(令和7年9月)
今回は「家屋評価の資料は当該家屋が滅失するまで保存すること(総務省通知)」です。
家屋評価資料の保存の必要性については、本ブログでは何回か主張してきています。
(これまでの主張については、第71号、72号、82号をご覧ください。)
何故これまで主張してきたのかですが、固定資産税の見直しコンサルタントを行っている中で、所有者様からのご依頼により、新築時評価が問題であるからと、いくつかの市町村に対して「新築時の評価を検証していただきたい」と働きかけました。
それに対して、その家屋の市町村担当課から「数十年前の資料は廃棄して残っていないため検証できません」との回答が返ってきたことが何度かあります。
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総務省からの通知(紹介)
ところが驚いたことに、「家屋の評価に関する資料(評価調書、評点数付設表等)については、当該家屋が滅失するまで保存するよう努めること」との通知(過去名「通達」)が、既に総務省(自治税務局資産評価室)から全国の市長村等に出されていたのです。
この総務省からの通知は、固定資産税の評価替え(3年単位)年度の2年前に出されています。
最近では、次の評価替え年度の令和9年度の固定資産の評価替えに関する「留意事項」(令和7年5月)なのです。
実は、更に驚いたことには、過去の令和3年度、6年度においても同様の通知が出されていました(それより前は確認していません)。
ここに、総務省の令和9年度通知の「家屋に関係する部分のみ」を紹介します。
『令和9年度固定資産の評価替えに関する留意事項について(通知)』
【2】 地目別の事項
Ⅱ 家屋
1 適正な評価の実施等
(1) 課税客体の把握
家屋の評価に当たっては、評価基準によって適正な評価を行うとともに、賦課漏れ、滅失家屋の捕捉漏れ等による課税誤りのないよう課税客体の把握について適正を期すること。
(2) 評価に関する資料の保存等
家屋の評価に関する資料(評価調書、評点数付設表等)については、当該家屋が滅失するまで保存するよう努めること(法第343条第10項(特定附帯設備)の規定により課税した場合における資料の保存についても同様であること。)。
特に、法第409条第2項(都道府県知事からの価格の通知)により評価した場合においては、評価の根拠となった資料の収集及び保存に努めること。
また、都道府県にあっては、法第73条の21第3項に基づく価格その他必要な事項の通知に際し、価格決定の根拠となった資料を市町村へ送付すること。
(3) 納税者への説明
課税庁としての説明責任にかんがみ、納税者に対して家屋評価の仕組みや評価額の算出過程について分かりやすく説明するよう努めること。
筆者のコメント
最近では、家屋評価データが電子システム化されていますので、システムを永年保存することも可能になります。
筆者は過去に某市の税務関係課に所属していましたが、その時代はまだ電子システム化されておらず、「10年保存」と決められ、過去の資料を処分していました。
しかし、市町村によっては(筆者の市もそうでしたが)、例えば「データパンチ」(手書きの資料を電子化する)という方法で作成・保管され、仮に担当者がコピーを廃棄したとしても、組織としてはデータが保存されていました。
また、コンサルタントとして活動している中でも、全ての市町村が過去資料を廃棄していたのではなく、10年以上前の家屋データ(「評価計算書」)を保存している市町村もありました。
今後は、電子システム化されるため、データの長期間保存により、新築時の家屋評価の検証も可能となることを期待しています。
(以上です)
2025/09/19/15:00