1月から2月には閉鎖期となり、12月でも積雪が多い場合は閉鎖される。

③本件ゴルフ場の付近に、集客力のある著名な観光施設は少なく、都心部からの距離からしても、集客力が弱いことがそれぞれ認められ、これらによれば、本件クラブハウスは、所在地域の状況によりその価額が減少すると認められる非木造に該当し、需給事情による減点補正を行う必要がある。

◆本件判決及び地審鑑定に思うこと

 本件クラブハウスに関する一連の判決及び地審鑑定について、筆者の感じたこと及び疑問を率直に述べさせていただきます。

①松江地裁及び広島高裁ともに、平成15年6月26日の最高裁判決に関連して「家屋の適正な時価は土地と同じく『客観的交換価値』をいう」と判断していますが、筆者としては、固定資産評価基準の家屋の価格は、実態から見た場合、客観的交換価値」には馴染まないのではないかと考えます。なぜなら、固定資産評価基準を適用した家屋の価格は、比較的新しい時期では適正相場の半額程度の価格であり、逆に年数が相当経過しても存在する限りは残価率2割で据え置かれ、適正相場を上回り「客観的交換価値」とは言えない状況にあります。

 平成15年6月26日の最高裁判決は、あくまでも土地のみに関する判断であったのではないのでしょうか。

 この点、平成15年7月18日最高裁判決では「固定資産評価基準による(家屋の)価格を(中略)適正な時価と推認するのが相当である」とされており、この最高裁判決(家屋の適正な価値を客観的交換価値としていない)が妥当ではないかと考えます。この点、被告側は「平成15年6月26日の判決は土地に関して述べたもの」と主張していますが、そのとおりと思います。

 敢えて言えば、家屋の固定資産税は、当該家屋の「交換価値」ではなく「使用価値」に対して課税されているのではないかと思います。

<平成15年6月26日最高裁判決>
 「上記の適正な時価とは,正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格,すなわち,客観的な交換価値をいうと解される。」

<平成15年7月18日最高裁判決>
 「本件建物の価格は、固定資産評価基準に従って決定した前記価格は、評価基準が定める評価の方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情又は評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情が存しない限り、その適正な時価と推認するのが相当である。」

 ただし、本件で争われたのは固定資産評価基準に従って「需給事情による減点補正」がなされるべきか否かであって、適正な時価が「客観的な交換価値」かどうかが争点になっていた訳ではありません。

②松江地裁判決で「需給事情による減点補正」を58%と判断した理由は、地審鑑定に合理性がありそれを採用した結果とされています。しかし、何故58%が適正なのか否かが重要にもかかわらず、一連の判決文を読んでも理解できません。地審鑑定まで目を通してはじめて、58%の定量的な意味が分かる状況です。

③地審鑑定及びそれを採用した判決ともに、取引事例比較法及び収益還元法は、取引に係る主観的・特殊的な事情を排除すること及び経営者の能力といった人的事情を排除することからも適切でなく、原価法が最も妥当な方法であるとしています。しかしその一方で、上記の地審鑑定における調整率査定のように、原価法を50%採用し、取引事例比較法と収益還元法を併せて50%を採用しているという矛盾がみられます。

 あくまでも私見ではありますが、固定資産税家屋の再建築価格を求めるに際しては市場性や収益性は排することは必要ですが、減価修正(需給事情の減額判断)においては限定的(客観的資料の下)に市場性・収益性をも考慮することができると位置づけた方が良いのではないかと考えます。

④地審鑑定の土地の原価法において、建物がある敷地について建付減価を行い、そのうえで経年に伴う物理的減価(人工構築物のため▲28%)、機能的減価(機能的陳腐化▲20%)、経済的減価(地域性を除く▲30%)がされており、また更に試算価格の積算価格を100とした鑑定評価額の比率58%を調整率とし、これを持って固定資産評価基準の「需給事情による減点補正」としていますが、はたして重複減価は無いのでしょうか。

⑤地審鑑定では土地と建物を一体として「自用の建物及びその敷地」に準じて原価法、取引事例比較法及び収益還元法を適用しています。土地の原価法では、素地を山林から造成工事費を加えて再調達原価とし、造成部分が人工構築物であるとして減価修正を行っていますが、この方法は本件ならではの工夫かもしれませんが、通常はあり得ないと思います。また、市場性減価を比準価格と収益価格との調整から行っていますが、土地・建物一体の原価法であれば、土地の減価、建物の減価ではなく、土地・建物一体減価(地審鑑定では適用していませんが)として市場性減価を査定するのが妥当ではないかと考えます。

⑥最後になりますが、筆者は、固定資産評価基準の「需給事情による減点補正」は必要であるし、その減価は不動産鑑定評価基準の「市場性及び収益性減価」等に相当すると考えます。しかしながら、そもそも固定資産評価基準と不動産鑑定評価基準の土俵は相当異なることから、固定資産税の時価証明は不動産鑑定士泣かせの分野でもあります。

 固定資産税の家屋評価と不動産鑑定評価は似ているようで土俵が相当違います。そういう状況下でのN鑑定士の工夫は評価できるものですし、おそらく本件鑑定評価では相当苦労されたのではないかと拝察いたします。

 ただし、固定資産税の家屋の評価額を不動産鑑定により是正する(時価証明する)ことは、あくまでも訴訟レベルで可能となるのでありまして、通常、固定資産税家屋の評価額の是正は、固定資産評価基準どおり評価されていないこと、あるいは同基準に再建築費を適切に算定することのできない等の特別の理由があることを立証しなければならないなど、かなりハードルが高いものであります。

(家屋評価の件は今後改めて述べることとします。)

 第30号の「空き家対策と固定資産税の減額特例」の中で「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されたことに触れましたが、平成27年2月26日に施行されました。(ただし、立入調査や特定空き家等に対する措置は5月26日から施行) 

 これにより、倒壊するなど著しく保安上危険となるおそれのある等の「特定空き家」は、固定資産税の減額特例が適用除外となる、とされています。 

 ところで、一部マスコミ報道の中には、『この減額特例の適用除外により、税負担が6倍になる』とありますが、この6倍との指摘は正しくはありません。 

 『1/6の減額適用除外』はそのとおりですが、現在の負担調整措置制度のもとでは、通常では『=税負担が6倍』にはなりません。 

 そこで今号では、改めて住宅用地の減額特例と、それを廃止した場合の非住宅用地の負担調整措置を説明することにします。 

◆住宅用地の負担調整措置 

 第30号にあるとおり、200㎡以下の小規模住宅用地では、固定資産税の価格(地価公示価格の7割)の1/6が本則課税標準額となります。また、200㎡を超える部分が一般住宅用地として1/3の減額になります。都市計画税は、200㎡以下が1/3に、200㎡を超える部分が2/3に減額されます。 

 「小規模住宅用地の負担調整措置」 (←詳細はここをクリック)

◆非住宅用地の負担調整措置 

 ここで、その家屋を取り壊して更地にしますと、その土地は非住宅用地となって、住宅用地の減額特例の適用はなくなります。 

 しかし、現在の固定資産税の仕組みでは、更地は商業地と同じ非住宅用地として評価されることになります。

 非住宅用地では、地価公示価格の7割が固定資産税の価格とされるとともに、その価格が本則課税標準額となります。そして、負担調整措置として、更にその価格の7割が上限価格とされています。つまり、非住宅用地(商業地)では、前年度の課税標準額が本則課税標準額の7割を超える場合は、7割まで引き下げられ、固定資産税価格の0.7(地価公示価格の0.7×0.7)が上限価格となる訳です。 

 「非住宅用地の負担調整措置」 (←詳細はここをクリック)

◆住宅用地が更地になった場合 

 いま面積が150㎡、固定資産税の価格が120万円の土地に居住用家屋(市街化区域内)があると仮定します。 

 ここで計算の便宜上、課税標準額が上限に達しているとしますと、小規模住宅用地ですので、固定資産税は価格の1/6で20万円×1.4%=2,800円、都市計画税は1/3で40万円×0.3%=1,200円で、合計4,000円の税額となります。 

 この家屋を取り壊して更地にすると、減額特例の適用はなくなり、非住宅用地として評価されることになります。 

 非住宅用地としての税額は、120万円×0.7×1.7%=14,200円(固定・都計税)となります。 

 これを、減額特例の適用税額と比較しますと、14,200円÷4,000円≒3.6倍になり、6倍ではありません。 

 「更地にした場合の比較」 (←詳細はここをクリック)

 では、市街化調整区域の住宅用地は都市計画税がありませんが、どうなるでしょうか。 

 固定資産税2,800円に対して、120万円×0.7×1.4%=11,700円で、約4.2倍となります。これも6倍ではありません。 

 仮に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」による「特定空き家」として減額特例の適用除外となった場合も、この計算と同じ結果になります。 

 平成6年に地価公示価格の7割(いわゆる7割評価)による負担調整措置が導入されほぼ20年が経過しますが、この制度もかなり定着してきているものと考えられます。 

 このように、空き家が取り壊されて更地になった場合、あるいは「特定空き家」として減額の適用除外となった場合、現行制度で比較するかぎりは『税負担が6倍』との指摘は必ずしも正しくはなく、3~4倍程度になるというのが正解です。

 ※上記では固定資産税は標準税率、都市計画税は制限税率を適用。

 前号では、平成4年2月24日浦和(現さいたま)地裁判決により、国家賠償法による賠償が認められたことから、全国の(全てではないですが)市町村で「過徴収金返還要綱」が定められたことを紹介しました。

 そして、この方向を一歩進めたのが次の最高裁判決でした。

◆最高裁(平成22年6月3日)判決<20年>

 平成22年6月3日の最高裁判決において「固定資産税の評価・課税誤りによる税額について国家賠償の請求を認める」との判断がなされました。この判決は名古屋高裁への差戻し判決ではありますが、事実上の最高裁の 損害賠償請求容認判決と受け止められています。

 この最高裁判決によると、一定の要件の下では、地方税法上の審査請求や取消訴訟を経ることなく、国家賠償請求を行うことができ、固定資産税の過徴収金の返還期間は最高20年となります。

◆事案の概要-冷凍倉庫の課税誤り

 これは名古屋市のある冷蔵会社が、名古屋市長の冷凍倉庫に対する誤った評価・課税に対して、不服申立手続を経ることなく国家賠償法により国家賠償を請求した事案です。

 この請求に対して、第1審(名古屋地裁)、第2審(名古屋高裁)ともに「国家賠償法に基づいて固定資産税等の過納金相当額を損害とする損害賠償請求を許容することは…妥当でない。」との判断のもと棄却されました。

 これに対して、冷蔵会社が最高裁に上告したところ、最高裁は国家賠償法による損害請求を事実上認めて、名古屋高裁への差戻し判決がなされました。

◆最高裁判決の主要部分

 ここに判決の主要部分を引用します。

 「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 「記録によれば、本件倉庫の設計図に「冷蔵室(-30℃)」との記載があることや本件倉庫の外観からもクーリングタワー等の特徴的な設備の存在が容易に確認し得ることがうかがわれ、これらの事情に照らすと、原判決が説示するような理由だけでは、本件倉庫を一般用の倉庫等として評価してその価格を決定したことについて名古屋市長に過失が認められないということもできない。」

◆冷凍倉庫の固定資産税評価

 最高裁での判決は上記の1件のみでしたが、全国的に多くの市町村で冷凍倉庫に対する同様の評価・課税誤りがあり、名古屋地裁・高裁管轄内でも複数の訴訟が提起されていました。

 実は、全国的に市町村における「冷凍倉庫」の定義がやや曖昧で、評価方針も必ずしも明確でなかったことにより、多くの市町村で評価・課税誤りが発生しました。

 冷凍倉庫は「塩素その他の著しい腐食性を有する液体・気体の影響を受ける」ことから、一般倉庫に比べて経年減点補正率(年数の経過に応じて生じる減価)が厳しく、評価額はおおよそ半額相当になります。ところが、「冷凍倉庫」の定義が明確でなかったことから、一般倉庫並みの評価・課税を行っていた訳です。

 筆者は当時、横浜市の固定資産税課長でこの問題を担当していましたが、反省を込めて当時の記者発表資料をここに掲げます。
※ 上記の最高裁への上告人による「上告受理申立書」において「横浜市のように単なる取扱の修正に過ぎない記者発表」と指摘されていますが、この記者発表資料にあるとおり「修正理由」を明らかにしています。

 「当時の横浜市記者発表」 (←詳細はここをクリック)

◆還付金返還の時効は20年

 この最高裁判決は、差戻し判決ではあるものの最高裁の事実上の判断と受け止められており、その後は行政実務でも本判決を尊重することとなっています。

 そして、過徴収金(還付金)返還の時効は20年になります。

 これは、民法724条により「不法行為による損害賠償の請求権は、不法行為の時から20年を経過したとき時効によって消滅する」との規定によるものです。

 では、いかなる場合に国家賠償の請求が認められるかですが、国家賠償法1条に「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とあります。

 この最高裁判決では直接表現されてはいませんが、他の下級審判決等によると「職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことの無いような場合には、国家賠償が認められるような違法になる」と判断されています。要するに「手抜きはアウト」ということです。

 上記の判決要旨の2つ目は、最高裁にしては珍しく事実認定がされ、事実上「通常尽くすべき義務が尽くされていない」(手抜き)と判断されています。

 ですから、課税当局が「手抜き」により課税誤りがあった(と思われる)ときは、20年間遡って損害賠償請求していくことも考慮すべきなのです。

 しかし、あくまでも「通常尽くすべき注意義務を尽くしているかどうか」ということがポイントで、単にその評価・課税が間違っていたというようなレベルでは、取消訴訟で取消すべき処分になります。

 今号と次号で固定資産税の評価・課税誤りによって納め過ぎた場合、その過徴収金(還付金)は何年遡って還してもらえるかについて解説します。

 大まかに言いますと、①地方税法の規定による原則的手続による期間(5年)②地方税法417条と「過徴収金返還要綱」による期間(5年又は10年(20年))③最高裁判決による国家賠償による期間(20年)の3とおりになります。

◆地方税法による原則的手続<5年>

 地方税法では、徴収し過ぎた税金(還付金)の請求権は5年で消滅時効になる、つまり5年遡って還してもらえると定められています。

<地方税法18条の3(還付金の消滅時効)>

「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年を経過したときは、時効により消滅する。」

 ところで、固定資産税の納め過ぎの原因のほとんどは、課税当局の誤り(課税ミス)によるものと考えられますが、課税誤りが発見されるケースは、納税者等からの指摘によることがほとんどです。 

◆裁判所による取消訴訟<5年>>

 課税処分に不服がある場合は、裁判所にその処分を取り消してもらうための取消訴訟を提起しなければなりません。ただし、いきなり裁判所に取消訴訟を提起することはできません。

 まず価格の不服について固定資産評価審査委員会へ審査の申出を行い、その決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。

 これが地方税法上の原則的な手続で、その流れは次のとおりです。

①固定資産税の納税者は、価格に不服がある場合には、納税通知書の交付を受けた日後60日までの間に文書をもって、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。(地方税法432条1項)

②固定資産税の納税者は、①の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。(地方税法434条1項)

③取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヶ月を経過したときは、提起することができない。(行政事件訴訟法14条1項)

 このように、地方税法による原則的な手続は、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会の決定を経る必要があるとされ、さらに6ヶ月と比較的短い出訴期間があることなど、手続には一定の制限があります。

 課税処分のような法律関係は早期に安定させるべきとの考慮から、このような限定的な手続が規定され、伝統的な行政法理論で言う「公定力」の考え方によります。

◆「重大な錯誤」による価格等の修正<5年又は10年(20年)>

 地方税法の原則的手続は上記のとおりですが、地方税法では特例規定とも言うべき規定として、「重大な錯誤」がある場合の「固定資産の価格等のすべてを登録した旨の公示の日以後における価格等の決定又は修正」が認められています。

 納税通知書が発送された後60日間の不服申立期間が経過した後は不服申立が認められませんが、その価格等について全く問題なしとしない場合もあり得るからです。

 そこで、設けられている規定が地方税法417条1項です。

<地方税法417条1項>

「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定されたの価格等を修正しなければならない。」

 ここで「重大な錯誤」とは、虚偽の申告又は申請による誤算、固定資産課税台帳に登録する際の誤記、価格等を決定する際の計算単位のとり違い、評価調書における課税客体の明瞭な誤記又はその認定の誤り等、客観的にみて価格等自体の決定に重大な誤りがあると認められるような錯誤を言い、軽微な誤り程度のものは含まれません。

 つまり、このような重大な錯誤があれば、原則的な手続(審査の申出等)を経ることなく、市町村長は直ちに修正しなくてはならないのです。

 そして納税者は自分の資産であれば、縦覧期間(納税通知書発送後から第1期納期限まで)に限らず、通年いつでも閲覧することができますので、その市町村の窓口で、課税内容の説明を求めることも可能です。

 ここで価格等が修正され、過徴収金がある場合、「重大な錯誤」であれば、10年や20年もあり得ることになります。

◆「過徴収金返還要綱」による返還<10年(20年)>

 「過徴収金返還要綱」とは、市町村が独自に定めているもので、全国でも約7割程度の市町村で実施されていると言われています。(詳しい統計は不明です。)

 この要綱は市町村によって名称も「○○市固定資産税支払要綱」等必ずしも同一のものにはなっていません。

 この要綱の概要は、重大な課税誤りがあった場合、固定資産税の課税台帳の保存期間である10年を期限にして過徴収金を返還するというものです。また、市町村によっては、領収書等により確認できる場合は20年を限度に返還する要綱もあるようです。

 つまり、重大な課税誤りの場合は、市町村の判断で10年あるいは20年遡って返還するということになります。

 ところで、そもそも地方税法で「還付金の消滅時効は5年」とされているにもかかわらず、それを超える10年、20年とは一体何なのでしょうか。

 実は、市町村でこの要綱を持つようになったきっかけは、第9号「固定資産税の住宅用地の特例は申告が必要か」でも触れた、平成4年2月24日の浦和(現さいたま)地裁の判決でありました。

 浦和地裁の判決は「住宅用地は市町村条例によって申告が義務づけられているといっても、固定資産税はそもそも賦課課税であるため、課税当局は申告が無くても減額特例を適用する必要がある」(要旨)というものでした。またこの判決は、納税者が地方税法ではなく国家賠償法による国家賠償請求を認めたという事案でもありました。

 下級審ながらこの判決を受けて、市町村で独自に「過徴収金返還要綱」を定めるようになったと言われています。

 しかし、この「要綱」は、あくまでも要綱であって、条例、規則のような拘束力が伴わない市町村内部の取り決めという位置づけです。仮に予算の枠が不足していたら適用しないということもあり得る訳です。それも、必ずしも全ての市町村がこの「要綱」を持っている訳ではないのです。(次号に続きます)

◆7~8軒に1軒が空き家

 総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成25年10月時点で、全国の空き家数は820万戸、住宅総数に占める割合は13.5%と過去最高となっています。

 少子高齢化や核家族化が進み、自宅を空き家にして高齢者施設に入所したり、居住者が亡くなり相続人が放置するといった例が増加しています。特に老朽化した空き家は、防犯、防災、環境衛生上からも深刻な社会問題となっています。

◆固定資産税の減免特例も一因(平成26年12月現在)

 第9号「固定資産税の小規模住宅用地の仕組み(負担調整措置)」で触れたとおり、「専ら人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地」を住宅用地として課税標準の特例が定められています。(地方税法349条の3の2)

 住宅用地でその面積が200㎡以下のものを小規模住宅用地として課税標準額が1/6に、200㎡を超えるものが一般住宅用地として1/3に減額されます。

 ところが、実際の課税においては、その家屋が人の居住の用に供されていない空き家であっても、住宅用地の特例が適用さているため、これが空き家の解体を妨げているとされています。

 家屋を解体すれば解体費用も掛かるし、土地の固定資産税の減額特例1/6(200㎡以下)が適用されなくなってしまう、であれば家屋の固定資産税を負担してでもそのまま空き家にしておこう、これが空き家増加の一因になっているということです。

◆住宅用地の減額特例の歴史

 そもそも住宅用地に対する課税標準の特例措置は、宅地化を促進するため負担を軽減することを目的として、昭和48年に土地の課税標準額の1/2とされたことから始まります。その翌年の昭和49年には200㎡以下の小規模住宅用地を1/4とする特例措置が導入されました。

 その後、平成6年度からの固定資産税価格を地価公示価格の7割とする、いわゆる7割評価の導入に伴って200㎡以下の小規模住宅用地を1/6、200㎡を超える一般住宅用地を1/3とする特例措置が拡充され、都市計画税においても住宅用地の特例措置(200㎡以下1/3、200㎡を超えるもの2/3)が導入され、現在に至っています。

◆空き家対策の現状

 居住の用に供されていない空き家は、そもそも課税本来の目的・趣旨から外れているため特例措置を適用すべきでないとの意見があります。かつての地価高騰から下落へと推移してきている中で、この意見は課税の適正化からも、至極もっともな考え方であります。

 全国の市町村でも「空き家対策条例」を制定し、実態調査の上、住宅として使われていない空き家の撤去を促すとともに、住宅用地の特例措置の適用を外すという市町村もあります。

 平成25年10月現在で、272の市町村で「空き家対策条例」が制定されています。

 しかし、市町村の課税当局が住宅用地(空き家)か否かを外観から認定するのも難しいのも事実であります。郵便の転送を行う等、あたかも居住しているかのような外観を呈している比較的新しい空き家も相当見受けられます。

 また一方では、老朽化した明らかに空き家と分かるものも多数あり、中には所有者不明で課税も出来ていないものまであります。

 そこで、平成26年11月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。

 「適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空き家等の活用のための対応が必要」(第1条「目的」)とされています。

 「空き家対策特別措置法の概要」 (←詳細はここをクリック)

 そして、この法律の対応に連動する形で、今後、政府・与党で固定資産税の特例措置を見直すとの報道もなされています。

◆固定資産税の特例措置の見直し

 平成27年度の与党税制改正大綱によると、倒壊する恐れがあったり、著しく汚れていたりして市町村から改善勧告されると固定資産税の軽減対象から外されることになります。

 第33号「「更地にすると固定資産税は6倍になる」は正しくない」に続きます。

◆固定資産税(都市計画税を含む)の課税誤り

 インターネット検索画面で「固定資産税・課税誤り」とキーワードを入れると、市町村HPの「課税誤りについてのお知らせ」がズラーッと登場します。

 では、固定資産税の課税誤りというのは、どのくらいあるのでしょうか。

 これについては、総務省が平成24年8月に発表した「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」が参考になります。

・ 課税誤りがあった市町村の数……全国1,544団体のうち97.0%

・ 納税義務者数に占める割合……土地0.2%、家屋0.2%

 これは、平成21年度から23年度を調査対象期間にして、全国の市町村が土地・家屋に係る固定資産税・都市計画税について、どのくらい課税誤り等があったかを総務省が調査した結果です。

 「総務省:固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」 (←ここをクリック)

◆課税誤りの内容

 その調査結果によると、課税誤り(税額修正)の主な要因は次のとおりです。

・ 土地の課税誤りの内容 

  ①評価額の修正29.9%

  ②負担調整措置・特例措置の適用22.9%

  ③現況地目の修正15.8%

・ 家屋の課税誤りの内容

 ①評価額の修正 29.7%

 ②家屋滅失の未反映23.6%

 ③新増築家屋の未反映 20.6%

 ところで、この調査結果を見てどう思われるでしょうか?

 「全国市町村の97%もの課税誤り……そんなに多いのか!」か「納税義務者数の0.2%の課税誤り……そんなに少ないのか!」のどちらでしょうか?

 筆者は、固定資産税の仕事に携わってきた者ですが、正直なところ「納税者数に占める課税誤りが0.2%とは、そんなに少ないのか!」と驚きました。

 市町村の数は、1件でも課税誤りがあれば1市町村とカウントされているので、97%というのはある意味頷ける数字です。

 一方、固定資産税は全国の土地、家屋に対して、原則すべてに課税されます。今回の調査対象となった納税義務者数は、土地は約2900万人、家屋は約3300万人で、課税誤りはその0.2%であったという結果です。

 もっとも母数が大きいので0.2%が「少ない」と思うのも間違っているのかもしれません。 

◆行政側の適正評価等の取組み

 総務省では、このような調査は今回初めて行ったそうですが、この調査は固定資産税の適正・公正な評価と信頼性を確保することを目的にした一環のものと思われます。

 各市町村でも「適正・公正な評価と信頼性の確保」の取組みを行っていますので、ここに、いくつかその取組みをご紹介します。

①評価事務のIT化と現地調査

 昨今ではIT技術が進歩を遂げ、固定資産評価においても航空写真デジタル化や固定資産GISが導入されています。しかし、基本は地道な現地調査にあることは言うまでもありません。

②固定資産税の情報開示制度

 課税明細書の送付、縦覧制度の拡充、固定資産課税台帳の閲覧制度など、平成14年度にこれらの制度が法定化されています。

③税務職員の人材育成

 職員の異動サイクルが短くなる中で、税務職員の専門性をいかに確保するかは、どこの市町村においても課題になっています。

 しかし残念ながら、各市町村ともにこのような取組みを行っているにも拘わらず、固定資産税の課税誤りは一向に後を絶たないのも事実なのです。

◆自宅の奥庭(裏)の山林

 最近、Aさんから、次のような固定資産税のご相談を受けました。

 「自宅の奥庭が山林状態になっているが、どうも固定資産税ではそれが考慮されていないようだ。その部分を分筆して、山林として登記することも考えている。」

 そこで、現地に伺い調査したところ、駅から徒歩3分程度の近隣商業地域で自宅の敷地は約1500㎡、その3分の2程度が山林状態になっていました。山林状態といっても、傾斜はほとんど無く奥庭という状況でありました。

◆介在山林の評価

 このような宅地に介在する山林を、固定資産税評価では介在山林と言います。

 固定資産税評価の山林は、一般山林と介在山林に区分されます。

 一般山林とは、介在山林以外の山林をいいますが、林業経営が継続されることを前提に山林としての生産力に着目して評価します。

 一方、介在山林とは、宅地・農地等のうちに介在する山林や市街地近郊の山林で一般山林の評価方法によって評価することが適当でない山林をいいます。

 筆者が居住する横浜市内では、山林のほとんどが介在山林と言っても過言ではありません。

 介在山林の一般的な評価方法は、介在山林が宅地であったとした場合の価額を路線価から求め、この価額から宅地転用に当たって通常必要と認められる造成費相当額を控除した額によって評価額を求めます。

◆介在山林の傾斜角度等から求める方法

 また、市町村によっては、上記の造成費相当を控除する方法ではなく、介在山林の傾斜角度等から比準割合を定めている場合もあります。

 介在山林の具体的評価方法は、市町村の固定資産税評価要領により定められているからです。

 この傾斜角度等から求める方法では、まず介在山林の状況類似地区の宅地化の度合い(熟成度)を判定し、次にその山林の傾斜角度(傾斜主体)から比準割合を求めることになります。

 ここに、参考として横浜市の比準割合表を掲げます。

 「横浜市介在山林比準表」 (←詳細はここをクリック)

◆住宅用地の特例との比較

 ところで、土地に対する固定資産税は、住宅やアパート等の敷地として利用されている住宅用地については、その面積によって小規模住宅用地と一般住宅用地に区分され減額特例措置があります。

 「住宅用地の減額特例」 (←詳細はここをクリック)

 さて、ではAさんの場合はどうなるのでしょうか。

 家屋の床面積が200㎡、住宅の敷地が500㎡、残り1000㎡が山林と仮定します。

 山林の傾斜角度はほとんど無いことから、比準割合は50%となります。

 しかし、Aさんの住宅の敷地は住宅用地の特例により、固定資産税は200㎡までが1/6、200㎡を超える部分が1/3になっているのです。

 ここを1000㎡部分を介在山林としての評価にすると1/2の評価割合となり1/3より負担が増えることになってしまいます。

 この例でお分かりのように、宅地の一部としての介在山林は庭として住宅用地の一部とする方が評価が低くなる場合があるのです。

 山林評価することが必ずしも評価上有利にならない場合もあるということです。

◆市町村の減免措置見直しの動き

 固定資産税の減免は、市町村の条例により行われ、その内容も市町村ごとに若干異なります。

 前号では、東京都、横浜市、川崎市の条例と施行規則を紹介しましたが、この3都市だけでも措置内容の違いが確認できます。

 ところで大阪市では、1昨年から、橋下市長の指示により、固定資産税を含めた市税の減免措置の見直しが行われました。

 その内容は大阪市のホームページから確認をお願いします。

 「大阪市の固定資産税減免の見直し」 (←ここをクリック)

◆朝鮮会館の固定資産税減免は違法(最高裁判決)

 固定資産税の減免措置の見直しでは、朝鮮会館等の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)関連施設に対するものが全国的に行われてきました。

 「公益性のない朝鮮総連施設の税を減免するのは違法」との住民監査請求や住民訴訟が各地で起こされてきましたが、平成19年、最高裁により「朝鮮総連関連施設への固定資産税減免は違法」との判決が出されました。

 「熊本市長による熊本朝鮮会館への固定資産税などの減免は違法」との福岡高裁の判決を受け、熊本市長が最高裁に上告していましたが、平成19年11月30日、最高裁第2小法廷は上告を棄却する決定をし、「朝鮮総連の関連施設への税の減免は違法」との判決が確定しました。

 平成18年の福岡高裁は熊本市長に対し、「朝鮮会館は朝鮮総連の活動拠点で、日本の社会一般の利益のための施設には該当しない」と施設の公益性を否定し、「減免措置は違法」とする逆転判決を下したものです。

◆朝鮮総連関連施設に対する固定資産税の課税状況

 なお、朝鮮総連関連施設については、総務省が毎年、固定資産税の課税状況を発表しています。

 平成25年度では、朝鮮総連中央本部、地方本部及び支部が所在すると思われる128の市町村のうち、固定資産税の減免を実施していないのは118になります。

 「総務省発表の報道資料」 (←ここをクリック)

◆固定資産税の減免要件

 前号でお知らせしたとおり、固定資産税の減免の根拠は地方税法第367条になります。

 地方税法第367条(固定資産税の減免)

「市町村長は、天災その他特別の事情がある場合において固定資産税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、固定資産税を減免することができる。」

 地方税法での規定は抽象的な要件を大枠示したもので、具体的要件は市町村の条例で定めることを予定しています。

 市町村では、概ね次の4つの形態により定めているのが一般的です。(④は総務省の例示で追加されています。)

①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者

②貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者

③その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)

④公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)

◆減免の3つの形態

 上記①〜③の具体的解釈は次のとおりとされています。 

①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者

 震災、風水害、火災その他これらの災害があり、納税義務者がその財産について甚大な被害を被った場合など。

②貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者

 生活保護の規定による保護等の公的扶助を受けている者、又は公的扶助に準じて考えられるような扶助を受けている者など。

③その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)

 ①②の事由以外の事由で、客観的にみて担税力を喪失した者、公益上の必要があると認められる者など。

 このように見ますと、他の法的手続きで自ずと明確になる要件と、「特別の事情」のようなその基準が必ずしも明かでない要件が混在しているように思われます。

 では、市町村の条例では、どのように規定されているのでしょうか。

◆市町村の税条例における固定資産税減免

 ここでは、参考として、東京都都税条例、横浜市市税条例及び川崎市市税条例における固定資産税の減免規定を紹介します。

◯東京都都税条例第134条(固定資産税の減免)

1 次の各号のいずれかに該当する固定資産であって、知事において必要があると認めるものに対する固定資産税の納税者に対しては、当該固定資産税を減免する。

一 生活保護法により生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税に係る固定資産

二 公益のために直接専用する固定資産(固定資産の所有者に課する固定資産税にあっては、当該所有者が有料で使用させるものを除く)

三 災害等により、滅失し、又は甚大な損害を受けた固定資産で規則で定めるもの

四 前各号に掲げるものの外、規則で定める固定資産

 「東京都都税条例施行規則」 (←詳細はここをクリック)

◯横浜市市税条例第62条(固定資産税の減免)

1 市長は、次の各号の一に該当する固定資産に対し、特に必要があると認めた場合は、その固定資産税を減免することができる。

(1)災害若しくは天候不順のため、収穫が著しく減じた田畑

(2)生活保護法の規定により、生活扶助を受ける者の納付すべき固定資産税にかかる土地又は家屋

(3)公益上その他の事由により特に減免を必要とする固定資産

 「横浜市市税条例施行規則」 (←詳細はここをクリック)

◯川崎市市税条例第49条(固定資産税の減免)

1 固定資産税は、次の各号の一に該当する固定資産であって、市長において必要があると認める場合において、納税義務者の申請によってこれを減免する。

(1)災害により甚大な損害を受けた固定資産で、特にその必要があると認められるもの

(2)生活保護法の規定により生活扶助を受ける者の所有する固定資産で、特にその必要があると認められたもの

(3)公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)

(4)前各号のほか、特別の事由があるもの

 「川崎市の固定資産税減免」 (←詳細はここをクリック)

 このように、市町村(東京都は都)の条例でも、地方税法同様の抽象的要件が定められている場合がほとんどで、具体的な基準は、規則や要綱に委任しているのが実態です。それと、このように並べて見ますと、抽象的要件ではありますが、各市町村で微妙に異なっているのが分かります。

 固定資産税の減免は申請に基づき、個々の納税義務者について十分に実情を調査したうえで、真に納税者の担税力が無いと認められる場合に限って行われるものです。そこからすると、条例に個別具体的な要件を定めることも難しい面があることも頷けます。

(次号に続きます)

 22号〜24号では、固定資産税(以下、都市計画税も含む)の非課税について解説しましたが、今回は減免についてです。 

 非課税は市町村がそもそも課税することが法律で禁止されている制度でしたが、では、減免はどのような制度なのでしょうか。

◆ 減免の要件は

 減免は、市町村で課税権が行使された後に、納税者の申請に基づき、担税力が薄弱なこと(納税資力が充分でない)等の理由により、税額の全部又は一部が免除される制度です。

 固定資産税の減免は、地方税法第367条に規定されていますが、概ね次の3つの形態となります。

 ①天災その他特別の事情がある場合において減免を必要と認める者

 ②貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者

 ③その他特別の事情がある者(公益上の事由も含む)

 そして、これら減免の要件は、市町村の税条例で定められます。

 市町村では◯◯市税条例及び◯◯市税条例施行規則が定められており、その中で減免の要件が規定されています。

 市町村の税条例での減免規定の内容は、市町村ごとに異なりますが、前記①〜③を中心にして、「④公益のために直接専用する固定資産(有料で使用するものを除く)」を加えた4つの形態に基づき定められているのが一般的です。

 ところで、地方税法には、非課税、減免のほかに「課税免除及び不均一課税」という制度があります。

◆減免と「課税免除及び不均一課税」の違い 

 「課税免除及び不均一課税」の法的根拠は、地方税法第6条になります。

 地方税法第6条 (公益等に因る課税免除及び不均一課税)

1.地方団体は、公益上その他の事由に因り課税を不適当とする場合においては、課税をしないことができる。

2.地方団体は、公益上その他の事由に因り必要がある場合においては、不均一の課税をすることができる。

 (「地方団体」は、本ブログでは「市町村」と表記しています。)

 このように「課税免除及び不均一課税」は、政策目的や税負担の均衡等の「公益性」に着目したもので、「課税免除」は市町村(条例)による非課税とも言うべきもの、「不均一課税」は一般の税率と異なる適用をすることです。 

 減免と「課税免除及び不均一課税」はどちらも市町村の条例で定められます。

 しかし、減免の条例での規定は抽象的で、その具体的な適用は規則や要綱等に任せているのが実態であるのに対して、「課税免除及び不均一課税」はその適用要件等について議会を通じて議論、検討されるなど高い透明性が確保される点に違いがあります。

 納税者にとっては、結果的に納税する必要が無い(軽減される)ものであればどちらの制度でも良いのですが、減免は「申請」に基づくものですので、具体的内容や適用事由を知っているか否かは重要な問題とも言えます。

 つまり、納税者が減免申請の機会を逸するようなことになってはいないのか、との減免をめぐる論点でもあるのです。

※ 「減免の具体的内容」は次号で

 社会福祉法人、医療法人、学校法人、宗教法人等が、目的に沿った用途に供されている固定資産は非課税になります。これを「物的非課税」または「用途非課税」と言います。

◆社会福祉法人が使用する場合

 例えば、次の図のように、社会福祉法人が保育園を建設して運営する場合を考えてみましょう。

 「社会福祉法人の非課税」 (←ここをクリック)

 社会福祉法人が土地と家屋を所有し、目的の用途に沿っていれば、土地・家屋ともに固定資産税は非課税となります。

 ただし、固定資産がその目的以外に使用される場合は、固定資産税は非課税となりません。(348条3項)

 「地方税法348条」 (←ここをクリック)

 ところで、固定資産税が非課税になるのは、社会福祉法人等が固定資産を所有している場合に限りません。社会福祉法人等の利用の用に供するために固定資産を無償で貸している場合も非課税になります。(有償で貸している場合は非課税にはなりませんのでご注意ください。)

 土地を社会福祉法人等に貸して有効活用を行おうと考える場合、賃貸にして固定資産税を支払うか、無償で固定資産税を非課税にするか、これは所有者さんにとっては悩ましい「選択」となります。

◆老人福祉施設等に対する非課税

 ここで、「固定資産税が非課税になる老人福祉施設等」として、見落とされ易い点がいくつかありますのでご注意ください。

 まず、老人福祉施設等で非課税が認められる者は、必ずしも運営主体が社会福祉法人に限らないという点です。

 地方税法施行令第49条の13では、①の者が運営する②の固定資産が非課税となるとされています。

①老人福祉施設等を運営する者

a.社会福祉法人
b.社会福祉法人とみなされる農業協同組合連合会
c.公益社団法人又は公益財団法人、農業協同組合及び連合会、消費生活協同組合及び連合会、健康保険組合及び連合会、企業年金基金及び連合会、国家公務員共済組合及び連合会、国民健康保険組合及び連合会、国民年金基金及び連合会、商工組合及び連合会、石炭鉱業年金基金、地方公務員共済組合及び連合会、日本私立学校振興会・共済事業団、医療法人
d.老人介護支援センターの設置を届出したもの

②非課税となる固定資産

・aが経営する養護老人ホーム
・abが経営する特別養護老人ホーム
・abcが経営する老人デイサービスセンター、経費老人ホーム、老人福祉センター
・abcdが経営する老人介護支援センター

 「地方税法(社会福祉法人等の非課税)」 (←ここをクリック)

 特に医療法人が運営する「老人福祉施設等の用に供する固定資産」の非課税については、数年前ですが、かなりの市町村で課税誤り(非課税にもかかわらず課税していた)があった、とそれぞれの市町村のホームページで明らかにされています

 市町村の発表によりますと、「平成11年度地方税法改正により非課税範囲が拡大したものの、市町村職員の理解が不十分であったため、非課税にもかかわらず課税を行った」とのことです。

 なお、固定資産税が非課税とならない老人福祉施設もありますので、詳細については、最寄の市町村へお問合せください。

◆非課税かどうかの確認

 上記のように、市町村(担当職員)の理解不足で非課税にされずに課税されるという「課税誤り」も現実にあります。

 上記に該当する法人の皆様は、ぜひ点検・確認されることをお薦めします。

 また、土地を社会福祉法人等に無償で貸している所有者の方は、非課税となっているかどうかを確認してみる必要があります。

 様々な事例がありますが、とかく見逃されがちな例を一つ紹介します。

 例えば、宗教法人が運営するお寺の境内から離れた場所に駐車場があり、その土地が付近の方の所有であるケースです。場所柄からも、土地をお寺さんに無償で使用させている場合が多いようですが、この場合も固定資産税が非課税になります。

 「宗教法人の非課税」 (←ここをクリック)

 「土地を遊ばせておくよりは、無償でも良いから使ってもらおう」というお考えの土地所有者さんもいらっしゃいます。このような場合、土地の固定資産税が非課税になっているかどうか、確認することも大切です。

 固定資産税が非課税になる活用方法も、土地有効活用の一つであります。

◆「公共の用に供する道路」は非課税

 道路は通常、国道、県道、市町村道等のいわゆる公道ですので、固定資産税は非課税になっています。

 それに対して、私道は個人の方の所有土地ですので、固定資産税の課税対象になります。

 しかし、その私道が「公共の用に供する道路」であれば、非課税になります。

 では、「公共の用に供する道路」とは、どのような道路なのでしょうか。

◆「公共の用に供する道路」とは

 もちろん、公道は「公共の用に供する道路」ですが、ここでは公道以外の道路です。

 ①通り抜け私道

 通り抜け私道は、起終点が公道に接していること、幅員が1.8m以上であること、不特定多数の人に利用されていることが必要です。

 ②行止り私道、コの字型私道

 この私道は、2軒以上の家屋に利用されていること、幅員が4m以上であること、利用制限されずに不特定多数の人に利用されていることが必要です。

 ③いわゆるセットバック部分

 幅員4mに満たない公道に面している土地のセットバック部分で、一体となって道路の効用を果たしているものです。

 「通り抜け私道、行止り道路」 (←ここをクリック)

 「コの字型道路、セットバック部分」 (←ここをクリック)

 以上の要件は市町村によって若干異なる場合がありますので、ご注意ください。

 「公共の用に供する道路」であるにもかかわらず、課税されていると思われる方は、市町村の固定資産税担当に相談されることをお薦めします。

 なお、③のセットバック部分の道路部分が分筆されていればOKですが、分筆されてない場合でも、地積測量図などの資料を添えて申請すれば、「公共の用に供する道路」として非課税を認めてもらえます。

 固定資産税は、毎年1月1日の固定資産の所有者が納税義務者となり、課税されます。

 しかし、地方税法では、固定資産税が課税されない非課税制度というものが規定されています。

 では、この非課税制度とはどのようなものなのでしょうか。

 非課税制度には、二つの種類があります。

 一つは、固定資産の所有者からみて課税することができないもので、いわゆる「人的非課税」、もう一つは固定資産の性格又は用途により非課税となるもので、いわゆる「物的非課税」あるいは「用途非課税」と言われるものです。

 ところで、この非課税とは「課税しない」ということではなく、「市町村は固定資産税を課税してはいけない」という法的な課税禁止の制度なのです。

◆ 固定資産税の「人的非課税」

 「人的非課税」は、所有者の性格によるものですが、その所有者としては「国、都道府県、市町村、特別区、これらの組合、財産区及び合併特例区」とされています。(地方税法348条1項)。

 これらが所有する固定資産の典型的なものとしては、国道、県道、市町村道あるいは役所の庁舎、公立学校などが該当します。

◆ 固定資産税の「物的非課税」

 固定資産税の非課税で注目すべきは、むしろ「物的非課税」の方です。

 「物的非課税」は、墓地、公衆用道路などのほか、宗教法人、学校法人、社会福祉法人等が所有している固定資産の場合、または無償でこれらの団体に使用させている場合になります。

 しかし、「物的非課税」はこれだけではありません。

 地方税法には、この「物的非課税」とされる固定資産が70項目ほど列挙されています。(地方税法348条2項等)

 「地方税法の非課税の範囲」 (←ここをクリック)

 ところで、この非課税制度が充分に適用されるためにも、固定資産の所有者がこの制度をしっかりと理解することが大切になります。

 なぜなら、役所の調査だけでは完全に把握できない部分もあるからです。

 よく問題になるのは、①私道であっても「公共の用に供している道路」や②土地所有者が社会福祉法人等に無償で使用させている場合です。 

 次号では、この①、②について解説します。

◆ 固定資産税の縦覧制度 

 固定資産税の価格は、毎年3月31日までに決定され、4月上旬には納税通知書及び課税明細書が送付され、年4回の納期がスタートします。 

 「固定資産税評価の年間スケジュール」 (←ここをクリック)

 固定資産税は毎年課税されているため、「今年も固定資産税の納税時期か」とこの期間を過ごす方がほとんどかと思いますが、地方税法にはこの時期に「縦覧」という制度が設けられています。 

 この縦覧制度とは、他の(納税者の)土地や家屋の評価額を縦覧することにより、評価額の適正さを判断できるようにするために設けられているものです。つまり、固定資産税の納税者が自分の価格と他の(納税者の)価格とを比較するために設けられている制度です。 

 そのため、市町村長は、(土地の場合)「所在、地番、地目、地積、価格」を記載した土地価格等縦覧帳簿を3月31日までに作成し、この縦覧帳簿を、希望する納税者の縦覧に供することになります。 

 縦覧期間は、「毎年4月1日から(通常は)最初の納期限の日まで」です。 

 最初の納期限は、多くの市町村では地方税法の標準納期の4月としているようですが、5月を最初の納期としているところもあります。また、評価替年度の3年に1回だけを5月としている市町村もあるようです。

※  東京23区内の第1期納期は6月、第2期は9月。

 具体的な縦覧方法は、上記の縦覧帳簿と、土地については路線価図面を閲覧することになりますが、固定資産課税台帳や名寄台帳等は縦覧の対象にはなりません。 

 縦覧の手数料は無料です。 

◆ 固定資産税の閲覧制度 

 固定資産税の納税者は、自分の課税内容については、縦覧期間に限らず、年間を通じて随時見ることができます。これを閲覧制度と言います。 

 閲覧制度で見ることができる書類は、自己の固定資産課税台帳、名寄台帳等になります。名寄台帳とは、1筆1棟ごとの課税台帳を所有者ごとにまとめた一覧表のことです。 

 閲覧の場合は、納税者本人だけでなく、借地人、借家人も借用物件の課税台帳等を見ることができます。 

 閲覧の手数料は、無料か有料かは市町村により異なります。ただし、証明書の発行はどの市町村でも有料です。

 「縦覧と閲覧制度」 (←ここをクリック)

◆ 固定資産税への不服審査の申出 

 固定資産税に対して不服がある場合、一定期間内に不服審査を申し出ることができます。 

 ところで、固定資産税に対する不服と言っても、①価格に対する不服と②価格以外の「処分」に対する不服の2通りがあり、①の場合は固定資産評価審査委員会に対して、②の場合は市町村長に対して申し出ることになります。 

 固定資産評価審査委員会とは、市町村ごとに設置され、学識経験を有する者のうちから市町村の議会の同意を得て、市町村長が選任します。 

 固定資産税の価格が固定資産評価審査委員会へ不服申出することとされている趣旨は、価格が納税者の負担に直接重大な影響を持つものであることから、独立した合議制の機関で慎重に審査させることとされているからです。 つまり、固定資産税の価格を決定した市町村長以外の第三者が審査することにより、より公平性を担保させようとの仕組みである訳です。

 不服審査の申出期間は、①及び②ともに、納税通知書を受け取った日の翌日から起算して60日以内までとされています。

 仮に固定資産税の価格に不服があり、訴訟に訴えようとする場合には、まずこの不服審査申出を行わなければなりません。これを審査請求前置主義と言います。

 この審査の決定(採決)の送達を受けた日の翌日から起算して6ヵ月以内に、いずれの場合も市町村を被告として不服の訴えを提起しなければなりません。

 しかし、この審査請求前置主義も必ずしも絶対に必要では無いという最高裁の判例(平成22年5月3日)がありますが、この点については、改めて触れることとします。

 固定資産税は毎年1月1日現在の固定資産の所有者に4月からその年度分が課税されます。

 ここに年間スケジュールを再掲します。

 「固定資産税評価の年間スケジュール」 (←ここをクリック)

 前号で説明いたしましたが、途中で所有者が変更しても、その1月1日の所有者が1年間の納税義務を負うことになります。

◆ 固定資産税の納期は4月、7月、12月、2月(標準納期)

 固定資産税の納期は4月、7月、12月、2月の4期となり、納期限はその月末となります。

 ただし、市町村の条例により、これと異なる納期を定めることができます。

 この標準納期を4月、7月、12月、2月としているのには意味があります。

 その主な理由は、他の税金の納期と重ならないようにするための配慮にあります。

・ 所得税(申告の場合)の納期 … 3月

・ 市町村民税の納期 … 6月、8月、10月、1月

・ 軽自動車税の納期 … 5月

 このように納期を並べて見ますと、改めて通年で税金の納期があることに思い知らされます。

 ところで、地方税法(365条②)では、1期のときにそれ以降の納期分を前納した場合は、市町村の条例で報奨金を交付することができるとの規定があります。

 かつては、多くの市町村で報奨金制度を設けていましたが、10年ほど前から廃止され、今ではほとんどなくなっているのではないかと思います。

 納税する者からすれば、一括全額納付したときに、若干でも割引があれば助かります。

 一方、市町村にとっても、年度当初に十分な税収確保ができることは財政運営上からも好ましいのですが、厳しい財政状況もあり、苦渋の決断をした経緯があります。

◆ 固定資産税の納税通知書と課税明細書

 毎年4月上旬に固定資産税の納税通知書と課税明細書が納税義務者あてに送られてきます。地方税法では「遅くとも納期限前10日」となっていますが、実際には4月2日、3日頃には届いているのではないでしょうか。

 納税通知書は、市町村が固定資産税を徴収するための基本的な通知です。

 一方、課税明細書は、固定資産税の課税内容を明らかにするためのもので、納税通知書とともに送られてきます。

 「課税明細書(小規模宅地の例)」 (←ここをクリック)

 仕様は市町村により若干異なりますが、記載事項は全国同じです。

 この課税明細書は、納税通知書だけでは課税内容が充分伝わらないことから交付されていますが、平成14年度に法定化され全国的に足並みが揃いました。(記載内容は法定化以外の部分では市町村によって若干異なります。)

 実はこの課税明細書を見ても、自分の土地や家屋の評価がどのように計算されているかまでは分かりません。課税明細書は、そこまでは記載されていないからです。

 多くの市町村では、「課税明細書の見方」などの説明書を同封していますが、個別の土地や家屋の評価計算までお知らせするまでは至っていないと思います。(評価計算までお知らせしている市町村があれば、筆者の認識不足です。)

 しかし、この課税明細書を送付し始めたら不服申立の件数が全国的に増加したとも言われていますので、それまでの納税通知書だけでは分からなかった部分が、課税明細書を見て分かるようになった「効果」とも考えられます。

 課税明細書も不十分さはありますが、一定の役割を果たしていることも事実です。

 筆者も不動産鑑定業と不動産仲介業をしていますが、課税明細書の恩恵に預かっている一人でもあります。

 課税明細書の中の土地、家屋の価格情報は、評価や取引仲介の中で貴重な資料となっているからです。

 固定資産税評価は3年毎(サイクル)ですが、課税は3年に1度ではなく毎年課税されています。

 そこで、固定資産税の1年間の流れを説明します。

 その前に「固定資産税評価の3年サイクル」を再掲します。

 「固定資産税評価の3年サイクル」 (←ここをクリック)

 次に、1年毎の固定資産税の年間スケジュールを掲げます。

 「固定資産税評価の年間スケジュール」 (←ここをクリック)

◆ 毎年1月1日時点で納税する人が決められる

 固定資産税は、毎年1月1日に固定資産(土地、家屋、償却資産)を所有している人が納める(課税される)ことになります。

 毎年1月1日を「賦課期日」、納める人を「納税義務者」と言います。

 具体的には、土地、家屋が登記されている場合は、登記簿に登記されている人、登記されていない場合は、土地又は家屋補充課税台帳に登録されている人となります。償却資産は登記制度がありませんので、償却資産課税台帳に登録されている人です。

 そして、3月末にその価格が決定され、4月からその年度の課税が行われます。

 つまり、平成25年1月1日に固定資産の納税義務者を把握し、3ヶ月間事務処理、3月末に決定され、4月から翌年3月までの課税が行われる訳です。

 ただし、土地、家屋の評価替えは平成24年度に行われ、その価格調査基準日は1年前の平成23年(実際は半年前)になります。さらに、土地の時価が下がっている場合は、毎年、下落修正措置が行われています。

 では、1月1日に所有者として登記されている人が既に亡くなっている場合は、誰が納税義務者になるのでしょうか。

 例えば、前年10月に所有者が亡くなり、相続が行われたものの、1月1日には未だ名義変更登記が行われていない場合です。

 この場合は、その土地、家屋を現に所有している人(通常は相続人)が納税義務者になります。

◆ 納税義務者が年の途中で変更された場合

 それでは、1月1日現在、所有者Aは健在であったが、2月に亡くなりBが相続により所有者になった場合はどうなるのでしょうか。

 固定資産税の納税義務者は、あくまでもその年の1月1日現在の所有者です。

 仮に、途中で所有者が変更になった場合でも、その1年間はAが納税義務を負うことになります。もっとも、亡くなった場合は、納税義務を果たすことは出来ないので、実際には相続人が納税することになります。

 土地や家屋を売買された方は、この制度を身近に感じられたことがあるのではないでしょうか。

 なぜなら、不動産の売買においては、通常、不動産業者の仲介により、「固定資産税の精算」が行われるからです。

 これは、売主が1月1日の納税義務者であるため、途中で不動産を購入した買主が契約(決済)日以降の分を日割計算で精算するのが慣わしであるからです。

 つまり、納税義務者はあくまでも売主で、売買当事者間での精算ということです。

 例えば、7月1日に契約(決済)した場合、その日以降の分を買主が負担する訳ですが、起算日をいつにするかによって、支払い方法に2通りあります。

 1つは、1月1日を起算日とする場合で、買主から売主に6ヶ月分支払います。もう1つは、4月1日を起算日とする場合で、これは9ヶ月分を支払うことになります。

 筆者も不動産仲介業者の一員ですが、どちらを採用するかは、仲介する不動産業者の判断としか言いようがありません。

 もう1つ、この賦課期日制度を上手に活用する方法です。

 例えば、家屋を新築して、年末近くに「間もなく完成」と言われたときです。

 この場合は、年内に完成させるよりも、翌年に完成させた方が特になる(?)ことはお分かりのことと思います。

 固定資産税の価格(評価額)は、他の税金の評価でも活用されているということでした。

 では、どのような税金に活用されているのでしょうか。

 固定資産税の価格は、①相続税の「倍率方式による評価」、②相続税の「家屋の評価」、③不動産取得税の「取得した不動産の価格(課税標準額)」、④登録免許税の「不動産の課税標準額」の評価に用いられています。

 固定資産税(特に土地の場合)には、価格(評価額)、課税標準額等いくつか似たような名称があります。そこで、念のため、次の課税明細書で固定資産税の価格を確認します。

 「課税明細書(小規模住宅用地)」 (←ここをクリック)

 この課税明細書では、価格は⑦に記載されています。(一番大きな金額です)

◆ 相続税の「倍率方式による評価」

 相続税の宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式がありますが、市街化調整区域内の宅地の相続税評価では、倍率方式が採用されています。

 この倍率方式とは、固定資産税の価格(評価額)に、地域ごとに決められた倍率(例えば1.1とか1.2など)を乗じて評価する方法です。

 農地や山林、原野もこの倍率方式が採用されています。

 「相続税倍率表」 (←ここをクリック)

 倍率地域の相続税(宅地)評価額=固定資産税評価額×倍率

◆ 相続税の「家屋の評価」

 相続税の家屋の評価は、固定資産税評価額そのものを用います。つまり倍率は1.0です。

 自用の家屋の相続税評価=固定資産税評価額×1.0

 貸家の相続税評価=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

 ※借家権割合…東京国税局管内は30%

 ところで、固定資産税家屋の建築費は、総務省で建築専門家等の作業部会を経て、3年に1度決定されています。

 相続税の解説書では、固定資産税の建築費は市場相場の5割とか6割などと説明されていますが、市場相場に対する割合が最初から決められている訳ではありません。この割合は、結果として認識される「目安」と理解するのが妥当であると思います。

 「参考」 国税庁「土地家屋の評価」 (←ここをクリック)

◆ 不動産取得税の「取得した不動産の価格(課税標準額)」

 土地や家屋を購入したり、家屋を建築するなどして不動産を取得したときに、不動産取得税が課税されます。

 この不動産取得税の「取得した不動産の価格」も固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)とされています。

 平成27年3月31日までに取得した土地及び住宅の税率は3%です。ただし、宅地(住宅のある土地)の場合は1/2の負担調整措置が講じられています。

 宅地の不動産取得税=固定資産税評価額×3%×1/2

 不動産取得税には特例措置、免税点、非課税等の規定があります。また、申告時期などは都道府県(取得した不動産の所在地)によって取扱いが異なる場合があるので、ご注意ください。

 「参考」 神奈川県「不動産取得税のあらまし」 (←ここをクリック)

◆ 登録免許税の「不動産の課税標準額」

 土地や建物の所有権移転登記、建物の所有権保存登記の際に、登録免許税が課税されます。

 土地の所有権移転登記では、「不動産の課税標準額」に1000分の20の税率が乗じられますが、ここでも固定資産税評価額(正確には「固定資産課税台帳に登録された価格」)が用いられます。

 なお、登録免許税も平成27年3月31日まで軽減措置があり、1000分の15とされます。

 土地所有権移転の登録免許税=固定資産税評価額×15/1000

 「参考」 国税庁「登録免許税税額表」 (←ここをクリック)

 不動産の売買では、仲介の不動産業者が諸費用として計算し、司法書士が登記手続きを進めるのが一般的ですので、納税している感覚が無いかもしれません。

 なお、新築建物は未だ固定資産課税台帳に登録された価格が無いため、法務局が定める「新築建物課税標準価格認定基準表」により計算されます。

 「参考」 「新築建物課税標準価格認定基準表」 (←ここをクリック)

◆ 市町村の歳入状況

 市町村のお金の収支は財政状況として表されますが、収入を歳入、支出を歳出と呼びます。

 市町村の歳入はどのようなもので成り立っているのかが、下のグラフ「市町村の歳入状況」で分かります。

 このグラフ(財団法人資産評価システム研究所「固定資産税のしおり」)によりますと、市町村の歳入は、税金(市町村税)のほか、国や県から支出される国県支出金、国税の一部が配分される地方交付税、借入金である地方債などがあります。

 「市町村の歳入状況」 (←ここをクリック)

 「住民税(市町村税)が全体の35%を占めていますが、固定資産税はこの中の重要な税目になっています。。

◆ 都市計画税とは

 そこで、市町村税にはどのような税があるかを示したものが、次のグラフです。

 「固定資産税は市町村の基幹税」 (←ここをクリック)

 ここにあるように、固定資産税44%、市民税43%、都市計画税6%、たばこ税4%、その他3%となっています。

 ところで都市計画税ですが、市街化区域内に所在する土地と家屋の所有者に課税される目的税(都市整備の費用に充てられる税)で、固定資産税と併せて課税されています。

 税額は0.3%で、固定資産税の価格を元に計算されますが、計算方法が少し異なります。

 今回は、固定資産税の課税明細書の都市計画税の求め方を紹介します。

 「課税明細書(小規模住宅用地)」 (←ここをクリック)

 まず、⑦の「価格」19325697円は地価公示水準の7割です。

 次に「面積」⑥160㎡は200㎡以下の小規模住宅用地になりますので特例減額が適用され、固定資産税は1/6であったところ、都市計画税は1/3の特例減額になります。

 したがって、⑦「価格」19325697円÷3=⑪「本則課税標準額」6441899円となります。

 負担水準は「前年度課税標準額」÷「本則課税標準額」ですが、これは固定資産税の割合が適用されます。つまり③の93%で、⑨「前年度課税標準額」が据え置かれることになります。

 ※これは平成25年度の例ですのでご注意ください。26年度からは異なります。

 最終的に税額を求める額は⑬「都市計画課税標準額」は⑨と同じ額6362896円となり、これに税率0.3%を乗ずると⑮「都市計画税相当額」19088円となります。

 最後に、都市計画税は、端数処理されて19,000円となります。

◆ 固定資産税が基幹税と言われる意味

 ところで、なぜ固定資産税が基幹税と言われるのでしょうか。

 ここでは広い意味で都市計画税を含めて固定資産税と捉えますと、固定資産税は市町村税の中で50%(本来の固定資産税44%、都市計画税6%)を占めています。

 固定資産税は市民税と並んで、市町村歳入の大きな部分を占めていますが、これが固定資産税が基幹税と言われる一つの理由です。

 それと市民税が景気に左右されがちであるのに比べて、固定資産税はさほど景気に左右されない安定的な財源になっています。

 この二つの意味で、固定資産税は市町村の基幹税と言われています。

◆ 固定資産税は都道府県でも課税される

 固定資産税は本来市町村税ですが、一部は都道府県でも課税されています。

 これは、あまり知られていませんが、一定の限度額を超える大規模償却資産(固定資産税)は都道府県で課税されています。

 大規模の償却資産が一つの市町村に偏ることを是正する「税源の偏在を是正する」のが目的で、その市町村の存する都道府県が課税します。

 代表的な資産としては、船舶、航空機、鉄軌道などがあります。

 また東京23区の固定資産税は、東京都(都税事務所)が全面的に評価・課税しています。

 さらに、固定資産の評価額(価格)は、固定資産税を課税する目的以外にも用いられています。

◆ 地積の認定は登記簿主義

 土地の地目の認定は、実地調査で判断できるため、現況主義を採用します。

 これに対して、土地の面積は見ただけでは分からないことから、実測しなければ判断できません。

 しかし、全国のしかも分合筆も頻繁に行われる土地すべてを役所で実測することは、時間的にも技術的にも難しいと言わざるをえません。

 したがって、固定資産税の地積の認定においては、登記簿主義を採用しています。

◆ 登記簿主義の例外

 土地の面積の認定は登記簿主義が原則ですが、例外として現況地積を認めています。

 例えば、登記簿地積が500㎡で長年課税されていたものの、実際に測量してみたら400㎡しかなかった。測量図面もあるので、400㎡で課税できないか、というような場合です。

 結論としては、測量図が正しいものであれば、400㎡を課税すべき土地の面積として、例外的に認定することになります。

 土地の面積を例外的に現況で認める場合、二つの場合が考えられます。

① 登記簿地積>現況地積の場合(いわゆる「縄縮み」)。上の場合がこれに当たります。この場合は「現況地積による」例外認定になります。

② 登記簿地積<現況地積の場合(いわゆる「縄延び」)。この場合は「現況によることができる」例外認定になります。

 ①の場合は「現況地積による」で、②は「現況地積によることができる」(ただし、登記地積によることが著しく不適当な場合に限る)と表現が異なっています。

 この規定は固定資産評価基準にありますが、②を分かりやすく言えば「登記簿より実際の土地の面積が大きくても、ある程度の面積差であれば登記簿面積(そのまま)でいいですよ」ということです。

※固定資産評価基準

 第1章(土地)第1節(通則)二(地積の認定)

 各筆の土地の評価額を求める場合に用いる地積は、次に掲げる場合を除き、原則として、登記簿に登記されている土地については登記簿に登記されている地積によるものとし、登記簿に登記されていない土地については現況の地積によるものとする。

1 登記簿に登記されている土地の登記簿に登記されている地積が現況の地積よりも大きいと認められる場合における当該土地の地積は、現況の地積によるものとする。

2 登記簿に登記されている土地の現況の地積が登記簿に登記されている地積よりも大きいと認められ、かつ、登記簿に登記されている地積によることが著しく不適当であると認められる場合においては、当該土地の地積は、現況の地積によることができるものとする。

 土地を売るときならいざしらず、所有者自らが固定資産税当局に「自分の土地は登記簿面積より大きいです」と申し出る人はいないと思いますが、仮にそうであっても、②の場合は「現況地積によることができる」のです。

 「地積認定の原則と例外」 (←ここをクリック)

 これは、土地の所有者(納税者)にとって有利な取扱いで、このような考えを「納税者有利の原則」と呼ばれています。

 地方税法や税制度には、このような「納税者有利の原則」による考え方が貫かれています。

◆ 「縄延び」「縄縮み」とは

 「縄延び」という用語は、中世から近世にかけて行われた検地の際に、年貢の負担を軽くするため、実際よりも長めに目盛りを記した縄を使って、地積を小さめに測量したことに由来します。

 長めに目盛りを記せば、実際には1mあるものも、例えば80cmになる訳で、地積が小さめに登録されました。

 明治政府の土地台帳作成の際も、税金の負担を軽くするため、実測面積よりも少なく申告することが多く行われました。

 現在の登記制度も、旧土地台帳制度の地積が表題部に移記された経緯があり、当時の測量の成果が引き継がれている部分があるためです。

 一方「縄縮み」の方は、地主が小作人に小作料を多く納めさせるため、あるいは市街地で売買代金を高くするために故意に公簿面積を大きくした等の説があります。

◆ 地目は土地の利用面から分類

 1号で書いたように、固定資産税の種類は、土地、家屋、償却資産の3つです。

 当面は土地についての連載となりますので、まず固定資産税の土地とは何かということです。

 地方税法341条2項では、「土地とは、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、山林、牧場、原野その他の土地をいう」とされています。

 ここでお分かりのように、地方税法では「土地とは何か」という積極的な定義がされているのではなく、土地の利用面からの分類、すなわち土地の地目を掲げた定義となっています。

 固定資産税の土地の評価は地目ごとに行います。したがって、当然、固定資産評価基準にも地目が定められています。

 固定資産評価基準(土地の評価の基本)

 「土地の評価は、次に掲げる土地の地目別に……田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、雑種地」

 上の地方税法の定義と比べると、若干の違い(塩田が無くなって池沼が入っている)がありますが、ほぼ同じ地目となっています。

 この中で中心となる地目は、宅地、田、畑、山林あたりですが、もう一つ雑種地、実はこれが固定資産税評価の中ではかなり重要な地位を占めています。

 ところで、地方税法と固定資産評価基準では地目の意義の定義がされていません。

 固定資産税の地目の意義は、不動産登記法の地目の定義と同じ、具体的には不動産登記事務取扱手続準則の定めるとおりとされています。

 そこで、参考までに不動産登記法の地目を掲げます。

 不動産登記法の地目…田、畑、宅地、学校用地、鉄道用地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、墓地、境内地、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地

 固定資産税の地目は9種類ですが、不動産登記法はそれよりはるかに多い23種類です。

 ここで、例えば「宅地」という同一の地目がありますが、それは基本的に同じものと考えて差し支えありません。つまり、その分、固定資産税の雑種地の役割が大きいことになります。

 例えば、固定資産税のゴルフ場用地や鉄道用地などは雑種地に含まれることになる訳です。

◆ 不動産鑑定評価での土地の種別

 不動産鑑定評価では、土地の種別(地目とは言いません)は、その属する地域の種別に応じて分類される土地の区分となります。

 土地の種別は宅地、農地、林地、見込地、移行地に分けられます。

 これらは、さらに地域の種別の細分化に応じて、例えば宅地でしたら、住宅地、商業地、工業地等に細分されます。

 例えば、市街化区域で駐車場に利用されている土地は、固定資産税評価では雑種地評価ですが、不動産鑑定評価では宅地評価を行うことになります。

 もちろん、いきなりそう決めるのではありません。

 不動産鑑定評価では、一般的要因を始めとして、地域要因及び個別的要因を分析した上で、その土地の最有効使用が住宅用の土地と判断される、という手順を経る必要があります。

◆ 地目の認定は現況主義

 固定資産税の土地評価上の地目の認定は、現況の地目によります。

 では、土地の地目が登記簿と現況が異なる場合は、どうなるのでしょう。

 例えば、登記簿上の地目が公衆用道路となっているのに、実際には家屋が建っている土地の場合です。

 この土地の固定資産税の地目は、現況主義によって「宅地」と認定されます。

 このような現況主義は、土地の面積は現地調査で見ただけでは判断できませんが、地目は現地調査で認定することが比較的容易であるからです。 

 ところで、固定資産税を担当する市町村の職員は、どの程度の実地調査を行っているのでしょうか。

 地方税法408条に(固定資産税の実地調査)が規定されています。

 「市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の状況を毎年少なくとも一回実地にさせなければならない。」

 「固定資産評価員」及び「固定資産評価補助員」とは、いずれも市町村の固定資産税を担当する職員のことですが、「評価補助員」は担当者全員がなります。また、「評価員」はそのセクションの長があたるのが普通ですが、その市町村の議会での同意が必要とされています。(「評価員」が置かれていない市町村もあります。)

 一般的に、固定資産の実地調査は、申請や問題がある都度行う「随時調査」と、所管地域を一斉に行う「定期調査」が考えられますが、408条は「定期調査」に係る規定です。

 土地の評価替えは三年に一度であるため、実務上は三年単位で評価替えスケジュールが組まれ、「定期調査」もこの中で組み込んで行われるのが一般的ではないかと思います。

 これまで大規模画地の固定資産税評価と不動産鑑定評価を紹介しましたが、では相続税評価ではどうなるのでしょうか。

 相続税評価では、その画地が「広大地」に該当するのかどうかで大きな違いが生じます。

◆ 大規模画地が存する条件

 仮に、画地が次の地域条件に存在することを想定します。(10号の再掲)

 [地域条件等の設定]

・ 用途地域   第1種低層住居専用地域

・ 建ぺい率 50% ・ 容積率 100%

・ 接面道路 4m公道  ・ 面積 850㎡

・ 固定資産税路線価 200000円/㎡

 そして、この大規模画地を有効活用する場合の分割例です。

 「大規模画地の分割例」 (←ここをクリック)

◆ 広大地の評価方法

 広大地の評価方法は、財産評価基本通達(24—4)により、次の算定式が定められています。

   広大地の評価=正面路線価×広大地補正率×地積

   広大地補正率=0.6-0.05×(地積/1000㎡) 

 ただし、広大地評価が認められるには、次の3要件を備えていることが必要です。

(1)その土地が標準的画地に比して著しく地積が大きいこと。

 ※三大都市圏では、500㎡以上とされています。

(2)その土地の最有効使用が戸建分譲素地であること。

(3)その土地を戸建分譲地として開発するに当たり、開発道路等の公共公益的施設用地の負担を要すること(いわゆる「潰れ地」ができること)

 ※ 「相続税の広大地」については、改めて特集を行う予定です。

◆ 具体的な計算

 まず、上の例が3要件に該当するかどうかを検討します。

 設定条件では、①850㎡ですので500㎡以上である②用途地域が第1種低層住居専用地域であり戸建分譲に適する地域である③大規模画地の分割例のとおり「潰れ地」が生じる。

 以上からこの画地は広大地に該当することになります。

 参考までに、固定資産税路線価が200000万円/㎡ですので、これを相続税路線価の水準に換算しますと、200000÷0.7×0.8=228000円/㎡となります。

 広大地補正率ですが、0.6-0.05×(850/1000)=0.56(▲44%)となります。

 固定資産評価基準で計算した減価が▲4%でしたので、相当の開差があることが分かります。

◆ 市町村の「所要の補正」

 固定資産税評価の場合、市町村単位で「所要の補正」が定められ、大規模画地の補正率が定められている自治体もあります。

 参考までにN市の「所要の補正」を紹介します。

 「N市大規模画地補正率表」 (←ここをクリック)

 このN市の「所要の補正」でも、普通住宅地区では3000㎡を超える土地が大規模画地として補正が行われるとされています。

 そうしますと、面積850㎡程度の画地は大規模画地の範囲には入らないということになります。

 つまり、固定資産税評価の場合は、大規模画地を絶対的規模格差と捉える傾向が強いようです。

 不動産鑑定評価や相続税の広大地評価の場合は、大規模画地を相対的規模格差と捉えますので、この点は、固定資産税評価と異なります。

 ただし、N市ではこのようになっていますが、大規模画地の市町村の「所要の補正」は千差万別です。

 市町村によっては、大規模画地を相対的規模格差と捉えている場合もあるようです。

 今まで、固定資産税(土地)の複雑な仕組みを解説してきましたが、これはけっして他人事ではありません。

 なぜなら、毎年送られてくる納税通知書及び課税明細書にその複雑さが記載されているからです。

 しかし、次に掲げる課税明細書の見本と以下の説明を照らしていただければ、固定資産税の複雑な仕組みも恐れるに足りずです。

◆ 課税明細書とは

 毎年4月に固定資産税の納税通知書とともに、課税明細書が送られてきます。

 課税明細書の様式は市町村により多少異なりますが、記載事項はほぼ同じものです。

 ここに土地の小規模住宅用地の課税明細書を掲げます。

 「課税明細書(小規模住宅用地)」 (←ここをクリック)

◆ 固定資産税の計算

 小規模住宅用地の仕組みは複雑ですが、上記の課税明細書の例にしたがって計算します。(平成25年度の例です)

 まず、この土地の「価格」は⑦に記載されていて、19325697円と分かります。

 この土地の面積は⑥の「課税地積」になり、160㎡とあります。

 平米単価は19325697円÷160㎡で約120000円/㎡となります。

 固定資産税の土地の価格は、地価公示価格(市場の取引水準)の7割ですので、ここから逆に地価水準を知ることができます。120000÷0.7で約170000円/㎡です。

 面積160㎡は200㎡以下の小規模住宅用地ですので、⑦の「価格」を1/6にした価格が「本則課税標準額」⑩の3220949円になります。

 次に「負担水準」を求めますが、「負担水準」は「前年度課税標準額」⑧÷「本則課税標準額」⑩で③の93%になります。

 平成25年度の例ですから、93%は据置ゾーンで「今年度課税標準額」⑫は「前年度課税標準額」⑧と同じ3020000円となります。

 「小規模住宅用地の負担水準」 (←ここをクリック)

 最後に、固定資産税の税額は「今年度課税標準額」⑫の3020000×1.4%を乗じて「固定資産税相当額」⑭の42280円が求められます。

 実際の税額は、端数処理をして42,200円となります。

 ※ 都市計画税は、⑦を1/3にする以外は⑨、⑪、⑬、⑮と同様の計算方法により求めることができます。

◆ 大規模画地の価格形成要因

 ところで、大規模画地とはどのような土地を指すのでしょうか。

 大規模画地は、面大地や広大地(相続税での呼称)とも言われます。

 これには、画地規模が社会通念上絶対的に大きい場合と標準的画地規模と比較して相対的に大きい場合が考えられます。

 不動産鑑定評価の場合は、用途別に標準的画地規模を想定し、それとの比較で大規模画地を考えるという相対的な概念として把握するのが一般的です。

 土地の規模が価格へ影響する要因として、質的要因と量的要因が考えられます。

◆ 規模格差の質的問題

・潰地等……前号の大規模画地の分割例(下図)のように、標準的画地に分割利用した場合、道路が必要となりますし、更に大きな画地では公園等の公共潰地が生じます。また、造成工事費や負担金等も生じて標準的画地規模よりも価格が下がります。

 「大規模画地の分割例」 (←ここをクリック)

・用途の多様性、高度利用……規模が大きい場合は、高層マンション、店舗・レジャー施設、学校等への用途の多様性、高度利用が可能となります。

◆ 規模格差の量的問題(市場性の問題)

 不動産を購入する場合は、総額が予算の範囲内であることが必要になります。

 この場合、単価と総額の問題とも関連してきます。例えば、総額が張るから割安になる、総額が小さいから買い易く割高になるなどです。

 しかし、一般的には総額が大きくなると、個人では手が出ないという面から買い手が限定される、つまり市場性が狭くなる傾向があります。

 もちろん、地価動向や景気状況とも関係する問題でもあります。

◆ 固定資産税の「所要の補正」

 固定資産税の評価は、固定資産評価基準により全国的に一元化されるとともに、市町村ごとに「所要の補正」が定められています。

 この大規模画地に係る土地の「規模格差補正」を「所要の補正」として定めている市町村は全国的に1割にも満たないのではないかと思われます。(平成15年当時で5%弱)

 「所要の補正」は市町村ごとに「◯◯市土地評価事務取扱要領」で定められています。

 固定資産評価基準では、大規模画地の規模格差補正率は定められてはいません。

 資産評価システム研究センターでは、何回かこのテーマで研究会が行われていますが、土地の規模格差については「奥行価格補正率」で足りている、との見解が出されています。

 「奥行価格補正率表」 (←ここをクリック)

 しかし、 市町村単位で「所要の補正」として、大規模画地補正率が定められている場合においても、例えば普通住宅地区では「面積が3000㎡以上の場合に適用される」などで、この例のような850㎡程度の面積では適用されないことになります。

◆ 固定資産税の画地計算の方法

 今回と次号で、固定資産税評価の画地計算の具体的な方法を紹介するとともに、面積が大きい土地(大規模画地)がどの程度の減価になるか、その上で不動産鑑定評価ではどの程度の減価になるかを比較します。

 まずは次のような大規模画地850㎡を想定します。

 この地域の標準的画地は120㎡とします。

 [地域条件等の設定]

・ 用途地域   第1種低層住居専用地域

・ 建ぺい率 50% ・ 容積率 100%

・ 接面道路 4m公道  ・ 路線価 200000円/㎡

 「大規模画地の例」 (←ここをクリック)

 まず、標準的画地の画地計算を行います。

 画地計算の基本は、路線価×奥行価格補正×間口狭小補正×奥行長大補正です。

 200000円/㎡×奥行価格補正1.00(普通住宅地区の12m)×間口狭小補正1.00(普通住宅地区の10m)×間口狭小補正1.00(奥行/間口1.2(2未満))×120㎡=24000千円。

 「奥行価格補正率表(固定資産税)」 (←ここをクリック)

 ※奥行価格補正とは…宅地の価格は、道路からの距離が長くなるにしたがって、また、奥行が著しく短くなるにしたがって減価するため、奥行距離に応じて補正します。

 「間口狭小・奥行長大補正率表(固定資産税)」 (←ここをクリック)

 ※間口狭小・奥行長大補正とは…間口が一定限度以下の狭小な宅地、又は奥行と間口の関係が不均衡な状態にある画地は、宅地本来の効用を果たすことが困難なため利用価値が減少します。

 次に、大規模画地の画地計算です。

 200000円/㎡×0.96(奥行34m)×1.00(間口23.5m)×1.00(奥行/間口1.4<2)×850㎡≒163000千円。

 この結果から、固定資産評価基準の補正率のみの適用では、大規模画地は標準的画地と比べて、単価で▲4%減価するのみです。

 もっとも、「所要の補正」により、「大規模画地の補正率」を定めている市町村もあります。その場合は、上記とは異なる評価となりますのでご注意ください。

◆ 大規模画地の活用例

 設定条件により、この地域は第1種低層住居専用地域の建ぺい率50%、容積率100%、標準的画地(面積)120㎡ですから、標準的使用は戸建て住宅用の敷地です。

 では、大規模画地はどうでしょうか。

 アパート建築が不可能ではありませんが、この土地を最も有効に活用する方法は120㎡程度の土地を6画地に分割して使用することと考えられます。鑑定評価で言う最有効使用の考え方です。

 「大規模画地の分割例」 (←ここをクリック)

 この画地分割の例では、6画地を有効な宅地として配置するためには、通路を設ける必要があります。(厳密には隅切りも必要です。)

 例えば、標準的画地を価値100とした場合、4m公道に接している2宅地はおおよそ105、中間画地の2宅地は90〜95、奥の2宅地は75〜80程度というところでしょうか。(これは、おおまかな査定で正式な鑑定評価ではありません。)

 ところで、3大都市圏では面積が500㎡以上になると、開発行為となり、それなりの手続き等も必要となります。

 また、総額が大きくなると、個人ではなかなか買うのが難しく、開発業者が主な購入者となります。そうなりますと、市場流通性性が狭く(劣ることと)なり、実際の市場取引では、土地の単価はかなり減価されるのが通常です。

 不動産鑑定評価でこの大規模画地を評価した場合、「規模が大きい」減価は▲ 20〜30%と考えられます。

 (次号に続きます)

◆ 小規模住宅用地の負担調整措置

 固定資産税の税額は、その年の課税標準額に税率を掛けて求めます。

 税率は、固定資産税が標準税率1.4%、都市計画税が制限税率(上限)0.3%とされ、市町村の条例で多少これと異なる税率もあります。

 問題は、課税標準額をどのように算出するかです。

 商業地の負担調整措置の仕組みを紹介しましたが、固定資産税の仕組みとして、負担調整措置という複雑な仕組みが設けられています。

 今回は小規模住宅用地の負担調整措置の仕組みを紹介します。

 次の「小規模住宅の負担水準」(概念図)をご覧ください。

 「小規模住宅用地の負担水準」 (←ここをクリック)

 その年の課税標準額を求めるには、本則課税標準額に対する前年度の課税標準額の割合(これを負担水準と言います)を求め、その割合に応じて対応が変わってきます。

 固定資産税の価格は地価公示価格の7割です。商業地の場合は、価格=本則課税標準額でしたが、住宅用地の場合はそうなっておらずに、200㎡までが小規模住宅用地で1/6,200㎡を超える部分が1/3を乗じたものが本則課税標準額になります。すなわち価格が本則課税標準額と一致しません。

◆ 平成25年度の仕組み(経過措置)

 次に負担水準を求めますが、概念図にあるとおり、平成25年度(経過措置)と平成26年度以降とでは対応がやや異なります。

 まず平成25年度の場合ですが、負担水準の割合が90%を超えていれば、24年度のままの課税標準額どおり据置く、つまり同じ税額になります。また90%未満ですと、「24年度課税標準額+25年度本則課税標準額の5%」で求めた額が25年度の課税標準額となります。

◆ 平成26年度以降の仕組み

 次に、平成26年度以降は新しい仕組みに変わります。90%以上の据置措置が廃止され、本則課税標準額一本に合わせていくことになります。つまり、「前年度課税標準額+本則課税標準額の5%」が本則課税標準額を上回る場合は本則課税標準額とし、下回る場合は本則課税標準額に達するまで上げていくことになります。

 平成26年度以降このような仕組みに変える背景としては、住宅用地の負担の均衡化がかなり進んできたということがあります。平成6年度から間もなく20年、住宅用地はようやくゴールの姿が見えてきたと言えます。

◆ 小規模住宅用地の特例

 住宅用地のうち200㎡以下のものは、固定資産税の本則課税標準額が1/6になります。これを小規模住宅用地の特例と言います。

 これが200㎡を超える部分は単に住宅用地と言い、本則課税標準額は1/3になります。

 例えば、300㎡の土地に居住用の家屋(専用住宅)が建っている場合は、200㎡までが1/6、残りの100㎡が1/3となります。

 「住宅用地の減額特例」 (←ここをクリック)

 本則課税標準額とは、本来は原則として価格と同じになります(商業用地ではそうです)が、住宅用地の場合は価格に特例率(1/6、1/3)を乗じた額になります。

 価格は地価公示価格の7割ですから、小規模住宅用地は0.7÷6≒0.12となり地価公示価格ベースで約1.2割、住宅用地が約2.3割となります。(商業用地は4.9割)

 土地の固定資産税の仕組みは複雑で、本則課税標準額のほかに単に課税標準額という用語も出てきます。課税標準額とは、実際の税額を計算するための基礎となる額で、原則として前年度の課税標準額に負担調整措置を適用して求められた額です。

◆ アパートは部屋ごとに適用

 住宅用地の特例は、アパートの場合は部屋ごとに特例率が適用されます。

 1棟の家屋内に世帯が独立して生活を営む部分が2以上の場合は、区画された部分がそれぞれ住居となるからです。

 例えば、500㎡の土地に8戸(部屋)の2階建てアパートがあるとします。この場合は、1戸ごとに200㎡相当が1/6になりますので、8戸×200㎡=1600㎡までが1/6になり、500㎡すべてが1/6になります。

 「アパートの減額特例」 (←ここをクリック)

◆ 住宅用地は申告が義務づけ

 固定資産税は、役所が一方的に評価し課税する、これを賦課課税と言います。(相続税は申告に基づいて課税される申告課税です。)

 おそらく、土地は先祖代々から、家屋は新築以来、特に申告しなくても課税されているのではないでしょうか。

 ところが、(小規模)住宅用地は、役所が把握しきれないことから、土地所有者に住宅用地かどうかを申告させることができるとされています。(地方税法384条)

 具体的には、市町村の条例で義務づけられています。

 ※ 参考—Y市市税条例 第○条

 「住宅用地の所有者は、毎年1月1日現在におけるその住宅用地について、次に掲げる事項を、1月31日までに市長に申告しなければならない。…

(1)住宅用地の所有者の住所及び氏名または名称

(2)住宅用地の所在及び地積

(3)住宅用地の上に存する家屋の所在、所有者、種類、構造、床面積、居住の用に供する部分の床面積及び居住の用に供した年月日並びにその上に存する住居の数

(4)その他市長が必要と認める事項

 例えば、アパート敷地の隣に駐車場があるとします。そして、この駐車場の利用者は全員がアパートの住人としますと、この場合、アパートの敷地とともに、駐車場の敷地も(小規模)住宅用地の特例の対象になります。

 ところが、役所では現地調査だけではアパート住人が利用する駐車場かどうか分からないため、土地所有者に申告を義務づけ(申告書を送付)ています。

◆ 申告が無いと特例が適用されないか

 申告があれば(小規模)住宅用地を適用されますが、申告が無いと適用されないというケースが実際にあります。

 事実、筆者も相談を受けたことがあります(筆者出身市以外の自治体です)。

 ここで問題となるのは、そもそも固定資産税は申告が無くても評価され課税される賦課課税ではなかったのか。それなのに、(小規模)住宅用地は「申告が無いと特例が適用されないのはおかしいのではないか」ということです。

 役所の担当者からすると「申告書を送ったのに、申告が無かったので適用していない」、これに対して納税者は「そもそも固定資産税は申告は関係ないのではないのか」と主張します。

 さて、どちらが正しいのでしょうか。

 この問題も裁判で争われていまして、下級審ですが判例があります。

 平成4年2月24日の浦和地裁は、「申告がないからといって、減額特例を適用しないとすることが許されるものでないことは課税の当局者にとって見易い道理である」との判決が出されています。

 そして平成18年大阪高裁では、やはり行政側に過失があるとしながらも、納税者にも正当な理由なく申告をしなかったことにも過失を認め、3割の過失相殺を認めています。

 実は、この下級審ではありますが、浦和(現さいたま)地裁の判決は大きな衝撃を呼びました。それは、「国家賠償法による損害の賠償」を認めたからです。(この件は「冷凍倉庫の最高裁判決」の中で紹介します)

◆ 市街地宅地評価法(路線価方式)

 市街地宅地評価法は、主に都市部の住宅が密集した地域における、土地の固定資産評価に用いられるもので、路線価方式とも言われます。

 路線価方式は、道路1本ごとに価格をつけ、1つの同じ道路に接する土地について、すべて同一路線価から計算する方法です。

 この方式は、短時間に大量の土地評価ができること、評価後の価格に大きなばらつきが出ずに公平な課税が可能であること、地域ごとの評価バランスがとりやすいこと、などの利点があります。

 まず宅地を用途地区別に区分し、その用途地区内で街路の状況、公共施設等の近接の状況、宅地の利用状況等からみて価格事情がおおむね同等と認められる地域(状況類似地域)ごとに区分します。

 次に、主要な街路に接する標準的な1㎡当たりの適正な時価に基づいて、街路ごとに路線価を付設し、これを基礎として画地計算を行って、それぞれの土地の評点を求めます。

 ここに、「市街地宅地評価法の流れ」と「路線価方式の画地計算」を掲げますので、参考にしてください。

 「市街地宅地評価法の流れ」 (←ここをクリック)

 「路線価方式の画地計算」 (←ここをクリック)

◆その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)

 主に市街地的形態を形成していない地域における宅地(いわゆる村落地域)の評価は、原則としてこの「その他の宅地評価法」によります。

 道路ごとに路線価を付設せずに、状況類似地区の区分とその中で標準宅地を選定し、土地の宅地比準を行い求める方法です。

 横浜市内では、市街化調整区域内でも路線価方式を採用されていますが、筆者が県内のある町(自治体)へ鑑定の現地調査で訪れたとき、比較的に市街地的形態をなしている地域でも「その他の宅地評価法」を採用していたので驚いたことがありました。

 宅地の価格事情がほぼ同等で広域に亘るため、路線価を付設する必要性が無い等から路線価方式を採用しない訳ですが、(数年前の調査ですが)全国の市町村の8〜9割で「その他の宅地評価法」を採用しているとのことです。

 路線価方式であれば、路線価からある程度の価格水準を知ることができる(路線価を0.7で割り戻す)などメリットがあります。

 路線価方式への移行を検討している市町村も多いと聞きますが、移行時に相当な負担がかかる等の課題もあるようです。

 もちろん「その他宅地評価法」が適している市町村もありますので、その市町村の実態に合う方法を採用される必要はあります。

◆ 市町村の「所要の補正」

 市町村では、固定資産評価事務の取扱規程として、評価事務取扱要領を定めていますが、「所要の補正」は、この市町村ごとの取扱要領で定められています。

「所要の補正」とは、市街地宅地評価法における画地計算法の附表、つまり補正率の適用において、評価の均衡を図るため、個別の画地ごとに補正を行うことです。 (「その他の宅地評価法」では比準表の補正になります。)

 「所要の補正」の根拠は、固定資産評価基準にあります。

 固定資産評価基準第3節「宅地-各筆の宅地の評点数の付設」

 「各筆の宅地の評点数は、路線価を基礎とし、「画地計算法」を適用して付設するものとする。この場合において、市町村長は、宅地の状況に応じて、必要があるときは、「画地計算法」の附表等について、所要の補正をして、これを適用するものとする。」

 「所要の補正」の例としては、財団法人資産評価システム研究センター「土地評価に関する調査研究」(H16年度)によると、次のようなものがあります。

(「所要の補正」例)

 接面街路との高低差や構造等、水路を介して道路に接する宅地、横断歩道橋が設置、鉄軌道からの騒音振動、急傾斜地、地下阻害物のある宅地、地上阻害物のある宅地、私道部分の土地、面積が狭小あるいは広大な土地…。

 固定資産評価基準の附表は10数項目ですが、市町村によっては、それより多い「所要の補正」が定められているのが普通です。

 ところで、この土地評価事務取扱要領は、非公開文書にはされていない筈ですので、市町村の担当窓口で見せてもらうことが出来ると思います。 (ホームページで公開している市町村もあります。)

 自分の固定資産税はどのように評価されているのか、その根拠は何かなど関心を持つことは非常に大切です。

 それを「納税者の協力」と言うかどうかは別としても、固定資産税は役所が一方的に評価・課税する賦課課税です。

 この賦課課税制度にあっては、納税者の協力があってこそ適正な評価・課税が実現できるのです。

 この考えは筆者個人の考えではなく、固定資産税行政を担うものの共通の思いであると信じたいと思います。

◆ 固定資産は原則全ての土地を評価

 固定資産税評価の基本となる地価公示、都道府県地価調査及び標準宅地の評価については、不動産鑑定士等の鑑定評価により、全体の均衡化及び適正化が図られています。

 しかし、固定資産税(土地)が課税されるのは標準宅地だけでなく、原則として、すべての土地、全国で約1億6千万筆が評価され課税されています。

 筆者は、固定資産税に関する苦情や相談をいただく機会が少なからずあります。

 「自分の固定資産税が安くならないか」、「この土地の評価額は高いのでは」、「評価が間違っているのではないのか」等々です。

 今回のテーマは極めてプロ向きですが、「不動産鑑定評価は固定資産税評価の適正な時価を証明できるか」です。個々の土地の固定資産税評価に対して、不動産鑑定で評価した価格が適正な時価である、と主張できるかということです。

◆ 相続税評価では時価証明も可能

 何故このような問題提起をするかと言えば、不動産鑑定士から見て、固定資産税評価の基準(補正率等)に甘さを感じることがあるからです。

 例えば、急激な崖地部分がかなり占めているような土地、形状が極めて悪く使い勝手が悪い土地、面積がかなり大きい土地など、鑑定評価であれば評価額をもっと下げるのになどと感じることもあります。

 同じ資産税でも相続税評価の場合は、不動産鑑定書による時価証明(税務署に鑑定書を提出)することも認められる場合もあります。

◆ 鑑定評価で固定資産税評価を修正するのは難しい

 ところが、固定資産税の場合は、固定資産評価基準に従って評価されている限りは、不動産鑑定評価でそれを覆す(適正な時価を証明する)のは難しいと考えられます。

 「固定資産税の課税標準となるべき価格は、適正な時価をいうものであり、固定資産評価基準は、適正な時価を求めるための手続き、方法を規定しているのであって、適正に運用される限り、これによって求められたものは適正な時価と考えられる」との解釈が一般的なものとなっています。

 相続税評価では時価証明が認められる可能性があるのに、固定資産税では難しいのは、固定資産評価基準に法的拘束力があるからと考えられます。

 では、固定資産税評価に対しては何も言えないのかいうと、決してそのようなことはありません。これは、あくまでも不動産鑑定評価との関係についての考察に過ぎません。

 確率として多い訳ではありませんが、固定資産税評価が基準どおり適正に運用されていない場合や、いわゆる「課税誤り(ミス)」と呼ばれるものが、マスコミ報道で後を絶たないのも事実なのです。

◆ 平成25年7月12日最高裁判決

 ごく最近、最高裁第二小法廷で次のような固定資産税に関する注目すべき判決が出されました。

 「評価対象の土地に適用される評価基準の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、当該土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格がその評価方法に従って決定された価格を上回るものでない場合には、その登録価格は、その評価方法によっては適正な時価を適切に算定することのできない特別の事情の存しない限り、同期日における当該土地の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るものでないと推認するのが相当である」

 とても難解な言い回しですが、要は「評価基準に従っても、その評価方法に一般的合理性が欠けている場合は、そもそも客観的な交換価値を上回るものでないとは言い切れない。……」(筆者注)と、平成15年6月26日の最高裁判決(客観的交換価値)を一段超えたとも言える判決であります。

 ※ この件については、後日改めて解説したいと思います。

◆ 固定資産税評価の仕組み(再掲)

 これまでの固定資産税評価に関する内容を要約しますと

① 固定資産税の価格は、適正な時価をいう。

② 適正な時価とは「正常な条件の下において成立する取引価格(客観的交換価値)」である。

③ 固定資産税の価格が②の客観的交換価値を上回る部分は違法とされる。

④ 総務大臣は、評価の基準、実施の方法、手続きを定めた固定資産評価基準を定め告示しなければならない。

⑤ 市町村長は、この固定資産評価基準により固定資産税の価格を決定しなければならない。

⑥ 固定資産評価基準を適正に運用する限りは、これによって求めた価格は適正な時価と考えられる。

⑦ 固定資産評価基準により求める固定資産税の課税標準となるべき価格は、地価公示価格の7割を目途とされている。

 ここで不動産鑑定評価の観点から少し言わせていただきますと。。

 地価公示価格は、不動産鑑定士が鑑定評価で求める正常価格になります。

 そして、鑑定評価の正常価格の意味は、②の「正常な条件の下において成立する取引価格」と同義であり、となると「適正な時価」とも同義ということになります。

 さらに、⑥固定資産評価基準によって求められた価格も「適正な時価」であり、⑦それは地価公示価格の7割で、鑑定評価の用語に翻訳すればこれも正常価格となる訳です。

 ところで、不動産鑑定評価の正常価格にも一定の幅があることは認めるところですが、仮にその幅が3割であると言われれば、それは大き過ぎると言わざるを得ないでしょう。

 平成15年最高裁判決の③「固定資産税の価格が賦課期日における客観的な交換価値を上回れば違法となる」との意味は、地価公示価格の水準を上回れば違法という意味に解釈しますと、これは理解できるところです。

 このように見ると、やはり地方税法上の「価格」は2つあると思わざるを得ません。

 1つは①の価格で鑑定評価レベルの「正常な価格(の上限)」、もう1つは⑥の文言どおりの「固定資産税の(課税標準となるべき)価格」、この2つの「価格」です。

 とは言え、納税者からすれば、幅が大きくても固定資産税の価格が低くなれば歓迎されるのが一般的で、「適正な時価」の下限の議論が進まないのも現実であります。

◆ 市街地宅地評価法

 固定資産税評価の評価方法は、「市街地宅地評価法」と「その他宅地評価法」の二つがあります。

 市街地宅地評価法とは、市街地地域に適用される方法で、街路に固定資産税路線価が設定され、この路線価に基づいて個別の土地が評価される方法です。

 この路線価は市場の取引価格水準の7割を目途とされていますので、逆に路線価から市場価格を推定することが出来ます。

 例えば固定資産税路線価が120,000円/㎡の場合は、市場価格の目安は120,000÷0.7で約171,000円/㎡となります。

 ただし、この価格はあくまでも、街路の標準的な目安としての価格で個々の土地の価格ではありません。個々の土地は個別的な要因があり、その要因等を考慮しないと「その土地の価格」とはなりません。(この点は次号で)

 ところで、標準宅地の適正な時価を求める根拠規定は、固定資産評価基準の第12節の経過措置にあります。

 「標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の7割を目途として評定するものとする。」

 ここで、「当分の間」とありますが、法律でよく使われる表現で、事実上恒久的に施行される場合も無い訳ではありません。

◆ 平年度の下落修正措置

 固定資産税の評価は3年毎の評価替えで、本来、平年度は価格が据え置かれます。

 しかし、現在、平年度に地価の下落が見られた場合は、下落修正措置が行われています。

 この根拠は、同じく固定資産評価基準の経過措置です。

 「宅地の価額においては、市町村長は、◯年1月1日から◯年7月1日までの間に標準宅地等の価額が下落したと認める場合には、…修正を加えることができる。」「宅地の価額については、都道府県地価調査及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価等を活用し…下落状況を把握するものとする。」 とあります。

◆ 直近はH27年度評価替え

 不動産鑑定士は、毎年、地価公示価格と都道府県地価調査価格の鑑定評価業務に携わるとともに、3年に1度、固定資産税の評価替えの標準宅地の適正な時価の評定に係わることになります。

 直近の3年に1度の固定資産税評価替え年度は、平成27年度になります。

 そして、この場合の賦課期日は平成27年1月1日、価格調査基準日は1年前の平成26年1月1日となり、そのための不動産鑑定士による標準宅地の鑑定評価作業は今年度から始まることになります。

 「固定資産評価基準(総務省)」 (←ここをクリック)

◆ 固定資産税の負担調整措置

 平成6年度から、固定資産税が地価公示価格の7割を目途とされたことは何回も触れましたが、実はこの時期はバブルが弾けて地価が下落傾向を辿り始めた時期でもありました。

 つまり、地価が下落しているにも拘わらず、固定資産税の課税標準額は上昇するという状況が生じたのです。

 「地価が下がっているのに何故固定資産税は上がるのか」とあらゆる方面から言われ、行政に携わっていた者(筆者も含めて)としては、「大きな試練だなあ」と内心嘆いたものでした。

 ここに「地価と固定資産税の推移」の概念図(商業地の例)を掲げますので、ご覧ください。

 「地価と固定資産税の推移」 (←ここをクリック)

◆ 価格と課税標準額との乖離

 平成6年度に地価公示価格の7割を固定資産税の価格とすることにしたものの、それまで実質的に1〜2割程度であったものを一気に上げることが出来ないことから、少しづつ上げていくという経過的措置を採用した訳です。

 この図で、地価公示価格(青色)とその7割(負担水準では100%)の固定資産税の価格は同時に徐々に下がっているのに、固定資産税の税額を計算する元になる課税標準額(赤色)は逆に少しづつ上がっています。

 本来は、固定資産税の価格と課税標準額は一致すべきものですが、いきなり一致させるには衝撃が大き過ぎることから、緩衝措置ともいうべき仕組みを設けたため、この二つが乖離する状況となっています。

 この緩衝措置の仕組みとは、前年度の課税標準額の到達点に応じて「引下げ」「据え置き」「引上げ」ゾーンに振り分ける負担調整措置のことです。

 残念ながら、この負担調整措置により、固定資産税(土地)の仕組みは更に複雑で分かりにくいものとなっているのです。

◆ 商業地の負担調整措置

 上の概念図「地価と固定資産税の推移」の例で少し説明します。

 例えば、前年度(24年度)課税標準額が950万円、今年度(25年度)の価格(本則課税標準額)が1300万円としますと、今年度価格に対する前年度課税標準額の割合は、950万円/1300万円=73.1%となり、70%まで引下げる「引下げゾーン」に入ることになります。したがって、25年度の価格は1300万円×70%=910万円となります。

 商業地の価格は、地価公示価格の70%(負担水準では100%)が固定資産税の価格となり、更にその70%が商業地の上限とされています。その結果、商業地の実際の上限値は70%×70%=49%で地価公示価格の49%が上限価格となります。

 固定資産税の評価割合は地価公示価格の7割ですが、商業地の場合では、実際には地価公示価格の約5割ということになります。

 住宅用地の場合は更に低くなりますが、これは別の機会に説明します。

 「負担水準の仕組み(商業地)」 (←ここをクリック)

 それまで同一の固定資産評価基準に基づいて評価を行っていたにもかかわらず、全国的にも市町村内部でも、固定資産税の負担水準のバラツキがあり、固定資産税の均衡化・適正化が満たされていない部分がありました。

 負担調整措置とは、これを長期的な視点から是正しようとの仕組みでもあります。

 この仕組みが実施され、部分的な変更はありましたが、ようやく20年経過しようとしている今、「地道な努力」が実りつつあるのではないかと思っています。

◆ 固定資産税評価は3年サイクル

 ところで、固定資産税の評価は3年毎に評価替えを行う、いわゆる3年サイクルです。

 地価が右肩上がりに上昇しているときは、2年間据え置かれることにより、平年度の税額はそのままで、納税者にとってはメリット(?)があることになります。

 しかし、逆に3年の間に地価が下がっている右肩下がりの場合(今までがそうですが)は、2年間高い価格が据え置かれることになります。

 そこで、右肩下がりの地価下落が見られた場合には、評価替年度以外の平年度においても固定資産税を引き下げるという下落修正措置が為されています。

 「固定資産税評価の3年サイクル」 (←ここをクリック)

◆ 固定資産税の二つの価格?

 固定資産税の価格は、地方税法341条5号の「適正な時価」と403条1項の「固定資産評価基準によって決定された価格」とあたかも二つの「価格」があるようです。

 しかし、実務上の解釈は一貫されています。

 「固定資産税の課税標準となるべき価格は、適正な時価をいうものであり、固定資産評価基準は、適正な時価を求めるための手続き、方法を規定しているのであって、適正に運用される限り、これによって求められたものは適正な時価と考えられる」(要説固定資産税)

 「適正に運用される限り」は固定資産評価基準と「適正な時価」は矛盾しないということです。

 繰り返しになりますが、固定資産税の評価割合は、それまでは実質的に地価公示価格の1〜2割程度であったものが、平成6年度から地価公示価格の7割を目途とされました。

 もっとも、昭和50年代の地価安定期における固定資産税の評価割合が7割程度であったことを前提にすれば、むしろ昭和60年代の地価高騰(バブル)期以降の方が不正常な評価割合であったと考えるべきなのかもしれません。

 しかし、平成6年度の制度改正により、固定資産税の不服申立は、それまで全国で6千件弱であったものが、一挙に3倍を超える件数になり、裁判で争われる件数も増えました。

◆ 客観的交換価値を超える部分は違法

 では、平成6年度までの固定資産税の「適正な時価」とはどのような解釈であったのでしょうか。

 ここに代表的なものとして、昭和34年6月16日の静岡地裁判決を紹介します。

 「固定資産の価格、すなわち、その適正な時価とは本来その通常な取引価格を指すものと解すべきであるが、評価は常に公平になされなければならないから、決定された価格が通常の取引価格を著しく超える場合はもちろん、これを超えない場合でも、課税政策上その他の正当な理由なしに、他とはなはだしく均衡を欠く場合には、その価格は適正でなく、その決定は違法となるものである。」

 このように、「はなはだしく均衡を」を欠かない限りは違法とはならなかった訳です。

 これが、平成6年度以降7割評価となったことにより、「適正な時価」の解釈は次のようになりました。

 平成15年6月26日の最高裁判決です。

 「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる。」

 この最高裁判決の最大のポイントは「客観的な交換価値を上回ればその価格は違法となる」というものです。

 ただし、この判決の背景としては、やや特殊状況もあったと考えられます。

 当時は、それまでのバブルが弾けて、東京都内の一部では、1年間に30%を超える地価の下落がありました。

 そのため、地価公示価格より30%低い固定資産税の評価割合であっても、それを超える下落率には追いつかなかったという特殊状況があったのです。

 この最高裁の判決以降、固定資産税の価格は「客観的な交換価値」で、それを上回る部分は違法となるとの解釈が定着しましたが、実はこの判決は特殊状況における判決でもあったのです。

◆ 固定資産税評価7割の根拠

 前号で、固定資産税の評価額は地価公示価格及び不動産鑑定士の鑑定評価から求められた価格の7割を目途にされている、と書きました。

 この地価公示価格の7割とされた理由は、当時の相続税評価(地価公示価格の8割)や昭和50年代の地価安定期における地価公示価格に対する固定資産税の評価割合等から定めたとされています。

 また、判例等では、この7割評価の理由として次のような見解が示されてきました。

① 固定資産税評価は、地価公示価格に含まれる合理的期待(例えば新駅が出来る将来期待等)要素を排除する。

② 固定資産税評価は大量一括評価の面もあり、評価の安全性をみた堅めの価格とする。

③ 地価下落時での、賦課期日と価格調査基準日(1年前)とのタイムラグを調整する。

 筆者としては、3割の差が妥当かどうかは別としても、評価割合を設けた理由としては、②の「評価の安全性」が最もしっくりくるように思っています。

◆ 固定資産税評価基準の法的拘束性

 では、そもそも固定資産税の評価額はどのように決定されるのでしょうか。

 地方税法349条1項によると「土地又は家屋に課する固定資産税の課税標準は基準年度における賦課期日の価格として登録されたもの」(省略は筆者責任)とあります。

 同法388条1項で「総務大臣は固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続き「以下「固定資産評価基準」)を定め、これを告示しなければならない。」

 同法403条1項で「市町村長は固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

 つまり、市町村長は総務大臣により告示された固定資産評価基準により、固定資産税の評価額(価格)を決定しなければならないのです。

 この403条1項は、かつて(昭和37年以前)は固定資産評価基準に「準じて」決定すべきとなっていましたが、現行は「基準によって、決定しなければならない」とされています。

 したがって、固定資産税の評価額決定に対する固定資産評価基準の法的拘束性がより強まったと言えます。

 ここに、昭和57年3月30日福岡地裁判決を掲げます(要旨)。

 「告示とは、公示を必要とする行政措置の公示の形式である。固定資産評価基準は、法388条1項に基づき、その明示的具体的委任を受けて、自治大臣が固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続きについて市町村間の評価の統一的均衡化を図るために発したものであって、昭和37年改正法による改正前の法403条が「準じて」としていたものを、「よって」固定資産の価格を決定しなければならないと」定めて、…市町村長は、固定資産評価基準に従った評価をなすべく義務づけられているものと解するのが相当である。その意味で、固定資産評価基準は、法的拘束力を有しているものといわなければならない。」

 では、固定資産税と同じ資産評価の相続税ではどうでしょうか。

 相続税の財産(土地)評価においては、国税庁により財産の評価に関する取扱方法の全国的統一を図るための「財産評価基本通達」が発せられていますが、相続税法の規定により委任されている訳ではありません。

 相続税評価において、仮に減価要素の強い土地などの場合に、不動産鑑定評価によって時価証明が認められる(可能性がある)のも、このような仕組みからと考えられます。

 固定資産税は、全国一律の大量一括評価ですので、この固定資産評価基準により「固定資産税の課税標準となるべき価格」が決定されます。 

 併せて市町村ごとの詳細部分については「所要の補正」として定められてもいます。

◆ 価格=適正な時価をいう

 ところで、地方税法には、固定資産税の価格に関するもう一つ規定があります。

 地方税法341条5号で「価格 適正な時価をいう。」との規定です。

 この地方税法で規定される「二つの価格」(?)の関係はどうなのでしょうか。

 実は、平成8年頃から、この固定資産税の「適正な時価」をめぐって、納税者側、行政側ともに「厳しい時期」を迎えたのでした。

 筆者は、長年地方公務員として不動産関係や固定資産税の仕事に携わってきました。

 本講座は、「役に立つ固定資産税講座」をテーマにして、これまでのセミナー等での講師経験も活かしつつ、出来るだけ分かり易い説明に心がけるつもりです。

◆ 固定資産税とはどのようなもの

 では、そもそも固定資産税とはどのような税なのでしょうか?

 固定資産税は「土地と建物に課税される税金」と答える人がほとんどですが、これは正確ではありません。

 固定資産税とは、土地、家屋(固定資産税の場合は建物ではなく家屋と呼びます)及び償却資産の3つの資産に課税される税です。

 固定資産税とは別に償却資産税があると勘違いされがちですが、償却資産税という税目はありません。償却資産税ではなく「固定資産税のうちの償却資産」というのが正解です。

 固定資産税は「シャウプ勧告」に基づき、昭和25年に現行の地方税法が制定されたのに伴い創設されました。

 もっとも、土地に対する課税は古くから、年貢制度やその後の地租(国税)などの制度で行われていました。

 固定資産税は全国どこでも土地や家屋を所有していれば(非課税を除いて)課税される資産税で、基本的に役所が一方的に評価し課税するもので、これを賦課課税と言います。(償却資産は原則として申告を前提にしています。)

 これに対して相続税は、申告に基づく申告課税と言います。

 全国で課税対象となる固定資産税の土地の数はおおよそ1億8千万筆、家屋は約6千万棟とされ、基本的に全国すべての土地及び家屋が評価され課税されます。

 そのため固定資産税評価は「大量一括評価」とか「大量画一評価」とも呼ばれ、そこでは同じ基準の下に同じ方法で評価されることが要請されます。

 その基準となるのが地方税法と固定資産評価基準です。そして地方税法と固定資産評価基準の下に市町村ごとに、評価関係では事務取扱要領が定められ、課税関係は条例、規則が定められています。

◆ 土地の公的価格の一元化

 ところで、「土地の公的価格(評価)の一元化」という言葉を耳にされたことがあると思います。また「一物四価」とも言われます。

 土地の公的価格、「一物四価」とは、通常①地価公示価格、②都道府県地価調査価格、③相続税評価額、④固定資産税評価額の4つの価格を指します。

 ここで、①と②は地価公示法及び国土利用計画法に基づき、一般の土地取引の指標となるべきもので、不動産鑑定士及び不動産鑑定士補(以下「不動産鑑定士等」)の鑑定評価の基準や公共用地の取得価格の算定基準ともなるべき価格です。

 ③は相続税及び贈与税課税のための価格であり①②の約8割を、④はその約7割を目途とすることとされています。

 昭和60年以降の地価高騰の影響を受けて、固定資産税評価額の水準が市場価格の1〜2割程度にまで低下し、地域間でもその割合が異なるなどの不均衡が生じていました。

 こうした事態の中で、適正な地価の形成、課税の適正化を図るため、価格相互の一元化を図ろうとするのが公的価格の一元化です。

 この根拠となる規定が平成元年に施行された土地基本法です。

 土地基本法第16条(公的土地評価の適正化等)

 「国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」

 そして、固定資産評価額は、平成6年度から、地価公示価格の水準及び不動産鑑定士等の鑑定評価の7割を目途とすることとされたのでした。

固定資産税の見直し・引下げ

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