(第121号)利用ニーズが大幅に低下した土地の評価について

(投稿・令和7年6月)

 今回は、利用ニーズが大幅に低下した土地の評価についてです。

 近年、人口の減少や都市部への一極集中など、様々な要因によって利用ニーズが大きく低下した土地の固定資産評価額が、実勢価格と乖離しているのではないかとの報道があります。

 利用ニーズの低下した土地が存する地域には、山間部の集落や郊外の住宅団地のように人口減少により過疎化が進み、土地取引の頻度が減少している地域も多いと考えられます。

 この件では、一般財団法人 資産評価システム研究センター(以下「評価センター」)で、過疎化が進む地域における実態を把握して、課題を整理し解決策を研究しています。
 今回は、その一部の紹介となります。

宅地等の評価方法

 まず、宅地の評価方法を復習を兼ねて掲げます。

1. 地目の認定

 地目とは、土地の現況及び利用目的による区分を表すもので、固定資産評価基準では、土地を田、畑、宅地、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野及び雑種地の9 地目に分類されています。

<固定資産評価基準の地目一覧>

 
 そして、固定資産評価基準では、地目別に評価方法が定められています。

2. 宅地の評価

 宅地の評価方法は、「市街地宅地評価法」と「その他の宅地評価法」に分けられ、市町村の宅地の状況に応じ、主として市街地的形態を形成する地域における宅地については「市街地宅地評価法(路線価方式)」によって、また市街地的形態を形成するに至らない地域における宅地については「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)」によるものとされています。

<宅地の評価手順>

(1)市街地宅地評価法
 市街地宅地評価法は、いわゆる路線価方式を採用していますが、主に次の手順によります。。
市町村の宅地を商業地区、住宅地区、工業地区、観光地区等に区分。
状況が相当に相違する地域ごとに、その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定。
標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価を求め、これに基づいて上記主要な街路の路線価を付設し、これに比準してその他の街路の路線価を付設。
路線価を基礎とし、画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設。

(2)その他の宅地評価法
 その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)の評価方法は、次のとおりです。
状況類似地区を区分。
状況類似地区ごとに標準宅地を選定。
標準宅地について、売買実例価額から評定する適正な時価に基づいて評点数を付設。
標準宅地の評点数に比準して、状況類似地区内の各筆の宅地の評点数を付設。

(3)不動産鑑定士等による鑑定評価
上記(1)及び(2)において、標準宅地の適正な時価を求める場合には、当分の間、基準年度の初日の属する年の前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士(補)による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし、これらの価格の7割を目途として評定するものとします。
不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うに当たっては、不動産鑑定評価基準において、価格形成要因について、不動産の効用及び相対的稀少性並びに不動産に対する有効需要の三者に影響を与える要因をいうものと定めており、不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法として、原価法、取引事例比較法及び収益還元法などが挙げられています。

今後の検討課題

 過疎化が進み、土地の利用ニーズが大幅に低下する地域は、上記(1)より(2)「その他の宅地評価法(標準宅地比準方式)地域」が該当すると思われます。

 過疎化が進む地域においては、人口減少により、例えば商店やスーパーの閉鎖、公共交通の利便性の低下など、その地域における基礎的な生活条件の確保に支障をきたすようになるとともに、産業の担い手不足などにより地域の生産機能が低下しています。

 これらにより土地取引の減少が見られ、標準宅地の鑑定評価を行うに際して取引事例の収集が困難であることが課題として上げられています。

 このように過疎化が進み、利用ニーズが大幅に低下した土地(宅地)の評価について、今後の検討課題として次の項目が挙げられています。

1. 用途地区の区分

 空き家等が増えた場合の用途地区の区分の見直しです。
(1)商業系から住宅系への用途地区の見直し
(2)住宅系から村落地区への用途地区の見直し(市街地宅地評価法適用地域からその他の宅地評価法適用地域への見直しを含む)

2. 状況類似地区(域)の区分

 状況類似地区(域)の区分についての見直しです。
(1)価格水準の把握が困難な場合
(2)利用状況の変化の把握が困難な場合

3. 標準宅地の選定

 標準宅地の見直しです。
(1)標準宅地が空き家となった場合
(2)標準宅地の建物が取り壊されて空き地となった場合

4. その他

 地目認定の見直しとして、宅地から雑種地への見直し(補正率、造成費等の考慮を含む)があります。
 
2025/06/13/14:00
 

 

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