(53)相続税評価と固定資産税評価の計算方法はどう違うのか(4)(「がけ地を有する宅地」の場合)

 今号は、「がけ地を有する宅地」の評価です。
 「がけ地」で通常の用途に供することができないと認められる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちに存する「がけ地」の部分が「がけ地」でないとした場合に「がけ地補正率」を乗じて計算し評価します。
 相続税評価と固定資産税評価の計算方法は同一ですが、相違点は、相続税の「がけ地補正率表」には「がけ地」の方位区分がありますが、固定資産税の「がけ地補正率表」には方位区分は無く単に「がけ地割合」のみとなっています。

「がけ地を有する宅地」の評価

「がけ地を有する宅地」の計算方法

 「がけ地を有する宅地」の計算方法は次のとおりとなります。
(1)がけ地割合→(2)1㎡当たり表点数(正面路線価×奥行価格×がけ地割合補正率)

「がけ地を有する宅地」の例

 「がけ地を有する宅地(例)」

「がけ地を有する宅地」の相続税の計算

 上記の「がけ地を有する宅地(例)」における相続税の評価額を求めます。
◆がけ地割合…がけ地の地積÷総地積
 (8m×20m)÷(20m×26m)=0.31
◆1㎡当たり表点数…正面路線価×奥行26m普通住宅地の奥行価格補正率×がけ地補正率(南方位0.31)
 100,000×0.97×0.88=85,360円/㎡
 「がけ地補正率表(相続税)」

「がけ地を有する宅地」の固定資産税の計算

 上記の「がけ地を有する宅地(例)」における固定資産税の評価額を求めます。
◆がけ地割合…がけ地の地積÷総地積
 (8m×20m)÷(20m×26m)=0.31
◆1㎡当たり表点数…正面路線価×奥行26m普通住宅地の奥行価格補正率×がけ地補正率(0.31)
固定資産税のがけ地補正率表には方位区分がありません。
 100,000×0.99×0.85=84,150円/㎡
 「がけ地補正率表(固定資産税)」

(52)相続税評価と固定資産税評価の計算方法はどう違うのか(3)(「不整形地」の場合)

 不整形地評価の場合は、相続税評価と固定資産税評価の方法はほぼ同じです。
 両者の相違点は、相続税の不整形地補正率表では地積区分がありますが、固定資産税には地積区分がありません。また、固定資産税では、陰地割合を適用しない場合の補正率があります。
 そこで、今号は相続税の不整形地評価を中心に解説します。
(※不整形地評価の方法として、「奥行距離の異なるごとに区分できる場合」「角地の場合」「二方路地の場合」等がありますが省略します。)

相続税の不整形地評価

 相続税の不整形地評価は、次の2式のうち低い方の価額を採用します。
◆路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率
◆路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率
 下記の不整形地(評価対象地)の評価額を求めるにあたり、(1)奥行距離(2)奥行価格補正率(3)間口狭小補正率(4)不整形地補正率(5)奥行長大補正率(6)評価額の計算の順で求めていきます。
 「不整形地(評価対象地)」

(1)奥行距離

 評価対象地の全体を囲む、正面路線に面する長方形又は正方形の想定整形地を描きます。不整形地の奥行距離は、その想定整形地の奥行距離を限度として、不整形地の地積を実際の間口距離で除して得た数値とします。
◆奥行距離… 480㎡÷20m=24m<25m
 したがって、この不整形地の奥行距離は24mとなります。
奥行距離の例を掲げておきます。
 「不整形地」

(2)奥行価格補正率

 奥行価格補正率は、奥行25mの普通住宅地区で0.97です。
◆奥行価格補正率…0.97
 「奥行価格補正率(相続税)」

(3)間口狭小補正率

◆間口狭小補正率…1.00
 「間口狭小補正率(相続税)」

(4)不整形地補正率

 不整形地補正率を求めるためには、陰地割合を求める必要があります。
◆陰地割合…(750㎡ー480㎡)÷750㎡=36.0%
◆不整形地割合(普通住宅地区A)…0.811×1.00(間口狭小補正率)=0.88
 「不整形地補正率(相続税)」

(5)奥行長大補正率

◆奥行長大補正率…奥行距離(24m)÷間口距離(20m)=1.2(奥行長大の適用無し)
 「奥行長大補正率(相続税)」

(6)評価額の計算

 次の①②で計算した価額のうち低い方の価額で計算します。
①路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率
 380,000円×0.97×0.88=324,368円
②路線価×奥行価格補正率×間口狭小補正率×奥行長大補正率
 380,000円×0.97×1.00×1.00=368,600円
 以上から、1㎡当たり評価額は①324,368円<②368,600円から、324,368円となります。
◆評価額…324,368円×480㎡=155,696,640円

固定資産税の不整形地評価

固定資産税の不整形地補正率表

 固定資産税の不整形地補正率表は、相続税と異なり地積区分がありません。
 「不整形地補正率(固定資産税)」

陰地割合方式によらない場合

 陰地割合方式によらない不整形地補正率の適用に当たっては、当該画地の所在する用途地区の標準的な画地の規模・形状からみて、不整形度(「普通」から「極端に不整形まで)を判断して、次の表により、不整形地補正率を定めることができます。
 しかし、この陰地方式によらない評価方法は、全国全ての土地を評価・課税するという固定資産税の性格から、客観的な説明が難しい面もあります。したがって最近では、この評価方法を採用していない市町村も多くあります。(各市町村の「固定資産評価事務取扱要領」を確認する必要があります。)

 「陰地方式によらない場合(固定資産税)」

(51)相続税評価と固定資産税評価の計算方法はどう違うのか(2)(「大規模宅地」の場合)

 大規模宅地の相続税評価は、課税時期が平成29年12月31日以前の評価方法「広大地の評価」と、平成30年1月1日以降の評価方法「地積規模の大きな宅地の評価」に分かれます。
 一方、固定資産税評価では、固定資産評価基準において規模格差の基準は「大規模工場用地の評価」のみとなっています。
 それでは、相続税の評価を中心に解説していきます。

広大地の評価(平成29年12月31日以前)

 広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められる宅地をいいます。ただし、大規模工場用地に該当する宅地及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適している宅地は除かれます。 
 「広大地の評価」は、かなり低目に評価されることから、相続人にとっては有利な制度でしたが、残念ながら平成29年12月31日で終了となりました。 
 「広大地の評価」

地積規模の大きな宅地の評価(平成30年1月1日以降)

地積規模の大きな宅地とは

 地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいいます。
 ただし、次のいずれかに該当する宅地は、地積規模の大きな宅地から除外されます。
①市街化調整区域に所在する宅地
②用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
③指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
④財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地

「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地

「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となる宅地は、路線価地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地のうち、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。また、倍率地域に所在するものについては、地積規模の大きな宅地に該当する宅地であれば対象となります。

規模格差率及び評価方法

 「地積規模の大きな宅地の評価」

 なお、上記「規模格差補正率」中の(B)及び(C)は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
 「(B),(C)の補正率」

大規模宅地評価の計算比較

 それでは、「広大地の評価」と「地積規模の大きな宅地の評価」について、次の事例(路線価:200千円、規模:2,000㎡、普通住宅地、三大都市圏)により、計算してみましょう。
 「大規模宅地の計算比較」

 この計算のとおり、「広大地の評価」に比べ「地積規模の大きな宅地の評価額」はやや高くなります。
 しかし、前者の場合は「通路が必要となるいわゆる戸建開発用地」が対象となっており適用範囲が限られていましたが、後者では、指定容積率400%までの宅地に認められます。このことから、後者では適用範囲がやや広がったとも言える訳です。

固定資産税評価における大規模土地評価

大規模工場用地の評価-固定資産評価基準

 固定資産税評価の全国基準である「固定資産評価基準」では、大規模工場用地(おおむね20万平方メートル以上のものに限る)のみ大規模格差補正が認められています。
 「大規模工場用地の補正率」

「所要の補正」による市町村の規定

 「固定資産評価基準」では、「市町村長は、必要があるときは所要の補正をして、これを適用するもとする」とあり、各市町村の「固定資産評価事務取扱要領」(名称は市町村単位で異なります)において、大規模工場用地以外にも規模格差が適用されている場合があります。

 参考までに、東京都の「広大地補正率表」を掲載します。
 (参考)東京都「広大地補正率」-東京都固定資産 (土地) 評価事務取扱要領

(50)相続税評価と固定資産税評価の計算方法はどう違うのか(1)(「無道路地」の場合)

 今号から「相続税評価と固定資産税評価の計算方法はどう違うのか」を連載しますが、まず「無道路地の相続税評価と固定資産税評価の違い」についてです。
 その前に、相続税評価額と固定資産税評価額の相関関係から説明します。

相続税評価額と固定資産税評価の相関関係

(1)相続税の倍率評価

 土地の相続税評価額の算出方法は、路線価方式と倍率方式に分かれます。
 倍率方式とは、地域・地目ごとに定められている倍率を固定資産税評価額に乗じて求める方法です。

(2)家屋の相続税評価

 家屋の相続税については、固定資産税家屋評価を用いることとされています。

(3)路線価方式の相関関係

 相続税も固定資産税も路線価地域の場合は、路線価方式によりそれぞれの評価額を求めますが、この場合、相続税路線価は地価公示価格の約80%、固定資産税路線価は地価公示価格の約70%とされています。
 これは、平成元年に施行された「土地基本法」第17条(公的土地評価の適正化等)により、公的価格の一元化が図られた結果です。公的土地評価とは「1物4価」と呼ばれ、市場の正常取引価格、地価公示価格、相続税評価額、固定資産税評価額ですが、これにより上記の割合(相続税80%、固定資産税70%)が定めらました。

土地基本法第17条(公的土地評価の適正化等)
「国は、適正な地価の形成及び課税の適正化に資するため、土地の正常な価格を公示するとともに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるように努めるものとする。」

 なお本件では、地価公示価格レベルとして200千円/㎡、普通住宅地の地域を想定します。

相続税の無道路地評価

 相続税の無道路地評価方法は、次のとおりです。
(1)無道路地の奥行価格補正後の価額 → (2)不整形地補正(又は間口狭小・奥行長大補正) → (3)無道路地としてのしんしゃく(通路部分の価額) → (4)無道路地相続税評価額
 「無道路地(相続税)」

(1)無道路地の奥行価格補正後の価額

 「奥行価格補正率(相続税)」

①無道路地[1]と前面宅地[2]を合わせた土地の奥行価格後の価額
◆奥行価格補正率(普通住宅地40m)…0.91
◆[1]と[2]の地積の合計…800㎡
<160千円×0.91×800㎡=116,480千円>
②前面宅地[2]の奥行価格補正後の価額
◆奥行価格補正率(普通住宅地20m)…1.00
◆[2]の地積…400㎡
<160円×1.00×400㎡=64,000千円>
③①の価額から②の価額を控除して求めた無道路地[1]の奥行価格補正後の価額
<116,480千円ー64,000千円=52,480千円>

(2)不整形地補正(又は間口狭小・奥行長大補正)

 「不整形地補正率(相続税)」

 「間口狭小・奥行長大補正率(相続税)」

◆不整形地補正率(普通住宅地区・地積区分A・かげ地割合50%)…0.79
◆間口狭小補正率(間口距離2m)…0.90
◆奥行長大補正率(間口距離2m・奥行距離40m)…0.90
(不整形地補正率×間口狭小補正率)0.79×0.90=0.71(a)
(間口狭小補正率×奥行長大補正率)0.90×0.90=0.81(b)
(a)<(b)により、不整形地補正率は0.71
◆[1]の奥行価格補正後の価額×不整形地補正率
<52,480千円×0.71=37,260千円>(不整形地補正後の[1]の価額])

(3)無道路地としてのしんしゃく(通路部分の価額)

<160千円×40㎡=6,400千円>
限度額(<37,260千円×0.4=14,904千円)
※不整形地補正後の[1]の価額の4割以下

(4)無道路地の相続税評価額

◆不整形地補正後の[1]の価額ー通路部分の価額=無道路地の相続税評価額
<37,260千円ー6,400千円=30,860千円>

固定資産税の無道路地評価

 固定資産税の無道路地の評価方法は、次のとおりです。
(1)無道路地の補正率 → (2)1㎡当たりの評点数
 「無道路地(固定資産税)」

(1)無道路地の補正率

 無道路地[1]の奥行価格補正率×前面宅地[2]の通路開設補正率×無道路地補正率0.6
※無道路地補正率0.6は一律
 「奥行価格補正率(固定資産税)」

①無道路地[1]の奥行価格補正率(40m普通住宅地)…0.92
 「通路開設補正率(固定資産税)」

②前面宅地[2]の通路開設補正率(20m)…0.80
③無道路地補正率…0.60
④無道路地の補正率(①×②×③)
<0.92×0.80×0.60=0.44>

(2)1㎡当たりの表点数

<140,000円×0.44=61,600円>

※以上のとおり、固定資産税の無道路地評価は無道路地補正率が一律0.6とされており、相続税の評価より簡単な方法になっています。
 なお、土地の固定資産税評価額は、路線価方式による計算に加えて「住宅用地の特例」や「負担調整措置の仕組み」もありますので、ご注意ください。