(47)所有者が不明の土地・家屋の固定資産税

 今回は、所有者が不明な土地と家屋の固定資産税についてです。
 そもそも、なぜ所有者不明な固定資産(土地と家屋)が生じるのでしょうか。
 まず所有者不明な土地と家屋が増加する原因としては、相続が生じても相続登記が行われないことにあります。この傾向は、今後、超高齢化社会と人口減少が進むにつれ、更に深刻な問題となっていくことが予想されます。
 その前に、固定資産税の納税義務が地方税法上どうなっているのかについて、復習しておきたいと思います。

固定資産税の納税義務者とは

(1)納税義務者は登記・登録されている所有者

 固定資産税(土地及び家屋に限定)の納税義務者は、原則として登記簿に所有者として登記されている者(登記簿所有者)又は土地・家屋補充課税台帳に登録されている者をいいます(地方税法第343条1項、2項)。
その意味では、固定資産税の納税義務者は、必ずしも真実の所有者とは限りません。
 また、この納税義務者は賦課期日(毎年の1月1日現在)に登記・登録されている者ですが、この登記・登録されている者が賦課期日前に死亡しているときは、固定資産税を「現に所有している者」が固定資産の所有者となります。

※地方税法第343条1項、2項(中略)
「1.固定資産税は、固定資産の所有者に課する。
2.前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいう。この場合において、所有者として登記又は登録されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地又は家屋を現に所有している者をいうものとする。」

(2)連帯納税義務

 納税義務者が賦課期日前に死亡した場合、相続人間で遺産分割協議が成立していて相続登記がされていれば、その者が新たな納税義務者になりますが、遺産分割協議が行われていない場合には、法定相続人全員が共有者として「現に所有している者」として納税義務者になります。
 これは連帯納税義務として、法定相続人全員が各々独立して全部の納税義務を負うことになります。
 一方、賦課期日後に納税義務者が死亡した場合、納税義務者はあくまでも賦課期日時点(1月1日)の所有者となります。
 ここで、相続人が複数おり、遺産分割協議が行われた場合には、その者が現実の納税義務者となっていますが、仮に遺産分割協議が行われていない場合は、各相続人はその法定相続分により按分した額の納税義務を負うことになります。この点が賦課期日前に死亡したときと異なります。
 また、この場合、市町村の長は、納税通知書等を受領する代表者を指定することができます。

※地方税法第9条の2(中略)
「1.納税者につき相続があつた場合において、その相続人が2人以上あるときは、これらの相続人は、そのうちから書類を受領する代表者を指定することができる。この場合において、その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。
2.地方団体の長は、相続人の一人を指定し、その者を同項に規定する代表者とすることができる。」

なぜ所有者不明の土地・家屋が発生するか

(1)所有者不明土地・家屋の発生要因

 ところで、納税義務者が死亡して相続登記がなされる場合には、その情報が課税する市町村に通知され新たな納税義務者を把握することが出来ますが、相続登記がなされない場合には、死亡の事実の把握も新たな納税義務者を決めることも簡単ではありません。
 納税義務者の住所地が固定資産税の課税庁と同一であれば、情報の連携・共有を図ることにより、死亡の事実を把握することは可能ですが、住所地が課税市町村と異なる場合の納税義務者(住民登録外者)の場合には、死亡の事実を把握することは容易ではありません。

(2)住民登録外者の本人(死亡情報)確認の方法

 平成11年に総務省が、市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理を行うため、地方公共団体共同のシステムとして、住民基本台帳のネットワークシステム化を図りました(「住基ネット」)。
 しかし、この活用のためには、課税台帳とマイナンバーの連携が必要なところ、マイナンバーの活用自体が進んでいないことから、この住基ネットの活用も進んでいません。
 また、納税義務者の法定相続人を特定するため、課税担当として戸籍調査を行っていますが、この作業は被相続人と法定相続人全員の本籍地に対して戸籍簿を請求・取得する必要があります。これは、相続の階数が増えている場合や、相続人が多数に及ぶ場合には相当な時間がかかることになります。

所有者不明の固定資産への対応策

 それでは、所有者不明の固定資産税はどのように課税されているのでしょうか。
 もちろん、課税担当として相続人を調査して判明すれば、その者に課税しますが、法定相続人の調査が出来きれない場合や法定相続人の一部が判明した場合には、その一部の者に対して納税通知書を送付している市町村も多いようです。
 また、賦課期日に現に所有している者の一部が特定できている場合、判明している所有者のみに課税を行っている市町村もあります、
 一方では、戸籍等による相続人調査が途中で途切れてしまい、相続人の存否すら明らかにならない場合もあり、お手上げ(課税保留)の場合もあります。
 そこで、この所有者不明な土地・家屋への対応としては、まず「相続登記の法的義務化ができないか」ということでしょう。また、「市町村の条例で”現に所有する所有者”の届出の義務づけができないか」等々の検討が必要となっています。

所有者不明土地法が施行

 ところで、国土交通省は「所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法」(「所有者不明土地法」という法律を施行(平成30年6月13日公布)されています。この法律の概要は①所有者不明土地を円滑に利用する仕組み②所有者の探索を合理化する仕組み③所有者不明土地を適切に管理する仕組み、の3点からなります。
 なお、平成28年度地籍調査において、所有者不明土地の割合が全国で約20%になるとのことです。