◆ 固定資産税の二つの価格?

 固定資産税の価格は、地方税法341条5号の「適正な時価」と403条1項の「固定資産評価基準によって決定された価格」とあたかも二つの「価格」があるようです。

 しかし、実務上の解釈は一貫されています。

 「固定資産税の課税標準となるべき価格は、適正な時価をいうものであり、固定資産評価基準は、適正な時価を求めるための手続き、方法を規定しているのであって、適正に運用される限り、これによって求められたものは適正な時価と考えられる」(要説固定資産税)

 「適正に運用される限り」は固定資産評価基準と「適正な時価」は矛盾しないということです。

 繰り返しになりますが、固定資産税の評価割合は、それまでは実質的に地価公示価格の1〜2割程度であったものが、平成6年度から地価公示価格の7割を目途とされました。

 もっとも、昭和50年代の地価安定期における固定資産税の評価割合が7割程度であったことを前提にすれば、むしろ昭和60年代の地価高騰(バブル)期以降の方が不正常な評価割合であったと考えるべきなのかもしれません。

 しかし、平成6年度の制度改正により、固定資産税の不服申立は、それまで全国で6千件弱であったものが、一挙に3倍を超える件数になり、裁判で争われる件数も増えました。

◆ 客観的交換価値を超える部分は違法

 では、平成6年度までの固定資産税の「適正な時価」とはどのような解釈であったのでしょうか。

 ここに代表的なものとして、昭和34年6月16日の静岡地裁判決を紹介します。

 「固定資産の価格、すなわち、その適正な時価とは本来その通常な取引価格を指すものと解すべきであるが、評価は常に公平になされなければならないから、決定された価格が通常の取引価格を著しく超える場合はもちろん、これを超えない場合でも、課税政策上その他の正当な理由なしに、他とはなはだしく均衡を欠く場合には、その価格は適正でなく、その決定は違法となるものである。」

 このように、「はなはだしく均衡を」を欠かない限りは違法とはならなかった訳です。

 これが、平成6年度以降7割評価となったことにより、「適正な時価」の解釈は次のようになりました。

 平成15年6月26日の最高裁判決です。

 「適正な時価とは、正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格、すなわち、客観的な交換価値をいうと解される。したがって、土地課税台帳に登録された価格が賦課期日における当該土地の客観的な交換価値を上回れば、当該価格の決定は違法となる。」

 この最高裁判決の最大のポイントは「客観的な交換価値を上回ればその価格は違法となる」というものです。

 ただし、この判決の背景としては、やや特殊状況もあったと考えられます。

 当時は、それまでのバブルが弾けて、東京都内の一部では、1年間に30%を超える地価の下落がありました。

 そのため、地価公示価格より30%低い固定資産税の評価割合であっても、それを超える下落率には追いつかなかったという特殊状況があったのです。

 この最高裁の判決以降、固定資産税の価格は「客観的な交換価値」で、それを上回る部分は違法となるとの解釈が定着しましたが、実はこの判決は特殊状況における判決でもあったのです。

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固定資産税の見直し・引下げ

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