◆7~8軒に1軒が空き家
総務省の「住宅・土地統計調査」によると、平成25年10月時点で、全国の空き家数は820万戸、住宅総数に占める割合は13.5%と過去最高となっています。
少子高齢化や核家族化が進み、自宅を空き家にして高齢者施設に入所したり、居住者が亡くなり相続人が放置するといった例が増加しています。特に老朽化した空き家は、防犯、防災、環境衛生上からも深刻な社会問題となっています。
◆固定資産税の減免特例も一因(平成26年12月現在)
第9号「固定資産税の小規模住宅用地の仕組み(負担調整措置)」で触れたとおり、「専ら人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地」を住宅用地として課税標準の特例が定められています。(地方税法349条の3の2)
住宅用地でその面積が200㎡以下のものを小規模住宅用地として課税標準額が1/6に、200㎡を超えるものが一般住宅用地として1/3に減額されます。
ところが、実際の課税においては、その家屋が人の居住の用に供されていない空き家であっても、住宅用地の特例が適用さているため、これが空き家の解体を妨げているとされています。
家屋を解体すれば解体費用も掛かるし、土地の固定資産税の減額特例1/6(200㎡以下)が適用されなくなってしまう、であれば家屋の固定資産税を負担してでもそのまま空き家にしておこう、これが空き家増加の一因になっているということです。
◆住宅用地の減額特例の歴史
そもそも住宅用地に対する課税標準の特例措置は、宅地化を促進するため負担を軽減することを目的として、昭和48年に土地の課税標準額の1/2とされたことから始まります。その翌年の昭和49年には200㎡以下の小規模住宅用地を1/4とする特例措置が導入されました。
その後、平成6年度からの固定資産税価格を地価公示価格の7割とする、いわゆる7割評価の導入に伴って200㎡以下の小規模住宅用地を1/6、200㎡を超える一般住宅用地を1/3とする特例措置が拡充され、都市計画税においても住宅用地の特例措置(200㎡以下1/3、200㎡を超えるもの2/3)が導入され、現在に至っています。
◆空き家対策の現状
居住の用に供されていない空き家は、そもそも課税本来の目的・趣旨から外れているため特例措置を適用すべきでないとの意見があります。かつての地価高騰から下落へと推移してきている中で、この意見は課税の適正化からも、至極もっともな考え方であります。
全国の市町村でも「空き家対策条例」を制定し、実態調査の上、住宅として使われていない空き家の撤去を促すとともに、住宅用地の特例措置の適用を外すという市町村もあります。
平成25年10月現在で、272の市町村で「空き家対策条例」が制定されています。
しかし、市町村の課税当局が住宅用地(空き家)か否かを外観から認定するのも難しいのも事実であります。郵便の転送を行う等、あたかも居住しているかのような外観を呈している比較的新しい空き家も相当見受けられます。
また一方では、老朽化した明らかに空き家と分かるものも多数あり、中には所有者不明で課税も出来ていないものまであります。
そこで、平成26年11月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が制定されました。
「適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命・身体・財産の保護、生活環境の保全、空き家等の活用のための対応が必要」(第1条「目的」)とされています。
「空き家対策特別措置法の概要」 (←詳細はここをクリック)
そして、この法律の対応に連動する形で、今後、政府・与党で固定資産税の特例措置を見直すとの報道もなされています。
◆固定資産税の特例措置の見直し
平成27年度の与党税制改正大綱によると、倒壊する恐れがあったり、著しく汚れていたりして市町村から改善勧告されると固定資産税の軽減対象から外されることになります。
第33号「「更地にすると固定資産税は6倍になる」は正しくない」に続きます。