(68)固定資産税の価格に不服がある場合の対応方法(その2)

 それでは、固定資産の価格(評価)に不服がある場合、どのような対応をすれば良いのか、ということになります。

 まず、固定資産税の価格に不服がある場合には、地方税法の手続きとして、同法432条による「審査の申出」をすることができます。

 それと、地方税法第417条に「その登録された価格に『重大な錯誤』があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならない」とされていますので、価格に疑問がある場合は、「重大な錯誤」があるのか否かを見極める必要があります。そのためにも、前号で指摘した「評価計算書」が必要となるのです。

 また、平成22年の最高裁判決により、「公務員の過失によつて、違法に損害を加えたときは賠償する責任がある」とされ、最高20年間の訴求(固定資産税の課税であれば還付請求)も可能とされています。

 今号では前号に続いて、この内容を解説していきます。

審査申出制度とは

審査申出制度の内容

 今回、Kさんは令和3年度が評価替え年度でもあり、納税通知書を受け取ってから3ヵ月以内に、N市固定資産評価審査委員会宛に審査申出書を提出し、N市からの弁明書が出され、Kさんが反論書を提出し意見陳述を行い、固定資産評価審査委員会から決定書(棄却)が出された訳です。

 この方法は、地方税法第432条に従って行われており、手続き上では問題はありません。

※「地方税法」第432条1項-価格に関する審査の申出
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について、納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日まで間において、文書をもつて、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」(中略)

 また、固定資産評価審査委員会の規定は、地方税法第423条にあります。

※「地方税法」第423条-固定資産評価審査委員会の設置,選任等
「1 固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために,市町村に,固定資産評価審査委員会を設置する。
2 固定資産評価審査委員会の委員の定数は3人以上とし,当該市町村の条例で定める。
3 固定資産評価審査委員会の委員は,当該市町村の住民,市町村税の納税義務がある者又は固定資産の評価について学識経験を有する者のうちから,当該市町村の議会の同意を得て,市町村長が選任する。」

 市町村の固定資産税担当の窓口では、「この固定資産税の評価に疑問があります」と伝えた場合、「評価計算書」で丁寧に説明される場合が普通ですが、なかには「不服があるのであれば、地方税法による審査申出でお願いします」と窓口で”門前払い”される場合もあります。

審査申出制度の限界

 では、地方税法に従って審査申出を行った場合、市町村からどのように対応されるのでしょうか。
 まず上記の条文にあるとおり、固定資産税の価格に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会という第三者委員会に対して審査申出を行うことになります。この委員会を補佐する市町村の事務局も、固定資産税の評価・課税とは異なる部局が担当します。
 しかし、この審査申出は地方税法上の原則ではありますが、訴訟と違ってかなり形式的・単純な手続きとなります。

 今回のKさんは、所有されているビルを途中で購入されていて、固定資産税が自己所有の他のビルと比較して評価が高いと気がついた訳です。
 ところが、N市では、その家屋の前所有者からは評価の不服や訴えが無かったため、この家屋の評価には問題は無いと判断したようなのです。
 前期の再建築費評点数を基にした計算から固定資産評価基準どおり行われていると弁明している訳で、これは在来家屋の評価方法で、そもそもの評価額は問題無かったとの主張になっているのです。それを、固定資産評価審査委員会では、そのまま受け取り棄却決定となっているようです。

 第三者委員会の固定資産評価審査委員にも法律、税務、不動産評価の専門家がおりますが、必ずしも固定資産税の家屋評価に熟知されている方々とは限りません。

価格等に「重大な錯誤」があった場合

「重大な錯誤」による価格の修正(地方税法417条)

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録されることにより行われます。しかし、地方税法417条1項で、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。

※「地方税法」第417条1項-価格等の決定又は修正等
「市町村長は、(中略)登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに固定資産課税台帳に登録された類似の固定資産の価格と均衡を失しないように価格等を決定し、又は決定された価格等を修正して、これを固定資産課税台帳に登録しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。

 中古家屋で、これまで価格に対する所有者からの訴えが無かったとしても、「重大な錯誤」があるかもしれないため、課税部局は慎重に対応すべきなのです。

 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。
 もっとも、市町村の具体的な対応は様々あるように思われます。特に家屋の場合では、主体構造や面積の誤りであれば速やかに判明しますが、建築細部の評価を検証するのは大変な作業になります。
 ともすると担当課の窓口で「評価基準どおりやってます」とか「評価の誤りは納税者に主張立証してもらいます」などと言われてしまい、納税者は”お手上げ状態”に陥ってしまう訳です。

国家賠償法による訴訟対応

 平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

※「国家賠償法」第1条1項
「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」場合は「手抜き」があったとされ、国家賠償法第1条の「過失」になり、国家賠償請求(訴訟)をすることができます。
 通常、固定資産税の価格に対する訴訟は、審査申出の決定がなされて6ヵ月以内となっていますが、「過失」(いわゆる「手抜き」程度)があった場合は、審査申出の期限にかかわらず国家賠償請求訴訟が出来るということです。
 この訴訟で「過失」が認められた場合、還付期間は最高20年間となります。

市町村との直接交渉

 市町村によっては、地方税法の417条の「重大な錯誤」があったと認めた場合、20年間の還付に応じている場合もあります。
 第59号「課税誤りの還付金は何年分返還されるか(「過徴収金返還要綱」の在り方)でも説明しましたが、「過徴収金返還要綱」(市町村により名称は異なる)により、地方税法の還付金5年間分の他に、5年を超える部分を地方税法の返還不能額として、最高15年間の還付がされる場合があります。この還付不能額の名称は、市町村により「補填金」や「返還金」となっていますが、地方税法の還付金5年分と併せると20年分となります。
 なお、市町村によっては、還付不能額の算定は「原則として固定資産課税台帳等の保存年限(10年)の範囲内となるが、納税者が所持する領収書等によって還付不能額が確認できるものについても算定の対象とする」とされていますが、この「領収書等」については、第59号で疑問を呈していますので確認してください。

 最近、K市のNさんから「地方税法の5年分の還付金のほかに、還付不能金(「返還金」)が15年分返ってきますが、15年分についても利息相当額が付くのでしょうか」とのご相談がありました。K市の「市税に係る返還金の支払要綱」の4には「返還金の合計額は還付不能金と利息相当額の合計額」と明記されていますので、15年分についても「利息」が付きます。
 ちなみにK市の「市税に係る返還金の支払要綱」は「還付不能金の遡及期間は5年とする。ただし、この期間を超える場合でも、還付不能金を算定できるものについては、それを算定できる期間(15年を限度とする)に限り遡及する。」となっています(ここには「納税者が保持する領収書」の記載はありません)。
 このK市のように、国家賠償法の訴訟に持っていかずとも対応されているところもありますので、あわてて訴訟に持ち込まずしっかりと交渉してみることも必要です。
 家屋の複雑な評価は所有者だけでは分からないことが多いのが現実です。そのようなときには、ぜひ筆者(固定資産税のコンサルタント)にご相談ください。
 詳しい内容は、電話、メール(ZOOMも可能)のやりとりで行わせていただきます。