(67)固定資産税の価格に不服がある場合の対応方法(その1)

 最近、N市に家屋(マンション)をお持ちのKさんから、次のようなご相談をいただきました。

 ①自分の所有しているマンションの評価額が隣接のマンションと比較して約1.4倍、自分が所有している他のマンションと比べても約1.6倍になっています。
 ②N市税務課に家屋の「評価計算書」(家屋新築時の課税計算書、名称は市町村により異なる)の提出を求めたところ、「『評価計算書』は廃棄してみつからない」との回答がありました。
 ③そこで、N市に対して5月に審査申出書を提出したところ、弁明書による回答がありました。そこには「建築時に算出した再建築費評点数に対して評価替ごとに再建築費評点補正率を乗じて、現在の再建築費評点数を算出している」との記載がありました。
 ④しかし、仮に課税誤りがあるとすれば、新築時に算出した再建築費評点数の誤りが原因である筈なのですが、弁明書では、今までの評価額は正しいものとの前提なのです。
 ⑤その後、反論書を提出し、意見陳述を行ったものの、N市固定資産評価審査委員会から、門前払いに近い回答(棄却)を頂きました。

 まず、家屋評価は複雑で課税誤りの原因になり易いとの解説をNO43、NO44で解説していますので再掲いたします。

 
※(失礼ですが)ビルの所有者が「評価計算書」をみても分からないのがほとんどですので、ここではコンサルタントが「検証」を請け負うことを前提にしています。

N市対応の問題点

 あくまで相談されたKさんの主張が事実であることを前提にしたものですが、この件でのN市の対応等には次の問題点を指摘することができます。

「評価計算書」がなぜ示されないのか

 ①のKさんの「隣接ビルとの比較」は付随的な主張でしょうが、②のN市の「『評価計算書』は廃棄して見つからない」との回答には驚きです。
 そもそも「評価計算書」は市町村の内部資料ですが、どこの市町村でも所有者から説明を求められると、この資料により評価内容を説明し、所有者に手渡されるのが一般的です。
 所有者が事前に評価内容を検討するためにも「評価計算書」が必要で、その家屋の評価額そのものが、どのように算定されているのかを説明し「課税誤り」が無いことを示す必要がある訳です。

なぜ建築当初の評価額が審査されないのか

 Kさんの審査申出の趣旨は「そもそも再建築費評点数の算定が正しいのか」ですが、③~⑤においてのN市の弁明は、前年の再建築評評点数に補正率を乗ずる方法(在来家屋の評価方法)の説明に終始されています。
 中古ビルで、前の所有者から評価の訴えが無かったので、新所有者からの審査申出においても、この家屋の評価は問題無い、と在来家屋の評価方法のみで弁明している訳です。

審査申出制度の限界か

 固定資産評価審査委員会の決定(棄却)もほとんど課税当局の弁明書を踏襲した結果となっています。固定資産評価審査委員会は第三者委員会ですが、どこの市町村でも、審査申出の手続きでは課税部局の主張がそのまま採用されることがほとんどではないかと思います。
 これは、ある意味では「審査申出制度の限界」でもあると言えます。

「評価計算書」とはどのようなものか

「課税明細書」と「評価計算書」の違い

 固定資産税については、毎年4~5月に「納税通知書」「納付書」とともに「課税明細書」が3点セットとして所有者に送られてきます。しかし、そこには家屋の価格(評価額)が記載されているのみで、それがどのように計算されたのか、なぜこの価格になったのかは一切分かりません。
 まず、毎年所有者に送られてくる「課税明細書」は次のようになっています。
「課税明細書(例)」

 どうでしょうか、この課税明細書の価格(評価額)をみても、どのように計算されてこの価格になっているのかは分かりません。

 そのために「評価計算書」の提出を求めるのですが、ここに「評価計算書」の例を掲げます。
「評価計算書(例)」

 ここに掲げた「評価計算書」は全体の一部です。また市町村によっては形式も名称も異なっています。
 ブログNO33、44でお知らせしたとおり、固定資産家屋の評価は非常に複雑な内容ですので、それを計算する「評価計算書」も複雑になっています。

 最近では、どこの市町村でも電子システムを活用していますが、それ以前は「パンチカード」(名称は市町村により様々)という方式で作成・保管され、仮に担当者がコピーを廃棄したとしても、組織としてはデータが保存されている筈なのです。
 そうでなければ、所有者にとって大切な財産である固定資産に対して評価・課税している根拠が疑われ、信頼性も損なわれることになります。

「評価計算書」の取得方法

 この「評価計算書」は役所の内部資料ですので、一般的には公開されていません。従って、所有者または委任状を受けた代理人のみが入手することが出来ます。

 繰り返しになりますが、N市が「『評価計算書』は廃棄したのでみつからい」とは、あまりにも無責任ではないでしょうか。

 筆者の経験では、所有者から委任を受けて、多くの市町村に「評価計算書」の提出を求めてきましたが、そのように対応されたことはありません。

価格に不服がある場合の役所の対応

 今回Kさんは、固定資産税の評価額に不服があるとして審査申出を行ったのですが、不満足の結果であった訳です。もっとも、市町村の課税部局に価格の相談に行けば「不服があるのでしたら、地方税法に従って審査申出を行ってください」と言われることが多いのです。

 しかし、その審査申出に対しては、地方税法上「公正を期す」との理由から、第三者委員会である固定資産評価審査委員会が審査を担当することになります。審査委員会では、課税当局から弁明書の提出以外にも聞き取り調査等も行って審査していまが、家屋評価のような超複雑な案件には限界があります。

 結局、今回のN市もそうですが、家屋評価の元となる新築時点の再建築評点数の評価方法が正しかったのかどうの判断は行われず、既にある再建築評点数を基準にして経年減価等の補正を行う在来(中古)家屋の評価方法のみの判断で決定(棄却)がなされています。

 所有者が「この審査申出の決定には異議があります」と申し出たところで、審査委員会と課税部局から「それなら6ヵ月以内に訴訟を提起することができます」と言われるだけです。所有者からすると、訴訟となるとそれなりの費用等もかかるため断念せざるを得ない「打つ手なし」という例が多いのです。
 果たして、こういうことで良いのでしょうか?
<第68号に続きます>