» 2015 » 12月のブログ記事

 今回は、固定資産税の価格に不服がある場合には、どのような手続きを行う必要があるのかについてお知らせします。

 なお、ここで紹介する手続きは、あくまでも固定資産税の価格(評価額)に対する不服に関するもので、これを「審査の申出」と呼びます。これとは別に、価格以外の固定資産税の課税に関する不服の手続きがありますが、こちらは「審査請求」として(似ていますが)若干異なる手続きとなります。

◆地方税法の原則的手続き

 固定資産税の納税者で、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内に、文書をもって固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができます。(地方税法432条1項)

※以前は「60日以内」でしたが、法改正により「3ヵ月以内」となりました。

 ここでは、次の点に注意する必要があります。

①審査の申出をすることができる者は「固定資産税の納税者で価格に不服のある者」となります。
 したがって、借地人や借家人等の利害関係者であっても申出をすることができません。固定資産の共有者(マンションの区分所有者も含む)は、単独で申出をすることができます。また、審査の申出は、代理人によってもすることができますが、この代理人は弁護士や税理士等特定の職業に限定されていないことになっています。

②審査の申出をすることができる内容は「固定資産税課税台帳に登録された価格」に限られます。
 ここでの価格は、あくまでも3年サイクルで行われる評価替年度(基準年度)の価格であって、第2年度、第3年度において基準年度の価格が据え置かれた価格については対象とはなりません。

③審査の申出期間は、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して3ヵ月以内です。仮に、審査申出書を郵便で提出する場合は、発信主義(消印日有効)とされています。

④審査の申出先は、市町村の固定資産評価審査委員会です。
 固定資産評価審査委員会とは、価格に対する納税者からの不服を審査・決定するために市町村に設置される中立的な機関です。通常、弁護士、税理士、学識経験者等から議会の同意を得て選出されます。

◆評価替年度(基準年度)以外の価格

 19号等でお知らせしましたが、固定資産税(土地及び家屋)の評価は3年単位で行われています。

 今年度(平成27年度)は3年に1度の評価替年度(基準年度)です。次の平成28年度(第2年度)及び平成29年度(第3年度)は、原則として基準年度の課税標準額が据え置かれることになります。
 据置期間が3年とされているのは、物価の変動、資産の状況の変化等の事情を考慮されたものであり、評価事務コスト等を考慮すれば、一定期間価格を据え置くのは合理的であるとされています。

 では、第2年度、第3年度でも、据え置かれている基準年度の価格に対して審査の申出ができるのでしょうか。

 この点、第2年度、第3年度では基準年度の審査申出は出来ず、次の場合に限り審査申出をすることができます。

①家屋の新築や土地の分筆等により、新たに価格が固定資産課税台帳に登録された場合

②家屋の増改築や土地の地目変換等によって価格が変わった場合

③地価の下落により修正された土地の価格の修正に関する部分

◆中古家屋の当初の家屋評価に対する審査申出

 家屋の基準年度の評価額は、一つ前の基準年度の価格(正式には「再建築費評点数」)を基礎として算定されています。この場合、建築当初の価格は見直しがされないことから、仮に建築当初の価格の算定に誤りがあっても、誤ったままの状況が継続してしまうことになります。

 そこで問題は、中古家屋の納税者は、現在の基準年度において、建築当初の(過去の)価格に対して審査申出を行うことができるかということになります。

 平成25年4月16日の東京高等裁判所において、これを認める司法判断が示されました。

 「固定資産税の課税標準である価格は固定資産評価基準によって決定されなくてはならないが、その価格は、あくまでも適正な時価でなくてはならないのであり、固定資産評価基準に従って決定された価格は適正な時価と推認されるということにすぎない。固定資産評価基準の適用に誤りがあると上記推認はされず、このことは、その適用の誤りが、建築当初の再建築当初の再建築費評点数の算出の誤りであっても、当該基準年度における価格の決定に影響を及ぼすものである限り、同様である。」

 <東京高等裁判所判決文>
 「東京高裁判決文」 (←詳細はここをクリック)

 この判決に対して、最高裁への上告がなされ、平成26年7月14日に棄却されたことにより、この判断が確定しました。

◆「重大な錯誤」による価格の修正

 固定資産税の価格の決定は、固定資産課税台帳に登録され公示されることにより行われます。しかし、その登録された価格に「重大な錯誤」があることを発見した場合には、直ちにこの価格を修正しなければならないとされています。(地方税法417条1項)

 この「重大な錯誤」とは、①固定資産課税台帳に登録する際の誤記②価格を決定する際の計算間違い③明瞭な誤記又は認定の誤り等、客観的に見て価格の決定に重大な誤りがあると認められるような場合とされています。
 そこで、納税者側から見た場合、この制度を価格是正の手続きとして考えることもできるということです。

 納税者がどうしてもこの価格には納得がいかないので、市町村の担当課に相談したところ、実は「重大な錯誤」と判明したというケースも実際にあります。
 もっとも、市町村の具体的な対応は様々あるように思われます。特に家屋の場合では、主体構造や面積の誤りであれば速やかに判明しますが、建築細部の評価を検証するのは大変な作業になります。

 ともすると担当課の窓口で「評価基準どおりやってます」とか「評価の誤りは納税者に主張立証してもらいます」(これ自体間違っていませんが)などと言われてしまい、納税者はお手上げ状態に陥ってしまう訳です。

◆国家賠償法による訴訟対応

 32号で掲載しましたように、平成22年6月3日の最高裁判決において、次の判断がなされています。

 「公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して当該固定資産の価格ないし固定資産税等の税額を過大に決定したときは、これによって損害を被った当該納税者は、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく、国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。」

 これは「通常尽くすべき注意義務が尽くされていない」場合は「手抜き」があったとされ、審査の申出を経ないで国家賠償請求をすることができます。

 上記の「重大な錯誤」も「手抜き」とほぼ同じと考えて差し支えないと思われますので、訴訟も辞さないとお考えの方は、国家賠償請求の方法も選択肢の一つになります。

固定資産税の見直し・引下げ

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