(第144号)固定資産税家屋評価の複雑な仕組みと対応(更新版)

(更新版・令和7年7月)

 今回は、固定資産税家屋評価の複雑な仕組みと対応についてです。

家屋評価の複雑な仕組み

 固定資産税の家屋評価は「再建築価格方式」で複雑な仕組みとなっています。
 ここでは、その仕組みの一部ですが、固定資産評価基準における用途別区分と部分別区分の紹介です。

 家屋は、固定資産評価基準で木造家屋と非木造家屋に区分され、その木造、非木造家屋それぞれに、再建築費評点基準表による用途別区分と部分別区分に基づいて、再建築価格が算出され、固定資産税額が決定されます。

(1)家屋の用途別区分

 家屋の用途別区分は、建物の利用目的(居住用、店舗、事務所など)に応じて木造家屋7種類、非木造家屋9種類に区分されています。

① 木造家屋の用途別区分(7種類)
 1.戸建形式住宅用建物、2.集合形式住宅用建物、3.事務所、店舗用建物、4.病院用建物、5.ホテル、旅館用建物、6.劇場用建物、7.工場、倉庫用建物

② 非木造家屋の用途別区分(9種類)
 1.戸建形式住宅用建物、2.集合形式住宅用建物、3.事務所、店舗用建物、4.病院、ホテル用建物、5.工場、倉庫用建物、6.軽量鉄骨造建物<(ア)戸建形式住宅用建物、(イ)集合形式住宅用建物、(ウ)事務所、店舗用建物、(エ)工場、倉庫用建物>

(2)家屋の部分別区分

 家屋の部分別区分は、建物の構造(木造、非木造)や使用されている建材、設備などに応じて上記(1)の用途別区分毎に木造家屋10種類、非木造家屋11種類に区分されています。

① 木造家屋の部分別区分(10種類)
 1.構造部<(ア)主体構造部、(イ)基礎>、2.外壁仕上、3.内壁仕上、4.床仕上、5.天井仕上、6.屋根仕上、7.建具、8.建築設備、9.仮設工事、10.その他工事

② 非木造家屋の部分別区分(11種類)
 (1) 構造部<(ア)主体構造部、(イ)基礎工事、(ウ)外周壁骨組、(エ)間仕切骨組み>、(2)外壁仕上、(3)内壁仕上、(4)床仕上、(5)天井仕上、(6)屋根仕上、(7)建具、(8)特殊設備、(9)建築設備、(10)仮設工事、(11)その他工事

 この部分別区分は、建築された家屋の表面に表れている部分から隠れた内部も推定して評価できるように、家屋の構造を外見的な面から区分されています。

複雑な家屋評価と市町村の対応

(1)「再建築評点数」査定の作業

 これまで説明したとおり、家屋の評価基準の仕組み自体が複雑で、特に「評点数」→「再建築費評点数」の査定が最大の難関となりますが、この「再建築評点数」を求めるためには、次の作業が必要となります。

家屋所有者に調査協力を依頼し、新築家屋の見積書や竣工図等を借用し情報を取得します。

実際に当該家屋に赴き、用途別区分とともに家屋の外観や内部の使用資材等を確認します。

借用・保存した見積書等から評価基準の部分別区分に照らして、必要な資材を拾い出し部分別分類を行います。

その上で、市町村が有する評価システムに評価要領の評点項目と使用資材量の数値を入力して評点数を算出します。

(2)家屋評価の共同作業の試み

 市町村の税務担当者は、通常、事務職であることことから建築の専門家ではありません。もちろん、研修等は行われていますが、建築の専門的名称や構造等を十分に理解するのには時間が掛かります。

 ところが、市町村の事務職は3~5年程度で異動するのが一般的であり、折角慣れた時期には異動するという事態が発生します。

 そのような事態を防ぐため、市町村によっては、家屋評価の専門的な職員を配置することや、市町村によっては「専門組織」設置の試みも進められています。

 また、大都市以外の市町村では、市町村間で共同組織を設置する等の新たな試みも進められています。

(3)非木造家屋の評価を都道府県に委託

 政令指定市以外の市町村では、大規模(300㎡~500㎡以上)の非木造家屋の評価を都道府県県(県税事務所)に委託しています。
(県税事務所では、不動産取得税の評価・課税を行っています。)

 固定資産税の課税権者はあくまでも市長村町長にありますので、都道府県が評価した結果を市町村に送付され、市町村が課税手続きを行います。

<不動産の価格の決定等>-地方税法第73条の21
「1項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。但し、当該不動産について増築、改築、損かヽいヽ、地目の変換その他特別の事情がある場合において当該固定資産の価格により難いときは、この限りでない。
2項 道府県知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は前項但書の規定に該当する不動産については、第三百八十八条第一項の固定資産評価基準によつて、当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする。
3項 道府県知事は、前項の規定によつて不動産の価格を決定した場合においては、直ちに、当該価格その他必要な事項を当該不動産の所在地の市町村長に通知しなければならない。」

 なお、東京都23区域内の固定資産税の課税権者は東京都とされ、都税として課税されています。つまり、具体的な課税及び徴収事務は、23区内の都税事務所が行っています。
 
2025/07/29/11:00
 

 

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