(第124号)固定資産税は土地、家屋、償却資産の3種類(更新版)

(更新版・令和7年7月)

土地、家屋、償却資産の定義

 そもそも固定資産税とはどのような税なのでしょうか。
 固定資産税は、地方税法により、固定資産に課税される税金です。

 では、固定資産とは何かですが、地方税法341条1項1号に土地、家屋、償却資産の3種とされています。

<固定資産とは>
「地方税法341条1項1号」
「 固定資産 土地、家屋及び償却資産を総称する。」

 この固定資産税は、固定資産(土地、家屋及び償却資産)の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づき、資産価値に応じて、所有者に対し課税される「財産税」という特徴を有しています。

 それぞれの用語の定義は、地方税法で次のとおり規定されています。

<土地とは>
「地方税法341条1項2号」
「 田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野その他の土地をいう。」
<家屋とは>
「地方税法341条1項3号」
「 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」
<償却資産とは>
「地方税法341条1項4号」
「 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産でその減価償却額又は減価償却費が法人税法又は所得税法の規定による所得の計算上損金又は必要な経費に算入されるもののうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものをいう。ただし、自動車税の種別割の課税客体である自動車並びに軽自動車税の種別割の課税客体である原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除くものとする。」

市街化区域では都市計画税も課税

 固定資産税は、毎年の4月から5月に課税明細書・納付書が送られてきて納税されていますが、市街地的な地域(以下「市街化区域」)では、この固定資産税と併せて都市計画税が課税されているのが一般的です。

 都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業を行う市町村が、都市計画区域内にある土地や家屋に対して、その事業に必要となる費用に充てるために課税される税金(目的税)です。

 都市計画税を課税するかどうかは、それぞれの地域における都市計画事業等に応じて、市町村の自主的な判断(課税する場合は条例が必要)に委ねられます。

 目的税とは、道路等の都市計画施設への税金の使い道が明確に定められている税ですが、市街化区域においては、固定資産税と一体で課税されています。

<都市計画税とは>
「地方税法第702条1項」
「 市町村は、都市計画法に基づいて行う都市計画事業又は土地区画整理法に基づいて行う土地区画整理事業に要する費用に充てるため、当該市町村の区域で都市計画法第5条の規定により都市計画区域として指定されたもののうち同法第7条第1項に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、その価格を課税標準として、当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる。(中略)」

固定資産税の法体系

 固定資産税の評価・課税の基準となっているのが「地方税法」と「固定資産評価基準」です。


 
 そして地方税法と「固定資産評価基準」の下に市町村ごとに、「条例・規則」(市町村議会で決定)及び「固定資産評価事務取扱要領」(名称は市町村毎に違います)が定められ、「所要の補正」として評価・課税が行われています。

「固定資産評価基準」により価格が決定

 地方税法には、固定資産税の評価は「固定資産評価基準」によるとあります。

<固定資産の価格の決定>
「地方税法403条1項」
「 市町村長は(中略)固定資産評価基準によって、固定資産税の価格を決定しなければならない。」

 つまり、市町村長は総務大臣により告示された「固定資産評価基準」により、固定資産税の評価額(価格)を決定しなければならないのです。

 この地方税法第403条1項は、かつて(昭和37年以前)は「固定資産評価基準に準じて決定すべき」となっていましたが、現行は「固定資産評価基準によって、決定しなければならない」とされています。
 したがって、固定資産税の評価額決定に対する「固定資産評価基準」の法的拘束性がより強まったと言えます。

<固定資産評価基準の法的拘束性>
「昭和57年3月30日福岡地裁判決」
「 告示とは、公示を必要とする行政措置の公示の形式である。固定資産評価基準は、法388条1項に基づき、その明示的具体的委任を受けて、自治大臣が固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続きについて市町村間の評価の統一的均衡化を図るために発したものであって、昭和37年改正法による改正前の法403条が「準じて」としていたものを、「よって」固定資産の価格を決定しなければならないと」定めて、…市町村長は、固定資産評価基準に従った評価をなすべく義務づけられているものと解するのが相当である。その意味で、固定資産評価基準は、法的拘束力を有しているものといわなければならない。」

 固定資産税の土地及び家屋は、全国一律の評価ですので、この「固定資産評価基準」により「固定資産税の課税標準となるべき価格」が決定されます。

 これに対して、相続税の財産(土地)評価においては、国税庁により財産の評価に関する取扱方法の全国的統一を図るための「財産評価基本通達」が発せられていますが、相続税法の規定により委任されている訳ではありません。

固定資産税の価格とは何か

 地方税法において、固定資産税の価格の定義は2とおりあるとも考えられます。

 一つは、前記のとおり「固定資産評価基準」により価格が決定されるもの、とされています。
 もう一つは、地方税法341条1項5号による定義で価格は「適正な時価」をいうとされています。

<固定資産税の価格>
「地方税法341条1項5号」
「 固定資産税について、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
価格 適正な時価をいう。」

 それでは「適正な時価」とは何かということですが、地裁と高裁での判決は色々ありましたが、平成15年6月20日の最高裁の判決では、「適正な時価とは、客観的な交換価値をいう」とされています。

<土地に関する「適正な時価」>
「平成15年6月26日最高裁判決」
「 適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる。」

 この最高裁判決の最大のポイントは「客観的な交換価値」を上回ればその価格は違法となるというものです。

「客観的な交換価値」に対する疑問

 ところで、そもそも固定資産税は財産価値に対する評価・課税でして、必ずしも市場における取引を前提にしているものではないのです。

 「固定資産評価基準」も資産の譲渡を前提ではなく、利用=使用価値を基準にしているものと思われます。

 仮に「客観的な交換価値」とすると、市場流通性も考慮せざるを得なくなり、例えば住居地域で面積が大きくなると買い手が少なくなり、取引価格は下落することになります。
 しかし、固定資産評価基準による面積減価率は一定の範囲で収まっているのが現状です。

 そこで、固定資産税の「適正な時価」とは、「固定資産評価基準」による価格として、「交換価値」ではなく「使用価値」と表するのが妥当と思われます。

 上記は土地の評価ですが、家屋評価においては平成15年7月18日の最高裁において、「評価は、固定資産評価基準に基づくべき」とされています。

<家屋評価に関する「適正な時価」>
「平成15年7月18日最高裁判決」
「 固定資産評価基準に定める方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情または評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情が存しない限り、その適正な時価であると推認するのが相当である。」

固定資産税は市町村の基幹税

 固定資産税は、どの市町村にも広く存在する資産を課税客体としており、税源の偏りが小さく、市町村民税のように景気に左右されない基幹税目です。

 この図にありますように、固定資産税は都市計画税と併せると、市町村税のうち約47%を占めています。

<市町村税と固定資産税の内訳>

 
2025/07/07/12:00
 

 

(第123号)市町村の固定資産税事務の共同化と課題について

(投稿・令和7年7月)

 今回は「市町村の固定資産税事務の共同化と課題について」です。

 この内容は、<一般財団法人資産評価システム研究センター>の『令和5年度版「地方税における資産課税のあり方に関する調査研究」』を参考にしております。

税務職員数の減少傾向

市町村の税務職員数の推移

 令和3 年の市町村の税務職員数(50,516人)は、ピーク時の平成6 年(62,156人)と比較し、▲11,640人(▲18.7%)となっています。

<市町村の税務職員数の推移>

 

 このような状況の中、市町村において、近年は情報システムの活用が進み、事務の効率化は図られてはいますが、今後も市町村の税務職員数が減少していけば、固定資産税に係るー連の課税事務(申告、評価、賦課、徴収、不服審査等)をーつの市町村で実施することが難しくなることが想定されます。

 固定資産税は市町村の基幹税であり、市町村長の処分によって税額が確定するという賦課課税方式を採用していることから、安定的に税収を確保していくために、納税者の理解と信頼を確保することが重要です。

 また固定資産税は評価事務をはじめ、専門性が求められる事務も多く、市町村の人員・財源が限られる中で、引き続き適正かつ効率的に一連の課税事務を実施していくためには、事務の共同化等の取組みも有効な手段であると考えられます。

市町村毎の職員状況

 総務省自治税務局固定資産税課が調査した結果として、「都市」、「中小市」、「町村」毎の1団体あたりの平均職員数が次のとおりとなっています。

<1団体当りの平均職員数>

 
 土地、家屋、償却資産ごとに見ても、「都市」と「中小市」及び「町村」の差は大きいです。また、「町村」については、土地1. 18 人、家屋1.22 人、償却資産1.16人と、いずれも1 人程度の人員で評価事務を行っているようです。

固定資産担当職員の経験年数

 固定資産担当職員の調査としては「1年未満」「1年以上3年未満」「3年以上5年未満」「5年以上10年未満」「10年以上15年未満」「15年以上20年未満」「20年以上」で行っています。

 表は省略しますが、土地、家屋、償却資産のいずれにおいても、「都市」での経験年数が「3年以上」の割合が半数程度占めています。一方、「中小市」及び「町村」は「3年未満」の割合が6~7割程度を占めています。

 このように、「中小市」と「町村」は「都市」と比較して、経験年数が少ない職員の割合が高いのです。

固定資産税事務の共同化

 固定資産税の評価事務を複数の市町村において共同化することについて、「事務の効率化」、「評価の均衡化」からどのように考えるかのアンケート結果です。

 まず「事務の効率化」については、前向きな意見(「非常に有効」、「有効」)と慎重な意見(「あまり有効でない」、「有効でない」)の割合が措抗していますが、「ー概に言えない」とする割合が半数以上を占めています。

 また、「評価の均衡化」では、前向きな意見が半数以上を占めています。

事務共同化の今後の課題

 固定資産税のー連の事務(申告、評価、賦課、徴収、不服審査等)の一部を、地方自治法に基づく共同処理制度の仕組み等を活用して共同化を行うことについてのメリットと課題です。

 まずメリットとしては、共同化は事務の効率化や専門性の高い人材を確保することに繋がることがあります。

 一方、小規模自治体においては、共同化組織に職員を派遣する余裕がないといったマンパワー的な問題や、事務の共同化により増える負担に対して得られる効果が少ない等から徴収分野以外での共同化は進んでいないのが現状です。

 また、特に専門性の高い家屋評価業務は、評価の均衡化の観点からは、共同化の意義は大きいと考えられるものの、地方団体ごとの評価手法の違いといった課題があります。

 これについては、将来的に、評価システムの標準化が志向されており、その前提として、固定資産評価基準で均質化が図れる仕組みの構築が必要となることから、今後、固定資産評価基準の見直し等により、団体間の評価手法の差異が小さくなれば、地域における評価事務の広域化も進めやすくなると考えられます。

筆者(コンサルタントとして)の見解

 以上は、市町村の固定資産税事務の執行体制ですが、いかがでしょうか。

 我が国では、1980年代後半から始まったバブル経済が1990年頃から株価や地価が下落し始め、バブルが崩壊しましたが、この時期から、全国的に市町村の職員数の見直し(削減)が始まりました。

 そして、固定資産税の評価、課税事務を担当する職員数も少なくなり、事務の共同化が進みつつあるのです。
 ※ 大都市以外の市町村では、大規模家屋の新築評価については以前から県(県税事務所)が担当していました。

 ところで、筆者の個人的見解ですが、固定資産税の評価事務の軽減については、共同化とは別に「評価の簡素化」を探るべきではと考えます。

 特に家屋評価は「再建築価格方式」という複雑な仕組みになっていますが、これを「取得価格方式」に変更することも検討すべきではと考えます。
 なお、この内容につきましては、これまでも触れてきましたので、そちらをご覧ください。

 
2025/07/05/10:00
 

 

(第122号)家屋の附帯設備に関する償却資産との関係について

(投稿・令和7年6月)

 今回は、家屋の附帯設備に関する償却資産との関係についてです。

 具体的には、家屋の附帯設備に係る固定資産税の課税に当たり、テナント等の家屋の所有者以外の者が取り付けた附帯設備をどのように課税すべきかです。

家屋の附帯設備とは

 改めて家屋とは何かですが、固定資産税の課税客体である家屋は「住家、店舗、エ場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物」と規定されています。

<家屋とは>(復習)
「地方税法第341 条第3 号」
「家屋 住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」

 また、固定資産税の家屋は不動産登記法における建物と同義であると解されており、不動産登記法事務取扱手続準則では「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」と規定されています(不動産登記法事務取扱手続準則136条1項)。

 家屋の附帯設備とは、家屋と一体となって機能し、家屋の価値を高める設備のことで、具体的には、電気設備、ガス設備、給排水設備、空調設備、照明設備、防災設備などが含まれます。

 そして、家屋の所有者が家屋の附帯設備を取り付けた場合には、家屋の所有者が納税義務者となります。

家屋所有者以外の附帯設備への課税

 しかし、家屋の所有者以外の者が附帯設備を取り付けた場合の課税はどうなるでしょうか。

1. 不動産の「付合」

 まず、民法第242 条には不動産の「付合」の規定があります。

<不動産の「付合」>
「民法第242条」
「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。」

 本来は、家屋所有者が「付合」により所有者となり納税義務者となるのですが、このただし書(権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない)が、テナント等の家屋所有者以外の者が取り付けた附帯設備に対してどのように課税すべきかについて、課税庁を悩ます課題でもあった訳です。

2. みなし償却資産課税制度

 そこで、平成16 年度税制改正において、みなし償却資産課税制度が創設され、課税上の取扱いが明確になりました。

<みなし償却資産課税制度>
「地方税法第343条10項」
「家屋の附帯設備であって、当該家屋の所有者以外の者がその事業の用に供するため取り付けたものであり、かつ、当該家屋に付合したことにより当該家屋の所有者が所有することとなつたもの(以下この項において「特定附帯設備」という。)については、当該取り付けた者の事業の用に供することができる資産である場合に限り、当該取り付けた者をもつて第1項の所有者とみなし、当該特定附帯設備のうち家屋に属する部分は家屋以外の資産とみなして固定資産税を課することができる。」

 このように、実際に当該附帯設備を使用収益しているのは、家屋の所有者ではなくテナントであることから、附帯設備を取り付けた者(テナント)を所有者とみなして固定資産税(償却資産)を課税することができるものとされました。

 ところで、当初、みなし償却資産は、システムキッチンや取付型の空調設備、内装、壁等を想定していたものと考えられていました。

 ここに、従来から考えられている「家屋(附帯設備)と償却資産の区別」を掲げます。下表は例示であり、必ずしもこのとおりとならない場合もあります。「家屋に含めるもの」については、「家屋に取り付けられ、家屋と構造上一体となっている」ことに特に留意を要します。


 
 しかし、その後の調査で、これらを越える附帯設備(例えば、エレべーター等の運搬設備等)もみなし償却資産課税制度の適用対象とされ、テナントの償却資産として課税されている実態もあります。

 償却資産として課税されると、都市計画税が課税されない等の不公平となる場合もあるのです。

 では、どうすれば適正なみなし償却資産課税制度が実現できるのかですが。

 実は、課税庁において家屋の使用者の使用実態やその変化を把握することが困難であり、使用実態が変更され、みなし償却資産課税制度の対象外となった場合でも再評価されずに、家屋としても償却資産としても課税されず、かえって租税回避に悪用されること等難しい面もあり得ます。

 そこで、今後検討すべき案としては、附帯設備のうち家屋として課税すべきものの範囲を法令上明確化することですが、さてどうなるでしょうか。
 
2025/06/18/15:00
 

 

(第121号)利用ニーズが大幅に低下した土地の評価について

(投稿・令和7年6月)

 今回は、利用ニーズが大幅に低下した土地の評価についてです。

 近年、人口の減少や都市部への一極集中など、様々な要因によって利用ニーズが大きく低下した土地の固定資産評価額が、実勢価格と乖離しているのではないかとの報道があります。

 利用ニーズの低下した土地が存する地域には、山間部の集落や郊外の住宅団地のように人口減少により過疎化が進み、土地取引の頻度が減少している地域も多いと考えられます。

 この件では、一般財団法人 資産評価システム研究センター(以下「評価センター」)で、過疎化が進む地域における実態を把握して、課題を整理し解決策を研究しています。
 今回は、その一部の紹介となります。

宅地等の評価方法

 まず、宅地の評価方法を復習を兼ねて掲げます。

1. 地目の認定

 地目とは、土地の現況及び利用目的による区分を表すもので、固定資産評価基準では、土地を田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雑種地の9 地目に分類されています。

<固定資産評価基準の地目一覧>

 
 そして、固定資産評価基準では、地目別に評価方法が定められています。

2. 宅地の評価

 宅地の評価方法は、「市街地宅地評価法」と「その他の宅地評価法」に分けられ、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法(路線価方式)」によって、また市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)」によるものとされています。

<宅地の評価手順>

(1)市街地宅地評価法
 市街地宅地評価法は、いわゆる路線価方式を採用していますが、主に次の手順によります。。
市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区等に区分。
状況が相当に相違する地域ごとに、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定。
標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価を求め、これに基づいて上記主要な街路の路線価を付設し、これに比準してその他の街路の路線価を付設。
路線価を基礎とし、画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設。

(2)その他の宅地評価法
 その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)の評価方法は、次のとおりです。
状況類似地区を区分。
状況類似地区ごとに標準宅地を選定。
標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価に基づいて評点数を付設。
標準宅地の評点数に比準して、状況類似地区内の各筆の宅地の評点数を付設。

(3)不動産鑑定士等による鑑定評価
上記(1)及び(2)において、標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士(補)による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の7割を目途として評定するものとします。
不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うに当たっては、不動産鑑定評価基準において、価格形成要因について、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいうものと定めており、不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法として、原価法、取引事例比較法及び収益還元法などが挙げられています。

今後の検討課題

 過疎化が進み、土地の利用ニーズが大幅に低下する地域は、上記(1)より(2)「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)地域」が該当すると思われます。

 過疎化が進む地域においては、人口減少により、例えば商店やスーパーの閉鎖、公共交通の利便性の低下など、その地域における基礎的な生活条件の確保に支障をきたすようになるとともに、産業の担い手不足などにより地域の生産機能が低下しています。

 これらにより土地取引の減少が見られ、標準宅地の鑑定評価を行うに際して取引事例の収集が困難であることが課題として上げられています。

 このように過疎化が進み、利用ニーズが大幅に低下した土地(宅地)の評価について、今後の検討課題として次の項目が挙げられています。

1. 用途地区の区分

 空き家等が増えた場合の用途地区の区分の見直しです。
(1)商業系から住宅系への用途地区の見直し
(2)住宅系から村落地区への用途地区の見直し(市街地宅地評価法適用地域からその他の宅地評価法適用地域への見直しを含む)

2. 状況類似地区(域)の区分

 状況類似地区(域)の区分についての見直しです。
(1)価格水準の把握が困難な場合
(2)利用状況の変化の把握が困難な場合

3. 標準宅地の選定

 標準宅地の見直しです。
(1)標準宅地が空き家となった場合
(2)標準宅地の建物が取り壊されて空き地となった場合

4. その他

 地目認定の見直しとして、宅地から雑種地への見直し(補正率、造成費等の考慮を含む)があります。
 
2025/06/13/14:00
 

 

(第120号)非木造の複合構造家屋に対する経年減点補正率の評価について

(投稿・令和7年6月)

 今回は、非木造家屋の構造が複合構造(鉄骨鉄筋コンクリート造「SRC造」、鉄筋コンクリート造「RC造」、鉄骨造「S造」)になっている場合の経年減点補正率をいかに評価するかです。

経年減点補正率とは

 まず経年減点補正率とは、 家屋を通常の維持管理を行うものと した場合において、その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎と して定められた補正率です。

 家屋の評価額は、主に「再建築評点数×経年減点補正率」ですが、その補正率です。

<家屋の固定資産税評価>

木造家屋の経年減点補正率

 木造家屋では構造別がありませんので、経年減点補正率は用途別区分及び延べ床面積1. 0㎡当たり再建築費評点数の区分により、初年度0.80 、2年度0.75 、3年度0.70、4年度以降は経年減点補正率の最低限度(「最終残価率(20%)」) に達するまでの期間に応じて定額法を基本として求められています。

 ここに木造家屋の経年減点補正率基準表の例を掲げます。

<木造家屋—1. 専用住宅、共同住宅、寄宿舎及び併用住宅用建物>

非木造家屋の経年減点補正率

 これに対して、非木造家屋にあっては、 用途別区分だけではなく構造別区分により、最終残価率に達するまでの期間に応じて定額法を基本として求められます。

 ここに用途別区分の事務所、銀行用建物の経年減点補正率基準表を掲げますが、「SRC造」、{RC造}、「S造」の構造別に区分されています。

<非木造家屋—1. 事務所、銀行用建物及び2~8以外の建物>

複合構造家屋の経年減点補正率

 非木造の複合構造家屋とは、一棟の建物で複数の異なった構造を有する家屋ですが、固定資産評価基準ではその評価方法は定められていません。

 では、複合構造家屋の場合の経年減点補正率はどう評価するのかです。

 これまで、一般財団法人資産評価システム研究センタ-により、次の方法が示されています。(平成26年3月「家屋に関する調査研究」から抜粋)

1.  複合構造家屋の経年減点補正率は、 原則として、 最も大きな床面積を占める主たる構造により、一棟単位で適用するが、当該市町村内の家屋の評価、課税の均衡上問題があると市町村長が認めるときには、構造種別の異なる部分ごとに適用することができることとする。

2.  家屋の構造種別は、 主に柱に着目し判断する。

3.  構造種別の異なる柱の接合部が階の途中にある場合、当該柱のうち最も多い割合を占める構造種別を当該柱の構造とする。

4.  同一の階の中で、複数の構造種別の柱が混在している場合において、主たる構造が直ちに判断できない場合にのみ、隣接する柱を2等分する線で囲まれた床面積を、当該柱の構造の床面積として判断する。

5.  階高が著しく異なる等、床面積によ り主たる構造を判断することが不合理であると考えられる場合に、柱で最も多く使用されている部材の構造種別により経年減点補正率を適用すべきという考え方に基づいた他の手法による結果を考慮して判断することも、 否定されるものではない。

6.  経年減点補正率の適用単位にっいては、以 下の要件を総合的に考慮し、判断する。
(1)外気遮断性の有無 (外観上の一体性)
(2)構造上一体か否か(構造上の一体性)
(3)利用実態が一体か否か(用途上の一体性)

最高裁(令和2年2月27日)判決

 この最高裁判決は、原判決(高裁判決)3件に対するものですが、いずれも同様な内容で、大まかな内容として「家屋が複数構造の場合は一棟単位を対象とし、かつ低階層の構造を主として適用する」というものです。

 これは、前記の「家屋評価に関する調査研究」(平成26年版)の内容とほぼ同じになっています。

 ここで、最高裁の裁判官4人のうち3人の多数意見の理由をまとめると、次のようになります。(「資産評価情報(令和7年5月号)」から抜粋)

1.  経年減点補正率の所定経過年数は、物理的要因により定まる耐用年数を基礎として、機能的要因や経済的要因により定まる。

2.  耐用年数の判断は、家屋の取壊しを行うか否かにより一棟単位でなされる。

3.  家屋に作用する荷重や外力が最終的には低層階を構成する構造によって負担されることになる。

4.  本件家屋については、低層階を構成する構造のうち耐用年数が最も長いものの耐用年数が経過しない限り、それ以外の構造の部分の補修等によって建物としての効用の維持を図ることができるものと考えられる。

5.  取壊しに係る判断が、低層階を構成する構造のうち最も耐用年数が長いものに着目してされるものとみることも不合理ではない。

筆者の意見

 これまでの「複合構造家屋の経年減点補正率」と「最高裁(令和2年2月27日)判決」について、どうなのでしょうか。

 前記最高裁における複合構造家屋では、S造割合が80%~90%もあるのですが、低階層部分はSRC造又はRC造で堅固な構造になっているのです。
 そのため、一棟全体を低階層部分の耐用年数が長い構造で経年減点補正率を評価しているのです。

 そうしますと、家屋一棟の減点補正率が少なくなり、家屋評価額(固定資産税価格)が高くなるのです。

 これを構造ごとに区分し、各構造部分について異なる補正率をかけて評価すると評価額は低くなりますが、行政の実務的負担が大きくなりますので、最高裁判決においてもこの点が考慮されているのです。

 しかし、「行政の実務上の都合から家屋評価が高くなる」のは、納税者からすると納得できないものです。

 最高裁の少数(反対)意見でも、「コンピュータによる数理計算が普及した現代においてこの実務上の理由にいかほどの説得力があるのか疑問なしとしない」とも述べています。

 ところで、現在では、新築家屋に関して低階層方式を採用している市町村は多くないようです。これは、市町村毎に固定資産税評価要領で定められているからです。

 更に言わせていただくと、やはり、家屋評価の「再建築価格方式」という複雑な評価方法を見直す必要もあるのではないでしょうか。
 
2025/06/04/15:00