(36号)固定資産税の価格(評価額)に不服(評価誤り)がある場合の手続き

(第1回目投稿:平成27年、第2回目見直し:令和4年5月)

 今回は、固定資産税の価格に不服がある場合には、どのような手続きを行う必要があるのかについてお知らせします。
(※なおこの件につきましては、これまでも部分的に紹介してきていますので、重複する部分があることをご了承ください。)

 ここで紹介する手続きは、あくまでも固定資産税の価格(評価額)に対する不服に関するもので、これを「審査の申出」と呼びます。これとは別に、価格以外の固定資産税の課税に関する不服の手続きがありますが、こちらは「審査請求」として(似ていますが)若干異なる手続きとなります。

地方税法の原則的手続き

 固定資産税の納税者で、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内に、文書をもって固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができます。(地方税法432条1項)
※以前は「60日以内」でしたが、法改正により「3ヵ月以内」となりました。

※「地方税法」第432条1項-価格に関する審査の申出
「固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について、納税通知書の交付を受けた日後三月を経過する日まで間において、文書をもつて、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。」(中略)

 審査の申出では、次の点に注意する必要があります。

①審査の申出をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。
 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。また、審査の申出は、代理人によってもすることができますが、この代理人は弁護士や税理士等特定の職業に限定されていないことになっています。

②審査の申出をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られます。
 ここでの価格は、あくまでも3年サイクルで行われる評価替年度(基準年度)の価格であって、第2年度、第3年度において基準年度の価格が据え置かれた価格については対象とはなりません。
 ただし次の「評価替年度(基準年度)以外の価格」にあるとおり、第2年度、第3年度でも審査申出できる例外もあります。

③審査の申出期間は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内です。仮に、審査申出書を郵便で提出する場合は、発信主義(消印日有効)とされています。

④審査の申出先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。
 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な(第三者)機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。
 この方法は、地方税法第432条に従って行われます。

 また、固定資産評価審査委員会の規定は、地方税法第423条にあります。

※「地方税法」第423条-固定資産評価審査委員会の設置,選任等
「1 固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために,市町村に,固定資産評価審査委員会を設置する。
2 固定資産評価審査委員会の委員の定数は3人以上とし,当該市町村の条例で定める。
3 固定資産評価審査委員会の委員は,当該市町村の住民,市町村税の納税義務がある者又は固定資産の評価について学識経験を有する者のうちから,当該市町村の議会の同意を得て,市町村長が選任する。」

評価替年度(基準年度)以外の価格

 8号等でもお知らせしましたが、固定資産税(土地及び家屋)の評価は3年単位で行われています。
 この3年に1度の年を評価替年度又は基準年度と言いますが、その間の2年間を据置年度と言います。
 据置期間が2年とされているのは、物価の変動、資産の状況の変化等の事情を考慮されたものであり、評価事務コスト等を考慮すれば、一定期間価格を据え置くのは合理的であるとされています。

 では、第2年度、第3年度でも、据え置かれている基準年度の価格に対して審査の申出ができるのでしょうか。

 第2年度、第3年度では次の場合に限り、審査申出をすることができます。
a 家屋の新築や土地の分筆等により、新たに価格が固定資産課税台帳に登録された場合
b 家屋の増改築や土地の地目変換等によって価格が変わった場合
c 地価の下落により修正された土地の価格の修正に関する部分

審査の申出から取消訴訟へ

 固定資産評価審査委員会へ審査の申出を行い、その決定に不服がある場合に取消訴訟を提起できることになります。
 これが地方税法上の原則的な手続で、その流れは次のとおりです。

※地方税法434条1項-争訟の方式
「固定資産税の納税者は、固定資産評価審査委員会の決定に不服があるときは、その取消しの訴えを提起することができる。」
※行政事件訴訟法14条1項-出訴期間
「取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6ヵ月を経過したときは、提起することができない。」

 このように、地方税法による原則的な手続は、裁判所に訴える前に、まず固定資産評価審査委員会に審査の申出を行う必要があります。これを「審査請求前置主義」と言います。

「重大な錯誤」による価格の修正

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録され公示されることにより行われます。しかし、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。(地方税法417条1項)

※地方税法417条1項-固定資産の価格等の全てを登録した旨の公示の日以後における価格等の決定又は修正等
「市町村長は、…登録された価格等に重大な錯誤があることを発見した場合においては、直ちに…決定された価格等を修正しなければならない。」

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。
 そこで、納税者側から見た場合、この制度を価格是正の手続きとして考えることもできるということです。
 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。

国家賠償法の「過失」での訴訟対応

 32号で掲載しましたように、平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

 ※最高裁(第一小法廷)平成22年6月3日判決
 「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」(過失)場合は「手抜き」があったとされ、審査の申出を経ないで国家賠償請求をすることができます。

 仮に国家賠償請求が認められた場合は、20年の返還(正式には5年間の「還付金」と15年間の「補填金」)となります。